採用業務は、企業を維持・成長させていくうえで不可欠なものです。ただし、近年では、新卒採用の早期化・長期化・複雑化や少子化による絶対的な労働力不足、採用方法の多様化などによって、採用担当者の負担が大きくなっています。
こうした状況で企業の採用活動を成功させるには、採用関連の業務内容を理解したうえで、各プロセスの見直しや効率化を進めていくことが大切です。また、自社の採用精度や人材の定着率を向上させるには、採用担当者に必要な能力・スキルを高めていくことも大切でしょう。
本記事では、採用支援サービスの提供企業としての知見も踏まえて、採用業務の概要と7つの仕事内容、採用業務で求められる3つの役割、9つの能力・スキルを解説します。解説したうえで、採用業務の負担を軽くする採用支援サービスも紹介しますので参考にしてください。
<目次>
採用業務とは?
まずは、採用業務が具体的にどういうものか、定義や実施部門などを確認しましょう。
人材を獲得し自社に迎え入れる
採用業務は、新しい人材を獲得するために行なう業務の総称です。具体的な仕事内容は後述しますが、一般的には、以下の流れで進められます。
- ① 採用計画・戦略の作成
- ② 母集団形成
- ③ 選考実施
- ④ 内定後フォロー
- ⑤ 入社手続きと受け入れ
- ⑥ 振り返り
- ⑦ 中長期施策の実行
採用業務は、自社の事業計画や人材マネジメントの課題から「どのような人材が必要なのか?」を考え、自社に合った方法で採用活動を行ない、入社⇒受け入れ……までを行なう重要な業務です。
また、採用業務は、雇い入れたメンバーの人生を大きく左右する役割でもあります。そのため、数ある人事業務のなかでも特に責任の大きな仕事です。
なお、採用活動は、年度で区切ったり、入社日などから逆算したりする短期的な業務の側面も強いです。しかし、短期的な業務と並行して、中長期的に自社の採用力を高めていくことも大切です(先ほど紹介した採用業務の流れでも、そういう趣旨で⑦の位置に中長期の施策の実行を加えています)。
採用業務の担当部門は企業により異なる
たとえば、年間で数十人以上の大量採用をする企業の場合、人事部のなかで組織開発課と採用課が分かれ、かつ、採用課も中途採用チームと新卒採用チームに分かれているといったこともあるでしょう。
また、業種によっては、パートアルバイト採用と正規採用で担当が分かれるケースもあります。
対して、年間で数人~多くても十数名程度の採用となる中小企業やベンチャー企業の場合、1人の人事が採用も教育も担当したり、場合によっては、総務と兼務して採用業務を実施したりすることもあります。
また、少人数で事業を行なう小規模企業やベンチャー企業、経営層が人材マネジメントに熱心であるなどの場合、経営層が自らスカウトなどの採用業務を行なうケースもあるでしょう。
新卒採用は繁閑差が激しい
採用業務では、以下のようにさまざまな人材の採用活動を行なっていきます。
- 新卒採用
- 中途採用
- パートアルバイト採用
- 派遣採用 など
新卒採用の場合、年間スケジュールに沿った活動をしていきます。
新卒の場合、時期の違いはあっても就職を希望する学生すべてが一斉に活動する特徴があります。そのため、説明会や選考のピーク時期が決まっていて、繁閑差が大きくなりやすいのが特徴です。
なお、近年では、経団連が就職ルール制定から撤退して以降、新卒採用の早期化がさらに加速するようになりました。また、職種別採用・ジョブ型採用などの導入も増えるなかで、年間通じて採用担当者の負担が増えやすくなっています。
採用業務の具体的な7つの仕事内容
採用業務には、先述のとおりさまざまな仕事があります。本章では、プロセス別に仕事内容を詳しく見ていきましょう。
①採用計画・戦略の作成
人材採用では、一貫性を持たず場当たり的な施策を打ち続けても、採用活動の効果性は高まりません。そのため、採用活動を成功させるには、採用計画と採用戦略を立案し、戦略の内容に沿った施策を実施することが大切です。
“採用計画”とは、採用活動におけるゴールや大枠の行動計画を定めたものです。また、採用戦略は、「誰をどのように採るか?」の大方針です。採用計画・戦略を作る際には、以下のようにプロセスを経て作っていきます。
- 事業計画の確認
- 経営陣とのすり合わせ
