『人を動かす』の要約・まとめ!わかりやすく全原則を紹介

更新:2024/04/16

作成:2023/04/14

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

『人を動かす』を分かりやすく要約|人を動かす3大要素と30原則とは?|デール・カーネギー

作家・講演家として世界中で知られているデール・カーネギーの著書『人を動かす』は、人間関係やコミュニケーションの原則を実例豊かに説いた名著です。

 

ビジネスシーンや日常生活を始めとするあらゆる人間関係に効果をもたらす30の原則が解説された『人を動かす』は、1936年の発売から100年近くになろうとする現在でも、各種ビジネス誌のおすすめ書籍やAmazonのランキングなどに登場するベストセラーとなっています。

 

記事では、デール・カーネギーの研修を日本で公式提供している知見を踏まえて、書籍『人を動かす』に書かれている各章を要約し、読んだことがない人でも全体像がわかるように解説します。

<目次>

書籍『人を動かす』の概要と得られるもの

記事では最初に、書籍『人を動かす』の概要と得られるものを確認しておきます。

『人を動かす』とはどんな本か?

デール・カーネギーの著書『人を動かす』は、人間関係の原則、人に影響を与えるノウハウを実例豊かに説明した自己啓発書です。

 

著者のカーネギーはコミュニケーションやプレゼンテーションの講師としても有名な人物であり、『人を動かす』にはカーネギーが長年にわたり、講演のなかで蓄積してきたノウハウ、講演で使っている事例などが体系としてまとめられています。

 

『人を動かす』は1936年にアメリカで出版されて以来、世界中で読み継がれており、全世界で1500万部を超えるベストセラーとなっています。

 

現代でも、amazonのベストセラーランキングや各種メディアや著名人のおすすめ書籍として名前をあげられるなど、書かれている内容は時代を超えて通用する普遍的なものになっています。

 

日本でも、以下に挙げた著名人や経営者といった人たちが、カーネギーの著書『人を動かす』、また『道は開ける』を推薦・愛読書としています。

  • 藤田 晋氏(株式会社サイバーエージェント代表取締役社長)
  • 『渋谷ではたらく社長の告白〈新装版〉』(2013年6月刊、幻冬舎)
  • ・矢沢 永吉氏(ミュージシャン、俳優)
  • 『新装版 矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』 (2004年4月刊、角川書店)
  • 長谷部 誠氏(プロサッカー選手、元日本代表)
  • webサイト『Sportsnavi』連載(2020年5月3日)
  • 樋口 武男氏(大和ハウス工業株式会社 最高顧問)
  • 『経済界』(2019年2月28日)
  • 菊池 雄星氏(プロ野球選手)
  • 朝日新聞「未来ノート―202Xの君へ―」(2018年7月29日)
  • 岡田 准一氏(V6)
  • 『PRESIDENT Online』(2019年9月26日)
  • 熊谷 正寿氏(GMOインターネット株式会社会長兼社長・グループ代表)
  • 『経済界』(2019年2月28日)
  • 茂木 健一郎氏(脳科学者)
  • 『PRESIDENT』(2012年4月30日号、プレジデント社)
  • ふなっしー(梨の妖精)
  • 『DIAMOND ONLINE』(2020年2月3日)
  • ROLAND(現代ホスト界の帝王)
  • 『俺か、俺以外か。ローランドという生き方』(2019年3月11日、KADOKAWA)
  • 中田 敦彦氏(オリエンタルラジオ)
  • 『中田敦彦のYouTube大学』(2020年1月19日-21日)

『人を動かす』を通じて得られるもの

書籍『人を動かす』は、大きく分けて「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」の4つのパートから成り立っており、カーネギーが長年にわたり集めた実話や事例を盛り込んだ全部で30の原則が紹介されています。

 

30の原則を実践すれば、人との関わり方やコミュニケーションのスキルは大きく向上し、相手に影響を与えたり好ましい人間関係を構築できるでしょう。

 

