20代社員に必要な研修とは?内容の基本やキャリア開発のポイントを解説

更新:2024/04/16

作成:2023/09/19

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

20代社員に必要な研修とは?内容の基本やキャリア開発のポイントを解説

20代社員は、企業側から多くの期待がある一方で、仕事に慣れてきたことによるマンネリ感やキャリアビジョンが見えないなどの理由から、モチベーション低下や伸び悩み、優秀層の離職が起こりやすい世代でもあります。

 

そんな20代社員に活躍や成長を促し、離職を防ぐためには、いまの20代の課題や価値観に合った内容の研修やキャリア開発を提供していくことが大切です。

 

記事では、まず、20代社員のよくある課題と身につけたいスキルを確認します。

 

確認したうえで、記事の後半では、研修会社としての知見を踏まえて、いまの20代向け研修に必要な内容、研修を成功させるためのポイントを解説します。

 

<目次>

20代社員の課題

20代社員には、以下3つの課題が生じやすい傾向があります。

 

当事者意識の不足

当事者意識の不足とは、自分が所属する組織の目標・課題、自分の仕事に対して、他人事になってしまっている状態です。オーナーシップが低い・不足しているともいえるでしょう。

 

オーナーシップが低いと、たとえば、上司が示す「今回の新製品は100万個売るぞ!」などの目標に対しても、納得感を持って高いイニシアチブを発揮することができません。

 

なお、いまの20代は、終身雇用の概念を持っていません。そのため、組織への当事者意識が強くなりにくい傾向もあります。

 

したがって、企業側で20代社員の当事者意識を高める工夫をしない場合、エンゲージメントも低くなりやすいでしょう。

 

 

 

マンネリ感によるモチベーション低下

20代中盤などになって、プレイヤーとして活躍できるひと通りのスキル・知識を身につけると、新人時代にOJT研修を受けていた頃のような緊張感や成長実感、新たな刺激を得にくくなります。

 

そうすると、モチベーションの低下が起こりやすくなってきます。

 

一方で組織側からすると、20代社員に対して「まだまだ」という感覚もあります。

 

そのため、企業側が「もうちょっと成長してから次の仕事をアテンドしよう」と考えていると、本人の感覚とギャップが生じやすくなるでしょう。

 

特に最近は本人の自己評価が過剰になる傾向も見受けられます。

 

また、近年では、SNSなどを通じて同年代との比較がしやすくなっています。

 

たとえば、20代社員が、インターネットニュースなどで見かける華々しく活躍している他社の若手や、自由に見えるフリーランスなどに“隣の芝生は青い”のような印象を受けた場合、「自分は今の仕事を続けて大丈夫だろうか?」と不安になることも増えています。

 

不明瞭や過度なキャリア意識

5、10年先までの中長期的なキャリア意識やプランがない場合、日々の仕事に対して「今の仕事をやり続ける意味はあるのだろうか?」といった疑問や違和感が生じやすくなります。

 

いまの若手は、終身雇用が崩れ、大手企業の倒産やM&Aなども見てきているからこそ、「自分自身が成長しないと安定は手に入らない」という感覚も持っています。

 

現代の20代社員は、ある意味で、昔よりも成長意欲は強くなっているといえます。

 

だからこそ、意欲が焦りに転じてしまい、自分が描いたとおりに歩みを進められない不安からモチベーションが下がっている20代社員も見受けられます。

 

20代で身につけたいスキル

20代で身につけたいスキル

 

20代社員には、一人で成果を出すことが求められます。一人で成果を出すには、以下のスキルをバランスよく身につけることが大切です。

 

汎用スキル

20代社員が自分の能力を発揮する大前提として、どの業界、職種で成果をあげるうえでも土台となる以下の基本行動を身につける必要があります。

 

こうした能力は、「できている」と思ってしまいがちですが、土台となる汎用スキルが高いレベルで実践できていないと、専門スキルを身に付けても発揮できないことが多いでしょう。

  • タスク管理
  • タイムマネジメント(時間管理)
  • 報連相(報告、連絡、相談)
  • ポータブルスキル

 

 

 

