
コーチングの概略や効果、ティーチングとの使い分けを説明したところで、コーチングを実践するポイントを解説していきます。
ラポール形成と場の設定
コーチングは、対話を通して相手に自らの中にある答えを見つけ出してもらう方法です。したがって、相手との間に「問い」を真剣に受け止めてもらい、また出てきた答えを躊躇なく本音で伝えられる信頼関係と安全・安心な場の設定が求められます。
信頼関係を構築するうえで、必要となるのがラポール形成の技術です。相手に対する誠実な関心と尊重を前提にして、ラポール形成の技術を用いることで信頼関係の構築をスムーズに行なうことができます。
ラポール形成の技術には、相手の仕草や姿勢を模倣するミラーリング、声のトーンやリズムをまねるペーシング、相手の発言を返すバックトラッキングなどの技術があります。
こうして築かれる信頼関係と、コーチングの冒頭で、例えば「出てきた話に対する守秘義務や人事評価に反映しないこと」を宣言することで、コーチングをするための「安全・安心の場」が作られます。
なお、ラポール形成の技術について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
適切な質問
コーチングは「問い」を通じて、相手の思考を刺激して、相手の中にある感情や意思、アイデアや施策を引き出す技術です。したがって、コーチングにおいては「適切な問い」の体系が非常に重要となります。
コーチングで扱う「問い」は、例えば以下のような種類があります。
- 現状に対する質問
- 望ましい状態に関する質問
- 価値基準に関する質問
- 課題や障害に対する質問
- 行動を明確にする質問
など
コーチングのなかでは、“When(いつ)”“Where(どこで)”“Who(誰が/誰と)”“What(何を)”“Why(なぜ)”“How(どのように)”という「5W1H」を意識しながら質問すると、思考を整理しやすくなるでしょう。When、Where、Who、Howは具体化、Whyは深掘り、Whatはお題の設定や意思の洗い出しなどにそれぞれ有効です。
なお、コーチングでは感情や意思を扱うことも重要であり、ときには客観的な事実よりも、相手にとっての主観的な真実が大切です。5W1Hだけを意識すると、「適切な問い」ではなく、「尋問」のようになってしまいます。5W1Hと同時に、相手の感情や意思、相手にとっての主観的な真実に意識を向けましょう。
目標達成を支援するコーチングの基本パターン
目標達成を支援するコーチングの基本的なフレームワークとして、「GROW」モデルを紹介します。
GROWとは、
- Goal(目標)
- Reality(現状)
- Resource(資源)
- Option(選択肢)
- Will(意思)
の頭文字を取って作られたフレームワークです(RがRealityとResourceの2回登場しますので注意してください)。
「達成したいゴールと現状のギャップを明らかにして、ギャップを埋めるための方法を考えて、実行の意思を確認する」ことが基本的な流れです。以下で、もう少し詳しく説明します。
達成した状態やゴールを明確化します。ビジネスにおける目標設定のように必ずしも定量的である必要はありませんが、なるべく具体的にしましょう。
<質問例>
- 達成したいことは何ですか?達成したいことは何ですか?
- 達成することで何が手に入りますか?
- なぜ達成したいのですか?
- 具体的にはどういうことですか?
ゴールが明確になったら、次はゴールに対する現状を整理します。相手が現状を整理して、ゴールと現状のギャップをはっきり認識できるようにしましょう。
<質問例>
- 現状はどうなっていますか?
- うまくいっていることは何ですか?
- うまくいっていないことは何ですか?
- 一番改善したいことは何ですか?
ゴール達成のために必要となる/活用できるリソースを考えてもらうための質問です。リソースには、人やモノ、知識、情報、スキルなどがあるでしょう。
<質問例>
- 達成に役立つリソースとして何がありますか?
- サポートしてくれる人は誰ですか?
- 達成のために何が必要ですか?
- 一番大事なリソースは何ですか?
ゴールと現状のギャップを埋めるためにどのような選択肢があるかを考えてもらうための質問です。十分な選択肢が出てきたら、重要度や効果などを踏まえて実際に実行するアクションを考えてもらうことも大切です。
<質問例>
- 達成するためにどのような方法がありますか?
- リソースが無限にあるとしたら、何をしますか?
- どのような方法が思いつきますか?
- 今まで思いついたけど実行しなかった施策は何ですか?
何をするかの選択視が絞り込まれたら、最後に行動や決定をあと押しして、相手のコミットメントを引き出します。
<質問例>
- どれぐらいやりますか?
- いつから始めますか?
- いつまでに達成しますか?
- 何をするか、宣言してください