『人を動かす』の原則を実践することで私達が得られるのは、以下に挙げたようなものです。

  • 相手の欲求や関心を見抜く力
  • 相手の心に響く話し方や聞き方
  • 相手の自尊心や重要感を満たし、信頼関係を築く方法
  • 相手の行動変容を促すアプローチ
  • 人を動かすための本質を

上記に挙げた効果や恩恵は、ビジネスシーン・プライベートを問わず、あらゆる人間関係で得られるでしょう。

 

とくに人を動かすことで成果を上げる仕事、マネジメントや営業・販売などの仕事においては、大きな自信と影響力を発揮できるようになるはずです

 

要約を読むだけでも大きく変わりますので、ぜひ以下の要約を読んでみてください。

『人を動かす』3大原則(3大要素)

書籍『人を動かす』は、「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」の4つのパートから構成されています。

 

4パートの最も根幹となるのが最初の章である「人を動かす3原則」です。「人を動かす3原則」は、以降に書かれている「人を説得する」「人を変える」といった原則群の基礎となるものであり、人を動かす3大原則や3大要素とも呼ばれています。

盗人にも五分の理を認める

「盗人にも五分の理を認める」とは、相手が間違っていると思っても、相手の意見や行動に対して、いきなり批判や非難をしないほうがいいという原則です。

 

人は誰でも、「自分の言動が正しい。少なくとも、完全な誤りではないし、それなりの理由や事情があってしているのだ」と考えています。たとえ、盗人や凶悪犯のような人であっても、彼ら自身は「自分が間違っている」とは思っていないものなのです。

 

従って、たとえ指摘が正しいとしても、いきなり相手を批判したり非難したりすれば、相手は反発したり心を閉ざしたりしてしまうでしょう。

 

相手に協力してもらうためには、相手との友好関係が大切です。「論理」や「正しさ」で相手を殴りつけるようなことをしても、相手が協力してくれることはありません。

 

まずは相手の気持ちや立場を理解し、尊重することが大切です。相手の言い分を聞き、共感したり感謝したりすることで友好関係が作られ、相手もあなたの話を聞いてくれるようになります。
 
HRドクターでは、「盗人にも五分の理を認める」の詳細を以下の記事で解説しています。ご興味あればご覧ください。

重要感を持たせる

「重要感を持たせる」とは、相手に「自分の存在が大切である」と感じさせることです。

 

人は「自分を必要として欲しい」「周囲から尊重されたい」「自分は価値ある存在だと認めて欲しい」という根源的な、そして非常に強い欲求を持っています。

 

「重要感を持たせる」とは、相手の重要感に関する欲求を満たすということです。相手の重要感を満たしてあげることができたら、相手にとって、あなたは信頼すべき人であり、欠かせない人になるでしょう。

 

相手の優れた点や努力、成果を率直に褒め、相手の意見や感情に寄り添ったりすることで、相手の自己重要感を満たすことができます。

 

HRドクターでは、「重要感を持たせる」の具体的なやり方に興味があれば、以下をご覧ください。

 

人の立場に身を置く

「人の立場に身を置く」とは、人を動かすうえで「相手の欲求や利益に焦点を当てる」ことの重要性を示しています。

 

人が最も関心があるのは「自分自身」のことです。人は、他人のことよりも自分の欲求を満たすこと、得すること、利益になることを求めています。

 

だからこそ、相手に協力してもらうためには、「自分の要求」ではなく「相手の欲求」に焦点を当てることが大切です。

 

相手が何を欲しているのか考え、それを実現する方法を教えたり提案したりする、つまり「私の依頼に協力してもらうと欲しいものが手に入る」と伝えれば、相手の行動に大きな影響を与えることができるでしょう。

 

カーネギーの逸話を基に「相手の求めるものが何なのかを知るためのステップ」にご興味があれば、以下の記事をご覧ください。

人に好かれる6原則

次に、「人に好かれる6原則」について各原則を要約します。「人に好かれる6原則」では、良好な人間関係をつくるための基本となる6つの原則が書かれています。相手に信頼される存在になれれば、相手に影響を与えることも容易になります。

 

誠実な関心を寄せる

人に好かれるためには、相手の話に耳を傾け、相手の興味や趣味や悩みなどに誠実な関心を寄せることが重要です。

 

