HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、近年、企業の人事担当者などのお客様から、入社2、3年目ぐらいまでの若手社員に関して「モチベーション低下が著しい」や「離職が多い」などの相談をいただくことが多くなっています。
経験を積んで一人前になりつつある若手社員に対して、企業側としては、さらなる活躍や成長を期待するものです。
一方で、入社数年目の若手社員は、モチベーション低下などが起こりやすいがタイミングでもあります。
若手社員のモチベーション向上や離職防止を実現するには、若手の課題や特徴に合った研修や教育を行なうことが大切です。
記事では、まず、若手社員のよくある課題を確認します。記事の後半では、若手向け研修を得意とする研修会社の視点から、若手向け研修の目的、具体的内容、研修のポイントを紹介します。
参考になれば幸いです。
<目次>
若手社員とは?
一般的には、入社2、3年目ぐらいの従業員を、“若手社員”と呼ぶことが多いでしょう。
入社数年目の若手社員には、現場でのOJT研修なども終えて戦力になり、業務もひととおり経験しています。そのため、企業は若手社員に対して“一人で成果をあげること”を期待するのが一般的です。
なお、若手社員の時期をすぎて管理職になるまでの社員は、一般では中堅社員と呼ばれています。
若手社員によくある課題
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、若手社員に関する相談のなかで、以下のような課題をうかがうことが多くなっています。
主体性が欠けている
若手社員の主体性の低さは、中小企業の管理職などが頭を悩ませることが多い問題です。スティーブン・R・コヴィー博士の書籍「7つの習慣®」では、主体性を、以下のように定義しています。
出典:『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー博士)
「主体性(主体的)」と反対の概念が、「反応的」です。若手社員の主体性が欠けていて反応的である場合、自ら選択したり責任をとったりすることを好まなくなります。
また、反応的であることで、以下のような状態に陥りやすくなるでしょう。
- 不平不満が多い
- 目の前の課題となかなか向き合おうとしない
- 自分で制御できない対象に、いつも振り回されている
- ネガティブな出来事が起きたときに、いつも他人のせいにする
- 起きた出来事に対して、すぐ感情的になってしまう など
慣れによってモチベーションが下がる
新人時代は誰しも、「早く一人前になりたい!」などの想いがあり、高いモチベーションでOJTなどを受けられていることも多いでしょう。
また、入社1年目は、新しく覚えることの刺激も多く、「もっとチャレンジしたい」「ワクワクする」などの内発的動機づけがされやすい傾向があります。
しかし若手社員になると、ひととおりの仕事を覚えることで、慣れによる退屈感などからモチベーション低下が起こりやすくなります。
失敗を恐れがち
若手社員の場合、ひととおりの仕事を覚えて一人前にはなったものの、以下のような想いから失敗を恐れてしまい、自分の能力を発揮したり、成果を出すためのチャレンジをしたりすることができない課題もよく起こります。
- ミスをしたら怒られるのではないか……
- 先日のような失敗はもうしたくない…… など
失敗を恐れてチャレンジをしなくなると、成功体験も積み上げにくくなりますし、成長実感も得にくくなるでしょう。
隣の芝生が青く見える
近年では、インターネットやSNSが普及したことで、華々しく活躍する他社の若手社員や、自由に働いているように見えるフリーランスなどの“隣の青い芝生”が目に飛び込んできやすくなりました。
また、日々の仕事をするなかで、以下のようなネガティブな感覚を持っている場合、隣の芝生が青く見える傾向も特に強くなるでしょう。
- 成長実感が得られない……
- 職場の居心地があまり良くない……
- いまの仕事をやり続けることに希望が持てない…… など
いまの若手は、終身雇用の感覚はなく、企業が自分のキャリアを守ってくれるとは思っていません。
だからこそ、“隣の青い芝生”が気になりますし、愛社精神・エンゲージメントも低くなりがちな傾向にあります。
後輩への指導力不足
若手社員になると、自分の下に新人などの後輩が入ることも増えてきます。小規模チームの場合、若手社員が後輩の指導にあたることもあるでしょう。
