採用力の強化につながるスクラム採用とは?実施のメリットや導入のポイントを紹介!

更新:2023/07/28

作成:2022/10/17

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

採用力の強化につながるスクラム採用とは?実施のメリットや導入のポイントを紹介!

日本では、少子高齢化による労働人口自体の減少により優秀人材の獲得競争は激しさを増しています。

 

また、これらの背景も伴って、新卒採用の早期化や複雑化、また採用手法の多様化なども進んでいます。

 

こうしたなかで採用力を強化するためには、全社員で採用活動を実施するスクラム採用の考え方を取り入れることも有効です。

 

記事では、まずスクラム採用の概要と注目される背景、メリット・デメリット、また、スクラム採用を成功させるポイントを紹介します。

<目次>

スクラム採用とは?

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従来型の採用では、以下のような一連の活動を人事部門の採用担当者が主導するのが一般的でした。

  • 採用方法の選定
  • 説明会の開催
  • 求職者とのやり取り
  • 面接
  • 内定通知…… など

一方で、スクラム採用では、現場の社員を巻き込んで全社員で採用活動を進めます。その考え方や具体的な手法を指すのが、“スクラム採用”という言葉です。

 

スクラム採用の提唱者である株式会社HERPの庄田一郎さんは、以下のように定義しています。

 

「チーム開発の手法としてインターネット系企業で広く取り入れられている、スクラム開発と同様に、共通のゴール(採用目標の達成)のために、全社員が一丸となって採用活動に取り組むことを意図して、弊社がネーミングしたものです」

 

出典:現代の要請を満たすースクラム採用という考え方とその実践ー

スクラム採用が注目される背景

少子高齢化によって労働人口自体が減少することで、近年では、優秀人材の獲得競争は激しさを増しています。

 

また、それにともなって、新卒採用の早期化や複雑化、また採用手法の多様化なども進み、人事だけでは対応しきれない状態も生まれるようになりました。

 

一方で、最近ではSNSなどを通じて、一人ひとりの社員が情報を発信したり、自分のネットワークを持ったりする状態も生まれています。

 

スクラム採用を通じて、一人ひとりの社員が持っているネットワーク等を活かすことができれば、自社の採用力を向上させることも可能になってくるでしょう。

 

また、仕事の分業化が進んだなかで、魅力付けをしたりミスマッチを防いだりするためには、人事だけではなく、現場が採用に関わる必要性も高まっています。

 

新卒であれば話は別ですが、中途の経験者採用においては、各専門職種における仕事のやりがい、得られる経験、キャリア展望などについて、人事が話すことは難しいことが増えているからです。

 

こうした背景によって、近年では、スクラム採用の必要性が高まっています。なお、スクラム採用は、言葉としては新しいものですが、個々の内容自体は目新しいものばかりではありません。
スクラム採用のなかには、従来から各社で行なわれていることも多々あるでしょう。

 

上述したような採用や選考プロセスにおける現場社員の登壇などは、スクラム採用の概念が登場する前からあった話です。

 

そのため、スクラム採用を成功させるには、従来から実施している採用活動をあらためて整理して、不足点・強化できるポイントを見出して取り組み、採用力の向上につなげていくことがポイントです。

スクラム採用に取り組むメリット

この章では、スクラム採用によって期待できる効果・メリットを確認しておきます。

 

採用力の強化

たとえば、インターンシップや企業説明会に、優秀な既存社員が参加することで、求職者は、「現場の生の声」を聞いて、企業や職種への不安要素や疑問をその場で解消できます。

 

実際に活躍する優秀な社員は、学生や若手のロールモデルでもあります。

 

お手本になる社員からのスカウトメッセージや面接でのポジティブなフィードバックがあると、学生や若手に「この人と一緒に働いてみたい」「この人みたいなエンジニアになりたい」などの想いが芽生え、魅了付けも成功しやすくなります。

 

人事担当者の負担軽減

近年、新卒採用の早期化・長期化・複雑化、また採用手法の多様化などにより、人事担当者の負担がかなり増大しています。

 

そこでスクラム採用を導入して、たとえば、現場のメンバーに説明会や面接に出てもらうと、人事担当者は内定式や内定者研修などの準備やフォローといった仕事に専念しやすくなります。

 

採用ミスマッチの防止

人事担当者は採用のプロですが、現場の業務を熟知しているわけではありません。最近では、分業と専門化が進むなかで、人事の把握度は落ちつつあります。

 

こうした理由から、人事担当者が面接しても「求職者が優秀なのか、経歴がフィットするのか判断できない……」といったことも増えています。

 

また、志望度アップするうえでも、自社における該当職種のやりがいやキャリアパスの魅力について語ることが難しくなっている部分もあります。

 

スクラム採用を導入して、現場に必要なスキルや価値観を熟知したメンバーが面接や選考に関われば採用ミスマッチも起こりにくくなります。

 

