「人に好かれたい」「信頼される人間になりたい」というのは人として自然な欲求です。
周囲を見渡してみると、たくさんの人から人気があり、周りに人の輪が絶えない人が、1人や2人はいるでしょう。
どうすればそうした人たちのように、周囲から好かれたり信頼されたりすることができるでしょうか。
答えを紹介しているのが、人間関係やコミュニケーションのノウハウといった分野で世界中に知られているデール・カーネギーの著者『人を動かす』、人に好かれる6原則です。
本記事では、デール・カーネギーの研修を提供している研修会社としての知見も踏まえて、カーネギーの著書『人を動かす』に書かれている「人に好かれる6原則」の内容や実践について解説します。
<目次>
『人を動かす』とデール・カーネギー
最初に、書籍『人を動かす』と著者デール・カーネギーについて簡単に紹介します。
デール・カーネギーとは?
『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーは、1888年、アメリカ・ミズーリ州の農家に生まれました。
カーネギーは、将来、講師になることを夢見て大学に進学し、卒業後は販売員や営業職の仕事に就きます。
その後、カーネギーは、仕事で得た収入を資金にして単身ニューヨークへと旅立ちます。
ニューヨークの地で紆余曲折を経て、カーネギーはついに長年の夢であった講師の仕事に巡り会いました。
YMCAにおける話し方教室の講師です。講師として瞬く間に人気を博したカーネギーは、その後独立し、デール・カーネギー研究所を設立します。
デール・カーネギー研究所は、カーネギーが亡くなった後も継続し、現在では1000万人以上、アメリカ大統領をはじめとする著名人がコミュニケーションやプレゼンテーションの研修を受けるような世界的な研修機関として成長します。
書籍『人を動かす』
書籍『人を動かす』は、デール・カーネギーの代表作といえる一冊です。
1936年に出版された『人を動かす』は、ビジネスシーンのみならず家庭や学校など、あらゆる人間関係で役立つスキルの集大成として世界中で人気を博しました。
同書には、好ましい人間関係の築き方や、相手を気持ちよく動かすための方法など、人を動かすための原理原則が実践的なノウハウを交えて紹介されています。
文化や時代を超えた原則を紹介した『人を動かす』は人間関係やコミュニケーションの悩みを抱える人達に支持され、全世界で1500万部以上の売上を記録する大ベストセラーとなりました。
『人を動かす』について知りたい人は、以下の記事で内容を要約しているので参考にしてください。
人に好かれる6原則とは?
書籍『人を動かす』は、「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」の4つのパートから構成されています。
本章では、著書『人を動かす』に書かれている人に好かれる6原則のそれぞれを紹介します。
人に好かれる6原則①「誠実な関心を寄せる」
この原則を端的に言えば「相手に好かれたいなら、自分が相手に興味を持つ」ということです。
人に好かれようとして、相手の気を引いたり、興味を持たせようとしたりする人も少なくありません。
しかし、こうしたことをしていても、本当の友達を得る、本当の意味で相手に好かれることはかないません。
そうではなく、自分から相手に対して誠実な関心を寄せ、時間やエネルギーを相手のために注ぎ込むことが大切です。
人は誰でも、自分に関心を寄せてくれた相手に対して、好印象を抱くものです。相手への関心を示すことは、人間関係をつくる基本となる原則です。
人に好かれる6原則② 「笑顔を忘れない」
「いつも笑顔な人」と「いつも不機嫌な人」のどちらと一緒にいたいと思いますか? もちろん時と場合にはよりますが、笑顔を向けられて、嫌な気持ちになる人は基本的にいないでしょう。
笑顔でいることは相手の心に安らぎと安心感をもたらします。笑顔な人の周りに、人の輪が絶えないのも、このような理由があるからです。
人に好かれる6原則③「名前を覚える」
人は「自分を重要な存在として扱って欲しい」という承認欲求を持っています。そして、“自分”の象徴となるのが“名前”です。
私たちにとって、自分の「名前」は、生まれたときからずっと一緒にいる存在であり、何度も何度も呼びかけられてきた愛着ある存在です。
名前はその人を際立たせ他の誰かとは違う存在にする、いわば“自分自身の象徴”ともいえるものです。