そこで後輩の指導やサポートがうまくできない場合、新人のミスや失敗によってトラブルが生じるなどの形で、自分の負担が増える可能性もでてきます。
若手向け研修の目的
効果的な若手向け研修の設計・実施をするには、以下3つの目的を意識していくことが大切です。
エンゲージメント強化
エンゲージメントとは、仕事や組織に対する愛着や心理的な結びつきのことです。
若手社員のエンゲージメントが高ければ、仕事へのやりがいや成長意欲などのポジティブな感情が生まれやすくなります。
若手向け研修では、「今の仕事は自分にとってどういう意味があるのか?」「いまの仕事とつくりたいキャリアがつながっている」などの意味付けなどをしてもらい、エンゲージメントを強化することが大切です。
キャリア意識の形成
意味付けとも関係することですが、いまの仕事と中長期的なキャリアビジョンや目標がつながっていれば、“隣の青い芝生”への過度な憧れはおさまり、自分のキャリアに対して主体的な意識が持てるようになります。
スキルUP
若手社員は、一人前で仕事ができるようになりつつあるとはいえ、中堅社員などと比べれば、専門能力などはまだまだ不足しています。
したがって、不足しているポータブルスキルや専門スキルをしっかり磨いていく必要もあります。
若手向け研修の具体的な内容
若手向け研修のコンテンツは、以下のようなものが一般的です。自社の若手の状況や課題、研修の実施目的に合わせて、プログラムを検討しましょう。
強み活用
本人が持つ“強み”を「どう活かすか?」という視点を磨くことが大切です。また、強みからキャリアを描いていくことも、非常に効果的です。
強みを軸にして、キャリアビジョンから仕事の意味付けへと考えていくと、前向きなイメージを作りやすく、また、自己肯定感・自己効力感も高まりやすいでしょう。
強みの理解には、自分の“才能”を知るアセスメント・ツール「ストレングス・ファインダー®」を使うことがおすすめです。
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リーダーシップ
近年では、事業のサービス化などが進むなかで、今まで以上に多くのメンバーにリーダーシップを発揮することが求められるようになっています。
こうしたなかで若手社員が成果を出し、継続的に成長していくためには、2つのリーダーシップが必要です。
- 自らの責任で行動を選択し、自分自身や周囲に良い影響を与える
- 他者に目指すべきビジョンや方向を示し、鼓舞する
リーダーシップ行動で重要なポイントは、主体性の発揮です。主体性の低い若手社員には、リーダーシップ研修が特に大切になります。
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コミュニケーション能力
若手社員が一人で成果を出すには、まず、上司・ほかのメンバー・取引先・お客様などと良好な関係を築く必要があります。
良好な関係の構築や、構築した先で成果を出すうえで求められるのが、以下4要素で構成されるコミュニケーション能力です。
- 1.信頼関係を構築する力
- 2.聴く力
- 3.伝える力
- 4.交渉する力
また、若手社員として経験を積み、リーダーや管理職へとステップアップしていくと、人を動かす必要性も高まります。そうすると、コミュニケーション能力の重要性はさらに増していくでしょう。
若手社員は次世代リーダーの候補です。若手のうちにコミュニケーション能力の基本を身につけておくことが大切になります。
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タイムマネジメント
若手社員が成果を出し続けるには、限られた時間のなかで高いパフォーマンスを発揮しながら、仕事を進めていく必要があります。
そのために必要となるのが、タイムマネジメント(時間管理)という手法です。
タイムマネジメントでは、タスクの洗い出しや優先順位づけ、スケジューリングなどを実行していきます。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは、論理的思考のことです。ロジカルシンキングは、目標達成に向けた計画作成、プロジェクトの進行、タスク管理、問題解決などに不可欠なスキルです。
また、上司やメンバー、顧客に筋道を立て根拠を示しながらわかりやすく説明するといったロジカルコミュニケーションをするうえでも、ロジカルシンキングは不可欠です。