先ほども紹介した通り、人が最も関心があるのは「自分」のことです。だからこそ、人は自分に関心を持ってくれる人に好感を抱き、逆に、自分に関心を持ってくれない人には冷淡な態度を取りがちです。

 

例えば、相手の話に積極的に質問したり、共感や感想を述べたりすることで、相手に対する敬意や尊重を示すことができます。なお、表面的なお世辞ではなく、本気で相手に、また相手の関心あることに興味を持つことが大切です。

 

笑顔を忘れない

言葉の通り、笑顔で接することの大切さを示した原則です。

 

人は笑顔の人を前にすると、心のハードルが下がり、好感を抱きやすくなります。逆に、無表情や不機嫌な人には警戒心を抱き、近寄りがたさを感じます。

 

 笑顔は、人間の感情や態度を表現する最も強力なツールであり、相手の気持ちや考えにポジティブな影響を与えることができます

 

相手の話や冗談には笑顔で反応し、相手の成功や喜びを笑顔で祝福してあげましょう。笑顔でいることで、自分自身も気持ちが明るくなり、ストレスを軽減することができます。

 

名前を覚える

人に好かれるためには、相手の名前を覚えて名前で呼びかけることが大切です。

 

名前は、私たちが生まれて以来、繰り返し呼びかけられてきたものであり、アイデンティティの一部といえるものです。

 

だからこそ、自分の名前を呼ばれると嬉しく感じますし、逆に、自分の名前を忘れられたり間違えられたりすると「自分が軽んじられた」ように思い、不快感や寂しさが生じます。

 

相手に会ったときや別れるときに名前で挨拶する、あるいは質問や提案するときに相手の名前で呼びかけるようにしましょう。相手に、あなたの存在を好印象とともに残すことができるでしょう。

 

聞き手に回る

「聞き手にまわる」という原則は、相手に自分のことを話す機会を与えることで、相手の自己重要感が満たされ、相手に好感を抱いてもらえるということです。

 

人は自分の話を聞いてくれる人に信頼感や親近感を抱きます。相手が話したいことや得意なことに関心を持ち、それを引き出すような質問をすることが大切です。

 

例えば、相手が「海外旅行が好き」とわかったら、「どんな国に行ったことがありますか?」「どんな旅行が好きですか?」「一番印象的だった場所はどこでしたか?」というように、相手がもっと喋りたくなるような質問をしてみると良いでしょう。

 

関心のありかを見抜く

相手の話を引き出すうえでも、相手がどのような価値観や関心を持っているかを理解することが大切です。人は自分の興味や関心のある話題に対して、積極的に話すものです。

 

相手の興味や関心を見抜くには、例えば以下の方法があります。

 

  • 相手の話からヒントを探す
  • 相手に質問して探る
  • 相手の表情や態度から探る
  • 相手の服装や持ち物から探る
  • 相手のSNSやブログから探る

 

自分が相談や依頼したいテーマの周辺、関連領域における相手の関心を見抜き、話題を振ることが出来れば、相手から好意を得られるだけでなく、自分の提案や依頼の参考となる情報をたくさん得ることもできるでしょう。

 

心からほめる

相手の良いところを見つけ、ほめることの大切さを表した原則です。

 

人は自分のことをほめてくれる人に感謝や信頼を抱き、ほめられることで自信ややる気が湧いてくるものです。

 

カーネギーは、相手の心に届く確かな方法は、相手の重要性を認めること、そして、重要性を心から認めていると相手に感じさせることだと話しています。

 

相手の優れた点や貴重な点を見つけ、心からの賛辞を贈ることが重要です。ほめるときは、本心から感じたことを口にし、嘘やお世辞は慎むよう注意しましょう。

人を説得する12原則

次に相手を説得するうえで役立つ具体的な方法が書かれている「人を説得する12原則」の内容を要約します。

 

議論を避ける

「議論を避ける」とは、相手と意見が異なるとき、相手を論破しても、相手の考えが変わることは期待できないので避けるべきということです。

 