- 採用ターゲットの設定
- 現状の採用課題の明確化
- 採用手法の選定と設計
- 採用スケジュールへの落とし込み など
また、採用活動後の振り返りをするうえでは、以下のような数値目標を設定しておくことも大切です。
- KGI:入社人数、内定承諾数 など
- KPI:一次面接設定数、内定人数、内定承諾率 など
なお、採用計画と戦略に関しては、上記は少し短期的な視点でとらえています。
採用計画は単年度でとらえられがちですが、自社の採用力を向上していくためには、より中長期的な事業計画や組織構成を踏まえての検討、また、中長期での施策実行が大切です。
たとえば、中期的に必要な人材を確保するうえでは、報酬や評価制度も含めて戦略を考えるべきですし、後述する中長期的な施策の実施なども重要になってきます。
②母集団形成
母集団形成では、①の採用計画で選定・設計した以下のような採用手法を使い、自社の求人に興味・関心を持つ求職者に応募を促していきます。
- 求人媒体に広告を出稿する
- 会社説明会を実施する
- 合同企業説明会やマッチングイベントに参加する
- ダイレクトリクルーティングでスカウトメッセージを送る
- SNSで自社の採用情報などを発信する
- リファラル採用に取り組む
- 人材紹介サービスを利用する
- 大学・研究室を訪問する など
母集団形成では、採用ターゲットのニーズに合う魅力を伝え、自社への志望度を高めることが大切になります。
③選考実施
母集団が形成できたら、以下のような流れで選考を進めていきます。
- 書類選考
- 筆記試験、適性検査
- 一次面接
- 二次面接
- 最終面接……
選考プロセスでは、自社に合う人材かどうかの見極めのほかに、志望度アップにつながる魅了付けも行なうことが大切です。
なお、上記は、正社員採用でよくある流れです。アルバイトの場合、書類選考+面接1回で選考が終わることも多いでしょう。
雇用形態や採用ターゲットに応じて、選考プロセスは変更していきましょう。
④内定後フォロー
内定後フォローとは、内定通知⇒内定承諾のあとに、内定辞退者が出ないようにする目的で行なう、さまざまな施策の総称です。内定後フォローには、ポジティブな状態での入社を実現したり、早期離職を防いだりする目的もあります。
内定後フォローでの最も重要なポイントは、接触頻度を保つことです。具体的には、以下のような施策があります。
- 定期連絡と情報提供
- 内定式
- 既存社員との座談会
- 内定者同士の懇談会やワークショップ
- 内定者研修 など
また、早期離職などを減らすうえでは、リアリティショックの解消に向けた情報提供や心構えの準備なども大切です。
⑤入社手続きと受け入れ
正規雇用などであれば、社会保険、雇用保険、住民税に関する手続きを行政機関で行なう必要があります。詳細は雇用形態などによっても異なりますが、たとえば、正規雇用であれば以下のような書類を新入社員から提出してもらうのが一般的です。
- 年金手帳
- 給与振込先の書類
- 身元保証書
- 健康診断書
- 通勤手当支給申請書
- 卒業証明書
- 資格免許証
- マイナンバー など
また、必要に応じて以下のような受け入れ準備も必要となります。
- 制服
- 社員証
- ネームプレート
- 社章
- タイムカード
- デスクとイス
- パソコン
- ロッカー など
なお、上記はどちらかといえば、労務やオペレーション的な視点です。ほかに、採用業務からの流れで見れば、組織に馴染み、早期の戦力化を図るための受け入れ準備が大切になります。
最近のHR分野では、受け入れ準備のことをオンボーディングと呼びます。単に業務スキルを教えるだけでなく、“組織社会化”と呼ばれる組織に馴染むためのプロセスをきちんと設計することで定着と早期の戦力化が実現します。
⑥振り返り
採用活動は、自社に合う優秀な人材を受け入れて終わりではありません。最初に策定した採用計画や採用ターゲット、KGI・KPIなどの数値目標を確認し、成果や問題点を以下のように振り返る必要があります。
- 自社の採用ターゲットに合う人材を獲得できたか?
- 採用コストはどのくらいだったか?
- 入社人数はどのくらいだったか?
- 内定承諾率はどのくらいだったか?
- 今回の採用活動で良かったことは何か?
