本章では、ビジネスシーンや人間関係の中で人に好かれる6原則を実践するためのポイントをお伝えします。”
「誠実な関心を寄せる」を実践するポイント
相手に誠実な関心を寄せるためには、相手を知ろうとすること、それを行動で示すことがポイントです。
アメリカの第26代大統領であるセオドア・ルーズベルトは、アメリカ大統領のなかでも多くの人々から慕われた人物として知られています。
カーネギーは、ルーズベルトが人気を博したのは、ルーズベルトが他者に深い関心を示していたことが理由だと述べています。
庭師や下働きの人たちを見ると、以前と少しも変わらない親しみを込めて、一人一人の名を呼んで話しかけた。彼らは、いまだにその時のことを語り草にしている。ことにアイク・フーヴァーという男は、うれし涙を浮かべてこう言った──
「この二年間こんなにうれしい日はなかった。このうれしさは、とても金には代えられないと、皆で話し合っています」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
カーネギーは、大国の大統領であるルーズベルトが、ホワイトハウスで働くスタッフの一人ひとりにまで関心を持ち、気を配っていた様子を上記のエピソードなどで紹介しています。
たとえば、大手企業の経営者が上記のような人物であれば、部下・メンバーはこぞってついていくかも知れません。世界で最も多忙な一人であろうアメリカ大統領ですら、自分を支えてくれるスタッフにこれほどの気を配るのです。まして、関わる人が数十人である管理職やリーダーであれば、このような気配りは絶対に必要なものになるでしょう。
自分にとって大事な人、関係を深めたい人がいるならば、相手が好きな食べ物は何か、趣味は何か、今の関心事は何かなど、相手について知っている事を1枚の紙に書き出してみると良いでしょう。
また、例えば、職場の部下について、フルネーム、家族構成、家族の名前、趣味、今の関心事、心配していること…を書き出せるでしょうか。全てすらすら書けるという方は、既にこの原則を実践している方でしょう。
「出てこないかも…」という方は改めて「じつは相手のことを知れていない。もっと知らなくては…」と思うかもしれません。その気持ちが、相手に誠実な関心を寄せる原動力になります。
「笑顔を忘れない」を実践するポイント
笑顔でいることは、私達が想像する以上に様々な恩恵をもたらすものです。笑顔でいることは、人間関係に多くのプラスの影響をもたらします。
しかし、笑顔でいることの大切さは分かるけれども、私たちの人生には、辛いことも悲しいこともたくさんあります。辛い時や悲しい時など、笑顔を浮かべるのが難しい場合には、どうすればよいのでしょうか?
笑顔に関して「愉快なことや楽しい事がある →(だから)笑顔になる」このように思っている人も多いかもしれません。しかし、近年の脳科学の研究によると、「笑顔になる → (笑顔によって)楽しく愉快な気持ちになる」のだということが分かっています。
つまり「愉快なこと・楽しいことがあるかどうかに関わらず、常に笑顔でいる」ということに意味があるということです。無理にでも笑顔をつくることで、自分の気持ちがポジティブになるのです。
楽しそうに振る舞うことで、実際に楽しい気持ちになれます。気持ちとして笑顔を見せる気にならない時でも、無理にでも笑ってみるという行動をしてみることが大切です。
「名前を覚える」を実践するポイント
以前であれば、ビジネスで初めて会う相手とは、お互い名刺交換をして、相手の名刺に目をやりながら会話をしたり、時には名前の由来を話題にしたり、といったことがごく普通にありました。
しかし、新型コロナウイルス以降、オンラインでの商談もごく普通になる中、とっさに相手の名前が出てこないというケースも増えています。また、名前を覚えるといっても、「名前を覚えるのが苦手…」という人もいるでしょうし、万が一間違った名前で呼んでしまっては目も当てられません。
人の名前を覚える時は、名前だけでなく「趣味」や「髪型」「出身」「趣味」など、その人に付随する他の情報と一緒に記憶することがポイントです。
単に名前だけを一種の記号として覚えるのではなく、ひとつのストーリーや関連するものをつなげていくことで記憶に残りやすくなります。一種のダジャレのようですが「身長190cmもあるのに小林さん。ご出身はブナの原生林で有名な青森県…」といったようにこじつけるのもひとつの覚え方です。
記憶を関連させていくことでとっさに名前を思い出せない場合でも、付随する他の情報を思い出していくうちに名前が出てくることもありますので、できるだけその人に関連する事柄と併せて名前を覚えておくと良いでしょう。
「聞き手に回る」を実践するポイント
「会話を盛り上げるには、おもしろい話をしなくてはいけない」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、おもしろい話ができるかどうかは、相手と良い関係を作る上では、さほど重要ではありません。それよりも遥かに大切なのは、相手に気持ちよく話をしてもらうことです。相手に気持ちよく話してもらうために有効なのが「質問」です。
話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たねばならない。相手が喜んで答えるような質問をすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕向けるのだ。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
