ビジネスで成果を上げるためには、社内外の関係者や顧客との円滑なコミュニケーションが不可欠です。天性の才能や強みで優れたコミュニケーション能力を持つ人もいますが、すべての人が元からコミュニケーション能力が高いわけではありません。
従って、対顧客や対社内などで必要となるコミュニケーションスキルを身に付けるために、企業でコミュニケーション研修が実施されます。
記事では、コミュニケーション研修を実施する目的やメリット、コミュニケーションを効果的にするポイント、対象や目的に応じたプログラム例を紹介します。
<目次>
- コミュニケーション研修とは?
- コミュニケーション研修を実施する目的とメリット
- コミュニケーション研修を効果的にするポイント
- コミュニケーション研修の具体的なプログラム例
- コミュニケーション研修のおススメ10選
- まとめ
コミュニケーション研修とは?
コミュニケーション研修は、コミュニケーションの心構えをインプットしたり、社内・社外のやり取りで使える実践的なコミュニケーションスキルを身に付けさせたりするものです。
「聞く」「話す」というコミュニケーションは、誰もが子供のころから当たり前のようにやってきていると思います。にもかかわらず、なぜ企業では、コミュニケーション研修が実施されているのでしょうか。
ほとんどの仕事で成果を上げるうえでは、社内外の関係者や顧客とのコミュニケーションが不可欠となります。一口に“コミュニケーション”といっても、ビジネスでは以下のようにさまざまなコミュニケーションが求められます。
- 相手と信頼関係を築く
- 相手から情報を引き出す
- 自分の意見や情報をわかりやすく相手に伝える
- 相手から意見や考えを引き出す
- 人を動かす など
コミュニケーションの技術は、心理学などに基づくものも多く、研修を通じてしっかりと体系や知識を学ぶことが、コミュニケーション力の向上に役立ちます。
コミュニケーション研修を実施する目的とメリット
コミュニケーション研修の目的や実施のメリットは、実施対象や内容によっても異なります。ですが、一般的には、以下のようなメリットが得られます。
顧客との関係構築力やヒアリング力、提案力が上昇する
コミュニケーション研修を受けると、初対面の顧客と信頼関係を作る能力、相手の状況や意見を引き出すヒアリング力、相手のニーズに合わせた商品・サービスの提案力やプレゼンテーション力などを向上させることが可能です。販売職や営業職にとって、高い成果を生みだすうえで必要不可欠な力です。
コミュニケーションミスによる問題が減少する
「人間関係」という言葉のとおり、多くの問題は人と人の「間」で生じます。人間関係が健全でなかったり、コミュニケーションが円滑にできていなかったりすると、チーム内や部門間、顧客との間などで問題が生じやすくなります。
コミュニケーション研修を実施することで、「必要な人に情報が届いていない」「報連相の頻度が足りない」「正確な情報が共有されていない」等による顧客からのクレームやプロジェクトの進捗不全、機会ロス等の問題が起こりにくくなります。
コミュニケーション力の向上につながる共通言語ができる
継続的なコミュニケーション研修の実施は、組織内に「共通言語」を作ります。組織内の共通言語は、社内のコミュニケーションを更にスムーズかつ生産的にします。
- 仕事に対する姿勢や考え方
- コミュニケーションに関する姿勢やテクニック
- 性格特性や価値基準
管理職のマネジメント力が上がる
管理職の役割は、メンバーを動かして組織目標を達成することです。従って、以下のようなコミュニケーション力の向上は、管理職の目標達成、マネジメント力UPに貢献します。
- メンバーと信頼関係を作る
- メンバーをモチベートする
- メンバーに指示を出す
- メンバーにフィードバックする
- メンバーの意見を引き出す
メンバーの主体性が向上する
研修によって管理職のマネジメント力やメンバーのコミュニケーション力が向上すると、認識のズレが少なくなり、相互理解も進みやすくなったりします。スムーズなコミュニケーションや相互理解が進むと、メンバーにとって余計なストレスがなくなり、意見の発信や提案などの主体性の発揮につながります。
コミュニケーション研修を効果的にするポイント
コミュニケーションという言葉は、非常に幅広く曖昧に使われがちです。そのため、コミュニケーション研修を効果的にするには、以下3つのポイントが大切になります。3点をきちんと整理してから研修選びをすることで、効果的なコミュニケーション研修の実施が可能になります。
対象
