若手が育たない組織にある3つの特徴と若手育成のポイント

更新:2023/11/13

作成:2022/01/20

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

若手が育たない組織にある3つの特徴と若手育成のポイント

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、最近企業から若手育成の相談をいただくことが増えています。「若手が思うように育たない」「期待していた3年目の若手が突然退職してしまった」「1年目は順調だったのに、2年目で伸び悩む」といったご相談です。

 

記事では、若手社員が思うように育たない組織が抱える3つの特徴と若手が育たない原因、若手を育てるために組織が取り組むべき3つのポイントを紹介します。

<目次>

若手が育たない組織にありがちな3つの特徴

多くの企業から若手育成の相談をいただくなかで、若手が育たない企業が持つ3つの特徴、すなわち若手が育たない要因が見えてきました。

 

本章では若手が育たない企業にありがちな3つの特徴を紹介します。

 

特徴① 若手育成のゴールや人材像が明確ではない

若手が育たない企業にありがちな1つ目の特徴は、若手育成のゴールや人材像、期待水準が明確ではないということです。

 

企業経営において組織の存在目的であるミッションやビジョン、目標となる事業計画や年度計画がなければマネジメントは非常にやりにくいでしょう。また、社員個々が年度や四半期の目標を持っていなければ社員の自走や自立は生まれづらいでしょう。若手の人材育成においても同様です。

 

組織内において、若手育成のゴールや期待する水準、重視する行動規範や価値観が決まっていない、また上層部の頭の中には何となくあっても肝心の社員には共有されていないという組織も少なくありません。

 

こうした組織においては、若手は短中期的な成長目標やキャリア目標を持ちづらくなります。すると若手の意識は目の前の業務をこなすことだけに向きがちです。また、育成を担う上司なども成長に関する共通言語がなく、自分一人で組み立てないといけない状態は負担が重くなります。すると上司の意識も担当業務をやらせる、成果をあげさせることだけに向かいがちです。

 

このように若手育成のゴールや人材像が明確化されていない状態は、成長を期待される当の本人にも、指導を担う上司にもやりづらい状態であり、若手が育たなくなりがちです。

 

特徴② 人材育成が重視されていない

2つ目が「人材育成が組織で重視されていない」ことです。若手育成は指導に当たる上司や管理職のマネジメントが大きな影響を与えることは言うまでもありません。しかし、旗振り役となる経営陣や人事部門の意識も非常に重要です。

 

特に人事部門は、方向性や意識づくりを担う経営陣と実行を担う上司・管理職をつないでサポートする要の役割です。しかし、多岐にわたる人事業務のなかで、労務管理や人事評価などの定型的な業務、また明確な数値目標がある採用活動に人事の工数が割かれ、人材育成やモチベーション向上、社風形成などの組織開発業務は後手に回りがちです。短期間で成果が出にくく、結果が見えづらい人材育成は、「大事だけど、後回しにされやすい」のです。

 

経営陣が若手育成の大切さを口にしても、実務に追われがちな現場の管理職層をサポートする人事や部門長などが人材育成、若手育成に意識を向けない限り、成果は期待できません。経営陣と人事部門、部門長などが研修やトレーニングなどの人材育成の工数を優先して確保したり、費用を承認したりする状態を構築することが大切です。若手育成にはそれなりの手間と費用は必要です。手間と工数を確保する・させるのは、経営陣と人事、部門長の役割です。

 

特徴③ 失敗を許容しない組織文化がある

3つ目に「失敗を許容しない組織文化」の存在です。新人や若手は失敗や停滞を経験しながら成長するものです。特にある程度の仕事を覚えてきた2年目、3年目の若手社員は成長の停滞が起こりがちです。彼らの成長を刺激するためには、仕事の10~20%ぐらいを新たな仕事、少し難易度が高い仕事に挑戦させることが大事です。

 

一方で、2年目、3年目の若手社員の仕事ぶりというのは上司から見れば、まだまだ粗があり、一人前にはなっていないことも多いでしょう。そんな状態で新たな仕事や難易度が高い仕事に挑戦させれば、失敗も起こりがちです。しかし、挑戦にともなう失敗は許容しないと、若手に成長への刺激を与えることが難しくなります。同時に、若手自身も失敗を恐れて、既存業務をこなしながらこちょこちょと改善していくような動き方になってしまいがちです。

 

もちろん失敗ありきではありませんが、挑戦にともなう失敗を許容することで若手に成長の刺激を与えることができますし、若手も新たな業務、難易度が高い業務への挑戦を通じて、困難を克服したり、ストレス対応力を身に付けたりしていくのです。

若手が成長するために組織が取り組むべき3つの大切なこと

若手育成に課題を抱える組織の特徴を踏まえたうえで、若手が育つ組織をつくる3つのポイントを紹介します。

 

