「盗人にも五分の理を認める」の詳細と実践のポイント
最初に、書籍『人を動かす』のひとつめの原則である「盗人にも五分の理を認める」の詳細を解説します。原則を実践へと落とし込むポイントも紹介していますので、参考にしてください。
ポイント① 人は自分のことを正しいと思っている
前章でも触れたように、人は決して自分が悪いとは思いたがらないものです。たとえ、客観的に見ると、相手が間違っていて、こちらが正しいとしても同じことです。
アメリカの近代史に残るマフィアのボス、アル・カポネはこのように嘆いていたそうです。
「おれは働き盛りの大半を、世のため人のために尽くしてきた。ところが、どうだ。おれが得たものは、冷たい世間の非難と、お尋ね者の烙印だけだ」
世間で“極悪人”と評されたアル・カポネですら、自分では自分の行いを正しいと思っているわけです。このように、殆どの人は自分の行いは正しい、百歩譲って間違っているかもしれないが、やむを得ない事情があったのだから非難されるいわれはない、と思っているものです。
そんな相手に対して、批判・非難をしても、相手は警戒心を抱くだけで、相手の心を動かす、相手と人間関係を築く上では良い結果にはなりません。
ポイント② 失敗しても叱責しない
上述のように、人間は他人からの批判を恐れています。自分が批判されると、多くの人は以下のような防御体制をとります。
- 自分を正当化しようとする
- 批判した相手に反抗心を起こす
- 意欲をなくす
こうなってしまっては、もはや相手はあなたに心を開くことはなく、信頼関係は失われてしまいます。人を動かす上では、たとえ、明らかに相手にミスがあったのだとしても、一方的に批判や叱責するのではなく、相手を信頼している事を伝えた上で、挽回させるチャンスを与えたほうが有効です。
ポイント③ 相手を理解することに努める
自分が正しいと疑わない相手に対して、批判や指摘をしても何も解決しません。批判では人を動かすことができないのであれば、どうすればよいでしょうか?
身近でありそうなビジネスシーンの例を基に、考えてみましょう。
職場に、毎朝遅刻して何度注意しても直らない新人がいたとします。あらためて言うまでもなく、定刻までに出社して席に着いていることは、当たり前のビジネスマナーです。「業務時間前に席に着くのはビジネスパーソンの常識だろ?」とか「何度注意したら、遅刻が直るんだ!」など、上司や先輩社員が不満に思うのも無理はありません。
ビジネスパーソンとして会社で仕事をする以上、ビジネスマナーに従って行動することは当然重要です。部下を持つ上司の立場からすれば、間違った行動をその場できちんと本人に指摘することが、職場の規律を守る上でも、新人の成長を支援する上でも大切です。
しかし、自分の常識やルールに従って、相手にストレートに怒りをぶつけても、相手が心から反省したり間違いを認めたりすることは期待できないかもしれません。
記事でお伝えしたように、どんなに間違った言動をしている人であっても、本人は「自分の行いは正しい!」「しょうがない事情があるのだ」と思って行動していることも多いものです。そして、批判されればされるほど、人は益々言い訳をして、「なぜこの人は理解してくれないのだろう」と相手のせいにしがちです。
(デール・カーネギー『人を動かす 新装版(創元社)』より引用)
カーネギーが言うように、相手を批判・非難する代わりに
- なぜその行動に至ったのか?
- やむを得ない事情はなかったのか?
- 相手は、既に行動を悔いているのかもしれない
と、一歩立ち止まって相手を理解することに大切です。
相手を理解しようとすることで、共感や寛容の姿勢が生まれます。それにより、一方的に相手を批判・非難するよりも、はるかに建設的な結果が生まれ、相手との人間関係を損なうこともなく、相手に自発的に行動を正してもらうことも可能になるかもしれません。
「盗人にも五分の理を認める」が言いたいのは、「間違った行動や誤りがあっても指摘してはいけない、許容したほうがいい」ということではありません。ただ、私たちが欲しいのは、「正しい行動を取るようになった」という結果です。だからこそ、望む結果を得る、相手を動かすために、どんなアプローチが良いかを考える必要があります。