だからこそ、相手の名前を確実に憶える、そして、相手を名前で呼びかけることが人間関係をつくるうえで有効になるのです。
相手の名前を意識して呼ぶことで、相手にあなたの印象をより強く、そして好印象とともに残すことができるでしょう。
人に好かれる6原則④「聞き手にまわる」
人に好かれるためには「話し上手よりも、聞き上手になる」ことが大切であるという原則です。
私たちは得てして、気の利いた話や面白いジョークができる人を、会話上手だと思いがちです。
しかし、人間は“他人の話題”よりも、“自分の興味・関心”、そして“自分自身”にはるかに高い関心を持っているものです。
だからこそ、相手に好かれるうえで大切なことは、上手くしゃべれるか、何を話すかよりも、相手の話のよい聞き手となることです。
相手が話したいことは何か、相手が求めているリアクションは何かを意識して相手の話に耳を傾けることが、人に好かれる近道です。
人に好かれる6原則⑤「関心のありかを見抜く」
先ほど紹介した通り、人が話したいのは“自分自身が興味を持っていること”です。
だからこそ、人に好かれる人は、相手の関心を探り、相手が関心を持っているテーマを話題にします。
自分の関心を話題にするのではなく、相手の関心がどこにあるのかを探り、それを会話のテーマにすることが大切です。
人に好かれる6原則⑥「心からほめる」
いつでも、どこでも、誰に対しても、心からの称賛を贈るという原則です。
ここまで繰り返している通り、人は「周りから認められたい」「重要な存在だといわれたい」欲求を持っています。
だからこそ、相手をほめることが、人間関係の構築につながります。
大切なのは心からほめることです。
相手がこだわりを持っていること、努力していること、気づいていない長所などを積極的に見つけ、具体的にほめるようにしましょう。
相手をほめることが、相手に好かれることにつながります。
人に好かれる6原則を実践するコツ
本章では、ビジネスシーンや人間関係の中で人に好かれる6原則を実践するためのポイントをお伝えします。”
「誠実な関心を寄せる」を実践するポイント
相手に誠実な関心を寄せるためには、相手を知ろうとすること、それを行動で示すことがポイントです。
アメリカの第26代大統領であるセオドア・ルーズベルトは、アメリカ大統領のなかでも多くの人々から慕われた人物として知られています。
カーネギーは、ルーズベルトが人気を博したのは、ルーズベルトが他者に深い関心を示していたことが理由だと述べています。
「この二年間こんなにうれしい日はなかった。このうれしさは、とても金には代えられないと、皆で話し合っています」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
カーネギーは、大国の大統領であるルーズベルトが、ホワイトハウスで働くスタッフの一人ひとりにまで関心を持ち、気を配っていた様子を上記のエピソードなどで紹介しています。
たとえば、大手企業の経営者が上記のような人物であれば、部下・メンバーはこぞってついていくかも知れません。
世界で最も多忙な一人であろうアメリカ大統領ですら、自分を支えてくれるスタッフにこれほどの気を配るのです。
まして、関わる人が数十人である管理職やリーダーであれば、このような気配りは絶対に必要なものになるでしょう。
自分にとって大事な人、関係を深めたい人がいるならば、相手が好きな食べ物は何か、趣味は何か、今の関心事は何かなど、相手について知っている事を1枚の紙に書き出してみると良いでしょう。
また、例えば、職場の部下について、フルネーム、家族構成、家族の名前、趣味、今の関心事、心配していること…を書き出せるでしょうか。
全てすらすら書けるという方は、既にこの原則を実践している方でしょう。
また、「出てこないかも…」という方は改めて「じつは相手のことを知れていない。もっと知らなくては…」と思えてくるのではないでしょうか。
その気持ちが、相手に誠実な関心を寄せる原動力になります。
「笑顔を忘れない」を実践するポイント
笑顔でいることは、私達が想像する以上に様々な恩恵をもたらすものです。笑顔でいることは、人間関係に多くのプラスの影響をもたらします。
しかし、笑顔でいることの大切さは分かるけれども、私たちの人生には、辛いことも悲しいこともたくさんあります。
辛い時や悲しい時など、笑顔を浮かべるのが難しい場合には、どうすればよいのでしょうか?