上記に引用したように、カーネギーは、相手が喜んで答えてくれるような「質問」の大切さを強調しています。繰り返しになりますが、人に好かれるためには、聞き上手に勝るものはありません。どう話すかよりもどう聞くかが人間関係の鍵を握るのです。
相手に関心を持ち、質問してみましょう。そして、相手が熱心にしゃべり始めたら、良い聞き手となり、追加で質問しましょう。これだけで、あなたがしゃべらなくても、相手はあなたに好印象を持つでしょう。
「関心のありかを見抜く」を実践するポイント
相手の関心のありかを見抜くことを実践するには、少しだけ熟練を要します。
なぜなら、まず先に述べた、6原則のうちの「誠実な関心を寄せる」と「聞き手にまわる」ができている必要があるからです。そもそも相手に関心を持たなければ人間関係は始まりませんし、相手に気持ちよく自分の話をしてもらわなければ関心のありかもつかめないでしょう。
これらの原則ができた上で、相手の「関心のありかを見抜く」を実践するうえで、効果的なノウハウが2つあります。
1つ目は、紹介したルーズベルト大統領の習慣が参考になるでしょう。先ほどは、ルーズベルト大統領は多くの人から慕われていた人物であったと紹介しました。そして、ルーズベルト大統領が多くの人に慕われた、とくに初対面の人からも好印象を持たれた秘訣は、とあることを習慣にしていたからです。
その習慣とは、「人と会う前には相手が好きそうな話題を前の晩に調べる」ことです。
「相手のことをきちんと調べる」というのは、例えば、コンスタントに成果を上げている営業職の方であれば、きっと当たり前にやっているでしょう。事前の下調べは、商談だけでなく、人間関係をつくるうえでもとても有効です。
ポイントの2つ目は、会話の中で相手の関心事を探っていく事です。
先ほど、関心のありかを見抜くためには「聞き手にまわる」原則ができている必要があると述べたのもこのためです。
良い聞き手として話に耳を傾けながら、「相手の話しぶりに熱が入るのは、どんなテーマの時なのか?」「前のめりになったり、身振り手振りに変化が出たりするのは、どんなタイミングか?」となどを手掛かりにすると、相手の関心のありかも見えきます。そのテーマに関して、深掘りの質問をしていくと、相手はさらに熱を持って話してくれることでしょう。
「心から褒める」を実践するポイント
繰り返しになりますが、人はみな周囲からの賞賛に飢えているものです。だからこそ、他者に心からほめてもらえれば、これほどうれしい事はありません。
「心から褒める」の原則を実践するうえでのコツは、3つあります。
1つ目は、そのままですが、“口先だけのお世辞”ではなく、“心の底から”相手を褒めるということです。
誰でもほめてもらうことはうれしい。だが、その言葉が具体性を持っていてはじめて誠意のこもった言葉、つまり、ただ相手を喜ばせるための口先だけのものでない言葉として、相手の気持ちをじかに揺さぶるのである。我々には、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には、反発を覚える
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
カーネギーが言うように、相手に好かれようとして、本心で思ってもいないお世辞を口にすれば、相手から簡単に見透かされ、むしろ逆効果にもなってしまいます。相手に伝える前に一歩立ち止まり、「心の底から称賛できているか?」を自分で確認することも大切です。
2つ目は、事実や行動を具体的な言葉にしてほめるということです。
上記で引用したカーネギーの言葉には、「その言葉が具体性を持っていてはじめて、相手の気持ちをじかに揺さぶる」とあります。人からほめられれば多かれ少なかれ嬉しく感じるものですが、ほめられた言葉に具体性があるほど、「この人は自分のことをしっかりと見て、その上でほめてくれているのだな」思えるものです。
したがって、人をほめる時は「ただ頑張ったね」と漠然とほめるのではなく、例えば「○○さんの気遣いにはいつもすごく助けられているよ。先日の会議の時も、『このアジェンダでしたら、あの資料を準備しておきましょうか?』と声をかけてくれて、お陰で抜け漏れなく準備でして、会議もスムーズに進んだよ!」といった形で事実や行動を具体的な言葉にして伝えることが大切です。
最後の3つ目は、どんな小さなことでも惜しまずほめる、ということです。私たちは得てして、相手の良いところよりも、できていない部分が目につきがちです。
ほめることが大切だと分かっていても、「仕事でろくな成果も出せない相手には、そうそうほめる言葉なんて出てこないよ!」という人も多いかもしれません。しかし、成果が出ていなければ、相手を褒めることはできないのでしょうか?
なぜ、鞭むちの代わりに肉を、批評の代わりに賞賛を用いないのだ? たとえ少しでも相手が進歩を示せば、心からほめようではないか。それに力を得て、相手はますます進歩向上するだろう。
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)
考えてみれば、相手をほめることに、メリットはあってもデメリットはありません。たとえ、最終的な成果は出ていないとしても、そして、どんな小さなことであっても、進歩や成長、努力や改善があれば、それを心から褒めることが有効であると、カーネギーは話しています。
普段から関心を持って接していれば、相手の成長や進歩も発見できるでしょう。私たちの心掛け次第で、心からほめる材料はいくらでも見つかるのです。