コミュニケーションスキルとは?スキルを分解して高め方を解説

更新:2023/07/28

作成:2021/10/20

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

コミュニケーションスキルとは?コミュニケーション能力を分解して高め方を解説

コミュニケーションスキルは人間関係を築くために欠かせないものであり、人と仕事することを通じて成果を生み出すビジネスシーンにおいても不可欠です。

新しい情報の入手や交換、共有、相手に働きかけるといった効果もあり、コミュニケーションスキルの有無によって仕事の生産性や成果が変わるといっても過言ではありません。
しかし、「コミュニケーションスキル」とは非常にフワッとした概念であり、具体的にどのような能力を指すのか、どうやれば向上できるのかが曖昧になりがちです。記事ではコミュニケーションスキルの具体的な能力や重要性、高め方を解説します。

 

<目次>

コミュニケーションスキルとは?コミュニケーションスキルを構成する4つの能力

ビジネスシーンのコミュニケーション

コミュニケーションは、対人関係を良好にして、スムーズに意思疎通を図るためのスキルです。日常生活はもちろん、仕事を円滑に進めるためのビジネススキルとしても必須です。
コミュニケーションスキルというと、「会話力」のようなフワッとしたものをイメージする方も多いかもしれません。コミュニケーションが意思疎通である以上、「会話力」であることも間違いありませんが、ビジネスにおけるコミュニケーションスキルは、以下4つのスキルから成り立つものです。

①信頼関係を作る力

信頼関係を作る力はコミュニケーションスキルの土台となる力です。自らの人格や相手への誠実な関心を通じて、「この人は信頼できる」「相手にこの人なら安心して話せる」「この人は理解してくれる」等と感じさせることが、コミュニケーションの基礎となります。
信頼関係の構築は「スキル」で後押しできる部分もありますが、長期的、また深い信頼関係を築くには、前述したような人格や相手への誠実な関心といった内面を磨くことが大切です。

②聴く力(訊く力)

聴く力(訊く力)は相手を理解する力です。聴く力には事実や状況を把握して、相手の発言や意見を理解するためのロジカルシンキング、相手の気持ちに寄り添って注意深く共感的に聴く傾聴力が含まれます。また、相手を理解するには適切な質問をする(訊く)スキルも必要です。

③伝える力

伝える力は、自分の意見や思っていることを相手に伝える能力です。伝えるゴールは「伝わる」ことであり、自分の話を一方的に喋るのではなく、相手が論理的に理解できる、また感情的に受け止められる形で、相手の反応を見ながら伝える必要があります。
伝える力には、情報を正確にわかりやすく伝えるロジカルシンキング(ロジカルコミュニケーション)、相手の感情を揺さぶって人を動かすためプレゼンテーション能力やストーリーテリング等の能力が含まれます。

④交渉する力

ビジネスでも日常生活でも、目標を達成するために相手と交渉を重ねる場面が多々あります。交渉は自分が欲しい結果を一方的に得ることではなく相手とのwin-winを考える姿勢が重要です。
交渉のベースには相手との信頼関係が必要であり、相手の状況やwinを理解するためには聴く力(訊く力)、また、自分の意見や意思を相手に理解してもらうには伝える力が必要となります。
交渉する力とは、「信頼関係を作る力」「聴く力(訊く力)」「伝える力」の3つを土台としたうえで相手と議論を重ね、望む成果を獲得する力です。

 

コミュニケーションスキルが高い人の特徴

コミュニケーションスキルが高い人にはどのような特徴があるのでしょうか。信頼関係を作る、聴く(訊く)、伝える、交渉するという4つの力が実際にどんな風に発揮されるかを確認しましょう。
具体的な言動や意識は真似しやすい要素ですので、コミュニケーション力を高めたい方はぜひ参考にしてください。

信頼関係を作る力

信頼関係を作る力がある人の主な特徴は以下のとおりです。

  • 相手に興味、関心を持っている
  • 人間力などの土台がある
  • 常に相手の気持ちを考えている
  • 相手の立場に立って物事を考えられる
  • 嘘をつかない

信頼関係を作る力がある人は相手に興味を持ち、相手の立場で考えられるため、相手に好感を与えることができます。また、芯の強さや包容力といった人間力も高く、話をすることで相手を安心させたり、やる気を与えたりすることが可能です。

聴く力(訊く力)

聴く力(訊く力)がある人の主な特徴は以下のとおりです。

  • 相槌がうまい
  • 理解力が高い
  • 相手の気持ちに寄り添える
  • 質問がうまい
  • 相手の話を引き出せる

聴く力がある人はコミュニケーションを通じて相手を理解し、相手の気持ちに寄り添うことができます。聴くことで状況を理解するとともに、相手の承認欲求を満たし、信頼関係を生み出します。また、聴く力がある人は相手が気持ちよく話せる環境を作り適切な質問をすることで、相手の話を上手に引き出すことで、深い理解や気付きを生み出します。