- 今回の採用活動で生じた課題や失敗は何か? など
振り返りは定量的な数字だけでなく、定性的な母集団や入社人材の質といった視点でも実施することが大切です。結果を踏まえて、採用ターゲットや採用手法などの施策をブラッシュアップしていきましょう。
⑦中長期施策の実行
採用業務は、入社時期から逆算して動いていく短期施策の積み重ねになりがちです。
冒頭で紹介したとおり、中長期的な事業計画を踏まえて組織構成や必要人材を描いて採用計画に落とし込む、中長期的に必要な人材を確保するうえで報酬や評価制度も含めて戦略を考える、といった観点も大切です。
また、採用力の向上も、短期間でできるものではありません。採用ブランディング、オウンドメディア(採用サイト)の構築、リファラル採用、アルムナイ採用など、採用戦略に基づく中長期の動きも重要です。
採用業務で求められる3つの役割
採用業務を担う担当者には、以下3つの役割が求められます。
マーケティング
母集団形成や採用広報には、自社や、自社で働く経験を商材として、採用市場に売り込んでいくマーケティングの役割と能力が求められます。以下のように「1対多」で行なう仕かけが、採用マーケティングになります。
- 採用ターゲット設定
- ペルソナの設定
- 自社の魅力抽出
- 採用媒体の選択
- 媒体上でのクリエイティブ作成 など
営業
説明会や面接のなかで魅力を伝える、見極める、クロージングするなどは営業としての役割や能力です。おもに対面や1対1で志望度を上げていくところが、採用における営業活動です。
オペレーション
応募から入社までの採用フローを管理し、大手企業になれば1万件を超えるような面接をハンドリングするのはオペレーション的な役割です。応募人数が1,000人を超えてくると、ある程度しっかりとしたオペレーションを構築する必要が出てきます。
採用業務に求められる9つの能力・スキル
採用業務におけるマーケティング・営業・オペレーションという3つの役割をこなすには、以下9つのスキル・能力が求められます。
①自社の業務や職種に関する理解
募集要項の作成や会社説明会、面接などの仕事では、自社の業務内容や各職種の魅力などを詳しく説明することが求められます。
ただし、専門性が高い職種の場合、すべてを採用担当が把握することは難しいでしょう。難しい場合には、現場の管理職やメンバーを巻き込むことが重要になります。
②マーケティングスキル
効果性の高い採用活動をするには、「自社の採用基準を満たす人材から、いかに選ばれるか?」というテーマを扱う採用マーケティングの考え方が不可欠になります。
採用ターゲットとなる人材を「顧客」、自社を「商品・サービス」ととらえ、マーケティング戦略を立案・実践していくことが、今後の採用活動を成功させるうえで不可欠です。
特に「良い母集団を作る」という部分で、マーケティングスキルが必要となります。
③プレゼンテーションスキル
採用業務では、会社説明会や就職/転職フェアなどの採用イベントで、自社の業務内容や魅力のプレゼンテーションをすることがあります。また、採用面接やオファー面談などでも、魅了付けが必要です。
採用活動で求められるプレゼンテーションスキルとは、求職者に自社の情報や魅力を的確に伝え、エントリーや内定承諾などの意思決定や行動を促すことです。
④信頼関係の構築スキル
採用担当者は、企業の代表として求職者と最初に関わる存在であり、また、求職者の不安や迷いを解消し、自社への入社を促す役割も担っています。
たとえば、面接で志望度アップにつながる話に耳を傾けてもらうには、「話している人事担当者は信用できそうだ……」と思ってもらうことが大切です。そのためには、求職者に誠実な関心を持ち、相手の話に耳を傾け、肯定・尊重していく信頼関係を構築するスキルが必要です。
⑤求職者を見極めるスキル
スキルフィットとカルチャーフィットの両面で、自社に合う人材かどうか、活躍できるかどうかを見極めるスキルです。
見極めでは、自社の採用基準に合った質問や、構造化面接のフレームワーク・STAR面接、適性検査の結果などを組み合わせていく必要があります。
⑥クロージングスキル
自社が獲得したい優秀な人材は、競合他社にとっても欲しい人材です。また、求職者は、自社以外にも複数の選考に応募していることが普通です。
したがって、自社の内定を承諾してもらい入社につなげるには、信頼関係の構築や志望度アップなどを実施したうえで適切に意思決定してもらうクロージングスキルが必要となります。
⑦調整や折衝のスキル
採用業務は、採用担当者1人で完結するものではなく、経営層や現場の管理職などとの調整が多い業務となります。また、採用計画の作成から採用ターゲットの決定、選考の実施、合否の確認など、さまざまな社内調整や接触が必要です。
社外においても、求職者はもちろん、求人媒体や人材紹介サービス会社の担当者とのコミュニケーションも必要となります。採用業務を実施するには、コミュニケーションを的確に、また、素早く進めていく力が必要でしょう。
⑧オペレーションスキル
応募から入社までの採用フローを管理し、ゴールに向かって採用活動を進めていくスキルです。
特に新卒採用に関しては、採用数が数十人になれば、求職者数は1,000人を超えることも当たり前です。また、数百人規模の新卒採用を実施する大手企業になれば、面接だけで1万件を超えることもあるでしょう。
採用業務では、こうした膨大なオペレーションを、ミスなくしっかりと進める必要があります。
