若手社員の受け入れ態勢をチームで整え、退職を防止するポイント

更新:2022/01/08

作成:2022/01/05

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

若手社員の受け入れ態勢をチームで整え、退職を防止するポイント

若手社員の採用に苦労している企業が多いなかで、意外と見落としがちなのが「受け入れ態勢の整備」です。本来は、採用と受け入れを連動させる必要がありますし、採用が大変な会社ほど受け入れ態勢を強化しておいたほうがよいでしょう。
 

しかし、工数に余裕がない中堅中小企業ほど、「採用は人事や経営者が行ない、受け入れは現場のメンバーに任せる」という構造になりがちです。そして、両者の連携ができていなかったり、受け入れノウハウが不足していたりすると、「苦労して若手人材を採用しても定着せず、採用にかけた手間がすべて無駄になってしまう」ことが起こりがちです。
 

記事では、「そもそもなぜ若手は退職するのか」という理由を確認したうえで、若手社員の受け入れ態勢をつくる4つのポイントを解説します。

<目次>

「若手の退職理由」を押さえる

若手社員の退職にはいろいろな理由があります。記事を書いている私も、HRドクターを運営するジェイックが3社目です。したがって、これまでに会社を辞めた経験が2回あります。自分自身の退職理由も振り返ってみると、決め手になった理由はありますが、それ以外にも複数の理由があり、複合的に退職を決めたと言えます。
 

では、若手の退職理由にはどんなものがあるのでしょうか。さまざまなアンケート等を見ると、「給料の低さ」「仕事のやりがい」「人間関係」「残業や休日出勤」「会社の将来性」等が挙げられます。
 

個別に紹介した5つの退職理由は、求人媒体や人材紹介会社の退職理由アンケートでも、必ず上位にあがってくる項目です。対象が「若手社員」であっても、5つの退職理由が大きな原因であることは間違いありませんが、詳しく見ていると、昨今の傾向や特徴も見えてきます。
 

まず5つの退職理由のうち、給料や残業、休日等、条件面等の待遇や働き方に関する理由は、「現実的に問題が生じている」のではなく、「周囲の人と比べて…」という相対的なものであることが大半です。
 

「雑誌で見ると、自分と同じ年次でも〇〇職だとこんなに給料がもらえるらしい」「大学時代の友人と比べて、うちの会社は残業も多く、プライベートに使える時間がこんなに少ない」といった比較が原因となって不満を感じるのです。
 

また、「仕事のやりがい」が退職理由に挙がるのは、今の若手は、「自分のやっていることに意味や価値を求める」傾向が強いことを表しています。自分の仕事が「世の中の役に立っている」「社会に貢献できている」という実感がないと、仕事に対するモチベーションが下がってしまいがちなのです。
 

また、「人間関係」を理由にした退職ですが、これまで若手の退職理由である人間関係は多くの場合、「上司との人間関係」でした。しかし、昨今の若手は、上司に限らず他者とのコミュニケーションを苦手としている人も一定数おり、「職場に馴染めず退職を選ぶ」ケースも増えています。
 

最後に「会社の将来性」という退職理由ですが、今の若手世代は、自分の会社あるいは自分自身を客観的に見る視点が強くなっています。ネット上には他社との比較をするための情報も溢れています。
 

また、転職のための情報も世の中に氾濫しており、転職に対する抵抗感はありません。したがって、自分の会社をシビアな目で見て、「将来性を感じない」「ここにいても自分は成長できない」と本人が考えれば、容易に転職を決意する傾向にあります。
 

上記の退職理由等から見える若手社員の退職を防止するためのポイントは何でしょうか。それは「貢献」「成長」「仕事のやりがい(意義)」を仕事のなかで実感させることです。社会貢献や自己成長の実感を仕事のなかで得ることが仕事のやりがい(意義)につながり、今の会社で働くことの納得感や充実感が生まれます。
 

若手社員に「貢献」「成長」「仕事のやりがい(意義)」を実感してもらうには、若手社員の価値観等を理解したうえでの「受け入れ」がポイントです。受け入れ方を工夫することで、若手社員と周囲との円滑な人間関係も構築できます。次章で受け入れ方を整えるうえでの大切なポイントをお伝えします。

若手社員の受け入れ態勢を整えるポイント

本章では、若手社員の受け入れ態勢を整えるうえでポイントとなる点を4つ紹介します。それぞれの視点で現状を確認して、整備していくことで若手が定着・活躍しやすい職場づくりを実現できます。
 

