タイムマネジメントは、目標達成に向けて限りある時間を有効活用し、成果をあげるための手法です。誰もが等しく「時間」の制限を持つ中でハイパフォーマンスを実現するためには、重要度の高い仕事や緊急度の高い仕事を見極めて、仕事に優先順位を適切に付けることが必要です。
本記事では、タイムマネジメントの意味や目的、メリットなどを踏まえて、具体的な実施手順やタイムマネジメントに有効なフレームワーク等を解説しています。
<目次>
- タイムマネジメントとは?
- タイムマネジメントを実践するメリットと効果
- タイムマネジメントの実施手順
- タイムマネジメントを成功させるコツ
- タイムマネジメントにおすすめのフレームワーク
- 時間管理ツールのおすすめ一覧
- タイムマネジメントに役立つ書籍
- まとめ:タイムマネジメントで生産性を高めよう
タイムマネジメントとは?
はじめに、「タイムマネジメント」の意味や目的を簡単に確認しておきます。
タイムマネジメントの意味
タイムマネジメントを日本語に翻訳すると「時間管理」です。もちろん、ビジネスにおいても「自分の時間を管理する」わけですが、意味合いとしてはより積極的に「限られた時間を有効活用すること」が重要となります。
タイムマネジメントの目的
タイムマネジメントは、「目標達成のために時間を有効活用して、効果性や効率を改善しながら成果をあげること」が目的です。大前提として1日24時間という共通の制限がある中で、限られた時間をいかに有効活用するかというトピックはビジネスパーソンにとって欠かせないスキルです。
近年では、
- 「働き方改革」の流れ
- 日本の労働生産性に対する危機感
といった背景があるなかで、組織にとっての重要性も増しつつあります。
タイムマネジメントを実践するメリットと効果
こちらも確認として、タイムマネジメントに取り組むメリットと効果を確認しておきます。
【メリット①】より大きな成果を上げられるようになる
タイムマネジメントにより、成果に直結する仕事により集中できるようになります。重要な仕事をきちんと納期通りに進行する、そして、重要度が低い仕事や成果に直結しない仕事の優先順位を下げる・削る等を通じて、個人やチームの目標達成や生産性を向上できます。
【メリット②】ワークライフバランスを保つことができる
タイムマネジメントを実践することで、時間外労働が減少し、仕事とプライベートのバランスを保つことができます。プライベートが充実すると、仕事上でのストレスも軽減し、仕事のパフォーマンスUPにつながる等の好循環を作ることができます。
【メリット③】急な仕事に対応できる
タイムマネジメントができている状態は、自分の時間やタスクをしっかりとマネジメントできている状態です。急な仕事が生じても、仕事の優先順位を見極めて対応する時間を生み出すことができます。
【メリット④】チームとしての生産性が高まる
タイムマネジメントの基本は、タスクマネジメントです。マネージャーとメンバーがタイムマネジメントできるようになると、相互にタスク進捗のケアやサポート等も出来るようになり、チーム全体の生産性を高めることができます。
【メリット⑤】重要な仕事に集中できる
タイムマネジメントできると、「重要だと理解しているが、忙しくて時間が取れていない仕事」に着手できるようになります。結果として、業務改善、新規事業の企画、人材育成といった未来を生み出していく重要な仕事に時間を割けることができ、中長期的にさらに生産性や成果をあげることができます。
タイムマネジメントの実施手順
本章では、具体的なタイムマネジメントの実施ステップを解説します。
【手順①】タスクを洗い出す
最初に、今ある「すべてのタスク」を可視化しましょう。可視化することで、まずはタスクの抜け漏れが生じないようにすることが非常に重要です。すべてのタスクが見えるようになることで、余計なストレスもなくなり、優先順位を付けて、タスクを進めることに集中できるようになります。
【手順②】タスクの優先順位付けを行なう
次に、一覧化したタスクに優先度を付けていきます。きちんと優先順位を付けていくことで、「成果をあげるために重要な仕事」を把握して、実行するスケジュールを組んでいくことが出来ます。優先順位の付け方に関しては、後述する時間管理のマトリックスを活用することをおすすめします。
【手順③】スケジューリングをする
次は、優先順位付けしたタスクを自分のカレンダーへと落とし込んでいきます。スケジューリングのポイントは、日程が決まっているスケジュール以上に、「優先度の高いタスク」をしっかりと優先してスケジュールに組み込むことです。
なお、完全に隙間なくスケジュールを詰めてしまうと、飛び込みの仕事等に対応できなくなります。ある程度バッファを持たせると良いでしょう。
【手順④】実行する
カレンダーで設定したタスクをしっかりと集中力を持って実行していきます。飛び込み仕事や相手がいる仕事をつい優先してしまい、優先順位が高いタスクを後回しにしてしまわないように注意しましょう。
また、実行する際には、どの仕事にどのくらい時間がかかったのかわかるように、タスク完了までにかかった時間をカレンダーにメモしておくと振り返りがしやすくなります。想定していた時間よりも多くかかったものが何か、早く終わったものが何か、何が飛び込んできてスケジュールがズレたか等を把握することで、今後のスケジューリングに活用することができます。
【手順⑤】振り返りをする