コミュニケーション研修の対象となる階層や職種です。次の課題、また目的や目標と併せて、「誰のコミュニケーションを改善したいのか?」を明確にしましょう。
- 新入社員
- 若手社員
- 次世代リーダー
- 管理職
- 幹部
- 販売職
- 営業職
- 全社員
など
コミュニケーションにおける課題
次にコミュニケーション研修で「どんなコミュニケーションの問題を解決したいか?」という課題を特定しましょう。
- 顧客へのヒアリング力が低い
- メンバーをうまく育てられない
- 社内の人間関係やコミュニケーションに問題がある
など
目的と目標
課題と対になりますが、コミュニケーション研修を通じて「何を実現したいのか?」、目的とゴールを明確にしましょう。
- 適切なタイミングで報連相ができる
- 新規顧客とスムーズに信頼関係を築ける
- 社内の衝突や機会ロスを減らす
など
コミュニケーション研修の具体的なプログラム例
一口にコミュニケーション研修といっても、対象や課題に応じたさまざまなプログラムがあります。効果的なコミュニケーション研修を実施するためにも、自社の解決したい課題に合わせて適切なプログラム内容を組み合わせていきましょう。
コミュニケーションの基礎
- 対象:おもに新入社員や若手社員
- 課題:ビジネスで使えるコミュニケーションの基礎がない、あまりコミュニケーションが得意ではない など
- 目的:コミュニケーション力を向上させるメリットや役立つシーンなどを学ぶことで、研修にポジティブなイメージを持ってもらう。また、トレーニングでスキル向上も可能であることを伝え、「自分は苦手・上達しない」などの先入観を取り払う
コミュニケーションスタイルの理解
- 対象:新入社員、若手社員、販売職、営業職
- 課題:一定のコミュニケーション能力はあるが、自分と「合わない相手」や「苦手な相手」に上手なコミュニケーションができない など
- 目的:診断を通じて自分のコミュニケーション傾向を理解する。また、コミュニケーションスタイルの概念を知ることで、相手に合わせたコミュニケーションができるようになったり、苦手意識をなくす
報連相の基本
- 対象:新入社員、若手社員
- 課題:適切な報告・連絡・相談ができない
- 目的:報連相の目的やメリットの理解とともに、実践的な報連相スキルを身に付けることで業務上の成果を上げられるようにする
気配り力
- 対象:新入社員、若手社員
- 課題:気配りの欠如や気付き力、感受性の不足によるクレームやトラブルが生じている
- 目的:社内や顧客に対する「気配り」「気付き」の力を身に付けて、ビジネスの成果につなげていく
アサーティブコミュニケーション
- 対象:おもに若手社員
- 課題:自分の意見をなかなか伝えられない、自分の意見ばかり主張してしまう
- 目的:ストレスのない自己主張をするとともに、自他ともに尊重できるコミュニケーション力を身に付ける
信頼関係の構築(ラポール形成)
- 対象:販売職、営業職、管理職
- 課題:顧客やメンバーとの信頼関係の構築をスムーズに行ないたい
- 目的:心理学を踏まえて、ラポール形成に必要な原則と、ペーシングやミラーリングといったコミュニケーションスキルを身に付ける
ヒアリング力
- 対象:販売職、営業職、管理職
- 課題(販売職や営業職):何をヒアリングしたらいいのかわからない、表面的なニーズしか聞けていない
- 課題(管理職):メンバーの課題や業務進捗の把握ができない
- 目的:施策の検討や提案するための現状、相手の意向、モチベーションなどをしっかりと把握できるようにする
プレゼンテーション
- 対象:営業職、管理職、幹部
- 課題:人を動かしたり、影響を与えたりするためのプレゼンテーション力を磨きたい
- 目的:プレゼンテーションで伝える内容・技術・手段を理解して、実践や振り返りを通じてプレゼンテーション力を高める
聴く・褒める・叱る・質問する・伝える・指示を出す・報告を受ける
- 対象:新任管理職、リーダー候補
- 課題:管理職になったばかりで、どのようにメンバーを動かすべきかを悩んでいる
- 目的:管理職として「人を動かして組織の成果を上げる」ために必要な基本的なコミュニケーションスキルを身に付ける
コーチング
- 対象:管理職、幹部、営業職
- 課題:相手の意思や主体性を引き出すコミュニケーションスキルを身に付けたい
- 目的:ラポール形成や質問の技法など、コーチングのスキルを身に付ける
チームビルディング
- 対象:管理職
- 課題:チームが協力しながら目標達成していく状態を作り上げられていない
- 目的:ファシリテーションやアイスブレーキングなどのチームビルディングに必要なスキルを身に付ける