また、各職種にフィットした情報提供を行なうことで、求職者への魅力付けも容易になるでしょう。

 

優秀な転職潜在層へのアプローチ

優秀な人材に注目される企業には、以下のような特徴があります。

  • 経営ビジョンが確立され、メンバーに共有されている
  • 自分の能力を活かし伸ばせるフィールドがある
  • インナーブランディングに成功している など

スクラム採用で、たとえば、優秀なメンバーが自社の採用コンテンツに露出すれば、ビジョンの共有や能力が活かせるフィードがあることのアピールが可能になります。

 

また、たとえば、優秀メンバーが「この企業に転職してから、エンジニアとして成長できました!」という話をすれば、人事担当者が語るよりも説得力が増すでしょう。

 

さらには、リファラル採用を導入して、各個人に自分の友人や知人で自社にフィットする人がいないかを探してもらうことも可能になります。

 

先述のとおり、近年では、SNSが発達したこともあり、たとえば、極端な話、メンバー100人が一斉にSNSで自社の求人情報を発信すれば、その露出効果は非常に大きなものになり得ます。

 

◆従業員エンゲージメントの向上
採用活動に携わる、一緒に働く仲間の募集に関わることで、現場の社員にとっても有意義な体験になります。

 

時間や工数的な負荷がかかり過ぎないようにすることは大切ですが、人事と幹部が採用した人が一方的に配属された場合などと比べて、育成へのモチベーションなども高くなりますし、組織づくりに携わっている感覚を得ることもできます。

 

また、採用活動に際して、自社のやりがいやキャリアパスなどについて改めて理解を深めたり整理したりして、求職者にアウトプットすることは、エンゲージメント(職場への愛着・信頼)向上にもつながります。

スクラム採用のデメリットは?

スクラム採用を導入すると、現場のメンバーが採用活動に関わることで、一定の工数が取られることになります。

 

また、営業部門・技術部門・開発部門……と多彩な職種・部門の人材を採用する場合、スクラム採用を行なうと、求職者の履歴書や職務経歴書などの扱いや情報管理の煩雑化も予想されるでしょう。

 

したがって、現場メンバーに工数的な負荷がかかり過ぎないようにすること、また、求職者の情報管理では、採用活動に携わるメンバー間で共有できるシステムを導入するなどの対応が必要となる場合もあるでしょう。

スクラム採用を成功させるポイント

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スクラム採用を効果性の高いものにするには、以下のポイントを大切にする必要があります。

 

経営陣のコミット

スクラム採用を成功させるには、現場を巻き込むことが重要です。また、前述のとおり、多少なりとも工数を割いてもらう必要があるため、通常業務への影響が少なからず発生します。

 

だからこそ、現場のメンバーに協力してもらうためには、経営陣によるメッセージの発信や関わりが大切です。

 

たとえば、経営陣が以下のようなメッセージを継続的に発信することで、現場のメンバーは、採用活動に自分が参画する必要性やメリット、負担が増えることへの認識があることを理解できます。

 

「採用は、5年後10年後の会社をつくる活動に他ならない。現場のみんなにも採用活動に参加してもらう必要がある。普段の業務で忙しいこともよくわかるし、特定の一人に過度な負荷がかからないように配慮はしていくので、全員協力してほしい」

 

また、スクラム採用を成功させるには、経営陣や上級管理職が採用活動にコミットする姿を見せることも大切です。

 

権限移譲

人事担当者は、スクラム採用に参加する現場メンバーを信頼して、人事から権限を移譲していくことも大切です。

 

権限移譲されたメンバーは、採用活動を自分事としてとらえ、責任感を持って面接などに臨むようになります。

 

また、自分が採用した新人への「一緒に頑張っていこう」「大事に育てていこう」という想いも、権限移譲されたからこそ生まれるものです。

 

相手に応じたバランスなどはありますが、“現場の工数を人事がいいように使う”という図式や心象にならないようには注意が必要です。

 

情報管理

本格的にスクラム採用を実施する場合、採用管理システムや個人情報の取り扱いに関するルールや運用方法を決めて、参加メンバーへの教育が必要になることもあるでしょう。

 

ルールや運用方法の検討・立案では、スクラム採用に参加する現場の声にも、やはり耳を傾ける必要があります。

まとめ

スクラム採用は、現場のリーダーやメンバーをはじめとする全社員が採用活動に関わることで、企業の採用力を高める方法です。スクラム採用には、以下のメリットがあります。

  • 人事担当者の負担軽減
  • 採用ミスマッチの防止
  • 優秀な転職潜在層へのアプローチ

現場のメンバーを巻き込んでいくためには経営陣からのメッセージや人事部門から現場への採用権限を移譲するなどの取り組みも必要になります。

 

中長期的には、スクラム採用をリファラル採用の動きにつなげられると、母集団形成力の向上にもつながるでしょう!

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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