働き方改革、コロナ禍、リモートワークなどによって働き方そのものが変化してきている昨今。働き方が大きく変化する以前から働いている経営層や管理職と、働き方が変化して以降入社してきた、Z世代や若手層とでは価値観や考え方が大きく異なります。
結果として、若者を含めた組織マネジメントに苦労されるNO.2ポジションの方が非常に増えています。
NO.2は、今の若者をどのようにマネジメントしていけばエンゲージメントを高めることができるのか。また、どのような「話し方」や「伝え方」をすれば、若者が納得感を持って行動してくれるのか。
本レポートではジェイック常務取締役の近藤より、NO.2に求められるスキルの変化、NO.2がリスキリングすべきスキル、そして、具体的にどのような伝え方をすると納得感を持って行動してもらえるのかを、データや事例をもとに解説します。
*本レポートは2023年8月23日に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。
NO.2というのは経営者の右腕であり、企業や組織全体のNO.2という役割、同時に、管掌領域を持ち、複数の事業部長やシニアマネージャーを直轄の部下に持つ上司/管理職としての役割など、複数の顔を持ちます。
本レポート内でも、NO.2や上司、管理職、リーダーといった言葉が混じりますが、NO.2が持つ様々な役割をイメージしながらお読みいただければと思います。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。
<目次>
- トップがNO.2に求めるもの
- 組織を取り巻く環境の変化
- リーダーに求められるスキルの変化
- リーダーがリスキリングすべきスキルとは?
- NO.2の必須3項目
- 社長の右腕 10の職掌
- NO.2とトップとのコミュニケーション
トップがNO.2に求めるもの
組織のNO.2にはトップが不在のときに、トップの役割を代行することが求められます。そのため、NO.2は常にトップの考えを理解して、いつでもメンバーに伝えられるようにしておく必要があります。
またメンバーの能力を最大限発揮させるために、メンバーのモチベーションを高め、育成していくことや、トップを支えることで、チームがより良いパフォーマンスを発揮できるようにしていけるように、支援することも大切な役割です。
下記の資料は、経営者が幹部社員に求めたいことをまとめたものです。
大前提として、自分の役割へのコミットを求めていることが伺えます。同時に、どのような状況下にあっても、現実を直視し事業と向き合うことも求められています。そして、それだけではなく、上司である経営者自身をマネジメントしながら、自ら動いていくことも求められています。
さらに、部下のことを組織の最大の資産と捉えること、上からの異論も下からの異論も歓迎すること、参加者の時間を拘束することになる、会議の生産性を上げること、組織に高い基準を根付かせることなど、経営者が幹部社員に求めることは、多岐に渡ることが伺えます。
経営者がNO.2に求めることは、トップと一緒に動く内容と、NO.2個人として動いて欲しい内容に大別されます。
しかし、昨今は少しニュアンスが変わってきています。なぜなら、我々の取り巻く環境が、この2-3年で大きく変化しているからです。
組織を取り巻く環境の変化
昨今、働き方改革、コロナ禍を契機としたリモートワーク普及などで、我々の働き方そのものが変化してきています。
時短勤務で働く人やリモートワークをする人なども増え、社員全員が同じ時間、同じ場所で過ごすことは当たり前ではなくなりました。
以前は、同じ時間、同じ場所を共有しているからこそ、上司と部下の相互理解が促進されていました。しかし、働き方の変化に伴い、今は時間と場所に依存することなく、上司と部下で相互理解をしていく必要性が出てきています。
従業員の就業観も多様化しています。
昭和、平成世代は、会社中心の生き方をして、会社を中心に人生を決めてきたと思います。「石の上にも3年」と言われ、会社が絶対的な存在でした。しかし、Z世代、若手層は、価値観や考え方が変わってきており、「自分がどうありたいか」を中心に人生設計していきます。
今のZ世代は、転職を前提として、新卒で入社する企業を選びます。1社目の選択は、あくまでもその人のキャリアの一部でしかないということです。
さらに、今はVUCAの時代ですので、将来の予測も困難となり、変化のスピードも以前より速くなっています。
以前は、過去の正解に沿って行動すれば、パフォーマンスが出ていました。しかし、今は、今までと同じように過去の正解に沿って行動するだけでは、徐々に成果が下がってきてしまう可能性があります。
従来のやり方で通用しなくなってきている中で、経営者やNO.2から価値観を変えていかなければなりません。メンバーの価値観を変えさせようとアプローチするよりも、経営者やNO.2が先に変わるほうが、会社全体を早く変えていけるでしょう。
リーダーに求められるスキルの変化
下図のデータは、管理職の方、約4,000名に「リーダーに求められるスキルの変化」について聞いた結果です。10年前にリーダー・管理職に求められていたスキルと、いまリーダー・管理職に求められているスキルを比較してみると、大きな変化が見られます。
以前は、「説得力」が大事だと言われていましたが、今は「対話」を重んじる姿勢がとても大事だと変わっています。また、以前は「トップダウン」で物事を進められるリーダーが求められていましたが、今は「ボトムアップ」で進めていくリーダーが求められています。
時代背景も考慮して考察すると、テクノロジーが発展する以前は、定型的な作業を社員が行うことも多かったため、「余計なことはせずに生産性高く回す」ことが大切でした。その場合、トップダウンで進めるほうが、効果性高く、仕事を進めることができました。そのため、当時は、「レールの上をしっかり走れる人」を育成すればよいと言われていました。
しかし、今は自分と同じことができるように育成しても10年後、成果を出し続けられるかはわかりません。だからこそ、今の時代の管理職は、メンバーが「強み」を発揮して成果を出せるように育成していく、そして、ボトムアップで変化に対応していくことが重要になります。
リーダーがリスキリングすべきスキルとは?
