
フィードバックは部下の育成を行なううえで、非常に有効なものですが、一方でやり方を誤ると効果が半減したり、逆効果になったりすることもあります。この章ではフィードバックを効果的に行なうためのポイントを解説します。
フィードバックを行なうタイミング
フィードバックをするタイミングの基本は、「その時」です。フィードバックのタイミングが遅れてしまうと、部下の頭の中には細かい記憶がなくなってしまっており、フィードバックの効果が半減してしまいます。
例えば、「商談」に対するフィードバックをするとしたら、商談が終わって、今後何をするかの確認を終えたら、すぐに行なうべきです。商談の中で自分がどんな発言をしたか、相手がどんな反応をしたかが頭の中にあるからこそ、フィードバックが効果的になります。商談の3日後にフィードバックをされても、もう細かい流れを覚えていませんし、『いまさら何をいっているのだろう…』となってしまいます。
ただし、頻繁にフィードバックをしすぎても、部下の気が滅入ってしまいます。中長期的なテーマに関してフィードバックを行なうのでは、以下のようなタイミングで指摘や評価を行なうことも良いでしょう。
- 1on1による定期面談
- プロジェクト進捗報告の都度
- 成果物があがったタイミング など
フィードバックを効果的に行なうためのポイント
以下のポイントを押さえていただくと、部下へのフィードバックを効果的に行なうことができるでしょう。
・フィードバックの許可を得る
フィードバックをする時には、相手の心に受け入れる態勢を作るうえでも、フィードバックの許可を得ることが有効です。うまくいかなかったプロセスや結果に対するフィードバックをされるのは部下も嫌なものです。受け入れる準備を整えてもらうためにも、「先ほどの商談に関してフィードバックしてもいいかな?」といった言葉で相手の許可を取りましょう。
相手の許可を取ることはアドバイスや提案する時などにも有効です。「フィードバックもアドバイスも、訊かれたら部下は『はい』と答えるしかないだろうに、訊く意味があるのか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、「1つアドバイスしてもいいかな?」といった前置きを入れることで、相手に聞く姿勢を作ってもらうことに意味があるのです。
・事実をフィードバックする
フィードバックは、観察等を通じて気付いた事実を伝えることがポイントです。事実に関しては2つの種類があります。1つは、「商談の中で、アイスブレイクで●●さんはこういう発言をしたよね。それに対して相手がこう回答したね」といった客観的な事実です。
もう1つは、「さっきの打ち合わせで、●●さんの表情がだいぶ曇っているように感じたんだよね」という主観的な事実です。主観的な事実は必ずしも正しいとは限りません。ただし、フラットなフィードバックをする際には、このような主観的事実のフィードバックも非常に効果的です。
・具体的な話をする
フィードバックを人材育成に役立てるには、部下がすぐに理解できる具体的な表現でフィードバックすることが重要です。
事実をフィードバックすれば、自然と具体的になりますが、慣れていないと「商談全体を通じて、●●さんは相手の話を真剣に聞いていないような印象があったんだよね」など、抽象的かつ曖昧な表現を使ってしまうこともあります。このようなフィードバックは、人に心当たるものがない場合、改善に繋がりづらい本ですし、フィードバック内容がネガティブなものであった場合、心情的に受け入れづらくなります。
これに対して、「お客さんが『○○に困っているんだよね、こういうことを実現したいんです』と、かなり真剣に話していた時も、●●さんは頷きを殆どせず、表情も無表情に近かった。その結果、お客さんも途中から苛ついた顔をして、◇◇のあたりから話がトーンダウンしてしまったよね」と事実に基づくフィードバックを具体的に伝えられたら、部下の受け止め方はまったく変わるでしょう。
・ネガティブフィードバックの場合、1対1で行なう
ネガティブフィードバックをする時は相手の許可を得ると同時に、なるべく1対1で行なうことが好ましいでしょう。大勢の前で指摘されると、「みんなの前で恥をかかされた」という心理が先に立ってしまい、フィードバック内容を受け入れにくくなります。
フィードバックの目的は、相手の言動を改善することです。「相手の許可を得る」と同様に、相手がフィードバックを受け入れられるようにすることが、非常に重要です。また、1対1でフィードバックすることで、相手がネガティブな反応をしたとしても、フォローして自信喪失やモチベーション低下を最小限に抑えることも可能でしょう。
ただし、昨今はさまざまなハラスメント等の危険がありますので、1対1の密室を作っても大丈夫か、録音等を残しておく必要があるかは、会社の規定や状況に応じて判断してください。
・言葉遣いに気を遣う
フィードバック内容を受け入れてもらうには、丁寧かつ適切な言葉を選ぶ配慮も必要です。例えば、フィードバックの許可を得る時の言葉も、以下のように変えることで部下の身構え方や緊張感もだいぶ変わってきます。
- 【NG例】ちょっといいか?(ぶっきらぼうで一方的な声かけ)
- 【OK例】いまフィードバックを伝えても大丈夫ですか?(丁寧で配慮のある声かけ)
部下との関係性に応じて適切な言葉遣いは変わりますが、フィードバックは部下の気付きや成長、パフォーマンス向上を生み出すためにするものです。とくに、成長を促すためのネガティブフィードバックをする際には、受け入れてもらいやすい言葉を選ぶことも忘れないようにしてください。
フィードバックに使える例文3選
前章ではかなりしっかりとフィードバックする場面を前提にポイントを記載しました。しかし、実際には、ここまで丁寧に事実をフィードバックしたり、許可を取れないこともあったりするでしょう。その際には、「 事実 ⇒ ポジティブなフィードバック ⇒ネガティブなフィードバック(改善点) ⇒ 提案 」という構成を心がけると良いでしょう。以下にいくつか例文を紹介します。
・フィードバック例文1
「テイクアウトのお客様から、サラダのドレッシングが入っていなかったという電話がありました。袋詰めのスピードは確実に速くなっているので、商品をお渡しする前の最終チェックだけ確実にできるように何か工夫できないかな?」
ファーストフード店のクレームを伝えるフィードバックです。入れ忘れがあったという事実だけをフィードバックしたうえで、袋詰めに関するポジティブフィードバックを行なっています。そのうえで、具体的に実践して欲しい行動を示したうえで、問いかけの形で相手に工夫や選択する“スペース”を作っています。
・フィードバック例文2
「今日のランチタイムは、担当の調理エリアで5分以上お待たせしてしまうお客さんがいましたね。Aさんの作業は、みんなのお手本にして欲しいぐらいマニュアルどおりです。でも、ときどき回転が悪くなることがあるので、どうしたら改善できるか一緒に考えたいなと思ったんだけど…」
レストランの調理担当者へのフィードバックです。こちらもポジティブフィードバックを加えたうえでアドバイス・提案に入っています。仕事の進め方等の場合、問題個所だけをフィードバックしても、部下はどう改善すればいいのか分からない場合もあります。原因が明確であればフィードバックの中でアドバイスすることも有効ですが、そうではない場合には、上記のようにフィードバックのうえで“一緒に考える”という提案も有効です。
・フィードバック例文3
「先々月から営業目標が未達に終わっているね。行動力のある●●さんらしくなく、商談件数も減っていることが気になっているんだよね。何か困っていることがあれば、私も協力して解決したいと思うので、教えてもらえるかな?」
営業部においてスランプ状態に陥っている部下へのフィードバックです。もともと好成績の部下であるため、成績悪化を責めるのではなく「心配する・寄り添う」の姿勢を示します。そうすることで、部下には「気にかけてもらっている」というモチベーションアップに繋がる気持ちが生まれ、悩みの相談もしやすくなります。