採用戦略を立てるうえで人事が押さえるべき基本的なポイント
採用戦略とは自社が必要とする人材をより効果的に採用する、つまり、「誰をどのように採るか?」の大方針です。採用に関する個々の具体的な施策(戦術)の上位に位置するものといえます。
企業にとって事業の拡大や他社との競争の中で、必要な人材をタイムリーに確保していくことは経営上の重要テーマです。しかし、「採用」がコストセンターであることも事実であり、企業が割くことの出来るリソース、コスト・工数は限られます。その中で「採用の効果性を高める」ために必要なものが戦略です。一貫性を持たず場当たり的に施策を打っていくだけでは、中長期的な生産性は上がりません。
採用市場と自社の立ち位置(採用力)を客観的に把握したうえで、自社の持つリソースを、勝てるところに投資するのが採用戦略です。採用は常に他社との競争です。“自社で採りたい人材”は“他社でも採りたい人材”です。その中で「いかにして勝つか」、大方針を持つことが重要です。採用戦略を立てるうえでは、以下の2点を押さえておく必要があります。
事業戦略、人事戦略と一貫性を持たせる
採用戦略を立てるうえでまず重要になるのは「誰を採るか?」です。事業戦略に紐づいて考える必要があります。考える際に認識しておく必要があるのは、自社の事業モデルと成長ステージです。
例えば、「GoogleのようなWebサービスの初期段階」であれば、必要なのは「優秀なエンジニアやプロダクトデザイナー」でしょう。エンジニアはミドルレベルとハイパフォーマーで、生産性に雲泥の差が生まれます。従って、採用戦略を考えるにあたっては「いかにして超優秀なエンジニアを見つけて口説くか」という課題設定から始まるかもしれません。
一方で、「Web広告代理店の成長期」であれば、「市場を一気に攻めるために多くの営業職を採り切ること」が必要かもしれません。すると採用戦略で重視されるべきは「新しいものに興味を持つ感度の高い営業人材を大量に、かつ短期間で確保すること」になるでしょう。一方で、同じweb広告代理店でも「少数の大手クライアントを入り込む」事業展開であれば、採用の方向性は「同業他社からの引き抜き」かもしれません。
同じように「店舗/拠点展開型のビジネスにおける拡張期」であれば、ビジネスモデルが整った中で「人とプロセスをマネジメントできる拠点長候補」と「マーケティングや品質管理のプロ」の採用が事業成長のキーと位置づけられるかもしれません。
このように、事業モデルや成長ステージ、事業戦略に応じて、採るべき人材像は変わります。今後3~5年程度の時間軸で、自社の事業戦略がどうなっているか、戦略に応じてどんな人材を採用する必要があるかを考えることが採用戦略のスタート地点です。
同時に、採用戦略は「採用した人材をどのように処遇、育成、配置するか?」という人事戦略とセットになるものです。採用したいターゲットに応じた人事戦略が準備・実行されなければ、採用活動の難易度が増しますし、採用後の定着率・活躍にも影響が出てしまいます。
例えば「野心ある若手・第二新卒採用を採りたい」のに、「人事制度・評価制度は年功序列」では採用が難しく、仮に工夫して採用しても定着しないというのは容易に想像できます。従って、事業戦略から落とし込まれた「誰を採るか?」に応じて、採用戦略と人事戦略に一貫性を持たせる必要があります。
自社のミッション、ビジョン、バリューを採用戦略へ落とし込む
採用活動は常に他社との競争です。その中で「勝つ」、つまり「求職者」から選ばれるうえでは、差別化が重要です。採用活動における商品・サービスとは、「自社」そのものであったり、「自社で働く経験、得られるキャリア」であったりします。
自社の魅力が何か、自社で働くとどんな経験、キャリアが得られるのか。採用計画の中で、「この職種ではAというやりがいがある」「Bという経験を積んで市場価値を高められる」といった細かく落とし込むことも重要です。しかし、自社の魅力を考えるうえで一番重要であり、上位に来るのは、「我々はどんな組織として何をするのか?」です。この問いは2つのパーツに分けられます。
1つは「我々は何をするのか」、つまり「我々はどんな価値を生み出すのか?」です。「この会社は何のために存在するのか?」「我々はどんな社会を生み出すのか?」「我々は誰に対してどんな価値を提供するのか?」といった、「会社が社外に向けて生み出すものは何か」という問いです。
そして、もう1つは「どんな組織として」、つまり「我々は何を大切にするのか?」です。「我々はどんな価値観を持った組織なのか?」「組織において犯してはならないタブーは何か?」「組織の仲間として絶対に守って欲しいことは何か?」などの“うちの会社らしさ”とは何かという問いです。
「どんな組織として何をするのか?」の答えが求職者に会社の魅力を伝えていくうえでの原点です。答えは会社のミッション、ビジョン、バリューに紐づいています。従って、本質的に良い採用戦略を作り実行するためには、会社のミッション、ビジョン、バリューを確立し、社内に浸透させる必要があります。
「どんな組織として何をするのか?」というミッション、ビジョン、バリューが採用戦略の根幹です。そこから採用計画を設計していく中で、どんな事業をしており、事業の社会的価値が何で、どんなやりがいが得られて、どんな経験を積めて、どんな成長を出来るのか、といった具体論へ落とし込んでいきます。






