アフターコロナにおけるアメリカの人事トレンド
厳しい労働市場のなかで、ピープルマネジメントへの取り組みが不可欠に
竹田最近のアメリカ企業のピープルマネジメントにおいて、関心の高い課題は何でしょうか。加えて、マネジメントにおける課題もお聞かせいただけますか。
ハートコロナ禍を経て、ビジネスパーソンの働き方は大きく変わりました。現状はリモートで働く人と出社する人、そしてリモートと出社を組み合わせて働くハイブリッド型の人がおり、働き方が多様化している状態です。
ハイブリッド型の働き方が広がるなかでは、従業員のパフォーマンスを高めるような企業のカルチャーをどのように築くのかが課題となっています。また、AIが人の働き方に関わってくるようになったため、AIをどう活用するのかも人々の関心を集めています。
加えて、従業員とのコミュニケーションも重要な課題のひとつです。こうした変化を良いと思う人もいれば、懸念を持つ人もいます。さまざまな考えや思いを持つ従業員に対して、どのように対応していくのかが大事です。
特にコロナ禍以降は、Z世代やミレニアム世代、X世代など、世代ごとの価値観の違いがより明確になったと感じます。世代間のコミュニケーションをどう図り、マネジメントするのかも重要な課題のひとつでしょう。
アメリカの労働市場は競争が激しいので、企業は優秀な人材を集めて自社に留め、能力をさらに開発していこうとしています。その流れもあり、若い人が早く昇進することも多くなりました。その一方で、若い世代がリーダーになる準備ができていないことも散見されるので、どのように準備をしてリーダーを育成していくのかが労働市場全体の課題です。
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竹田今はパラダイムシフトのタイミングだと感じています。従来から年功序列型だった日本でもジョブ型に大きく転換しつつあり、若い人に機会が巡ってくるようになっています。
一方で、ベテラン層ではリスキリングがテーマになっています。アメリカの状況はいかがでしょうか。
ハートスキルを増やすことはどの世代にも必要です。これまではおおまかなキャリアパスが予測できていたと思いますが、現在はなかなか予測できません。
だからこそ評価方法が成果型に移行してきており、アメリカでも「成果を出さないと昇進できない」というクリアなやり方に移ってきています。ベテラン層もスキルを高めていくことが必要ですね。
「静かな退職」「力を持った従業員」ワーカーはどんな企業で働きたいのか?
竹田日本では心理的安全性や「静かな退職」、ジョブ型などの概念、制度が人事分野のトレンドとなっています。アメリカではどのようなトレンドが見られますか。
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ハート心理的安全性の確保はもちろん、静かな退職(Quiet Quiting)」はアメリカでもトレンド化しています。日本と同様にパラダイムシフトが起きていて、従業員から求められることが変わってきました。
従業員のなかには、プライベートと仕事のバランスや柔軟性のある働き方を求める人など、さまざまな考えやニーズがあります。
最近よく聞くのが“Empowered Employee(力を持った従業員)”です。企業間の人材獲得競争が激しくなって、従業員が転職しやすくなった背景もあり、雇用主と従業員とのパワーバランスが変わってきているのを感じます。
こうした変化を受け、企業の経営陣には「従業員を企業にどう繋ぎ止めるか?」というプレッシャーがかかっています。加えて、企業のカルチャーを築きつつ、従業員に成果を上げてもらうこと、両者のバランスを取ることも課題です。
先日デールカーネギー社では、従業員に対して「どんな企業で働きたいか」という調査を行いました。その結果では、主に3つの要素があることがわかっています。
1つ目は「自信」。「このリーダーは自分を良い方向に連れていってくれるはずだ」と、リーダーに自信が持てるかです。「組織が自分の役割や居場所を作ってくれる」という自信を持てることも含まれます。
2つ目は「安心」。自分の意見を述べることができ、聞き入れられる安心感があるかということです。企業を「安全な場所」だと感じて発言できるか、自分のアイデアを企業に発信しようと思えるかが大事になります。
3つ目は「希望」。「企業が自分にコミットしてくれる」「自分に投資してくれる」という希望を持てるかです。投資という側面では、研修を受講できることもその一部だといえます。
パラダイムシフトのなかで求められる「リーダーシップ」
竹田従業員のなかには変革によって失われるものは想像できるものの、新しく獲得できるものを想像するのが難しい人もいます。
そのため変革を恐れるのかもしれません。だからこそ「希望」は、パラダイムシフトにおける重要なキーワードだと感じました。
ハート現在の不確定で不透明な時代だからこそ、以前よりも強くて透明性のあるリーダーシップが求められています。また、リーダーが周囲にインスピレーションを与えられるかどうかも重要なポイントです。
そのインスピレーションがチームに自信を与え、チーム全体に回復力や機敏性、恐れない心が派生することにもつながるからです。しかしすばらしいリーダーがいても、周りの環境次第ではそのリーダーシップが十分に発揮されないかもしれません。リーダーシップが発揮されるような組織編成や環境作りにも気を配るとよいでしょう。
リーダーはその企業の社風、トーンを決める人です。企業としては、どんな人を育てていきたいのか、意図のあるメッセージを発信しなくてはいけません。加えて、社風に合った働きやパフォーマンスがあれば賞賛するべきです。
もし行動して失敗したとしても、叱責するのではなく「何を学んだのか」を確認することも必要ですね。大企業になればなるほど、ポジティブな社風や目標を決めていることが多いのですが、なかなか浸透していない現状もあります。一部の従業員だけでなく、企業全体にどう展開して浸透させていくのかを考えるとよいですね。
そのためには、従業員とのエンゲージメントも大事になってきます。以前はほぼ全員が出社していたので、従業員とのエンゲージメントもしやすく、カルチャーも浸透させやすかったのです。しかしコロナ禍でリモートワークが普及したため、組織におけるカルチャーの浸透という側面では、より複雑性が増していると思います。
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