⑨採用や雇用に関する法令の知識
採用活動では、以下のように法律に基づく対応が求められるシーンがたくさんあります。
- 募集要項の作成(職業安定法・労働施策推進法・男女雇用機会均等法 など)
- 労働条件の明示(労働基準法)
- 新入社員の受け入れ(健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法 など)
細かい法律内容は本章では省略しますが、気付かぬうちに法令を破っていると、大きなトラブルやコンプライアンス上の問題になりかねません。採用活動を進めるうえでは、雇用に関する基本的な法律知識は押さえておく必要があるでしょう。
出典:労働者を募集する企業の皆様へ
出典:男女均等な採用選考ルール(厚生労働省)
出典:募集・採用における年齢制限禁止について(厚生労働省)
採用業務の負担を軽くする採用支援サービス
採用業務には、さまざまな仕事があり、人事担当者がすべての仕事を担うには幅広い知識やスキル、工数が必要です。一方で、近年では、新卒を中心とする採用活動が長期化・複雑化するなかで、採用担当者の負担が増大するようになりました。
多忙な状況で採用業務を効率化し、採用活動を成功させるには、以下のような採用支援サービスやツールを活用するのも一つとなります。
採用代行
名前のとおり、採用業務の全部もしくは一部を代行してもらうサービスです。採用アウトソーシングやRPOと呼ばれることもあります。
具体的な範囲や対応内容は、サービス提供会社やプランによって異なります。自社のニーズとマッチすれば、採用担当者の負担を軽減させられるでしょう。
人材紹介
人材紹介は、自社に登録する求職者のなかから、企業が求める要件に合った人材を紹介してくれるものです。
人材紹介サービスは、求人票の作成から企業紹介、面接日程の調整、内定条件の調整、クロージングまで代行してくれるものとなるため、採用代行的な要素を含んでいます。なお、費用は完全成果報酬型で、また早期退職時の返金制度などもついていることが一般的です。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、「採用カレッジ」と「新卒カレッジ」という2つの人材紹介サービスを提供しています。
「採用カレッジ」は中途のポテンシャル採用、「新卒カレッジ」は新卒の中期~後期を想定したサービスです。興味がある人は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
関連サービス資料を
ダウンロードする
...
関連サービス資料を
ダウンロードする
...
関連ノウハウ資料を
ダウンロードする
求人広告と並んでメジャーに採用手法となっている「人材紹介」。人材紹介会社をうまく使って採用を成功させるために知っておきたい「人材紹介会社の使い方」をまとめました。...
採用管理ツール
近年の採用業務は、新卒採用の早期化が進み、またジョブ型・職種別採用も普及したなかで、採用フローなどが複雑化しがちです。
こうしたなかで、中途採用やアルバイト採用も平行で行なうとなれば、採用業務はさらに複雑化するでしょう。採用活動が複雑化すると、求職者への連絡にミスや遅れなども生じやすくなります。
こうした問題を解消するには、採用管理ツール(ATS)を活用するのがおすすめです。採用管理ツールは、各種媒体と連携して求職者情報を自動で取り込んでくれる、また、採用の進捗やコミュニケーション管理を一元的に行なえるツールです。
なお、HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、LINE連携型の採用管理ツール「採用一括かんりくん」の代理店として提供しています。「採用一括かんりくん」などのツールを使えば、求職者とのコミュニケーションも効率化できます。興味がある人は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
関連サービス資料を
ダウンロードする
学生や若者であれば誰もが利用する「LINE」と連携する採用管理ツールです。e-mailと比べると、圧倒的に早いレスポンススピード、また、開封率・返信率が魅力です。
【採用一括かんりくん】はLINE連携したうえで、応募者...
まとめ
採用業務とは、人材を獲得し自社に迎え入れる仕事です。具体的には、以下の仕事内容を指します。
- ① 採用計画・戦略の作成
- ② 母集団形成
- ③ 選考実施
- ④ 内定後フォロー
- ⑤ 入社手続きと受け入れ
- ⑥ 振り返り
- ⑦ 中長期施策の実行
採用業務では、マーケティング・営業・オペレーションの3つの役割が求められます。こうした採用業務をこなすには、以下9つのスキル・能力が必要です。
- ① 自社の業務や職種に関する理解
- ② マーケティングスキル
- ③ プレゼンテーションスキル
- ④ 信頼関係の構築スキル
- ⑤ 求職者を見極めるスキル
- ⑥ クロージングスキル
- ⑦ 調整や折衝のスキル
- ⑧ オペレーションスキル
- ⑨ 採用や雇用に関する法令の知識
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、採用業務の負担を軽減する採用支援サービスを提供しています。人材紹介や採用管理ツールに興味がある人は、ぜひ以下のページから資料をダウンロードしてみてください。