モチベーションとは、心理学における動機・動機づけを意味する言葉であり、人間が行動を起こすきっかけになるものを指します。ただ、あいまいなニュアンスで、「やる気」と同じ意味で使われているケースも多くみられます。
近年、知識労働や感情労働が多くなるなかで、メンバーのモチベーションが生産性に大きな影響を与えるようになっています。
本記事では、まずモチベーションの概要とメリットを解説します。後半では、マネジメントやヒューマンスキル研修を得意とする研修会社の知見を踏まえて、モチベーションを高める2つの方法やモチベーションが下がる要因、組織内のモチベーションを維持・向上するポイントを解説します。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、セルフリーダーシップや主体性を引き出し、「モチベーション」を言い訳にしない組織を作る、同時に、部下の動機付けをする管理職のコミュニケーション能力向上などのヒューマンスキル研修を提供しています。ご興味あれば研修カタログをご覧ください。
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<目次>
モチベーションとは何か?
モチベーションとは、心理学で「動機」や「動機づけ」を意味する言葉です。
動機とは、人間が行動を起こすきっかけになるものです。また、動機づけとは、「動機をつける」、つまり行動のきっかけを生み出すアプローチの総称です。
「やる気」との違い
一般的に「モチベーション」と「やる気」は同じ意味で使われることが多い言葉です。
やる気というと、どちらかといえば「プロなのだから、自分でやる気を高めなさい」「やる気を言い訳にする」「やる気がなかなか出ない」といった形で、一種の精神論や根性論的にとらえられてしまう部分もあります。しかし、モチベーション(=動機)は、心理学的に数々の研究がされており、実務やマネジメントに活用できるものも多くあります。
ビジネスパーソンは自分自身のパフォーマンスを高めるために、また、上司やリーダーや組織のパフォーマンスを高めるために、“モチベーション”とは何かを理解して、適切なセルフマネジメントやフォローなどをしていくことが大切です。
モチベーションの4分類
心理学者のデイビッド・マクレランドが提唱する「マクレランドの欲求理論」では、モチベーションを、以下の4つに分類しています。
- <マクレランドの欲求理論におけるモチベーションの4分類>
- 達成動機:成し遂げることへの欲求
- 権力動機:人より優れる、人に影響したり動かしたりすることへの欲求
- 親和動機:人と関係したい、仲良くなりたいという欲求
- 回避動機:失敗・困難を避けたいという欲求
4つの動機それぞれの強さや優先順位は、人によって異なります。
たとえば、Aさんが「達成動機が最も高く、回避動機が著しく低い」一方で、同期のBさんは「達成動機と親和動機が同じぐらいに高く、権力動機が著しく低い」こともあるでしょう。
モチベーションのマネジメントをするときには、各メンバーの動機の強さを把握したうえで、それぞれに合ったアプローチをすることが有効です。欲求理論を使ったマネジメントの具体的な方法は、以下の記事で紹介しています。
モチベーションを上げるメリット
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メンバーのモチベーションを高めると、以下の効果・メリットが得られます。
行動促進
モチベーションが高いとは、行動に対して動機づけされている状態です。動機づけされると、高い目標や課題などに前にしても、「チャレンジしてみよう!」や「もっとやってみよう!」などのポジティブな気持ちが生まれやすくなります。
そのため、成果をあげる、課題解決をするうえでは、モチベーションを高めて、メンバーの行動が促進される状態をつくることが有効です。
取り組み意欲の向上
モチベーションが低い状態では、行動に対して動機付けされておらず、いまの仕事などに対しても「やりたくないけど、仕事だからやっている」といった状態です。そのような状態は、たとえば、お客様やほかのメンバーと接するときの態度や作業品質などに悪い影響をもたらすでしょう。
一方で、モチベーションが高ければ、「行動したい」と思っている状態であり、作業やコミュニケーションの質も向上します。
パフォーマンスUP
取り組み意欲のところで書いたことにも関係しますが、モチベーションが高ければ、仕事の成果を出すまでのスピードや精度、質などが大きく向上します。
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モチベーションを高める2つの方法
メンバーのモチベーションは、先ほどのマクレランドの欲求理論に加えて、外発的動機づけと内発的動機づけという2つの方法をうまく組み合わせながら高めていくことが効果的です。
外発的動機づけ
外発的動機づけとは、以下のように外から得られる(与えられる)要素による動機づけのことです。
- 給与、賞与
- 昇進、昇格
- 罰則・降格・減給(罰則からの回避)
- 上司やメンバーからの承認、賞賛
- 上司からの褒め言葉
- 上司・メンバー・お客様などからの感謝の言葉 など
外発的動機づけは、言葉のとおり、上司やメンバーなどの「外部から与える」ことができるものです。したがって、マネジメントするうえでは、活用しやすく即効性もあります。ただ、外発的動機づけには、一種の依存性や中毒性があります。また、与えていくと「もらえることが当たり前」となって耐性がついたりします。注意しましょう。
なお、セルフマネジメントの場合、「いまの仕事が終わったら、ランチに行こう」「いまのが終わったら、ご褒美にいま見てたものを買おう」なども外発的動機づけになります。