カーネギーは、ベンジャミン・フランクリンの言葉を引用してこの原則を説明しています。

 

「議論したり反駁したりしているうちには、相手に勝つようなこともあるだろう。しかし、それはむなしい勝利だ ── 相手の好意は絶対に勝ち得られないのだから」

 

相手を論破しても、得てして相手の反発や敵意を招くだけの結果に終わってしまうになり、相手を動かす結果にはつながらないのです。相手を動かすためには、小さな勝ちは譲ってしまったほうが上手くいくことも多いものです。

 

誤りを指摘しない

人は自分の間違いを認めたくないものです。従って、相手の誤りを指摘すると、相手は自分を守ろうとして、却って自分の考えに固執するようになりますし、自分の正しさを証明しようとして反論するものです。例えば、「やむを得なかった」「こういう事情があるのだ」「事情も知らないくせに…」といった形です。

 

相手の感情的な反発を招いてしまえば、相手を心から動かすことはできません。たとえば、理屈で論破したところで、相手は言い訳して行動しないものです。

 

相手に反発されないように、注意や指摘するにはどうすればいいのでしょうか。ポイントはあなたが指摘するのではなく、相手に自分で気付かせること、もしくは自分で気付いたと思わせることです。

 

“教える”のではなく、“気付かせる”アプローチこそが有効です。

 

誤りを認める

「誤りを認める」という原則は、自分が間違っていることに気づいたら、誤りを認め、すぐ素直に謝ることの重要性を示しています。

 

どんな人も、多かれ少なかれ、間違いを犯すものです。そして、間違いをしてしまった時に、自分の間違いを隠したり、言い訳したりすれば、相手は不信や怒りを募らせるでしょう。

 

自己重要感と似た概念ですが、人は「自分の方が相手よりも優秀である」という自己有用感を欲しています。先に自分の落ち度を認めて素直に謝罪することで、相手の自己有用感は満たされ、それを維持するために「許す」という選択肢を選ぶ確率が高まります。

 

自ら誤りを認めることで、相手の許しを得やすくなり、その先での対応や打開策も相手に承認してもらいやすくなるのです。

 

穏やかに話す

意識して穏やかで物腰柔らかな話し方・態度を取ることが大切です。 

 

人は声のトーンや表情の厳しさ、態度の強さなどによって、相手の感情や態度を判断します。

 

もし、強い口調や、高圧的な態度で接すれば、相手は自分への敵意や威圧感だと解釈して、あなたに対して警戒態勢をとるでしょう。それでは、コミュニケーションはうまく進みません。

 

穏やかに話すことで、相手はあなたを「友好的な人物」であると捉え、好意的な印象を持ち、あなたに対して心を開いてくれるでしょう。

 

イエスと答えられる問題を選ぶ

相手からポジティブな返事を引き出したいときは、相手が同意できる話題から話を始める、できるだけ相手が「イエス」と答えやすい質問を選ぶことが有効です。

 

会話の冒頭から連続して「イエス」と答えてもらうことで、相手に、「この人は自分の側にいる、自分の仲間である」という印象を与えることができます。

 

例えば、営業で、顧客へのヒアリングを終えて商品・サービスを提案する場面を想像してみてください。

 

「今まで伺ったお話を整理していいですか?」「御社の課題はこれでしたね?」「解決する必要性を感じているということでしたね?」「解決策を選ぶうえでは、この要素で考えたいという話でしたよね?」「そうしたら、これらをクリアしているサービスがあれば聞かれたいですか?」といった流れで話していくと、相手は「イエス」を繰り返してくれるでしょう。

 

そのうえでサービスを提案する流れになれば、相手はより真剣に聞いてくれますし、商品への評価も前向きなコメントを得られる確率は高まるでしょう。

 

このように、何かについて相手の同意を得たいのであれば「イエス」と答えられる問題から入っていくことが大事です。

 

しゃべらせる

人を説得するうえでは、相手をしゃべらせ、相手の話を聞くことが重要です。

 

カーネギーは「多くの人が“相手の考えを変えよう”とたくさん話しすぎる」と指摘しています。

 