伝える力

伝える力がある人の主な特徴は以下のとおりです。

  • 話がわかりやすい
  • 自分の感情や意思を込めて伝えられる
  • 例え話がうまい
  • 適切な言葉を選べる
  • 相手の反応を見ながら伝えられる

伝える力がある人は、例え話等を挟み相手の理解度に合わせて伝えようとするため、話がわかりやすく説得力があります。また、伝える際は誤解のない言葉を選び相手の理解度や反応を見ながら話を調整できます。

交渉する力

交渉する力がある人の主な特徴は以下のとおりです。

  • 目的・目標が明確でぶれない
  • 相手をしっかりと見ている
  • 相手とwin-winを考える姿勢を持っている
  • NOを言う勇気がある
  • 細かいことに動じない

交渉する力がある人は、相手の本心を読もうと常に相手を見ています。そのため、押す場面と引く場面を理解しており、絶好のタイミングでアプローチすることが可能です。
また、自分のwinを犠牲にして相手のwinを叶えようとするのではなくお互いのwinを叶えようとする姿勢を持っているので、自己犠牲がなく、相手と対等な信頼関係を築くことができます。

 

仕事におけるコミュニケーションスキルの重要性

コミュニケーションスキルは仕事で成果をあげるために不可欠なスキルであり、非常に重要です。

人間関係の構築

人間関係はビジネスシーンでも重要な要素です。仕事をスムーズに進めるためには良好な人間関係を築き、維持していかなければなりません。人間関係を築くためには、自分を理解してもらうための自己開示だけではなく、相手に興味・関心を抱き、信頼関係を育んでいく必要があります。
また、人間関係はモチベーションにも大きく影響します。仕事で失敗をしてしまったときや、続けていく自信がなくなったとき等、職場の同僚等と良い関係が築けていれば、声をかけ合い前向きに取り組むことも可能でしょう。

情報の交換・共有

相手と信頼関係を築くだけでなく、新しい情報を得ることもコミュニケーションの大きな目的です。
ビジネスにおけるコミュニケーションは単に相手と仲良くしゃべることではなく顧客から情報を得て提案につなげたり、上司と報告・連絡・相談したり、部下に仕事のやり方を教えて人材育成したりすることです。ビジネスシーンにおけるコミュニケーションは、「情報」をスムーズにやり取りすることが不可欠なのです。

相手に働きかける

ビジネスシーンでは相手を説得したり、誤解を正したりすることも多々あります。特にモノやサービスを販売する営業職は、日々相手に働きかける必要があります。その際に必要になるのもコミュニケーションスキルです。
また、相手やメンバーに指示を出したり、同僚や他部署に仕事を依頼したりする場合も、相手を動かすコミュニケーションスキルが必要となります。

 

コミュニケーションスキルの高め方

オフィスでのコミュニケーション

コミュニケーションスキルは、トレーニングによって誰でも高めることができます。本章では、コミュニケーションスキルの高め方を、コミュニケーション能力を構成する4つの能力に沿って解説します。

信頼関係を作る力

信頼関係を作る力を高めるには、以下の方法があります。
★人間性の向上
人間性とは、思いやりや気遣い、誠実さや精神的な自立といった内面的な要素を指します。
人間性には性格特性や生まれ育った環境、これまでの経験等さまざまなものが影響しています。簡単に高められるものではありませんが、良い考え方や言動などを習慣化していくことで高めることが可能です。周囲との信頼関係を築く根本となりますので、日々取り組んでいきましょう。

人間性を高める習慣の一例
  • 自らの責任で選択する
  • まず自分が変わる、自分にできることを考える
  • 多様な視点を持つ
  • 相手の立場で物事を考える
  • 相手を理解しようとする
  • 冷静さを保ち、ストレスをケアする
  • 自分や相手との約束やルールを守る

 

★第一印象を整える
ビジネスシーンでは初対面の人と信頼関係を作ることも多く求められます。初対面の相手と信頼関係を作るうえでは、第一印象が重要です。第一印象のポイントを示す「3:3:3の法則」というものがあります。

第一印象を決める3:3:3の法則

3:3:3の法則は「第一印象の決まり方」を示す法則です。

  • ① 出会って「3秒」で第一印象が決まる
  • ② 会話し始めた「30秒」で第二印象が決まる
  • ③ 少し会話した「3分」で相手との信頼関係の大半が決まる

 

つまり、出会って3分で初対面の相手との信頼関係は大半が決まってしまうということです。もちろん会話を通じて信頼関係が改善することもありますが、最初の3分で築かれたものが「良い印象」なのか「悪い印象」なのかは流れを大きく左右します。
健康的で清潔感のある身だしなみ、表情や声、事前の情報収集など、第一印象を良くするスキルを磨きましょう。

ザイオン効果

ザイオン効果はザイオンス効果、ザイアンスの法則とも呼ばれており、以下の効果を示した法則です。

  • ① 人は知らない人には、攻撃的・冷淡になりやすい
  • ② 接触回数が増えると警戒心が薄れ、好感を持ちやすくなる
  • ③ 相手の人間的な側面を知ると、好感が強くなる