上述したようなさまざまな要素のなかで、「何を提供するのがいいか?」といった部分を検討する際に、マクレランドの欲求理論が参考になるでしょう。
内発的動機づけ
内発的動機づけは、以下のように自分自身の内側から生まれるものによる動機づけのことです。
- ワクワクする
- チャレンジしたい
- もっとやりたい
- もっと深く知りたい など
内発的動機づけは、自分の内側から湧き出る動機であるため、限界がありません。また、外部からの報酬がなくても、高いモチベーションでやり続けられる利点があります。
ただし、内発的動機づけは、外発的動機づけと違って、直接的に「外部から与える」ことができません。したがって、仕事のやりがいを考えたり価値を考えたりするワークショップを実施するなど、じっくりとアプローチする必要があります。
内発的動機づけを考えるうえでも、マクレランドの欲求理論は参考になります。たとえば、達成動機に強い人に対しては、「適切な目標」を与える、決めてもらうこと自体が、内発的動機付けになったりします。
メンバーのモチベーションをマネジメントするうえでは、外発的動機づけと組み合わせて、内発的動機づけを高めていくアプローチも欠かさないことが大切です。
モチベーションが下がる要因
メンバーのモチベーションをマネジメントするうえでは、「モチベーションを上げる」以前に、「モチベーションを下げないこと」が大切です。本章では、モチベーションの阻害要因を紹介します。思い当たるものがあれば、まずは要因を排除していきましょう。
仕事に意味付けできていない
仕事の場合の“意味付け”とは、仕事や目標に対して「自分にとってどういう意味があるか?」を考えて明確にすることです。
仕事における個人の目標は、多くの場合、組織の目標をプロセスやチームで分担していく形で決められます。たとえば、「新商品Aを1万個販売する」という組織目標を落とし込んでつくられた個人目標「商品Aを100個販売する」は、組織にとっては事業計画の達成につながるものであり、非常に合理的です。一方で、落とし込まれた時点では個人にとって意味がある目標ではなく、“外から与えられた”“上司から落とされた”という感覚である場合も多いでしょう。
そのまま仕事が動き始め、目標に意味づけが行なわれていない状態では、目標達成へのモチベーションが上がりにくくなります。
目標や道筋が見えない
意味付けと少し関係することですが、たとえば、具体的な数値目標などのゴールがない状態で、ただ商品Aを売り続けても、いずれ仕事に飽きたり「自分は何のために仕事をしているのだろう?」などの不安や違和感が生じたりしてしまいます。
また、極端な話、右も左もわからない新人に「今年は3億円売ろう」といっても、ゴールまでの道筋や方法が見えなければ、モチベーションは下がるでしょう。
信頼関係がない
上司がメンバーを信頼していなかったり、また、逆の立場で、メンバーが上司を信頼していなかったりする場合にも、メンバーのモチベーションは低下しやすくなります。
承認されない
人には、誰しも「褒められたい」「認められたい」などの承認欲求があります。
したがって、上司がメンバーの承認欲求を満たさず、以下のような対応をしていた場合、「自分は認められていない」などの想いから、メンバーのモチベーションは著しく低下するでしょう。
- メンバーの意見を聞かない
- 自分の意見ばかりを押し付ける
- ダメなところばかり指摘して、良いところを褒めない など
公正に評価されない
企業において人事評価は避けることができないものであり、人事評価は待遇につながるからこそメンバーのモチベーションに大きく影響します。
評価への不満は大きく下記の2種類あります。
- ・評価への絶対的な不満:
- ⇒「こんなに頑張っても、少ししか評価されない……」
- ・評価への相対的な不満:
- ⇒「Aくんより評価が低いのは納得がいかない……」
リスクが大きい
人間には、安全欲求があります。また、人によっては、動機のなかで「回避動機」が強いタイプもいるでしょう。安全動機が強いタイプに、以下のような仕事を求めるとモチベーションが下がるでしょう。
- 失敗する可能性が高い、成功イメージが湧かない
- 失敗によって降格や左遷などにつながる可能性が高い
- 本人の能力やキャパシティを遥かに超えている(と感じる) など
組織内のモチベーションを維持・向上するポイント
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組織内のモチベーションを維持・向上させるには、まずはモチベーションを下げる要因を排除して、以下の施策を実施することが有効です。
心理的安全性を確保する
心理的安全性とは、チームの目標達成に向けて、自分の無知や無能、失敗や不安などをさらけ出せる状態です。
心理的安全性の高い組織では、上司とメンバー、メンバー同士の間に、以下のような関係性があります。
- 自分の意見を聞き入れてもらえる
- お互いが信頼し合っている
- 困ったときに助けを求められる
- ミスや失敗をしても批判されない
- 問題なども指摘し合える
こうした組織で働くメンバーには、「自分は信頼されている・認められている」などのポジティブな想いから、高いモチベーションでチームに貢献する姿勢が生まれやすくなります。
心理的安全性を高める方法は、以下の記事をチェックしましょう。
ミッション、ビジョン、目標を明確にする
ミッションは「自分たちが何のために存在するのか?」、ビジョンは「目標達成によってどのような世界を作り出したいか?」ということです。
たとえば、以下のような組織のミッション・ビジョンを伝え、本人と一緒に目標設定することで、目指すべきゴールと道筋が明確になり、モチベーションも向上しやすくなります。
- ミッション:いまの地域の農家さんを元気にしたい!
