本章では、若手育成を進める上で、企業が陥りやすい注意点と対処法について解説します。
一律的な研修プログラムの実施:
若手に身に付けて欲しいスキルやマインドに関して、どこの企業でも共通するものは多いでしょう。そのため、若手研修を実施するにあたっても、一律的な研修プログラムが組まれがちです。これ自体は問題ありませんが、一方的な座学等を通じて、また講師のまとめ等が、一方的に企業が求める「型」に受講者をはめるような内容だと研修の効果性は大きく下がります。
いまの若手は個性や価値観が尊重されることに慣れています。従って、一方的に型にはめるような指導を非常に嫌う傾向がありますので注意が必要です。また入社数年が経過すると、若手一人ひとりの強みや経験、スキルレベル、マインドセットもかなりばらつきが生じてくるため、その点でも画一的な研修は効果が限定的になってしまいます。
こうした事態に陥らないためには、上記のような状況を前提として研修設計をすることが大切です。
例えば、eラーニングを活用して基礎を共通化した上で、対面の時間はグループ分けをして、それぞれのニーズにあわせた実践的な演習に費やすなどの工夫が挙げられます。
また、企業が求めるゴールやマインドセットを伝える際には、それを実践することが若手社員自身が得られるメリットを示したり、ゴールは示しつつも実践の仕方はそれぞれの強みを反映する余地があることを示したりするといった工夫も大切です。
スキル研修への偏り
若手研修を実施するに際しては、「若手にもう一段高い成果を上げられる人材に育ってほしい!」という期待があるでしょう。こうした短期的な声を汲み過ぎて、若手研修の内容が、知識やスキル面に偏り、マインドや価値観の醸成が後回しになってしまうケースは少なくありません。
しかし、若手社員が、継続して成果をあげられる人材となり、また、リーダーや幹部候補になるためには、スキルだけでなく、マインド面の醸成も不可欠です。
もちろんスキルは重要ですが、スキルはあくまでも道具です。人格やマインド面が完璧で、スキルのみが不足しているようであれば、スキル面のみをトレーニングすればよいでしょう。
しかし、たとえば主体性やリーダーシップ、またプロフェッショナルとしての成果意識や価値観など、こうしたマインド面にかけているところがあれば、スキルを鍛えても、そのスキルは効果的に生かされないでしょう。
年齢・経験を重ねる、また、ポジションが上がっていくと、マインド面の醸成は非常に難しくなっていきます。その意味でも、新人~若手の間にしっかりとマインド研修も実施しておくことが大切です。
参加に対する動機付け不足
参加者に、前向きで高い受講意欲を持って研修に参加してもらうことは、研修効果を最大化する上で極めて重要です。そのためにもまずは、若手自身に研修の意義や必要性を理解してもらう必要があります。
やり方としては、例えば、研修がキャリアアップの機会としてどのような位置づけにあるのか?あるいは、自己実現を目指すうえでどうつながるなど、メリットを具体的に示すこと、また、対話等を通じて、課題感や成長テーマを明確にすることです。
場合によっては、研修参加の手前で引っかかっている心理的なハードル等があれば、そういったものを解除しておかないと、研修の効果性が格段に損なわれてしまうでしょう。
実務とのブリッジング不足
研修で知識やスキルをインプットしても、実務で活用されず、成果創出につながっていないという悩みは比較的よく聞く話です。
知識インプットすることが重要な研修もありますが、基本的に研修を通じて行動変容を生み出さないと研修の意味はありません。そして、行動変容を起こすためには、実務とのブリッジングが非常に大切です。
研修内の用語や事例等に関しても、参加者に合わせて実務にブリッジングしやすいようにする必要がありますし、研修内でワーク等を通じて自分の仕事に落とし込み、また行動目標に落とし込んでもらうことが大切です。
また、行動変容を最大化するためには、研修で学ぶ⇒実務で実践する⇒研修で成果発表して振り返る⇒新たに学ぶ⇒実務で・・・というサイクルを研修の中に組み込んでしまうことが一番です。
タイムベースドラーニングと呼ばれるやり方で、週1回や月1回の研修を継続的に実施していくスタイルです。研修のオンライン化によってタイムベースドラーニングも非常にやりやすくなったので、ぜひ検討してみてください。
フィードバックの不足
フィードバック不足も、若手研修の効果を損なう要因のひとつです。若手は経験値が不足するため、自身の状況を客観的に認識できていないことが多々あります。
また、上司や組織側も「下手に叱るとハラスメントになってしまう」「“ほめて伸ばす”と言われるなかで、ネガティブフィードバックはモチベ―ションを落とすのではないか…」といった懸念や感覚からフィードバックが不足する傾向がみられます。
もちろんネガティブのみ、怒りを露わにした内容、人格や価値観を否定するといったフィードバックはNGですが、現状に対してきちんとフィードバックしなければ、若手は自身の成長課題や取り組み状況を客観的に把握できません。こうした状況を防ぐためにも、研修前の面談でのフィードバック、また研修後の実践状況に対するフィードバックなどは不可欠です。