「同情を寄せる」の詳細と実践のポイント
まず初めに、記事のテーマである「同情を寄せる」の詳細と、実際の人間関係の中で活用するためのポイントを詳しく解説します。
1.同情・共感は、相手の敵意を好意に変えることもできる
「あなたの立場であれば、私も同じように思うでしょう」と伝えるのが同情や共感のメッセージです。カーネギーは、共感の気持ちを示すことで、たとえ、相手があなたに嫌悪感や敵対心を持っていたとしても和らぐものだといっています。
書籍『人を動かす』では、実際にカーネギーが体験したエピソードが紹介されています。
カーネギーがラジオのパーソナリティーをしていた時のこと、ラジオの中である間違いをしてしまいました。児童文学として有名な『若草物語』の作者ルイーザ・メイ・オルコットに関して間違った情報を口にしてしまったのです。
この間違いに対して、同書の熱心なファンである1人の女性がひどい剣幕で抗議し、カーネギーに怒りの手紙が届きました。
「もし私が彼女だったら、やはり彼女と同じように感じたに違いない」
カーネギーはこのように自分に言い聞かせて、女性に電話をかけることにしました。電話の中でカーネギーは、わざわざ手紙を寄こしてくれたお礼、自分が情けない間違いをしてしまったこと、相手の礼節に非常に感銘を受けたこと…など、相手の女性にひたすら共感の姿勢を示しました。
カーネギーの姿勢が功を奏した結果、当初は怒りに燃えていた女性の態度は見違えるほど穏やかになり、最後にはカーネギーの立場に同情すら示すようになったのでした。
このエピソードを基にカーネギーは、「相手をやっつけるよりも、相手に好かれるほうが、よほど愉快である」、そして、相手に好かれるためには共感を示すことが大切であると強調しています。
2.共感を示すことで、人を動かすこともできる
同情や共感の気持ちを示すことは、相手の敵意を好意に変えるだけでなく、相手に動いて欲しい時にも効果を発揮します。
カーネギーは『人を動かす』の中で、共感を示したことで頑固だった相手を期待通りに動かした、あるピアノ教師の事例を紹介しています。
そのピアノ教師は、教え子のバベットという少女の長い爪がピアノの練習の妨げになっていたため、何とかしたいと考えていました。
教師という立場であれば、「ピアノを弾く邪魔になるのだから、いい加減爪を切ってしまいなさい!」と伝えて、生徒に言うことを聞かせるのも順当なやり方かもしれません。
しかし、このピアノ教師は、無理やり生徒に言うことを聞かせようとはしませんでした。なぜなら、彼女は、生徒が自分の爪を誇りに思っており、自慢の爪を失いたくないという気持ちを深く理解していたからです。
そこで、ピアノ教師は「あなたの手はとってもきれいだし、爪も素晴らしいわ」と、生徒の爪を褒め、最初に共感の気持ちを示すことをしました。このように、生徒の気持ちに十分共感した後に、「でも、あなたが望みどおりにピアノの腕を上げたかったら、爪をもう少し短く切ってごらんなさい。」と伝えたのでした。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
ピアノ教師は、生徒を頭ごなしに叱ったりすることはありませんでした。しかし、生徒は次の日には素直に爪を短く切ってきたわけです。
もしも、ピアノ教師が生徒に有無を言わさずいう事を聞かせたり、その場で強引に爪を切ってしまったりしたら、どうなったでしょうか。生徒は「絶対に爪は切らない!」と反発したり、ピアノのレッスンに顔を出さなくなってしまったりしたかもしれません。
生徒は本人なりに思うところがあって、爪を伸ばしていたわけです。だからこそ、教師が自分の気持ちを分かってくれて、自分の努力を認めてくれた、爪をきれいだと褒めてくれたことに満足し、もう一つの「もっと上手くピアノを弾きたい」という願いをかなえるアドバイスに従ったのです。
相手の行動がよくない、明らかに間違っている時、相手のやることを頭ごなしに否定し、無理に何かを強制しようとして、なかなか期待通りの結果にはならなかった経験をしたことがある人も多いかもしれません。
いきなり相手を否定するのではなく、まずは相手の気持ちと行動に寄り添い、共感・同情する気持ちを伝えてあげる方が遥かに良い結果を生むものです。
3.共感性を示すことは、部下指導にもつながる
ここまで「同情を寄せる」というカーネギーの原則に関して、相手の敵意を好意に変えたり、子供を指導したりする際のエピソードを引用しながら解説しました。
相手に同情・共感することの重要性は、ビジネスシーンでも同じです。
全国の社会人を対象にした、“嫌いな上司”に関するアンケート結果があります。結果による、回答者の60.4%、3分の2近くの社会人に「嫌いな上司がいる」そうです。嫌いな上司の特徴としてどんなものが挙がっているでしょうか。
同じアンケートの「嫌いな上司の特徴ランキングTOP10」を見ると、「高圧的で偉そう」がダントツの1位になっています。
*出典:Job総研調査
職場に「いつも命令形の口調で指導する」「部下を叱る時に威圧的な雰囲気を出す」「有無を言わさず自分のやり方を押し付ける」といった管理職の人はいないでしょうか? なんでも自分のやり方が正しいと思って指導したり、部下の話も聞かずに一方的に押し付けたりする上司や管理職はメンバーから嫌われてしまいます。
「ビジネスの人間関係は好き嫌いではない」「上司は部下に好かれる必要はない」、もちろんこれはこれで事実です。しかし、好かれる必要はないにしても、嫌われてしまうと、たとえ、指示が正しくもメンバーは言うことを聞かなくなります。たとえ聞いたとしても、姿勢は受け身なものであり、そこに主体性や熱意は発揮されないでしょう。
部下・メンバーから嫌われてしまうと、管理職としてチームのパフォーマンスを高めることはできなくなってしまうのです。
他者の気持ちや感情に寄り添う共感力は、部下指導やチームビルディングでも非常に重要です。
共感力の高い管理職であれば、会話の中で部下の気持ちを理解しようとしたり、どうすれば部下が仕事を楽しくできるのかを考えて関わろうとしたりするでしょう。それだけでなく、共感する力が高ければ、相手の立場に立った提案もできるでしょうから、商談や顧客との人間関係においても、高いパフォーマンスの発揮につながるでしょう。
このように、相手に「同情を寄せる力」、共感する力は、チームワーク、部下指導、リーダーシップの発揮など、ビジネスシーンで成果を上げるために重要なスキルになるのです。
HRドクターでは、共感力(エンパシー)に関する詳細と、共感力を高めるための方法について、より分かりやすく解説した記事を用意しています。「同情を寄せる力」を高めたいと思う方は、以下の記事をぜひ参考にしてみてください。