- ビジョン:いまの地域の農業や農作物の魅力が多くの人に知られる世界
- 目標:地産地消のイベントを通じて、年間1万個の商品Aを販売する など
個人個人にとっての意味づけを大切にする
上記で設定した目標は、あくまでもチームや組織のミッション、ビジョン、目標です。
極論になりますが、各個人にとって一番大事なものは「自分の人生」「自分の幸せ」です。だからこそ、組織や仕事上の目標に個人としての意味づけしてもらうことで、仕事に対する当事者意識、モチベーションが生まれやすくなります。
意味づけのときに活用したいのが、自分-他者、有形-無形という2つの軸、4つの分類で目標を意味づけする「目的目標の4観点」というフレームワークです。「目的目標の4観点」を使うことで、以下のような意味づけが可能になります。
- 「目的目標の4観点」で生まれる4種類の意味付け
- 自分×有形(自分にもたらされる形ある良いこと):
- →ボーナスが増える
- 自分×無形(自分にもたらされる形ない良いこと):
- →農家から感謝される
- 他者×有形(他人にもたらされる形ある良いこと):
- →農家の野菜や活動が多くの人に知られる
- 他者×無形(他人にもたらされる形ない良いこと):
- →社長や上司が喜ぶ
適切に評価・フィードバックする
組織とメンバーは、精神的なつながりであると同時に、賃金を通じた関係でもあります。したがって、人事評価やパフォーマンスに対するフィードバックも、非常に大切です
人事評価は、公平公正であることが大切です。公平公正の基本は、評価の基準を明らかにして、基準に照らし合わせて評価することです。仕事の成果は、個人のパフォーマンスだけで決まるものではなく、また、さまざまな種類の仕事があるなかで、完璧に公平公正な評価をすることはほぼ不可能です。ただ、中期的に見て、公平公正であることが何よりも大切です。
ただ、人やタイミングによって、外的環境やパフォーマンスの低下などの理由で、高評価が得られるだけの成果が出せないことはあるでしょう。だからこそ、公平公正な人事評価に加えて大切になるのが、以下のように日々のフィードバックを通じて承認の機会を増やすことです。
- テレアポの朝習慣が続いているんだね。きっと成果が出るから、今後も頑張って。
- 私は、基本のやり方ができていると思うよ。成果が出るまで、諦めずに続けてみて。
- まだ成果は出ていないけど、進め方はとても良いと思う。 など
モチベーションアップにつながるフィードバックのやり方は、以下のページからダウンロードできる資料を参考にしてみてください。
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まとめ
モチベーションは、心理学において動機・動機づけを意味する言葉です。「モチベーション≒やる気」といった曖昧な理解をされることもありますが、「モチベーション=動機」は心理学的な見地から、実務に使えるさまざまな理論が提唱され、検証されているものです。
ビジネスパーソンが個人のパフォーマンスを高め、また、管理職や人事が組織の生産性を高めるためには、“モチベーション”が何なのかを理解したうえで活用していくことが大切です。
モチベーションのマネジメントをするうえでは、「マクレランドの欲求理論」と「内発的動機づけ・外発的動機づけ」に基づくアプローチがわかりやすく、かつ有効です。
組織のマネジメントを考える際には、モチベーションを高めること以上に、まずは「モチベーション下げない」ことが大切です。たとえば、以下のような要因はモチベーションをさげるものといえます。
- 意味付けできていない
- 目標や道筋が見えない
- 信頼関係がない
- 承認されない
- 公正に評価されない
- リスクが大きい
モチベーションを下げる要因の排除を心がけたうえで、以下の施策を実施していくとよいでしょう。
- 心理的安全性を確保する
- ミッション、ビジョン、目標を明確にする
- 個人個人にとっての意味づけを大切にする
- 適切に評価・フィードバックする
HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、セルフリーダーシップや主体性を引き出し、「モチベーション」を言い訳にしない組織を作る、同時に、部下の動機付けをする管理職のコミュニケーション能力向上などのヒューマンスキル研修を提供しています。ご興味あれば研修カタログをご覧ください。
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また、メンバーのモチベーションアップ、特に内発的動機付けには「7つの習慣®」研修が効果的です。「7つの習慣®」研修には、メンバーのコミュニケーション活性化や離職率の低下、主体性の向上といった多くの効果があります。
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