「名前を覚える」ことの大切さと効果
初めに、原則「名前を覚える」の詳細を解説します。
名前を覚えることは、なぜ重要なのか?
なぜ、人にとって自分の名前が大切なのでしょうか?
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
『人を動かす』の引用を出すまでもなく、私たちは自分の名前が間違って呼ばれたりすれば、聞き流すことはできず、どうにかして訂正したくなります(名字や名前が難しい読み方の方は間違って呼ばれることに慣れており不快に思うことはないかもしれませんが、訂正したくなる、正しく読んで欲しい気持ちはあると思います)。
私たちにとって、名前は自分の象徴であり、これまでの人生で数多く呼ばれてきた親しみある存在です。だからこそ、殆どの人は自分の名前に深い愛着や思い入れを感じているものです。
コミュニケーションをする相手にとっても、名前は同様に大切なものです。だからこそ、相手の名前を覚えて、名前で呼びかけることが大切なのです。
『人を動かす』では相手に好かれ、影響力を発揮できるような人間関係を作るうえで、「相手に関心を寄せる」ことの大切さが繰り返し述べられています。相手の名前を覚えて呼びかけることは、相手に「あなたに関心があります」と伝えることでもあります。
相手の名前を大切にする大きなパワーを紹介するエピソード
カーネギーは、『人を動かす』の中で、相手の名前を適切に使うことで、大きな結果を生み出した人物である鉄鋼王アンドリュー・カーネギー(デール・カーネギーとは別の人物です)のエピソードを紹介しています。
“まだスコットランドにいた少年時代の話だが、ある日、彼は、ウサギをつかまえた。ところが、そのウサギは腹に子を持っていて、間もなくたくさんの子ウサギが小屋にいっぱいになった。すると、餌が足りない。だが、彼には素晴らしい考えがあった。近所の子供たちに、ウサギの餌になる草をたくさん取ってきたら、その子の名を、子ウサギにつけると言ったのである。この計画は見事に当たった。カーネギーはその時のことを決して忘れなかった。
後年、この心理を事業に応用して、彼は巨万の富をなしたのだ。こういう話がある──彼はペンシルバニア鉄道会社にレールを売り込もうとしていた。当時、エドガー・トムソンという人が、その鉄道会社の社長だった。そこで、カーネギーは、ピッツバーグに巨大な製鉄工場を建て、それを〝エドガー・トムソン製鋼所〟と命名した。”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
上記のエピソードからも分かるように、「自分の名前を認めてもらいたい」というのは、私たちに共通する本音ともいえるでしょう。
現代でも「名を遺す」ことは成功を収めた人にとって非常に名誉なことであり、名を遺すことを渇望する人もいます。上記のように命名権を提供できるようなケースはそうないかもしれませんが、相手の名前を大切にすることが持つ大きなパワーを示すエピソードです。
名前を覚えることは、すなわち仕事の基礎である
先ほどは合併交渉における命名権のエピソードを基に、相手の名前を尊重し活用することが持つ力を紹介しました。
こういうと「言っていることは分かるけど、著名な経営者がここぞ!という時に使うから意味があるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、相手の名前の持つ効果は、私達のビジネスシーンでも重要な存在になります。カーネギーは、『人を動かす』の中で、以下のような事例も紹介しています。
“冷たい会社を温かくするには、一つの方法がある。人の名前を覚えることだ。重役たちの中には名前が覚えられないという人もいるが、つまりは重要な仕事が覚えられない、すなわち仕事の基礎ができていないことを告白しているのだ。
TWA航空のスチュワーデス、キャレン・カーシュは、乗客の名前を素早く覚え、その名で乗客に呼びかけることにしていた。その結果、おびただしい賛辞が直接本人宛て、また、航空会社宛てに寄せられた。次のような手紙をくれた乗客もある。『私はこのところしばらくTWAに乗りませんでしたが、これからはもっぱらTWAに乗ることにします。あなたの飛行機に乗りあわせて、あなたの会社が、きめ細かく客に気を配る会社になったと痛感させられたからです。実に素晴らしいことです』”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
カーネギーは、「人の名前を覚えられないのは、すなわち仕事の基礎ができていないことを告白しているようなものである」とまで言っています。
厳しい言葉に感じますが、それだけ相手の名前を覚えることは大切なことであり、自分が動かしたい相手・メンバーやパートナーの名前を覚えられないということは、相手への無関心、交渉力やリーダーシップスキルを発揮できなくなることにつながるのです。