笑顔に関して「愉快なことや楽しい事がある →(だから)笑顔になる」このように思っている人も多いかもしれません。
しかし、近年の脳科学の研究によると、「笑顔になる → (笑顔によって)楽しく愉快な気持ちになる」のだということが分かっています。
つまり「愉快なこと・楽しいことがあるかどうかに関わらず、常に笑顔でいる」ということに意味があるということです。
無理にでも笑顔をつくることで、自分の気持ちがポジティブになるのです。
楽しそうに振る舞うことで、実際に楽しい気持ちになれます。
気持ちとして笑顔を見せる気にならない時でも、無理にでも笑ってみるという行動をしてみることが大切です。
「名前を覚える」を実践するポイント
以前であれば、ビジネスで初めて会う相手とは、お互い名刺交換をして、相手の名刺に目をやりながら会話をしたり、時には名前の由来を話題にしたり、といったことがごく普通にありました。
しかし、新型コロナウイルス以降、オンラインでの商談もごく普通になる中、とっさに相手の名前が出てこないというケースも増えています。
また、名前を覚えるといっても、「名前を覚えるのが苦手…」という人もいるでしょうし、万が一間違った名前で呼んでしまっては目も当てられません。
人の名前を覚える時は、名前だけでなく「趣味」や「髪型」「出身」「趣味」など、その人に付随する他の情報と一緒に記憶することがポイントです。
単に名前だけを一種の記号として覚えるのではなく、ひとつのストーリーや関連するものをつなげていくことで記憶に残りやすくなります。
一種のダジャレのようですが「身長190cmもあるのに小林さん。ご出身はブナの原生林で有名な青森県…」といったようにこじつけるのもひとつの覚え方です。
記憶を関連させていくことでとっさに名前を思い出せない場合でも、付随する他の情報を思い出していくうちに名前が出てくることもありますので、できるだけその人に関連する事柄と併せて名前を覚えておくと良いでしょう。
「聞き手に回る」を実践するポイント
「会話を盛り上げるには、おもしろい話をしなくてはいけない」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、おもしろい話ができるかどうかは、相手と良い関係を作る上では、さほど重要ではありません。
それよりも遥かに大切なのは、相手に気持ちよく話をしてもらうことです。
そして、相手に気持ちよく話してもらうために有効なのが「質問」です。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
上記に引用したように、カーネギーは、相手が喜んで答えてくれるような「質問」の大切さを強調しています。
繰り返しになりますが、人に好かれるためには、聞き上手に勝るものはありません。どう話すかよりもどう聞くかが人間関係の鍵を握るのです。
相手に関心を持ち、質問してみましょう。そして、相手が熱心にしゃべり始めたら、良い聞き手となり、追加で質問しましょう。
これだけで、あなたがしゃべらなくても、相手はあなたに好印象を持つでしょう。
「関心のありかを見抜く」を実践するポイント
相手の関心のありかを見抜くことを実践するには、少しだけ熟練を要します。
なぜなら、まず先に述べた、6原則のうちの「誠実な関心を寄せる」と「聞き手にまわる」ができている必要があるからです。
そもそも相手に関心を持たなければ人間関係は始まりませんし、相手に気持ちよく自分の話をしてもらわなければ関心のありかもつかめないでしょう。
これらの原則ができた上で、相手の「関心のありかを見抜く」を実践するうえで、効果的なノウハウが2つあります。
1つ目は、先ほど紹介したルーズベルト大統領の習慣が参考になるでしょう。
先ほどは、ルーズベルト大統領は多くの人から慕われていた人物であったと紹介しました。
そして、ルーズベルト大統領が多くの人に慕われた、とくに初対面の人からも好印象を持たれた秘訣は、とあることを習慣にしていたからです。
その習慣とは、「人と会う前には相手が好きそうな話題を前の晩に調べる」ことでした。
「相手のことをきちんと調べる」というのは、例えば、コンスタントに成果を上げている営業職の方であれば、きっと当たり前にやっているでしょう。
事前の下調べは、商談だけでなく、人間関係をつくるうえでもとても有効です。
ポイントの2つ目は、会話の中で相手の関心事を探っていく事です。
先ほど、関心のありかを見抜くためには「聞き手にまわる」原則ができている必要があると述べたのもこのためです。
