本章では、「激励する」の詳細と、実際の人間関係の中で活用するためのポイントを詳しく解説します。
「激励する」の原則を活用できる場面とは?
「人を変える9原則」の8つ目である、「激励する」の原則ですが、実際にどんな場面で活用できるでしょうか。
上司から部下・メンバーに指導やフィードバックする場面などは活用の典型例です。
相手にやる気を起こさせて、奮起させる、相手の中に行動するモチベーションが湧いてくるようにする。
人を動機づける、勇気づける場面でこそ、「激励する」の原則は真価を発揮します。
「人の扱いがうまい」「やる気を起こさせるのがうまい」と評判のリーダーやマネージャーは、やり方や伝え方こそ様々ですが、ほぼ例外なく何かしらの形で、激励のメッセージを伝えているものです。
職場に人材育成で評判のリーダーやマネージャーがいれば、そういった人が部下・メンバーとどのように関わっているか、観察したり話を聞きにいったりすると良いでしょう。
なぜ激励することが、人材育成に大切なのか?
なぜ激励の声掛けが人材育成に効果を発揮するのでしょうか。理由を端的に言うと、「人の才能や能力が開花するきっかけは、往々にして誰かの激励にある」からです。
プロスポーツ選手やオリンピックの金メダリスト、著名な研究結果を残した研究者などの話を聞くと、子供の頃に恩師や憧れの人からかけられた言葉がきっかけで、その道を歩んだというケースが数多くあります。
記事をご覧になっている方の中にも、「学校の先生やお世話になった上司の言葉がキャリアを選択するきっかけになった」という人もいるかもしれません。
有名な例としては、数々の発明を残したトーマス・エジソンがいます。
発明王として名の知られるエジソンですが、幼少期のエジソンは、学校の勉強についていけず、小学校を途中で退学するような子供でした。
しかし、母親だけは、あり余る好奇心を持ったエジソンのことを信じてあきらめずに褒め続けてくれました。
エジソンの母親は、「なんでもやってみなければわからないのだから」と激励の言葉をかけ続けて、エジソンの好きな科学の実験をとことんやらせてあげたそうです。
こうしたかけがえのない母の褒め言葉のおかげで、エジソンは自分の可能性を信じて発明の道を進み、発明王として歴史に名を残すことができたのです。
このように励ましの言葉は、人の人生を左右する大きな力があります。
職場の人材育成においても同様です。
成果をなかなか出せずにいる社員がいたら、「何とかして本人に成果を出してほしい」「成果を出せるように成長してほしい」とうのは人材育成に関わる方に共通する願いでしょう。
私たちの才能や能力は、何がきっかけで開花するのか誰にもわかりません。
加えて、私たちの強みや才能というものは、得てして当たり前過ぎて、そのことに自分自身では気づかないことが少なくありません。
だからこそ、普段の行動や振る舞いに対して、周囲の人から激励や誉め言葉を口にして伝えることが、相手の可能性や才能を開花させるうえでも大きな役割を持っているのです。
「激励する」原則を実践するポイント
カーネギーの『人を動かす』原則はいずれも、適切なやり方で取り組めば、誰でも身に付けることができるものです。
カーネギーの原則を自分のものにするためには、普段の人間関係、これまでのコミュニケーションを見直し、さらに一歩踏み込んだ関わり方をトライアンドエラーしながら実践することが大切です。
人は一人ひとり異なる価値観や考え方を持っています。まだ実践しなれない時には、いつもと違うアプローチが裏目に出ることもあるでしょうし、そのことを不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、「激励する」の原則の実践、すなわち人を励ますという事に関して言えば、効果が出ないことはあっても、裏目に出ることはほぼないでしょう。
ご自身の事を思い出してもらうと分かると思いますが、誰かから本気で励ましの言葉をかけられて、嫌な気持になったことがあるという経験がある人は殆どいないはずです。
「激励する」行為は、人間関係に何のリスクもマイナスも基本的には生まないのです。
それでいて、相手の才能を開花させる、モチベーションを上げる効果も期待できるのですから、むしろ機会を見つけて(機会がなくても)積極的に激励の言葉をかけないともったいない、と言えるくらいです。
このように、何のコストも不要でマイナスにもならないのが「激励する」という行為です。
もし、私たちの実践を阻むものがあるとしたら、今まで関わり方でいきなり励ましの言葉をかけることの「いきなり感」、あるいは職場の中で自分ひとりの激励が悪目立ちする「気まずさ」にあるかもしれません。
こうした自分自身の中にある「気恥ずかしさ」を克服することが、「激励する」原則を実践するポイントともいえます。
最初のうちは抵抗感や気まずさを感じても、気にせず実践することを習慣にしていくことが大切です。激励された相手の表情を見ているうちに、積極的に激励することが習慣になっていくことでしょう。
自分自身が起点となって、職場全体で激励する声掛けを当たり前の風土にしていくぐらいの気構えをもつと良いかもしれません。
職場全体に激励しあう風土ができれば、働くメンバーのモチベーションは上がり、新しい強みや才能に気づく機会が生まれます。
これほど投資対効果の高い取り組みは中々ありません。
なお、「激励する」がマイナスの効果を生む数少ないケースが、普段はまったく人をほめないのに、何かを引き受けさせよう、やらせようという時にだけ「君なら必ずできるよ」「ぜひ君にこれをやり切ってもらって次のステージに進んで欲しいんだ」と、“心にもない激励を、相手を動かすためにやる” 場合です。
この激励だけは、相手に感銘を与えないどころか、簡単に見透かされ、反発心を生むものとなってしまうでしょう。
こんなことにならないためにも、普段から相手を激励する、本気で期待する、期待を伝える、といったことを習慣にしていきましょう!