時間管理の精度をあげるうえで、スケジューリングの振り返りをすることです。1日の終わりに簡易に振り返り、また1週間の終わりにしっかりと振り返る習慣をつけましょう。振り返りのポイントは、「計画通りに実行できたか、どこでズレたか」「優先度の高い仕事に時間を使えたか」「明日/来週のスケジュールに何を反映したらよいか」です。
タイムマネジメントの実践方法については、以下の記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
タイムマネジメントを成功させるコツ
タイムマネジメントの実施手順に加えて、各ステップを成功させるためのコツをいくつか紹介します。
【コツ①】タスクを抜け漏れなく具体的に書き出す
「タスクを洗い出す」とき、所持しているタスクを抜け漏れなくすべて書き出すことがタスク管理を成功させるうえで最大のポイントです。この段階で抜け漏れがあると、優先順位の設定を見誤ったり、計画からのズレが生じたりしがちです
また、タスクはできるだけ分解して具体化することが重要です。ここで具体的にタスクを洗い出しておくと、スケジューリングがしやすくなります。
ただし、具体化できなかったタスク等に関しても、「○○のプロジェクト進捗をタスクに落とす」といった形ですべてのタスクを漏れなく一元管理しましょう。
【コツ②】優先順位を適切に付ける
続いてのコツは、タスクの優先順位を適切に付けることです。優先度が適切でなければ、タスクをスケジューリングして実行しても、成果はあがりにくいです。
なお、後述する時間管理のマトリクスで紹介する緊急度と重要度を踏まえて優先順位を付ける際には、「後工程がどうなっているか?」「成果に繋がるタスクかどうか?」といった視点も持っておくことが大切です。
優先順位が適切か判断できない場合は、上司やチーム、プロジェクト単位で動いているのであれば、プロジェクトメンバーに確認しましょう。
【コツ③】実行できる範囲でスケジュール管理をする
タイムマネジメントで成果をあげるコツとして、「実行できる範囲でスケジューリングする」という点もあります。スケジューリングしても実行できなければ、意味がありません。さらにはスケジューリングしても実行できなければ、かえってストレスを感じてしまうでしょう。
PDCAを回しながら、タスクにかかる時間や自分の処理スピードの見積もり精度を高めていき、現実的なスケジュールを組むことが重要です。
タイムマネジメントにおすすめのフレームワーク
次に、タイムマネジメントを実施するときに役立つフレームワークを紹介します。
時間のマトリックス
時間のマトリックスとは、世界的に有名なビジネス書籍『7つの習慣』で紹介された時間管理の考え方で、「物事の優先順位を判断する」ためのフレームワークです。ご存じの方も多いかと思いますが、非常にシンプルで、かつ役立つ考え方となっています。
<時間管理の4象限>
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時間管理マトリックスでは、「重要性」と「緊急性」の2軸を掛け合わせて、持っているタスクを4つの領域に分類します。
- 緊急で重要なもの(第1領域)
- 緊急ではないが重要なもの(第2領域)
- 緊急だが重要ではないもの(第3領域)
- 緊急でも重要でもないもの(第4領域)
時間管理のマトリックスを使うことでタスクに適切な優先順位を付けることができ、限られた時間の中で最大限の生産性を発揮することが可能になります。ポイントは、「重要」な領域に時間を投資すること、つまり、第1領域と第2領域を優先することです。
私たちはつい緊急性の軸を優先して第3領域に時間を使ってしまったり、一種の“逃避”として第4領域に時間を使ってしまったりします。第4領域の活動を止め、第3領域の活動を削る、他の人に依頼する等をしていくことで、重要な領域にしっかりと時間を使えるようにしましょう。
時間管理のマトリックスに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
タスクブレイクダウン
タスクブレイクダウンは、プロジェクトや仕事を、「実行」を管理できるタスクとしてブレイクダウン、つまり、落とし込んでいくことです。イメージは、落とし込んでいく、というよりも、「仕事」の大きな岩を、細かなタスクという石へ砕いていく、というものです。
タスクブレイクダウンを活用することで、仕事をタスクとしてスケジュールに落とし込んで実行していくことが出来ます。また、タスクブレイクダウンのプロセスを通じて、全体像を把握したり、全体の前後関係を把握したりすることで、タスクの優先順位を適切に決めて実行できるようになるでしょう。
たとえば、「新規記事を作成して、web上にアップする」という仕事があった場合、以下のようなタスクに分解していくことが出来ます。
1.ターゲットや記事タイトル・構成等の骨子を決めて、企画内容の承認を得る
2.記事を実際に執筆する
3.校正を依頼して完成させる
4.サムネイルなどのクリエイティブ制作を依頼する
5.記事をwebアップする
このように細かなタスクへと分解することで、タスク毎の所要時間を見積もったり、納期を決めたり、スケジュールに落とし込むことが出来るようになります。
HIRODEN
