若手の営業力強化に悩む会社が増えている3つの背景
「会社の業績を担う営業職をどう育成するか?」は、組織にとって重要のテーマです。一方で、営業の育成に悩む会社からの相談が増えています。これは、“昔よりも営業の仕事が難しくなっている”ことが1つの要因です。この章では、営業の仕事を取り巻く環境がどう変わっているかを解説します。
相対的な購買意欲の低下
少し古い話になりますが、かつて1970年代の日本経済はまだ高度成長の名残が残っており、企業もひたすら成長を求め投資意欲も旺盛でした。買い手が旺盛な購買意欲を持っていた時代、営業に求められたのは、顧客と深い人間関係を構築する力でした。
「こまめに顔を出し、『なにか購入を検討されるものがありませんか?』と伺い、顧客のニーズがなければ楽しく雑談する」、こういう御用聞き的な営業スタイルが歓迎されていた時代でした。製品の機能進化も目覚ましく、購買ニーズが出てきやすい中では、「会ってもらえって、購入しようと考えたタイミングで声をかけてもらえる関係性をつくる」ことで成果が上がりやすかったのです。
しかし、バブルが崩壊して、長期的な低成長時代が始まったころから状況は大きく変わっています。顧客は、「馴染みの関係」というだけで商品やサービスを購入することが無くなり、「本当に必要なのか?」をしっかりと確認して購入するようになりました。また、ある程度は行動成長が終わった段階で、最低限の必要なものはすべて満たされた中で、新製品が、「必要なもの」から、「あったらいいもの」になることが多くなってきたことも、必要性を見極める行動に拍車をかけています。当然、営業も単なる“御用聞き”ではなく、“ヒアリング”と“提案”が必要になりました。
インターネットの発達による「情報の非対称性」の解消
前述した購買意欲の低下は、かなり長い時間軸のものであり、この5年10年のものではありません。それに対して、インターネットの発達による「情報の非対称性」の解消は、この数年、特に顕著になってきている問題です。
これまで購買者と販売企業を比べた場合、該当のサービスや分野に関しては、販売企業が圧倒的に多くの情報やノウハウを持っていることが大半でした。しかし、直近10年ほどで、WEB上に公開される情報量の増加と、検索エンジンの発達により、大抵の情報やノウハウは、インターネット上で手に入るようになりました。
企業も個人も、何かを購入するにあたっては、「まず検索する」こと当たり前になった中で、この5年ほどはノウハウや情報を無料で公開することで見込客を獲得する“コンテンツマーケティング”が加速しており、これも「情報の非対称性」の解消に拍車をかけています。
結果として、営業に求められるのは、サービスの説明や概略的なノウハウ提供ではなく、顧客が実現したい要望や抱えている問題を的確に捉えて、「解決策」として製品やサービスの使い方を提案するソリューション営業になりつつあります。当然、必要とされる知識や求められるヒアリング力・提案力は、どんどん増大しており、人間関係や表面的な商品説明では、営業として成果を上げづらい状況になりつつあります。
ITの進化によるカスタマイズサービスの浸透
同じ商品、同じサービスであっても、購買を検討する顧客の状況は少しずつ違います。その中で、先ほど伝えたように顧客はインターネット上で検索して、ある程度の一般的な情報は手に入れられるようになっています。結果として、顧客が求めることは、「私の問題を解決してくれる私のための解決策」になりつつあります。
そして、ITの進化によってWEBサイトやメールマーケティングにおいては、「私のための情報提供」が実現しつつあります。例えば、amazonなどのECサイトにおけるレコメンド、属性や購買履歴・閲覧履歴によって配信される内容が違うメールマガジンや表示されるコンテンツが変わるWEBサイト運用などもどんどん普及してきています。また、個人向けのサービスであれば、WEB上での簡単見積もりなども一般的です。SNSなどでも、自分が好む情報が表示されるのはご存じの通りです。
WEB上で実現しているわけですから、当然対人間、「営業」に対しても同様以上のものを求めることが当たり前になりつつあります。例えば、事例や機能等に関しても、パンフレットに書いてあるような情報ではなく、「私の参考になる事例」、「私にとって役立つ機能」を知りたいと考えています。また、競合比較等も、一般的な情報ではなく、「私にとっての優劣」という視点での情報提供が望まれています。これに伴って、営業に求められる“企画力”や“知識”も増大しています。
若手の営業力強化におけるトレンド
従来型のOJTでは、若手営業の育成が困難になりつつある中で、“セールスエネイブルメント”といった形で、新たな若手営業育成の仕組みが模索されています。セールスエネイブルメントとは、営業組織を強化・改善するための取り組みのことで、営業研修や営業ツールの開発・導入、営業プロセスの管理・分析といったあらゆる改善施策をトータルに設計し、目標の達成状況や各施策の貢献度などを数値化します。そして、数値分析により、営業活動の最適化と効率化を目指すという取り組みです。