良い聞き手として話に耳を傾けながら、「相手の話しぶりに熱が入るのは、どんなテーマの時なのか?」「前のめりになったり、身振り手振りに変化が出たりするのは、どんなタイミングか?」となどを手掛かりにすると、相手の関心のありかも見えきます。
そして、そのテーマに関して、深掘りの質問をしていくと、相手はさらに熱を持って話してくれることでしょう。
「心から褒める」を実践するポイント
繰り返しになりますが、人はみな周囲からの賞賛に飢えているものです。だからこそ、他者に心からほめてもらえれば、これほどうれしい事はありません。
「心から褒める」の原則を実践するうえでのコツは、3つあります。
1つ目は、そのままですが、“口先だけのお世辞”ではなく、“心の底から”相手を褒めるということです。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
カーネギーが言うように、相手に好かれようとして、本心で思ってもいないお世辞を口にすれば、相手から簡単に見透かされ、むしろ逆効果にもなってしまうでしょう。
相手に伝える前に一歩立ち止まり、「心の底から称賛できているか?」を自分で確認することも大切です。
2つ目は、事実や行動を具体的な言葉にしてほめるということです。
上記で引用したカーネギーの言葉には、「その言葉が具体性を持っていてはじめて、相手の気持ちをじかに揺さぶる」とあります。
人からほめられれば多かれ少なかれ嬉しく感じるものですが、ほめられた言葉に具体性があるほど、「この人は自分のことをしっかりと見て、その上でほめてくれているのだな」思えるものです。
したがって、人をほめる時は「ただ頑張ったね」と漠然とほめるのではなく、例えば「○○さんの気遣いにはいつもすごく助けられているよ。先日の会議の時も、『このアジェンダでしたら、あの資料を準備しておきましょうか?』と声をかけてくれて、お陰で抜け漏れなく準備でして、会議もスムーズに進んだよ!」といった形で事実や行動を具体的な言葉にして伝えることが大切です。
最後の3つ目は、どんな小さなことでも惜しまずほめる、ということです。私たちは得てして、相手の良いところよりも、できていない部分が目につきがちです。
ほめることが大切だと分かっていても、「仕事でろくな成果も出せない相手には、そうそうほめる言葉なんて出てこないよ!」という人も多いかもしれません。
しかし、成果が出ていなければ、相手を褒めることはできないのでしょうか?
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
改めて考えてみれば、相手をほめることに、メリットはあってもデメリットはありません。
たとえ、最終的な成果は出ていないとしても、そして、どんな小さなことであっても、進歩や成長、努力や改善があれば、それを心から褒めることが有効であると、カーネギーは話しています。
普段から関心を持って接していれば、相手の成長や進歩も発見できるでしょう。私たちの心掛け次第で、心からほめる材料はいくらでも見つかるのです。
まとめ
記事では、デール・カーネギーの著書『人を動かす』に書かれている「人に好かれる6原則」をテーマにお伝えしました。
紹介した6つの原則をご覧になると分かる通り、どれも対人関係において大切だと思えることばかりです。
では、「6つの原則を実際の人間関係の中ですべてできているか?」と聞かれると、どれ位できているか心許ない、完璧には出来ていないよという人が多いのではないでしょうか。
「人に好かれる6原則」とある通り、これらを自分のものにすることができれば、常に人の輪が絶えず、幸せで円満な人間関係が待っています。
家庭や職場の人間関係の中で意識し、普段の習慣にしていきましょう。
プライベートでも、そして、仕事でも、人から好かれることは大切です。
「誰が言うかよりは何を言うか」とは思いつつ、私たちは「誰が言うか」、自分が好きで信頼している人物に言われるのか、嫌いで信頼もできない人から言われるのかによって、その言葉をどれぐらい受け入れるかはまったく違うでしょう。
従って、人を動かす力を身に付けようと思えば、まず相手から人として好意を持たれる、信頼されることが大切なのです。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、米国デールカーネギー・アソシエイツ社と提携して、日本中でデール・カーネギー研修を提供しています。
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