HIRODENは、「タスクの手戻しをなくす」ために有効な思考のフレームワークです。先ほどのタスクブレイクダウンをする時に、抜け漏れが生じないようにするフレームワークと考えると良いでしょう。HIROENは、タスクとして確認すべき内容の頭文字を繋ぎ合わせたものです。
1.あらかじめ誰かに聞いておくべきことはないか(HEAR)
2.誰かに伝えておくべきことはないか(INFORM)
3.誰かに頼んでおかなければならないことはないか(REQUEST)
4.自分自身で実施すべきことは何か(OPERATE)
5.調査、検討を要することはないか(EXAMINE)
6.あらかじめ誰かと交渉すべきことはないか(NEGOTIATE)
時間管理ツールのおすすめ一覧
最近は時間管理やタスクマネジメントを電子ツールやアプリで実行している人も増えています。紙でもオンラインでも押さえるべきポイントは同じです。自分のライフスタイルや性格に合った時間管理の仕組みを模索していってください。
本章では、オンラインで時間管理を実施する際におすすめの時間管理ツールを3つ、またオフラインで管理・共有したい方向けにツールを1つ紹介します。
Googleカレンダー
Googleカレンダーは、「スケジュール管理ツール」です。Googleをベースとしたカレンダーツールであり、グループウェアとして組織で導入されていれば、他のメンバーと予定を共有することが簡単です。
他の時間管理ツールとの連携も多く、より細かな時間管理ツール、またスケジュール調整ツールなどと連携させると便利です。また、同じグーグルでGoogleタスクマネージャーというタスク管理ツールもありますので、こちらと連携させてもよいでしょう。
Googleカレンダーでは、カレンダーの予定を色分け等もできますので、前述した「時間管理のマトリックス」の考え方に従って、自分が第1領域~第4領域のどこにどれぐらいの時間を使っているかを見える化するといったことも可能です。
参考リンク:https://support.google.com/calendar/answer/2465776
toggle
toggleは、タスクの作業時間を記録できる時間管理ツールです。基本的に無料で利用できます。作業開始時と終了時にクリックするだけで、タスクにかかった時間を自動的に計測し、記録することができます。
繰り返し実施するタスクなどを記録していくことで、「タスクの作業時間をどれくらい削減できたのか」など、生産性向上につながるでしょう。プロジェクトや案件ベースなど項目別でタスクを分類したり、Googleカレンダーと連携させたりすることも可能です。
参考リンク:https://toggl.com/
Time Crowd
Time Crowdは、作業時間が記録でき、データをグラフ化できる時間管理ツールです。チームやプロジェクト単位で業務の時間管理を共有することもできます。タスク時間の可視化に特化しており、また、メンバーの行動も把握できるので、チームで時間管理に挑戦したい人におすすめです。
Canva
Canvaは、タイムスケジュール表が簡単に作成できるテンプレートを無料で提供するオンラインデザインツールです。
ビジネス・仕事で使えるタイムスケジュール表から、旅行やフェスイベント、ウェディングなどで使えるスケジュール表まで、幅広い活用シーンを想定して作られたテンプレートが豊富に揃っています。
オンライン上でタイムスケジュール表を作って、画像として保存したい方、紙に印刷・共有したい方に大変おすすめです。
参考リンク:Canvaによるタイムスケジュールの詳細
時間管理ツールに関しては、下記の記事で、より多くのサービスを詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。
タイムマネジメントに役立つ書籍
最後に、タイムマネジメントを実施するうえで役立つ2つの書籍を紹介します。
『イシューから始めよ』(安宅和人)
本当に解決すべき問題を見極めて、「価値のある仕事を見出す」ためのヒントが記載されています。
価値のある仕事は、
- イシュー度(課題解決の必要性)
- 解の質(課題解決の答え)
の度合いで成り立ちます。
本書では「イシュー度が高く、解の質も高いものが価値のある仕事」と解説されています。ロジカルシンキングを身に付けたい新人や短時間で良質なアウトプットを生み出したい人におすすめの書籍です。
『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)
本質的な仕事や必要不可欠な仕事など、「本当に重要なことだけに集中する」ための思考法が記載されています。エッセンシャル思考を身に付けることで、「仕事で成果をあげる」「自分の軸に沿って決断できる」「日常で充実感を覚える」などの効果を得られます。
仕事でやることが多すぎて中途半端になってしまう人や他人に振り回されてしまって自分のやるべきことに集中できない人におすすめの書籍です。
まとめ:タイムマネジメントで生産性を高めよう
記事では、タイムマネジメントで成果をあげるための具体的な実施手順やコツ、思考のフレームワークから時間管理ツール、書籍までを紹介しました。
「タイムマネジメント」という言葉の響きは、画期的な手法がありそうにも感じますが、大切なのは、原理原則の徹底です。
①タスクをすべて洗い出す
②仕事の優先順位を決める
③優先度の高い仕事からスケジューリングをする
④実行する
⑤振り返りをする
PDCAサイクルを継続して回し、ムダな工数を省きつつ、生産性を高めていきましょう。