メンバーが「強み」を発揮して成果を出せるように育成をするためには、幹部や管理職は、どのようにアップデート、リスキリングしていく必要があるのでしょうか?
相手の関心に寄り添う「対話力」を高めていかなければいけないですし、ボトムアップでチームを強くしていく「チームビルディング力」を高めていかなければなりません。そして、「強みを発見し、活用する力」も高めていく必要があります。
NO.2の必須3項目
NO.2の立ち位置を改めて確認します。
①ボスであること
組織における1番のボスは社長ですが、NO.2も、さまざまなミッションやプロジェクトを任される中で、状況によってはボスという立場になります。そして、当然自分の緩衝領域においては、各メンバーにとってNO.2がボスでしょう。
そのため、NO.2には「組織のトップ」としての振る舞いが求められます。
②最高の部下であること
NO.2は、トップにとって、最高の部下になる必要もあります。NO.2や幹部管理職となり、担当組織のサイズが大きくなっていくと、「自分が部下である」という感覚がなくなる危険性があります。
しかし、NO.2はトップにとって一番信頼がおける「誰よりも最高の部下」でなければなりません。
③弱点をなくすこと
メンバーに対しては、強みを発揮させることが大切です。しかし、NO.2ともなれば、強みだけを発揮すれば良いという訳にはいかず、弱点を無くすことが求められます。
- 業績や数字に疎い
- 部下のマネジメントが苦手
タスクマネジメントとヒューマンマネジメント、どちらの領域でも大きな弱点があってはいけません。トップは弱点があっても構いません。しかし、NO.2はトップの弱点を補完するのが役割でもあるので、明らかな弱点は克服していかなければいけません。
社長の右腕 10の職掌
NO.2の職掌というのは10個にまとめられます。
この中でも特に注力すべき3つについて紹介していきます。
NO.2とトップとのコミュニケーション
トップが好むコミュニケーションとは?
NO.2がトップと個別に話す頻度はどのくらいが適切でしょうか。正解は、「毎日」です。
トップは様々な情報をもとに、日々考えや方向性が変わります。だからこそ毎日、何らかのコミュニケーションをとることが大切です。
また、話す頻度と同じくらい大切なことが、トップのスケジュールを把握しておくことです。今誰とどんな商談をしているのか、どんな影響を受けているのか、最近どういう人たちと会議しているのかなどを把握しておきましょう。トップの興味関心を把握することで、現状の課題感や進むべき方向性が見えてきます。
また、トップとのコミュニケーションにおいてもう1つ押さえておくべきことがあります。押さえておくべきは「トップの好むコミュニケーション手法」です。
例えば、メールや文書での報告と、口頭での報告と、どちらを好むかなどです。人によって好むコミュニケーション手法は違うことを認識して、対応しておきましょう。
トップとのコミュニケーションにおける3つのテーマ
上図に掲載している3つのテーマは、トップが常に知っておきたいと考えている情報です。
売上や業績の話を聞くことは、トップの思考の刺激になり、イノベーションの機会にもつながります。
またトップは全てのメンバーのことを見えていないことが多いでしょう。メンバーについては、ネガティブな情報も必要ですが、意識してトップが見えてない隠れた逸材について伝えると良いでしょう。
経営幹部のことや、シニアマネージャークラス、部長クラスの情報はトップ自らが把握していることが多いです。一方で、マネージャー以下のメンバーの情報は、十分トップに届いていない可能性もあるので、こうした現場~課長層についてメンバーのポジティブな情報を伝えておくと、トップの組織作りの思考を刺激することにつながります。
トップの今の興味・関心ごとについても話しましょう。
「社長、今何に関心があるのですか?」というような質問ではなく「こんなふうに動こうかなと思っているのですが、どう思いますか?」というような形で聞くと良いでしょう。そのほうが、組織が方針通りに進んでいるという安心感や手応えをトップが得られます。
トップとのコミュニケーションで大切にすべき姿勢
トップとのコミュニケーションにおいては、コミュニケーションテーマだけではなく、コミュニケーションに向き合う姿勢も大切です。
上図に記載があるように、
- 誠実な関心を寄せる
- よい聞き手になる。トップに自分のことを話させる
- 相手の関心に合わせて話をする
といった、コミュニケーションを取れると、トップは改めて「自分と一枚岩で動いてくれている」と感じるでしょう。
トップも、自分がNO.2を指名したものの不安なので、心理的安全性が確保されて、より深い話ができるように日々コミュニケーションを重ねていくことが大切です。
トップと毎日コミュニケーションを取ることで得られる効果
トップと毎日コミュニケーションをとることで、上図のような効果が期待できます。トップはエスパーではありませんので、コミュニケーションを取らずとも、何でもわかってくれているとは思わない方が良いです。
また、「言うべきことは言う」姿勢は、非常に重要です。ただし、イラッとさせないような伝え方の工夫は必要です。トップの意見に敬意を表しながら伝えることが大切です。
同時にトップからNO.2側に言いたいこと言われたらイラッとするかもしれませんが、「自分が間違っていたな」と思ったら、潔く認めましょう。
メンバーとのやり取りにおいてもこういったことを意識しながら接していくと、スムーズなコミュニケーションが取れるようになっていきます。メンバーとこうしたコミュニケーションをとると、育成しやすい状態を作れるようにもなっていきますので、ぜひ意識してみてください。
さて、トップとのコミュニケーションを通じて何を成し遂げたいかというと、やはり「よりよい組織を作っていくこと」です。ここからは、組織作りのテーマについて考えていきます。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。







