
ラポール形成のテクニックを効果的に使うためには、守るべき原則があります。2つの原則と、原則を踏まえた実践的なテクニックを紹介します。
相手への誠実な関心
ラポール形成で大前提となることは、相手に対して誠実な興味や関心を持つことです。テクニックは、ラポール形成を加速させるために非常に役立ちます。ですが、テクニックだけでラポールを形成することは困難です。まずは目の前の相手に集中して、「相手を理解したい」「相手に貢献しよう」という姿勢を持つことがなにより大切です。
例えば、あなたがマーケティングツールの営業で、中小企業の経営者と商談するとします。商談しながら「どうやってこの社長にサービスを提案しよう?サービス提案の切り口になる課題はないか?サービス提案の切り口になる課題を話してくれ!」と考えながら話を聞いていたら、ラポールの形成はできないでしょう。
ラポールを形成するためには、「社長は何を実現したいのだろう?いま何がうまくいっているのだろう?何に困っているのだろう?」と目の前の相手に集中して、真摯に関心を寄せることが大切です。
相手への肯定と尊重
相手への誠実な関心を伝えるには、相手の意見や世界観を尊重することが大切です。相手が「自分は肯定されている」「尊重されている」といった実感を持てないと、本音で悩みや困りごとの相談をできる信頼関係には至りません。
相手への肯定や尊重を示すうえで、最も重要なのは「聴き方」です。相手の話を聴く姿勢には、以下5つのレベルがあるとされています。
レベル1. 無視をする(話を聞いていない)
レベル2. 話を聴いているフリをする
レベル3. 自分が興味あることだけを選択的に聴く
レベル4. 相手の話を注意して聴く
レベル5. 感情移入の傾聴を行なう
レベル3までは、自分の立場で話を聞いているため、相手からすると肯定・尊重されていると感じることはありません。先ほど紹介した「どうやってこの社長にサービスを提案しようか?サービス提案の切り口になる課題はないか?」と考えながら話を聞く、といったものがレベル2や3のイメージです。
レベル4はレベル3よりも良い聴き方です。自分の都合から離れて、相手が話していることをしっかりと注意深く聴きます。これだけでも相手には「真剣に聴いてくれている」という印象は与えられますが、ラポールを短時間で形成するには至りません。レベル4はあくまでも「情報のやり取り」に留まります。
ラポール形成をするうえでおすすめしたいのは、レベル5の「感情移入の傾聴」です。感情移入の傾聴とは、相手が「どんな風に感じているか?」を聴き、相手の感情に共感することです。相手の言葉に対して、「そのとき、どんな風に感じたのですか?」「それは悔しいですよね…」と相手の感情に寄り添います。
感情移入の傾聴で、相手の意見に同調・同感する必要はありません。「相手が感じたこと」を肯定・尊重することが大切です。
共通点の積み重ね
2つの原則を紹介したうえで、「テクニック」に近い内容を紹介します。ラポール形成に関するテクニックにおいて、原則となるのは「相手との間に共通点を積み重ねていく」ことです。
人間が生物として持つ本能として、共通点がある相手とは友好関係を作りやすい(逆にいうと、共通点がない/分からない相手には警戒する)というものがあります。
ラポール形成に役立つ相手との共通点を探す/作るポイントは、以下のようなものです。
- 姿勢
- 身振り手振り
- 話すペースや声の大きさ
- 立場
- 出身地
- 年齢
- 特技
- 興味
- 経験
など
紹介した項目の前半3つ、姿勢・身振り手振り・話すペースや声の大きさで共通点を作るのは、ペーシングやミラーリングと呼ばれる手法です。のちほど紹介します。
反対に後半の6つ、立場・出身地・年齢・特技・興味・経験等は、話題にすることで共通点を見つけることができます。事前の情報収集や沿革や経歴、商談場所にあるものなどから話を引き出すテクニックです。
例えば、顧客の社長と新規商談するのであれば、企業サイトやSNSなどで社長の情報を集めたり、会社の創業経緯や沿革などを調べたりすることが大切です。共通点は、必ずしも自分と「直接的に同じ」である必要はありません。以下のように、間接的なものでも効果があります。
(社長の趣味が登山)
⇒会社の同僚で山好きがいて登山に誘われているんです。
(社長の出身地が富山)
⇒先日、富山に旅行に行ったのですが、すごく良いところでした
プロフィールなどから、相手と自分の共通点を積み重ねる作業は、比較的簡単です。ただし、共通点を探すことだけに集中してしまうと、ぶつ切りの不自然な質問や会話となり、逆効果になってしまうこともあります。「相手のことを知りたい」という誠実な関心を持ちましょう。そうすれば、たとえ共通点の積み重ねにならないとしても「相手への肯定と尊重」となり、ラポール形成に近づきます。
ラポール形成全般で使える実践テクニック「ペーシング」
相手との共通点という意味では、「自分自身に近い」という感覚をコミュニケーション内に物理的に作っていく、ペーシングという手法がラポール形成に役立ちます。
ペーシングは、話し方や呼吸、視線、仕草などを相手に合わせることで、共通点を作ったり、相手との一体感を生み出したりするテクニックです。ペーシングの実践では、以下に紹介する3つの技法が一般的です。
【ミラーリング】
ミラーリングとは、以下のような視覚や身体情報を“ミラー”、つまり鏡のように相手と合わせることです。
ミラーリングの実践は、少し間が空いても構いません。相手に気付かれた場合は逆効果になりますので、さり気なく行なうことが重要です。
【マッチング】
マッチングとは、以下のような音声情報を相手に合わせる手法です。
- テンポ(早口、ゆっくりなど)
- 声の大きさ、高さ
- 使う単語
など
最も簡単なものは、話す早さを合わせるテンポのマッチングです。早口の人には早口で、ゆっくりと喋る人にはゆっくりのペースで会話すると、ラポール形成をしやすくなります。
なお、上級のテクニックですが、マッチングなどはこちらのペースを意図的にコントロールすることで、「場のペース」「相手のペース」を動かすことにも使えます。例えば、クレーム対応の現場では、早口で怒るお客様に対して、あえてオペレーターがゆっくり話すことで場のペースを落とし、相手の感情を鎮めるといったテクニックが使われます。
【バックトラッキング】
バックトラッキングは、相手の言葉をペーシングする手法で、いわゆる「オウム返し」です。
例えば、お客様が「事務所で新しいパソコンを3台買ったんだよ!」という話をしたとき、「良いですね!」とだけ返すよりも、バックトラッキングを使って「3台も買ったんですね!」と返したほうがラポール形成に近づきます。バックトラッキングすることで、相手が「自分の言葉をしっかりと聞いて受け止めてくれた」と感じるからです。
バックトラッキングの内容は、次の3種類があります。
- 相手が話した事実
- 相手の気持ちや感情
- 相手が話した内容の要約
相手が使った単語や言い回し、感情表現に気を付けながらバックトラッキングすると、ラポール形成に効果的です。