ロジカルシンキング

ロジカルシンキングとは、論理的な思考力のことです。目標達成に向けて、計画を作成したり、プロジェクトを進行したりするうえでは、ロジカルシンキングが不可欠になります。

 

また、問題解決においては、発生している問題・課題を論理的に整理・分析して解決策を導き出し、実行に移すことが必要となるでしょう。

 

ほかには、上司やメンバーとの報連相でも、情緒や感情的な話ではなく、筋道に沿って論理的な説明を行なうことが求められます。

 

 

目標達成力

仕事で成果を出し続けるには、自分が達成できる具体的目標を立てたうえで、ゴールまでの計画を立案・実行していくことが求められます。

 

目標達成力というと、非常にあいまいなものに聞こえるかもしれません。ですが、目標達成力の全容は、以下のようにいくつかのスキル・メソッドから成り立つものです。

  • 目標を設定する
  • 達成に向けた計画を作成する
  • セルフマネジメントして実行する
  • 周囲の協力をえる など

たとえば、目標達成力を磨くための研修といえば、以下のようなものになるでしょう。

 

キャリア自律

キャリア自律とは、将来のキャリアプランを描き、描いたキャリアの実現に向けて主体的に自己開発へ取り組んでいくことを指します。

 

自分のキャリアへの当事者意識や責任感という意味で、キャリアオーナーシップとも呼ばれます。

 

20代社員は、先述のとおり仕事へのマンネリ感を生じたり、“隣の青い芝生”へのあこがれが強くなったりする年代です。

 

だからこそ、ブレることなく主体的に仕事や自己開発を続けてもらうためには、自分のキャリアビジョンを描き、仕事に意味付けしていくことが大切になります。

 

 

 

マネジメント力

ビジネスにおけるマネジメントとは、「リソースを何とかやり繰りして成果を出す能力」とも表現できます。

 

20代社員の場合、まず、自分一人で成果を出すことが大切です。一人で成果を出すために必要となるのは、個人が自分自身をマネジメントする「セルフマネジメント力」になります。

 

セルフマネジメント力とは、先述の目標設定・タスク管理・時間管理などの道具を使い、「自分が持っている資源(工数やスキル、人間関係)をやり繰りしながら成果を出す」能力です。

 

そして、20代社員も、早ければリーダーになってメンバーの指導をしたり、後輩指導をしたりすることもあるでしょう。

 

指導時には他メンバーを動かして成果をあげるという「マネジメント力」が必要となります。

 

 

20代向け研修に必要な内容

20代向けの研修で効果性を高めるには、目的や対象者の課題に応じて、以下のような内容を組み合わせていくことが多いです。本章では、効果性の高い20代向け研修に必要な内容を詳しく解説します。

 

キャリア開発

キャリア開発とは、先ほどのキャリア自律に向けたプログラムのことです。具体的には、キャリアプランやキャリアビジョンの構築、実現に向けた行動計画の作成などのことになります。

 

キャリア開発では、まず、以下3ステップで現状の自己分析と棚卸しを行ない、未来のイメージにつなげてもらいましょう。

  • 1.自分の専門スキルや強みの分析
  • 2.今までの業務経験の棚卸し
  • 3.なりたい姿、未来のイメージ

以上の棚卸しができたら、キャリア研修のなかで“なりたい姿”までのキャリアパスを考え、なりたい姿の実現に必要な能力開発まで落とし込んでいきます。

 

人事担当者や上司のなかには、「20代社員のキャリア自律を促進すると、退職につながるのでは?」と懸念される人も存在します。

 

ですが、現在は何もしなくても “隣の青い芝生”の情報が入ってくる状態であり、企業が個人のキャリアを縛れる時代ではなくなっています。

 

したがって、20代社員向けの研修では、しっかりとキャリア自律を促し、いまの仕事に意味付けを行ない、社内で描けるキャリアに気付いてもらうことで、エンゲージメントやパフォーマンスを高めることが大切になります。

 

なお、キャリア開発においては、世界で50年以上の歴史があり、2,500万人が実践する強み発見診断ツール「ストレングス・ファインダー®」を活用すると、前向きかつ柔軟なキャリアビジョンを描きやすくなります。ぜひ活用しましょう。

