「思いつかせる」の詳細と実践のポイント
まず初めに、記事のテーマである「思いつかせる」の詳細を解説します。加えて、実際の人間関係の中で実践するためのポイントを3つ紹介していきます。
相談を持ち掛けて、相手の意見を取り入れる
「思いつかせる」を実践するひとつ目のポイントは、相談を持ち掛けて、相手の意見を取り入れるということです。
カーネギーは『人を動かす』の中で、セオドア・ルーズベルト大統領が重要ポストに就かせる人を決めたときのエピソードを紹介しています。
ルーズベルトはある時、重要ポストにふさわしい候補者について、政治家のボスたちに相談をすることにしました。
ボスたちが最初に推薦した人物は、ろくでもない人間だったため、ルーズベルトはこれを退けます。二番目に挙がった人物も、ことなかれ主義の役人に過ぎないとして、やはり却下します。三番目に名前の出た人物は、あともう一息という水準ではありましたが、ルーズベルトは『もう一度だけ、考え直してくれ』とボスたちに伝えました。
彼らが四番目に推薦したのがようやく眼鏡にかなう人物だったため、ルーズベルトは政治家のボスたちに感謝して、この人物を任命することにしました。ルーズベルトは任命する際、『あなた方に喜んでいただくためにこの人物を任命しますが、次はあなた方が私を喜ばせてくださる番ですね』と伝えました。
ルーズベルトは、『私はあなたたちの意見を汲んで決めました』と、相手に花を持たせたわけです。ルーズベルトの言葉を聞いたボスたちは『自分たちの意見が取り入れられた』とルーズベルトに恩義を感じ、喜んで協力したのでした。
国のトップであるルーズベルト大統領は、自分で候補者を決めようと思えば、政治家のボスたちに相談せずに決めることもできました。しかし、それでは政治家たちは快く思わず、協力してくれなかったかもしれません。
相談を持ち掛け、相手の意見を取り入れることで、「これは自分の発案だ!」と相手に思わせ、快く協力を引き出すことができるのです。
ルーズベルトが実践したように、「次はあなた方が私を喜ばせてくださる番ですね」とまで伝える必要はないかもしれません。しかし、「あなたの意見が反映されてこの決定になりました」「あなたのアイデアを基にした案です」ということはしっかり伝えるといいでしょう。
それによって、相手は満足度し、実際のその案を実行するに際して相手の協力も得やすくなるでしょう。
問いを投げかけて、相手に答えを考えさせる
相手に思いつかせるための2つ目のポイントは、適切な「問い」を投げかけて、相手自身に答えを考えさせるということです。
この話を読むと、マネジメントや人材育成のスキルとして最近注目されている「コーチング」を思い出す人もいるかもしれません。
コーチングは「適切な質問を通じて、相手から答えを引き出す」方法です。
コーチングと対比されるティーチングは、指導者が答えやアドバイスを相手に教えるやり方です。相手に知識がなかったり、体系的な知識を身に付けさせたかったりする場合は、ティーチングが有効ですが、相手の主体性やモチベーションを引き出したい場合にはコーチングが有効だといわれます。
コーチングの、相手に自分自身で答えやアイデアを発見させることで相手を動かす、行動への意欲を高めるというポイントは、カーネギーの「思いつかせる」の原則と共通するものです。
コーチングでは、上司やリーダーが一方的にアドバイスや指示をするのではなく、適切な「問い」を投げかけ、相手に考えてもらうことを重視します。人からあぁしろ、こうしろと言われるのではなく、質問を通じて自ら考えることで「自分で考えて決めたことだからやる!」と相手に主体性が生まれるのです。
人は自ら考えて選択したことに対して高いモチベーションを発揮して行動し、逆に人から押し付けられた事に対しては無意識レベルで反発心を抱きます。この感情を心理学では心理的リアクタンスと呼びます。
コーチングのスキルは、この心理的リアクタンスを踏まえて、相手に「思いつかせる」というカーネギーの原則を、具体的に実践するプロセスともいえるでしょう。
HRドクターではコーチングのやり方を分かりやすく解説した記事を用意しています。ご興味あれば以下の記事をご覧ください。
相手のタイプや性格を見極めて関わり方を変える
ここまで相手に“思いつかせる”ための実践のコツを解説しました。紹介したやり方を実践する際、相手のタイプや性格を見極めて関わり方を変えることが最後のポイントです。
たとえば、上司から部下へ指導する場面を考えてみましょう。相手によっては、具体的な指示やアドバイスがなく、毎回考えさせられたり質問されたりすると、ストレスを感じたり、無責任だと思ったりする可能性もあります。
大まかな方向性だけを示し、後は本人に考えさせることで積極的になれる人ももちろん沢山います。しかし、具体的な指示がないと不安に覚える人も少なくありません。相手によっては、事細かに指示を出してあげた方が、嬉しいし取り組みやすいという場合もあるでしょう。
「思いつかせる」という原則は、人が持つ心理を踏まえた本質的な原則です。ただし、どんな関係性、どんな場合でも同じように使えるものではありません。
相談したり、相手の意見を聞いたり、相手に質問したり、選択肢を示したりすることは大切です。ただし、関係性や状況など、相手によっては、指示してしまった方が良いことも有ります。
相手の気質や性格に応じて、関わり方の匙加減を考えていくことが大切です。
なお、どのようなタイプの相手にどんな関わり方が効果的なのかの全般については、『ソーシャルスタイル』という考え方が分かりやすく参考になります。
HRドクターでは、「個人のコミュニケーションを4つのタイプに分類する『ソーシャルスタイル』」を分かりやすく解説した資料を用意しています。以下のURLよりご覧になれますので、参考にしてみてください。
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