自分が話しても、相手の真意を聞き出すことはできません。また、相手は「意見を押し付けられている」と感じて反発心を感じ、抵抗します。

 

誰かを説得したいなら、自分が話すよりも相手の話を聞くことが遥かに大切です。相手の話を聞くことで、相手に「自分に関心を持ってくれている」という印象を与え、信頼感や好意を抱いてもらえるでしょう。

 

また、相手の話を聞くことで、相手の興味・関心や状況も見えてきます。相手に共感したり、質問したりする中で、自分の考えを提示したりするタイミングや方法も見えてくるでしょう。

 

「しゃべらせる」ことこそが、じつは人を説得するうえで有効な方法なのです。

 

思いつかせる

人は、他人から言われたことよりも、自分自身で思いついた考えやアイデアを大切にするものです。

 

だからこそ、誰かを説得したい時には、相手に思いつかせることが有効です。思いつかせるアプローチを取ることで、相手に「自ら考えた」「自分で決めた」感覚を提供し、相手の意思決定や行動を後押しすることが出来ます。「自分で考えて決めた!」と感じれば、実行するうえでも主体性を発揮し、優先順位を高めてくれるでしょう。

 

たとえば、営業であれば、商談の良さを一方的に語るより、「もし、この商品を選ぶとしたら、何が理由になりますか?」という質問をして、相手に自ら商品のメリットを考え、選ぶ理由を考えてもらうといったアプローチです。

人の身になる

「人の身になる」ことは説得する上で大事なポイントです。

 

人を説得するためには、相手にこちらの考えや提案に納得してもらう必要があります。しかし、自分の意見を押し付けたり、論理的に説明したりするだけでは、相手はなかなか納得してくれません。

 

相手の視点から物事を見て、自分が相手の立場だったらどう思うか、どう感じるか、どうしたいかを考えることで、相手を動かすことができるでしょう。

  

人は自分の感情や欲求に基づいて行動します。相手の身になって考え、相手の欲求に訴えることで説得することができるのです。

 

同情を寄せる

「同情を寄せる」は、相手の立場に立って考え、相手の気持ちになって共感することの大切さを示しています。同情を寄せることで、相手は自分自身が理解されていると実感し、あなたのことを信頼するでしょう。

 

ただし、同情を寄せるときは、誠実に行うことが求められます。口先だけで、「分かります、分かります!」などと相槌を打っても信用はされません。

相手の感情に「同感」できないときは、「共感」しましょう。同感と共感をうまく使い分けることが「同情を寄せる」を実行するポイントです(同感は「あなたと同じように思います」、共感は「あなたはそう思ったのですね」という意味です)。

 

美しい心情に呼びかける

相手の高潔な感情や理想に訴えることが、時に相手を説得することにつながります。

 

人は心のどこかで「自分は高潔な人間である」「道徳的で倫理を大切にする存在だ」と思いたがっています。だからこそ、相手の美しい心に訴えかけることで説得ができる可能性があるのです。

 

例えば、誰かに寄付を依頼するときには、「寄付することで社会的に困窮している人が救われる。寄付してくれる人は弱者の困窮を見逃さない高潔な人物なのだ」と伝えることが有効かもしれません。

演出を考える

誰かを説得する上では、演出も大事です。自分の考えや提案を単に言葉で伝えただけでは、なかなか相手は動いてくれません。しかし、演出を考えることで結果が変わるかもしれません。

 

ただ言葉で説明するのではなく、具体的な事例やエピソード、比喩やイメージなどを用いて、相手の感情や想像力に訴えることで、結果が納得してくれることはよくあることです。

 

大勢の前でプレゼンテーションをするのであれば、スライドやグラフィックなどを使って、視覚的に分かりやすく説明したり、話の進行に合わせて効果的な演出を考えたりすることで、聞き手の興味を引きつけることができるでしょう。

 

人は感情的な動物であり、理屈だけで動くわけではありません。相手にとって興味深く、印象的な演出を考えて工夫してみましょう。

 

