「”イエス”と答えられる問題を選ぶ」の詳細と実践
記事のテーマでもある「”イエス”と答えられる問題を選ぶ」を詳しく解説します。
1.「イエス」と答えられる問題から話を始めることで、相手と合意を重ねていく
カーネギーは、人を説得するに際して、会話の最初から、お互いの間で意見が異なる話題、相手が「ノー」と言うような問題を取り上げてはならないと話しています。なぜなら、冒頭で相手に「ノー」と言わせてしまうと、その時点で相手の姿勢が「ノー」、あなたに対する対立の姿勢になってしまうからです。
「ノー」ではなく「イエス」と相手に繰り返し答えてもらい、合意を重ねていくことができれば、最終的に相手を説得することも容易になるでしょう。
カーネギーは『人を動かす』の中で、「”イエス”と答えられる問題を選ぶ」の原則を用いて、望む結果を得たエピソードを以下のような紹介しています。
私は常識にかなった態度をとってみようと決心しました。銀行側の希望ではなく、客の希望について話そう。そして、最初から”イエス”と客に言わせるようにやってみようと思いました。そこで、私は客に逆らわず、気に入らない質問には、しいて答える必要はないといいました。そして、こういい添えました──
『しかし、仮に預金をされたまま、あなたに万一のことがございましたら、どうなさいます? 法的にあなたに一番近い親族の方が受け取れるようにしたくはありませんか?』
彼は”イエス”と答えた。
私はさらに、『その場合、私どもが間違いなく迅速に手続きができるように、あなたの近親者のお名前をうかがっておくほうがいいとお思いになりませんか?』と尋ねました。
彼は”イエス”と答えた。
私たちのためではなく、彼のための質問だとわかると、客の態度は一変しました。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
エバーソン氏は、相手がイエスと答える大きな目的から入って相手との合意を重ねていくことで、スムーズに親族に関する情報に答えてもらうことができたわけです。もし相手との合意を重ねず、「手続き上必要なので、親族の情報を教えて下さい。答えていただけないなら、口座を開設することはできません」と対応していたらどうなったでしょうか。顧客は質問に答えようとはせず、へそを曲げて早々に帰ってしまったかもしれません。
上記のエピソードは些細な話に見えるかもしれませんが、まずはお互いの意見が一致する話題、相手が「イエス」と答えられる質問から話を始めることで、相手を意図する方向へ導いていく分かりやすい事例です。
2.相手から「イエス」を引き出す聞き方とは?
相手から「イエス」を引き出す聞き方に長けていたのが、古代ギリシアの哲学者として名高いソクラテスでした。
まず、相手が”イエス”と言わざるをえない質問をする。次の質問でもまた”イエス”と言わせ、次から次へと”イエス”を重ねて言わせる。
相手が気づいた時には、最初に否定していた問題に対して、いつの間にか”イエス”と答えてしまっているのだ。相手の誤りを指摘したくなったら、ソクラテスのことを思い出して、相手に”イエス”と言わせてみることだ。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
ソクラテスが実践したように、私達もビジネスや普段の人間関係で、相手から「イエス」を引き出すことが大切です。
相手から「イエス」を引き出す聞き方のポイントを3つお伝えします。
1つ目は、まず相手が同意できる問題、相手と合意している問題を探すことです。
例えば、「この交渉でお互い合意して、こういう結果を得たいと思っていますよね?」「win-winになる結果を導き出して、長いお付き合いをしたいと思っていますがいかがでしょう?」「いま私達の間で合意できているのは、ここですね?」といった形で、より大きなテーマや前提条件を探しながら対話を進めていくと、うまくいきやすいでしょう。
2つ目は、「確かにおっしゃる通りですね」「なるほど、そういうことなんですね」というように、相手に共感を示すことです。
共感を示しても、相手からイエスを引き出すことには繋がらないのでは?と思えるかもしれません。しかし、あなたが同意を示すことで、相手は、「そうそう!そうなんだよ。これがこうで…」とイエスを返して、同意の言葉を重ねてくれることが多くなるでしょう。
最後の3つ目は、自分なりの主張や見解を持っている相手に対して、「A案とB案は、それぞれメリットがありますよね」「この状況であれば、B案もいけそうですね」「A案にも、〇〇の良さはありますよね」というように、断定した物言いをせず、相手の言葉を肯定する、ということです。
これも2つ目と同じように、相手はイエスを返し、言葉を重ねてくれるでしょう。
どんなに肯定的な返事を引き出すのが難しそうな相手であっても、視点を変えたり、聞き方を工夫したりすることで、何かしら「自分と相手で一致している部分」を見つけることはできるはずです。
商談や交渉事においても、相手に「イエス」と答えてもらうことで、少しずつ相手の心情を肯定的な方向に導いていくことも可能になるでしょう。
3.ビジネスシーンで実践する「イエスセット話法」
ここまで、”イエス”と答えられる話題から話を始めることの重要性、および、相手から「イエス」を引き出す聞き方をお伝えしました。
営業テクニック等に詳しい方ですと、「“イエス”と答えられる問題を選ぶ」という原則は「イエスセット話法」と共通していることに気づいたかもしれません。
「イエスセット話法」とは、何度も「イエス」と答えてもらうことで、次の質問にも「イエス」と言いやすくなる、あるいは「ノー」を言いにくくなる素地を作る、という主に営業のテクニックです。「イエスセット話法」は、始めにイエスと答えられる話題から入ることで相手の心理をイエスに導いていくという、カーネギーの原則を踏まえたものです。
「イエスセット話法」について、実例を交えてお伝えします。ここでは、子供向けの英語教材のセールスを事例にみていきましょう。
イエスセット話法を使わずに、いきなり相手を説得しようとするとこうなるかも知れません。
- あなた「お子様にこんな英語教材はいかがですか?こんな素晴らしい商材です!」
- お客様「学校でしっかり勉強しているので大丈夫です」
このような聞き方では、お客さんは本気になって話を聞いてくれようとはしないでしょう。
イエスセット話法を使ったらどのような会話になるでしょうか?
- あなた「お子さんには、すくすく成長して、将来も幸せであってほしいですよね」
- お客様「もちろんです!」
- あなた「お子さんが社会に出る10年後を想像してみてください。いまより英語力が必要になる場面が多くなりそうだと思いませんか?」
- お客様「確かにそうですね…」
- あなた「ただ、大人になってから外国語を習っても吸収力が落ちるんですよね。子供のうちに苦労せずに身に付けてしまった方がいいと思いませんか?」
- お客様「それはそうですね」
- あなた「もちろん学校でも英語を習われていると思いますが、学校の授業だけで十分喋れるようになるでしょうか?」
- お客様「うーん、そういわれると難しいですね」
- あなた「そうなんです。皆さんそうおっしゃるんです。そこで学校以外の教材を使って、子供のために英語が身に付くようにしている親御さんが多いんですよ」
- お客様「なるほど、そうなんですね」
相手から何度もイエスの答えを引き出していくと、本命の質問にも、「イエス」と返答しやすい雰囲気が生まれてきます。
ビジネス等でイエスセット話法を実践するポイントは、「ほとんどの人が“イエス”と答えるであろう質問」を投げかけるという事です。上記の例で言えば、殆どの親御さんは「子供に幸せであってほしい」「将来はもっと英語力が必要になりそう」と考えているでしょう。
このように、相手が「イエス」と答えるポイント、相手が得たいもの、大きなゴールを意識することが、「”イエス”と答えられる質問を選ぶ」を実践する勘所です。