 


 

エンゲージメントと当事者意識の向上

エンゲージメントとは、メンバーにおける組織・仕事との心理的な結びつきの強さを意味する概念です。具体的には、以下のような心理がどのぐらいあるかを指す概念です。

  • 今のチームの一員であることに誇りを持っている
  • メンバーのために貢献したいと思っている
  • 今の仕事には価値がある など

エンゲージメントが高い20代社員は、目標や課題に対して当事者意識を持って取り組めます。なお、当事者意識は、仕事に対して自分なりの意味付けをすることでも向上可能です。

 


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基礎スキル向上

各職種などで必要な専門スキルは、以下のような基礎スキルを実践できてこそ発揮できるものです。

  • ビジネスコミュニケーション(報連相、ラポール形成、傾聴 など)
  • タイムマネジメント(タスクの整理と優先順位づけ、スケジューリング など)
  • ポータブルスキル など

仕事で成果を出し続けるには、上司・メンバー・お客様などと信頼関係を築くことが大切になります。

 

たとえば、時間管理を通じて期限どおりに仕事を終わらせる、上司やメンバーにきちんと報連相を行なうといった基礎スキルの実践は、仕事で関わる人と信頼関係を築くうえでも大切になるでしょう。

 

 

専門スキル

20代向けの研修では、いまの業務で必要な専門スキルを伸ばしてあげることも必要です。

 

20代社員の場合、本人からすると数年でひと通りの業務を覚えて、一人前になった感覚もあるかもしれません。ただ、組織から見れば、まだまだスキル不足の状態です。

 

成果をあげるうえでは、たとえば、営業であればヒアリング能力、プレゼンテーション、提案営業のフレームワークなど、より専門的なスキルが必要となります。

 

なお、専門スキルはもちろん大切ですが、仕事へのエンゲージメントや当事者意識、また、ポータブルスキルに不足があると、スキルの効果も半減してしまいます。注意しましょう。

 

役割認識と視野拡大

エンゲージメントやモチベーションを高めるには、チームやプロジェクト内での役割を認識してもらったり、作業以外のところに視野を拡げてもらったりすることも大切です。

 

20代のうちは、「自分の仕事」×「短期の成果」しか見えていないようなこともあります。

 

そのため、チーム内での役割認識、リーダーをサポートするようなフォロワーシップ、自分の仕事の上流や下流を見据えた視野、中長期的な思考など、視野拡大という点でも成長してもらうことが必要でしょう。

 

20代向け研修を成功させるポイント

20代向け研修を成功させるポイント

 

20代向け研修の効果を高め成功させるには、以下の3つのポイントを大切にするとよいでしょう。

 

心のコップを上に向ける

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、“心のコップ”という表現で、心の状態を描写しています。

 

コップに水を注ぐことをイメージしてください。コップが上を向いていれば、上から水を注げば、注いだ分だけコップには水が溜まっていきます。

 

しかし、コップが下を向いていたら、上から水を注いでも、コップのなかに水は入らずこぼれていってしまいます。

 

という「コップ」が学ぶ姿勢や心の状態であり、そして、注がれる「水」が周囲からのアドバイスや学習になります。

 

心のコップが上を向いていれば、学ばせた分だけ、また、アドバイスした分だけ、成長につながっていくでしょう。

 

一方で、コップが下を向いていた場合は、研修しても学ぶ意欲は低く、周囲からのアドバイスなども素直に受け止められない状態になります。

 

20代社員の心のコップが下を向いている状態の場合、研修を通じて正しい行動ややり方を教えても、効果性は低くなってしまいます。

 

そのため、研修で20代社員の行動変容を促すには、「心のコップがどういう状態になっているか?」に着目する必要があります。

 

20代社員の心のコップを上向きにするには、まずは、心のなかにたまっているものを吐き出す、研修で得られるものを自分事にして学ぶ姿勢をつくる、全体的な課題があればスキル研修よりもマインド研修を先行して実施するといったことが大切になります。

 

 

「考え方」を指導する

人には、それぞれに独自の“モノの見方・考え方”があります。ただ、仕事で継続して成果をあげる、成長するためには、正しい考え方を身に付けることが大切です。

 