したがって、ロジカルシンキングは、ビジネスコミュニケーション力を向上させるうえでも、必要となるスキルになるでしょう。
問題解決力
仕事で成果を出すには、現状もたらされているネガティブ事象に対応する問題解決力も必要となります。
また、自分が設定した目標を達成するには、ゴールと現状のギャップを明らかにしたうえで、解決策を考え、実行していく課題解決力も必要です。
専門スキル
先述のとおり、若手社員がキャリアアップしていくには、各職種や業務に応じて必要な専門スキルを伸ばす教育も必要です。具体的には、以下のような教育になるでしょう。
- 営業力のレベルアップ
- 新たなプログラミング言語の習得
- プロジェクトマネジメント
- 新たなプロモーション手法 など
若手向け研修のポイント
若手向け研修で高い効果を出すためには、状況を踏まえながら、以下3つのポイントを大切にするとよいでしょう。
スキルよりも価値観への働きかけ
仕事で成果を出すには、先述のコミュニケーション力やタイムマネジメントなどのスキルがもちろん必要です。
ただ、コミュニケーション力などのスキル以上に大切になるのは、組織や仕事に対する価値観や考え方の教育です。
たとえば、仕事に対するエンゲージメントが低かったり、当事者意識が低かったりする状態で、専門スキルの研修をしても、学ぶ姿勢も前向きなものではありません。
また、業務での活用も期待できないでしょう。
ある経営者の方は、
とおっしゃっています。
特にいまの若手は、「仕事で成果をあげるために必要だから」ではなかなかモチベーションが上がりにくい傾向があります。
したがって、若手向けの研修では、自分が望むキャリア、仕事のやりがい、得たいものといった自分事に紐づけていくステップが非常に大切になります。
成長習慣の形成
若手社員になると、新人時代のような手厚い成長の手助けは少なくなってしまいます。こうしたなかで成果を出し、自己成長を続けるには、成長習慣が大切になります。
たとえば、書籍やセミナーなどを通じて、自ら「学ぶ」習慣を持つことは、成長するうえでとても大切です。また、業務での経験を振り返り、新たな学びや気付きをえる習慣形成も大切になります。
振り返りを通じた学び・成長へのプロセスとしては、「コルブの経験学習モデル」が非常に有名です。
- 1.経験:具体的な体験をする
- 2.省察:体験の内容を振り返る(気付きをえる)
- 3.概念化:次に活かせるように概念化/抽象化する(学びに変える)
- 4.試行:実際に試してみる
具体的な方法としては、日々の日誌・日報を工夫する、上司との1on1などの仕組みを用意するとよいでしょう。
自分事への落とし込み
たとえば、「今年の売上目標3,000万円」という業務上の目標は、組織が事業計画を達成したり成長したりしていくうえで、合理的な目標となっていることが多いでしょう。
一方で、目標の3,000万円が「個人にとって意味がある目標か?」と考えると、悪い表現をすれば「上から落ちてきた目標」になりがちです。
仕事に対してやりがいを持ち、主体的に取り組んでもらうためには、組織が与えた目標を自分事に落とし込んでもらうことが大切になってきます。
自分事への落とし込みをするには、「目的目標の4観点」というフレームワークを使うのがおすすめです。
目的目標の4観点では、「自分-他者」「有形-無形」という2つの軸、4つの分類で、目標達成を価値づけしていきます。
具体的なやり方は、以下のページからダウンロードできる資料でチェックしてみてください。
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組織における部門やチームの目標は、 事業計画から落とし込まれることが多く、「自分事」ではなく「上から落ちてきたもの」に なりやすい傾向があります。目標達成を自分やメンバーの「自分事」にして、モチベーションを高める 原田メソッドの「目的・目標...
まとめ
若手社員に生じがちなモチベーション低下や主体性欠如などの課題を解決するには、以下3つを目的とする若手向け研修を実施するのがおすすめです。
- エンゲージメント強化
- キャリア意識の形成
- スキルUP
若手向け研修の効果性は、以下3つのポイントを大切にすることで高まりやすくなるでしょう。
- スキルよりも価値観への働きかけ
- 成長習慣の形成
- 自分事への落とし込み
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