組織が目指す人物像を明確にする

まず1つ目のポイントは、組織が目指す人物像を具体化して浸透させることです。大きく3つのステップで取り組むことが効果的です。

 

<ステップ1 企業理念と行動規範の浸透>
最初のステップは、若手社員に企業の理念や行動基準を徹底させて主体的な行動を促すことです。

 

若手社員には初めのうちは与えられた業務を確実にこなすことが期待されますが、次第に新しい業務に挑戦したり、自ら考えて行動したりすることが求められます。自ら考えたり行動したりするための軸となるものが自社のミッション、ビジョン、バリューです。

 

また、ミッション、ビジョン、バリューは行動や判断の軸であると同時に、目指す人物像にもつながってきます。組織が目指す人材像を考えるとき、ミッション、ビジョン、バリューをもとに「このランクであれば、ミッション、ビジョンの実現、バリューの実践に関してこういうレベルで実施して欲しい」というものを整理しておきましょう。

 

<ステップ2 キャリアマップの策定>
キャリアマップとは、自社の業務内容や職種、職位を棚卸して、実施すべき業務、職種や職位による業務の分担、分担した業務を遂行するために必要なスキルやマインドなどを整理した体系図です。キャリアマップの策定は組織が目指す人材像を業務という面から明確にすることにつながります。

 

<ステップ3 Off-JTとOJT、組織の仕組みによる教育の分類>
ミッション、ビジョン、バリューから作成した期待する人材像、また整理したキャリアマップを見ながら、どこをOJT、どこをOff-JT、組織の取り組みで育成していくかを分類していきましょう。

 

人材育成は研修だけで実施するものではありません。体系的な知識やスキル、マインドセットや深い振り返りにはOff-JTが向いていますが、実務ノウハウやリーダーシップ発揮などは業務におけるOJTが効果的です。また、朝礼、ミーティングや会議、日報なども効果的な人材育成の手段となります。

 

組織全体に人材育成の価値を浸透させる

若手を育てるうえでは、組織全体に人材育成の価値を浸透させることも大切です。人材育成は手間も費用もかかります。若手に新しい業務を任せたり、チャレンジさせたりすることで、機会損失を生む場合もあるでしょう。しかし、それらの手間と費用をかけて若手を育てなければ、組織全体の将来が閉ざされてしまいます。

 

したがって、組織全体、経営陣や管理職層には人材育成の重要性や責任、中堅や若手社員には自己成長の重要性を繰り返し発信して、組織の価値観として浸透させることが重要です。ミッション、ビジョン、バリューと同様、人材育成の重要性も一朝一夕に浸透させることはできません。まずは経営者などのトップから何回でもメッセージを発信しましょう。

 

HRドクターを運営している研修会社ジェイックの代表 佐藤は、全社員向けに週1回社長メッセージとして、「ジェイック・スピリッツ」というメールを配信しています。毎週2000~3000文字ほどのマネジメントレターはすでに600号を超えていますが、その中でも人材育成や自己成長については、非常に高い頻度で触れられています。

 

『失敗を恐れずに挑戦する』文化を浸透させる

最後のポイントは、失敗を恐れずに挑戦する文化を浸透させることです。前述のとおり、失敗を許容しない文化は若手の成長を阻害します。失敗を恐れない文化は管理職の裁量だけでは生まれません。人材育成の重要性と同様にトップや経営陣が率先して発信したり、実践したりする必要があります。

 

挑戦といっても大きなことだけではありません。むしろ、小さな挑戦をたくさんするほうが若手の育成には効果的です。仕事のやり方を変えてみる、新しいツールを入れてみる、現場からの提案を取り入れてみる、などです。若手の育成を後押しする挑戦の文化は「試す」文化といってもいいかもしれません。取れるリスクの範囲でどんどん試す文化、挑戦する文化を作っていきましょう。

 

なお、挑戦する文化を浸透させるうえでは「挑戦して失敗した人の処遇」が重要です。「挑戦すれば失敗することは当たり前であり、失敗にともなう評価やけじめはつけたうえで、いくらでもセカンドチャンスがある」という実例を次々と生み出していきましょう。

おわりに

記事では、若手の成長に悩む企業の特徴に加えて、若手の成長を促進するために必要な取り組みのポイントを紹介しました。

 

紹介した「目指す人物像の明確化」「人材育成の価値浸透」「失敗を許容する文化の構築」という3つの取り組みは、非常に大きなテーマであり、一朝一夕には実現するものではありません。

 

しかし、若手の育成は組織の10年後、20年後を確実に左右します。いま20代の若手層が、10年後20年後には組織の中核となり、業績、組織の変革、新規事業といったものを担うことになります。いま若手が育たないことに悩みがあれば、3年5年かけても若手が育つ環境を作っていくことが大切です。記事がその一助になれば幸いです。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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