ファシリテーション
- 対象:管理職
- 課題:会議やミーティング、研修などをうまく舵取りできずに悩んでいる
- 目的:ファシリテーションの重要性を確認したうえで、疑似会議のロールプレイングを通してスキルの定着を目指す
フィードバック
- 対象:中堅社員・管理職
- 課題:メンバーのパフォーマンスを高めるフィードバックのやり方に悩んでいる
- 目的:フィードバックの目的や効果、種類などの基本を確認したうえで、ロールプレイングなどで実践しながらスキルを身に付ける。
コミュニケーション研修のおススメ10選
コミュニケーションは誰もが日々行っているものです。しかし、心理学などに基づく体系を学ぶことで、より効果的なコミュニケーションができるようになります。
しっかりとした体形やノウハウに裏付けられた効果的なコミュニケーション研修を行なうためには、以下のような外部の研修会社を利用することもおススメです。対象別に合計10個のおススメ研修を紹介します。
新人若手
若手の関係構築力を3段階高める「コミュニケーション研修」(株式会社ジェイック)
若手社員のコミュニケーション力を磨き、周囲を巻き込める影響力を持った人財を育成する研修です。実例を踏まえたレクチャーと腹落ちしやすい映像とワークを通して、効果的に学んでいきます。
【新入社員対象】ビジネスコミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ(リクルートマネジメントスクール)
ビジネスで必要とされるロジカルな対話力を身に付けることで、お客様や職場でのコミュニケーションにおける課題解決をできるようにする研修です。
販売・営業
対面でもオンライン商談でも通じる!若手の営業力を飛躍的にアップさせる「営業トリガー研修」(株式会社ジェイック)
若手を対象とした営業特化型のコミュニケーション研修です。スキルだけでなく“営業姿勢”も鍛えるオリジナル研修プログラムであり、対面商談だけでなく、オンライン商談でも活用できる顧客との関係構築術を身に付けられます。
ソリューション営業研修(株式会社インソース)
顧客の課題や真のニーズを引き出すヒアリングスキルと、信頼を勝ち取るプレゼンテーションスキルを学べる研修です。
管理職
人を育て自らの成長も促進する「コミュニケーション研修」(株式会社ジェイック)
管理職に必要な8つのスキル(聴く・叱る・褒める・質問する・伝える・指示を出す・報告を受ける・会議する)を身に付けていく研修です。ケーススタディとロールプレイングによって、実際の現場で活きるスキルを習得します。
ブレークスルーコミュニケーション研修(ANAビジネスソリューション株式会社)
コミュニケーションの質を高めて、人間関係をスムーズにする研修です。参加者の潜在的なコミュニケーション力を引き出すプログラムを使って学習を進めていきます。
オンラインファシリテーション研修(株式会社インソース)
Web会議をスムーズに進めて生産性を上げるスキル「オンラインファシリテーション」を学ぶ研修です。オンライン会議ならではの進行ポイントを習得します。
全社員
社員の主体性を引き出し、組織風土を改善する「7つの習慣®」研修
3,000万部以上売れている「7つの習慣®」の考え方を社内に導入するための研修です。心に訴えかけ考えさせる映像をふんだんに使い、考え方の原則を教える研修になります。
2WAYコミュニケーション研修~受信力・発信力UP!~(ANAビジネスソリューション株式会社)
受信力と発信力の向上で、双方向のコミュニケーションを円滑にする研修です。「今、何を期待されているか?」を考える力を養うためのカードゲーム等も取り入れています。
オンライン(リモート)ワークコミュニケーション研修(株式会社インソース)
オンライン上でも伝わるコミュニケーションスキルを高めるために、視覚・聴覚情報によるノンバーバルコミュニケーションや積極的傾聴を習得する研修です。
まとめ
コミュニケーション研修の実施には、以下のような効果があります。
- 顧客や同僚との関係を構築しやすくなる
- 販売力や営業力が高まる
- 管理職のマネジメント力が高まる
- コミュニケーションの共通言語ができる
- 社内の信頼関係が深まる
ただし、一口にコミュニケーション研修といっても対象や課題・目的に応じてさまざまなプログラムがあります。記事では、対象・課題・目的別のプログラム例や、対象に応じたおススメの研修プログラムと研修会社を紹介しました。
外部の研修会社等もうまく活用して、ぜひ社内のコミュニケーション、また顧客への販売力を高めてみてください。