対抗意識を刺激する

人は誰でも「他人より優れていたい!」「自分が1番でありたい!」といった競争心を心の中に持っているものです。こうした競争心に働きかけることも、人を説得するうえで有効です。

 

とりわけ、競争心が強い相手には挑戦や競争の機会を与えて対抗意識を刺激すると、やる気やパフォーマンスを向上させることができるでしょう。

 

たとえば、「これは正直難しい仕事だけど、うちのメンバーの中でもあなたのスキルと専門性があれば対応できると思うんだ」と言われたら、部下は「自分の能力を認められている」と感じると同時に、「何とかやってやろう」という気持ちが芽生え、高いモチベーションで仕事に取り掛かるかもしれません。

 

競争心が強い相手に対しては、対抗意識を刺激すると大きな効果を発揮するでしょう。

人を変える9原則

『人を動かす』最後の章となるのが、「人を変える9原則」です。人を変える9原則は、これまでの3つの章も踏まえて、他者を変えるための原則です。

 

まずほめる

相手に何か指摘したり改善したりして欲しい時は、まずは相手の良いところや成果をほめることが大切です。

 

最初にほめて相手の自尊心を満たすことで、聞く心の余裕が相手に生まれます

 

例えば、部下が仕事でミスをしたときにも、「プロジェクトは君のおかげで大きく進んだよ。君は素晴らしい能力を持っている」とほめた後に、「そして、この部分はもう少し注意してほしい。次回からはこうしてみよう」と伝えると、部下は感謝したり納得したりして、改善しようという気持ちになってくれるでしょう。

 

指摘や苦言を伝える前に、良い所を伝えるようにしましょう。

 

遠回しに注意を与える

遠回しに注意を与えることは、相手に指摘を受け入れてもらう上で大きな効果を発揮します。

 

相手の自尊心や重要感を傷つけるようなアプローチをしてしまうと、相手は反発したり、意固地になったりしてしまいます。遠回しな表現に工夫することで、良いところを認めた上で、改善の余地があることをそれとなく伝えることができます。

 

例えば、部下のプレゼン原稿を添削する場合であれば、「プロジェクトの内容を網羅した正確な内容だね!そして、今回の参加者を考えると、少し専門用語が多い、また情報量が多すぎるようにも感じるかな。今回の参加者に一番伝えたいことは何だろう?」といった形で遠回しに注意を与えるとよいでしょう。

 

自分の過ちを話す

自分の過ちを話すことで、相手にとってあなたは親しみやすい存在になります。そして、相手のプライドを傷つけずにアドバイスや指摘を受け入れてもらいやすくなります。

 

相手は「この人も同じだったんだ」と思って、共感したり安心したりするかもしれません。そして、「この人の言うことなら聞いてもいいかもしれない」とアドバイスにも耳を傾けやすくなるでしょう。

 

カーネギーは、何かを指摘するときには「自分も同じような失敗をしたことがあるのだ」といった失敗談を織り込むやり方を強く勧めています。

 

命令をしない

人を動かすときには、命令をしないことも大事です。

 

人は一方的に指示をされたり、命令されたりすることを嫌うものです。一方的に命令してしまうと、相手は反発したり、形だけ従ったりします。

 

相手に何かをさせたい、主体性を引き出したいときは、命令するのではなく、質問を投げかけて自分で気づかせることが有効です。

 

さらに、相手に質問する形で「あなたがやることは何?」や「あなたはどう思う?」といった形で、相手に考えさせたり選択させたりするとよいでしょう。

 

考えて選択することで、相手に「自分で決めたことだ」という感覚が生まれ、主体性や責任感が生じます。

 

顔をつぶさない

相手を変えたいとき、相手の顔をつぶすようなことは絶対にNGです。

 

面子を傷つけるということは、人間にとって極めて大切な自己重要感を傷つけてしまう行為です。 相手はあなたのことを恨むかもしれません。

 

相手の間違いや欠点を指摘するときは、人前で叱責したり、上から目線にならないよう十分配慮したりする必要があります。

 