たとえば、同僚を“一緒に成果をつくるパートナー”ではなく、“上司の評価を争う競争相手”と見ていた場合、相手との信頼関係は作れないでしょう。

 

同じように、仕事を“給料の分だけいやいや我慢する作業”ととらえていれば、当事者意識や創意工夫が生まれるはずもありません。

 

20代社員の研修でも、こうした仕事や人、顧客に対する基本的な考え方を指導することがとても大切になります。

 

スキルなどを使うのは“人”であり、人は、能力を各個人の考え方に基づいて発揮することになります。だからこそ、20代のうちの研修で正しい考え方を伝え、習慣化していくことがとても大切になります。

 

なお、スティーブン・R・コヴィー博士の著書「7つの習慣®」では、モノの見方・考え方のことを「パラダイム®」と呼び、個人のパラダイムは自由であっていい一方で、万有引力のように個人の価値観では変えられない絶対の「原則」があるとしています。

 

そして、絶対の原則を身に付けることが、継続して成功するうえでの基礎になると伝えています。

 


 

自分事・キャリア形成に落とし込む

人は、自分自身や自分のキャリアと無関係なことに対して、「意味がない」「やりたくない」と思いがちです。

 

特にいまの20代は、終身雇用の価値観がなく、昭和世代における企業に対する忠誠心のようなものが薄くなっています。

 

また、20代社員は、個人の価値観が尊重される多様性の時代に生まれ育っていることも一つの特徴です。

 

だからこそ、20代社員は、“自分にとって意味がある”と納得できなければ、研修などで教えられる内容に対しても、他人の価値観や企業のルールを一方的に押し付けられているように感じがちになってしまいます。

 

したがって、20代向けに研修をするときには、以下のような感覚をもたせることが非常に大切になってきます。

  • 研修の内容が自分(あなた)にとって意味がある
  • 実践することでメリットがある
  • 自分のキャリアにつながる など

また、20代社員に、研修だけでなく高いモチベーションで働いてもらうためには、本人のキャリアと担当業務を関連づけたり、上司から与えられた目標やミッションを意味付けによって自分事にしたりすることが大事になってくるでしょう。

 

意味付けをする際には、「目的・目標の4観点」というフレームワークを使うのがおすすめです。

 

たとえば、上司から「今年の売上目標は1,000万円」という数字を与えられたと仮定します。

 

目標の数字を他人事ととらえていた場合、モチベーションも上がりませんし、作成した実施計画を主体的に取り組むことも難しいでしょう。

 

そこで、目的・目標の4観点を使い、目標達成で起こる“素晴らしいこと”を、以下の「自分-他者」「有形-無形」という2つの軸で表現してもらいます。

 

すると、設定した目標に対するワクワク感が生まれやすくなります。

有形-無形
  • 自分:自分にもたらされる利益や良いこと
  • 他者:自分以外の人にもたらされる利益や良いこと
有形-無形
  • 有形:表彰やお金などの形ある良いこと
  • 無形:気持ちや感情などの精神的な良いこと

 

 

まとめ

20代社員には、以下のような課題が生じやすい傾向があります。

  • 当事者意識の不足
  • マンネリ感によるモチベーション低下
  • 不明瞭や過度なキャリア意識 など

こうした問題を解決するには、以下の内容を中心に20代向け研修のプログラム設計をしていくことが大切です。

  • キャリア開発
  • エンゲージメントと当事者意識の向上
  • 基礎スキル向上
  • 専門スキル
  • 役割認識と視野拡大

なお、20代向け研修を成功につなげるには、以下のポイントも大切にするとよいでしょう。

  • 心のコップを上に向ける
  • 「考え方」を指導する
  • 自分事・キャリア形成に落とし込む

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、20代社員の心のコップを上に向け、主体性やモチベーション、コミュニケーション力の向上につながる研修を提供しています。

 

20代社員の課題解決に向けて外部研修の導入を考えている方は、ぜひ以下のページから資料をダウンロードしてみてください。

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また、キャリア開発のメリットや方法、注意点、事例などは以下にまとめているので参考にしてください。

 

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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