
「動機」という概念に対しては、心理学の見地から多くの研究や実証が行なわれています。主要な理論は、マネジメントなどの現場でも活用できるものです。本章では、それぞれの理論の内容や各理論を使った動機付けの例を紹介します。
外発的動機付け・内発的動機付け
外発的動機付けと内発的動機付けは、チームや人材のマネジメントをするうえで必ず知っておくべき考え方です。
まず、外発的動機付けは、言葉のとおり、「外から与えられる報酬による動機付け」です。たとえば以下のようなものです。
- <外発的動機付けの例>
- 金銭(給与・賞与)
- 昇進、昇格
- 褒め言葉
- 承認
- 感謝
- 罰則や降格(回避する欲求による動機付け) など
内発的動機付けは、「本人の内側から生まれる動機付け」であり、以下のようなものです。
- <内発的動機付けの例>
- 楽しさ
- 面白さ
- 好奇心
- やりがい
- 達成意欲 など
外発的動機付けには、外から動機付けすることができ、即効性もあるというメリットがあります。ただし、外的報酬への耐性ができると、より多くの報酬を与える必要が生じたり、なくなると不満が生じたりするなど、一種の中毒性や依存を生むリスクもあります。
一方で内発的動機付けは、外からコントロールすることはできませんが、本人の内側から尽きることなく湧いてきて、限りもなく、継続性があるという利点があります。
それぞれの特徴を把握したうえで、弊害が出ないように注意しながら外発的動機付けを行ないつつ、内発的動機付けを促進する人材育成の仕組みづくりをすることがポイントです。
マクレランドの欲求理論
ハーバード大学の心理学教授デイビッド・C・マクレランド氏によって提唱された「どういう状態だと人は動くのか? また、動かないのか?」を心理学的に追求したものが欲求理論です。
マクレランドの欲求理論では、人の動機には以下の4種類があり、人によって4つの強さの優先順位が違うとされています。
- 達成動機が強いタイプ
自分の努力で成し遂げられる目標や個人的な進歩に対して、興味や関心を持って動機付けされる。自分の行動に対して、結果やフィードバックがすぐ返ってくることを求める傾向がある。
- 親和動機が強いタイプ
好かれたいという欲求が強いため、人間関係が良い状態のなかで高いパフォーマンスを発揮できるタイプ。人間関係が悪いと行動力が低下しやすくなったり、成果よりも人間関係に重きを置いてしまったりする傾向がある。
- 権力動機が強いタイプ
他者のコントロールや影響を与えることに、モチベーションが上がる。他者からの信望を得たり、周囲との競争がある状況を楽しんだりする傾向がある。
- 回避動機が強いタイプ
失敗やリスクを恐れる。リスクが高い行動やハイレベルな目標、冒険などは好まず、実現性の高い計画を作成したり、リスクを洗い出したりすることが得意。
マクレランドの欲求理論は、マネジメントのさまざまなシーンで活用できます。たとえば、配属や異動を検討する際、どのタイプかを分析することで、どういう職種や部署でパフォーマンスしやすいかを見極めることができます。
また、マネジメントするうえで、相手の動機を知ることで、相手に適した動機付けをしやすくなります。さらには、各部署でどのような動機の人が活躍しているか、どのような動機の人がどのような活躍パターンを持っているかを分析することで、採用精度の向上や人財育成にも活用できるでしょう。
フレデリック・ハーズバーグの「動機付け・衛生理論」
フレデリック・ハーズバーグの「動機付け・衛生理論」は、メンバーの定着率やモチベーションアップの分野を考えるうえで押さえておきたい動機付けの考え方です。
ハーズバーグの理論では、動機に要因する要素を大きく2つに区分しています。
まず、衛生要因は、一定基準まで満たさないと大きな不満要因、モチベーションダウンにつながるものです。一方で、一定基準から多少水準をあげても、大きくモチベーションが上がる要素にはなりません。したがって、組織の動機付けを考える際、衛生要因に分類されるものに関しては、競合や市場の相場と同等ぐらいまで充実させる必要があります。
- <衛生要因の例>
- 給与や賞与などの金銭的報酬
- 勤怠管理や労働時間、働き方
- 福利厚生 など
ただし、衛生要因をクリアしても不満が減るだけで強い動機付けはできません。メンバーの動機付けをするには、増えれば増えるほど動機付けが強化される動機付け要因をしっかりと高めていくことが大切です。動機付け要因は以下のような要素です。
- <動機付け要因の例>
- やりがい
- 承認
- 成長機会
- 感謝 など
衛生要因が整っている前提でメンバーのモチベーションを高めるためには、動機付け要因に着目して、たとえば、上司が1on1でポジティブなフィードバックをしたり、具体的な目標設定・達成で自信を付けさせたり、仕事の意味づけやしたりする取り組みが有効です。