場所やタイミングを考えたり、遠回しに注意を与えたり、自分の失敗談を話したりすることで、相手の面目を保つことも大切です。場合によっては、外部環境の変化のせいにしてしまうのもひとつです。

 

繰り返しになりますが、人間は感情の生き物です。相手の顔を立てて、相手が指摘を受け入れやすくすることが大切です。

 

わずかなことでも褒める

人を成長させたり、改善させたりしたいのであれば、小さな進歩を見逃さずに称賛することが大切です。

 

人は誰でも、「自分の行動や能力に対して自信を持ちたい」という欲求があります。だからこそ、目標に向かって努力している途中でほめられると、相手は自分の能力や価値を認められたと感じ、「さらに良くなろう」という気持ちが強まります。

 

ほめることを習慣にし、相手の良い点を探す目を持ち、素直に称賛することを習慣にしましょう。

期待をかける

人を成長させたいのであれば、期待をかけることが大切です。

 

期待を伝えることは、相手の自己イメージを高め、そして、高まった自己イメージに合わせて行動しようとする心理を生み出します。期待をかけることで、相手は評価に応えよう、期待に見合う存在になろうと努力してくれます。期待をかけることで、相手の自信や意欲を引き出すことができるのです。

 

場合によっては、今の相手の実力以上の評価、理想の姿を伝えることで、相手の自信を引き出すことも出来るでしょう。

 

ただし、「期待をかける」の原則は、人を伸ばすために強力な効果を持ったテクニックですが、注意点もあります。嘘やお世辞ではなく、本当に相手の可能性や成長点を見つけて伝える必要があります。

 

また、期待をかけすぎても良くありません。相手のタイプによっては過大なプレッシャーやストレスを与えてしまう可能性があります。期待をかける際は、相手の現状や目標に応じて適切なレベルで行うことが大切です。

 

激励する

「激励する」とは、相手の才能や可能性を信じて、改善点をわかりやすく伝えたり、簡単にできると思わせたりすることです。

 

「激励する」の原則は、新しく何かを始めようとしていたり、自信を持てずにいたりする相手に対して、とくに有効です。

 

例えば、英語を勉強しようとしている人に対して、「あなたは語学の才能があると思うよ。発音も上手だし、文法の理解も早そうだよね。」と言ってあげると、相手は、「自分はやれば上手く行くんじゃないか」という気持ちになります。

 

「激励する」ことによって、人は自分が認められたと感じ、気持ちが高まり、自信を持てるようになります。

 

喜んで協力させる

「喜んで協力させる」とは、人を動かす30の原則の締めくくりとなる原則です。

 

相手を動かしたい時には、自分の意見や提案を押し付けるのではなく、相手が自分から納得して行動するように誘導することが大切です。また、相手が欲しいと思うものを行動の先に掲げることで、相手に喜んで協力してもらうことが有効です。

 

相手が自分から「協力したい」と思ってもらえるように、相手の気持ちを理解し、相手にとってメリットがあるような提案をしましょう。

 

例えば、子供に勉強をさせたいときには、「勉強すると将来何ができるようになるかな?」と問いかけたり、「勉強するとお父さんやお母さんが喜ぶよ」と言ったりすることで、子供の好奇心や承認欲求を刺激して、勉強する気持ちを引き出せるかもしれません。

まとめ

記事では、デール・カーネギーの著書『人を動かす』の要約として、人を動かす3大要素と、30の原則を紹介しました。

 

 

紹介した“人を動かす”原則を知って学び、身に付け、行動することによって、人との関わり方やコミュニケーションスキルは劇的に変化します。

 

ぜひ『人を動かす』の本を読み、そして、日々の言動や周囲との関わり方の中に反映いただくことをお勧めします。

 

なお、『人を動かす』の内容をしっかりと身に付けたい方には、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、デール・カーネギーのトレーニングの権利者である米国デール・カーネギー・アソシエーションと連携して、日本で公式に『人を動かす』デール・カーネギー・トレーニングを提供しています。

 

「管理職のマネジメント力を高めたい」「営業職の営業力をあげたい」とお考えの人は、以下のデールカーネギー研修、セミナーの情報を参照してください。

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著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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