 

こういった心理学的な法則等も知っておくと、信頼関係の構築に役立ちます。ザイアンスの法則については、下記の資料で詳しく解説していますのでご覧ください。


信頼関係の根っこは、あくまで人間性ですが、ザイアンスの法則以外にも信頼関係の構築に役立つテクニックもあります。信頼関係の構築スキルに興味がある方は、下記の「ラポール形成」に関する記事もぜひご覧ください。

聴く力

聞く力を高めるには、以下の方法があります。

★ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは論理的思考のことで、物事に筋道を立てて、根拠を示しながら結論を導く考え方です。ビジネスにおける聴く力を高めるためには相手の意見や考えを正確に理解する必要があるため、ロジカルシンキングを鍛えることは不可欠です。
★相づち・バックトラッキング
いくら真剣に相手の話を聞いていても、無表情ではそれが相手に伝わりません。そのため相づちをうったり、相手が言ったことをオウム返しにしたりして、「しっかり聞いている」「伝わっている」ことを相手に伝えましょう。
★感情移入の傾聴
相手の話を聞くときは、話の内容だけではなく相手の視線やしぐさ、声のトーン等にも注意を払い、相手の感情を察するようにします。話の内容だけでなく、相手の感情に寄り添うことで、相手を深く理解することができ、信頼関係が深まります。
★質問のレパートリー
相手の話を引き出すには質問をする必要があります。
そのため、適切な質問のレパートリーを広げることが、聴く力を高めることにつながります。基本的な5W1H(Who、Where、When、Why、What、How)以外にも、ほかの人との会話で出た質問やニュース、小説、映画など、さまざまなシーンの質問を取り入れて、質問のレパートリーを増やしましょう。

伝える力

伝える力を高めるには、以下の方法があります。
★アンサーファースト(PREP法)
PREP法とは、Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の順に伝えるフレームワークです。PREP法を使うと、相手にわかりやすく、また説得力を持って伝えることができます。
★ピラミッド構造
ピラミッド構造は頂点に結論を置き、下に向かって根拠や事例、詳細を分解していくロジカルシンキングの代表的な手法です。ピラミッド構造を意識することで、相手にわかりやすい話し方ができるようになります。
★例え話(コンセプチュアルスキル)
ビジョンやコンセプトなどの抽象的な内容、また、相手が知らない世界や知識を伝えるときには、相手が知っていたりイメージしたりしやすい世界に「例えて」話すことが有効です。
例え話をするためには、伝えたい内容や情報を概念化、構造化して、似たよう概念や構造を持つ「たとえ」へと落とし込むプロセスが必要であり、そこで活用できるのがコンセプチュアルスキルです。
★ストーリーテリング
ストーリーテリングは、伝えたい内容をストーリー、物語として伝える手法です。ストーリー性がある話は、相手の興味関心を惹きつけ、イメージを伝え、理解度を高めることができます。
また、ストーリーは記憶に残りやすい性質もあるため、印象付けやモチベーションを上げたいときにも有効です。ストーリーテリングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

交渉する力

交渉する力を高めるには、以下の方法があります。
★win-winを考える
交渉を成功させるには相互理解が不可欠であり、相互理解を深めるためには相手の立場を考える必要があります。ビジネスにおいて長期的・継続的な取引関係を保ちたいならば、相手のwin(望む成果)に配慮する必要があります。
相手の望む成果を完全に無視して、自分たちの都合だけを押し付けても良好な関係性は得られません。一方で、自分の望む成果を犠牲にして相手の希望を叶えても「都合のいい人」「自己犠牲」であり、対等な信頼関係は築けません。真の交渉力を高めるためにはお互いの「win-winを考える」姿勢が重要です。
★観察力
交渉では話を持ち出すタイミングも重要なポイントの一つです。タイミングを察するためには、物事や相手の状況を客観的に注意深く見ることが大切です。観察力を高めればタイミングが判断しやすくなるほか、相手の本心もわかるようになり、交渉成立の可能性もグッと高まります。
★質問力
交渉する際には相手のwinや状況、本音を把握することが不可欠です。そこで不可欠なものが質問力です。質問力を高めることで相手からより多くの情報を収集することができます。質問内容だけでなく、相手が答えやすい質問、本音が見えてくる質問を繰り出せるようになると、交渉を有利に働かせることができるでしょう。

 

まとめ

コミュニケーションスキルはビジネスで成果を上げるためには不可欠なスキルであり、信頼関係を作る力、聴く力(訊く力)、伝える力、交渉する力の4つから構成されています。

 

ビジネスにおける人間関係は、単に相手と仲良くするわけではなく、信頼関係をもとにして、情報を交換・共有したり、相手に働きかけたりすることが大切であり、そのために必要なのがコミュニケーションスキルです。

 

コミュニケーションスキルは誰でも高めることができますが、トレーニングしたからといってすぐに高まるものではありません。人間性や考え方、習慣等の改善も必要になるため、長期的にコツコツと取り組んでいきましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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