「相手の関心を見抜く」の詳細と実践
本記事のテーマである「関心のありかを見抜く」の原則を詳しく解説します。
相手の関心のありかを見抜くためには
相手の心を捉え、距離を縮める一番の近道は、相手が最も関心を持っている事柄を把握して話題にすることです。
では、相手の関心のありかを見抜くためにはどうすればよいでしょうか。
カーネギーは本書の中で、“相手の関心事を捉える達人”と評された、セオドア・ルーズヴェルトのエピソードを紹介しています。
アメリカ大統領であったルーズヴェルトは、相手が誰であろうと、その人の関心を捉えた話題を豊富に持ち合わせていたといいます。なぜルーズヴェルトは、そのような芸当ができたのでしょうか?
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
私たちにしても、自分の関心がある話題、よく知っている分野であれば、話を続けることはそれほど難しくはないかもしれません。しかし、もし相手の関心事が、自分のよく知らない事柄の場合、盛り上がった会話をすることが難しいと思うのではないでしょうか。このことは、博学で有名なルーズヴェルトであっても例外ではありません。
だからこそ、上記で引用したように、ルーズヴェルトは事前に相手の関心事を下調べして準備することに余念がなかったのです。
同様のケースは、ビジネスシーンでも身近に見ることができるでしょう。例えば、高い成果を上げるインサイドセールスやフィールドセールスは、提案先の企業情報や広報ニュース、あるいは、商談相手のプロフィールを事前に確認したり、SNSなどをチェックしたりして商談の望むものです。
ルーズヴェルトの「前の晩に遅くまでかかかって研究する」という行為は、ビジネスでいえば「事前の情報収集」に他なりません。相手のことについてしっかりと調べて、相手が関心をありそうなテーマを考えて準備する手間を惜しまないことが大切だということです。
「私はあなたに関心がある」ということを示す
相手の関心事を話題にするに当たって、もう一つ重要なポイントがあります。それは、会話を通じて「私はあなたに関心があります」と思ってもらうということです。
カーネギーは『人を動かす』の中でボーイ・スカウトの仕事をしているエドワード・チャリフという人物のエピソードを基に解説しています。
社長室に入ると、まず私はその小切手を見せてくれと頼みました。百万ドルの小切手! そういう多額の小切手を実際に見た話を、スカウトの子供たちに聞かせてやりたいのだと、私は言いました。社長は喜んでその小切手を見せてくれました。私は感心して、その小切手を振り出したいきさつを詳しく聞かせてもらいたいと頼みました。
読者もお気づきのことと思うが、チャリフ氏は、話のはじめにボーイ・スカウトやヨーロッパの大会、あるいは彼の希望などについては、いっさい触れていない。相手が関心を持っていることについて話している。その結果は、次のようになった──
そのうちに、相手の社長は『ところで、あなたのご用件は、何でしたか』と訪ねました。そこで、私は用件を切り出しました。”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
チャリフ氏は、商談相手の社長が、自分が支払った高額の小切手に誇りを持っていることを知り、その小切手の話題を振ります。上記のエピソードにもある通り、チャリフ氏は、自分の要件であるボーイ・スカウトや大会への参加費について一切触れず、先方の関心事だけにフォーカスしています。
チャリフ氏の事例では、最終的に社長は要望を引き受けてくれただけでなく、以降も様々な便宜を図ってくれるなど想像以上の大成功に終わったということでした。もしチャリフ氏が、最初に「相手の関心事」に触れず、自分の関心事=寄付をしてほしいという話から始めていたら、きっと結果はまったく違うものになったでしょう。
たとえば、ビジネスでの商談や交渉をするとき、私たちは相手の関心事を話題にして、相手のことを知るためにヒアリングしているつもりでも、本音では「さっさと商品・サービスのプレゼンに入って買ってもらいたい!」と思ってしまっているケースが少なからずあります。しかし、自分の要望・自分の関心事を念頭に置いて臨めば、無意識のうちにこちらの意図や本音が伝わってしまい、相手に簡単に見透かされてしまうでしょう。
しっかりとその場に集中して、自分の関心ではなく、相手自身・相手の関心事に集中しながら「私はあなたに関心がある」ということを示すことが大切です。
相手の関心を見抜き、話題にすることは双方の利益になる
ルーズヴェルトのエピソードでお伝えしたように、相手の関心を見抜いて話題にすることは、想像以上の大きな成果につながる可能性を秘めています。しかし、実際のビジネスや人間関係では、手間をかけて相手の情報を調べ、話題に出したとしても、じつは相手の関心事と違っていたり、仮説が外れたりして、期待するような結果に結びつかないことも多々あります。
このような経験をしていると、「そこまでして相手の関心事に寄り添おうとする意味は、本当にあるのだろうか?」と疑問が湧いてくるかもしれません。この疑問に対して、カーネギーは『人を動かす』の中で、以下のような考え方を示しています。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
自分の話に関心をもって聞いてもらえたことで、相手は心地よさや自己重要感を得られるというのは、既にお伝えした通りです。同時に自分にとっても、相手の関心事を見抜いて話題を振ることで、自分と違う人生を歩んできた相手から新しい知見を得るという成果が生まれます。
また、今すぐの成果につながらないとしても、相手との好ましい人間関係構築には、確実にプラスの影響をもたらすことでしょう。相手の関心を見抜き寄り添うことは、短期的な成果につながらないとしても、中長期的に自分にとっても必ず利益があることです。







