エンゲージメントの定義とは?
まずは、エンゲージメントの対象となる2つの領域や、類似用語との違いなどを確認しながら、エンゲージメントが具体的にどういうものかを確認していきましょう。
エンゲージメントの対象となる2つの領域
エンゲージメントは、もともと約束や婚約など、「つながり」を意味する単語です。ビジネス分野では、おもに以下の2つの領域で使われます。
- HR領域(従業員エンゲージメント)
- マーケティング領域(顧客エンゲージメント)
HR領域における従業員エンゲージメントは、「従業員と組織・仕事との心理的な結びつきの強さ」を示す言葉です。“従業員エンゲージメントが高い”とは、組織・仕事・職場への愛着があり、「自分はいまのチームの一員である」「組織のミッションやビジョンに誇りがある」と思えている状態です。
マーケティング領域における顧客エンゲージメントは、「企業(ブランドやサービス)と顧客の信頼関係、結びつきの強さ」をあらわす言葉です。具体的には、「SNSで好意的な感想を投稿する」や「競合より高い商品でも買ってくれる」などの顧客行動から測れるものになります。
本記事では、人材領域における従業員エンゲージメントを対象に解説していきます。
従業員満足度との違い
従業員満足度は、文字どおり「従業員が組織に満足しているか?」を測る指標です。
従業員エンゲージメントは、従業員満足度を発展させ、「組織に満足しているか?」+「貢献意欲ややりがい」をあらわすものとなります。
たとえば、仕事に満足していても自発的な貢献意欲ややりがいが低い場合、「従業員満足度は高いが、従業員エンゲージメントは低い」になることもあります。
少し語弊はありますが、「従業員満足=働きやすさ」、「従業員エンゲージメント=働きやすさ+働きがい」というイメージです。
ワークエンゲージメントとの違い
ワークエンゲージメントは、仕事にフォーカスして従業員のエンゲージメントを示す概念です。「ポジティブな状態で仕事に没頭しているかどうか?」の指標になります。
日本におけるワークエンゲージメントの第一人者である慶應義塾大学の島津教授は、ワークエンゲージメントは、以下3つの概念で構成されるとしています。
- 活力
- 熱意
- 没頭
ワークエンゲージメントは、「仕事そのもの」に対する精神的な結びつきであるのに対して、従業員エンゲージメントは、「仕事だけでなく、企業・チーム・上司・メンバーなどの結びつきも含んだ概念」です。
従業員エンゲージメントを高めるには、仕事そのものに価値や意味を感じられていて、熱中できている状態を指すワークエンゲージメントを向上させる必要があります。
「人的資本経営」時代に注目されるエンゲージメント
経済産業省では、「人的資本経営」という言葉を使い、人財を「資本」としてとらえ、資本の価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を推し進める動きがあります。
人的資本経営を行なううえでも大切になるのが、エンゲージメントです。
たとえば、近年では、商品ライフサイクルの短期化や産業のサービス化、市場の急激な変化などが起こりやすくなっています。企業側では、こうしたさまざまな変化に対して、迅速な柔軟な対応をすることが求められており、従来のトップダウン的な意思決定には限界が出てくるようになりました。
しかし、エンゲージメントの高いメンバーの多い組織をつくると、外部環境の急激な変化や課題が生じたときにも、現場などでの主体的な意思決定や行動が促されやすくなります。
詳しくは後述しますが、近年の労働市場は、転職の一般化と少子化にともなう慢性的な“売り手市場化”によって優秀層の離職も起こりやすくなっています。こうしたなかで自社に合う優秀な人財を獲得し、定着を促していくうえでも、エンゲージメントの向上は重要です。
なお、2020年11月にSEC(米国証券取引委員会)が上場企業に対して「人的資本の情報開示」を義務付けたことで、最近では、日本企業でも統合報告書などのIR資料内で自社の従来のエンゲージメント向上に向けた取り組みなどを開示する動きが加速するようになりました。