若手社員の受け入れ態勢を整えるポイント① 先輩社員の仕事ぶり

若手社員を受け入れるうえで、実は一番大きなポイントは「先輩社員の仕事ぶり」です。OJT担当の先輩社員であろうがなかろうが、若手社員から見たとき、「周囲の先輩たちがどのような姿勢や考え方で仕事に取り組んでいるか」は非常に大事です。
 

若手社員に影響を与える、ということはもちろんですが、同時に周囲の先輩社員の姿は、若手社員にとって「数年後の自分の姿」です。先輩社員が一生懸命にやりがいを感じながら仕事をしている、目指したいロールモデルが現実にあれば、モチベーションは下がりづらいでしょう。
 

逆に、先輩社員が普段から「会社の愚痴」「給料・労働時間に対する不満」ばかりを口にしていたら、先輩社員の姿を見るだけでも「この会社にいては自分の将来はない」「こうはなりたくない」と感じ、モチベーションは下がり、退職へと気持ちは傾きます。
 

ロールモデルということ以外でも、若手社員は物事の判断基準があいまいだったり、安易な判断をしたりしますので、愚痴をこぼしたり、他責にしたりする先輩社員の姿に影響を受けて、「自分も愚痴を言う・他責にする」、また「うちの会社や経営陣はダメなんだと信じる」ようになってしまいます。
 

若手社員の受け入れ態勢を整えるポイント② 大変さとやりがいを併せて伝える

若手社員に対して、初期の段階で絶対に伝えなければいけないのが、「大変さとやりがい」の関係性です。やりがいが大きい仕事というのは、得てして大変なことも多いものです。残念ながら「大変なことは一切なく、やりがいは素晴らしい!」という仕事は現実的にはほとんどないでしょう。
 

山で考えてみるとイメージしやすいでしょうか。高い山は登るのは大変ですが、山頂から見える景色は絶景と呼べるものです。「大変さの、その先にやりがいはある」と伝えても良いかもしれません。
 

しかし、上司や先輩社員のなかには、大変さは伝えず、やりがいだけを伝えてしまう人が多いのです。いまの若手社員は、「自分がやっていることに意味を見出したい」気持ちが強い世代ですから、仕事のやりがいをしっかり伝えることは大事です。
 

しかし実際に仕事をするときには、やりがいを実感する前に、大変さが先行することが多いでしょう。そうしたときに、事前に大変さもしっかり伝えていないと、若手社員は「こんな大変なことをするなんて聞いていない」「想像していなかった」とネガティブな感情を抱いたり、ギャップを感じたりする可能性があります。
 

ギャップに対する感覚が昔よりも鋭敏になっており、想像していない大変さに対して、極端に書けば「騙された」と感じる傾向もあります。受け入れの初期段階で、仕事のポジティブな面だけでなく、ネガティブな面、大変な面も必ず伝えてセットでイメージさせましょう。
 

若手社員の受け入れ態勢を整えるポイント③ 受け入れ計画と役割分担の共通認識をつくる

受け入れ態勢を整えるポイントの3点目は、受け入れる組織やチームにおいて、きちんと受け入れ計画と役割分担の共通認識をつくることです。多くの組織でこれができていません。
 

若手社員が配属された後、例えば1年後のゴールはどういう状態なのか、ゴールに向けてどんな目標やスキルをどんな順番で身に付けていくのか誰がどんなフォローをするのか、といったことがしっかりと決められておらず、「OJT担当にお任せ」というケースが多いのです。
 

OJT担当者が人材育成の経験やノウハウを持っており、「彼に任せれば大丈夫!」という場合もあると思いますが、実際はOJT担当者も数年目の若手社員であり、かつ自分自身の業務や業績目標を担いながら新人や若手社員の指導をすることがほとんどです。
 

したがって、

 

  • OJTの実施フォーマットを準備して、フォーマットを埋めていくことで、OJT計画が完成する
  • 作成したOJT計画をチーム内で共有して、育成の順序やペースに関して共通理解を持つ
  • OJT担当者は主に実務の指導者として、キャリアや中長期のモチベーションに関しては上司が定期的なレビューでケア、日常の状態把握やフォローは積極的にコミュニケーションを取るタイプの若手を指名する、などフォローを分担する

 

といった取り組みが有効です。
 

若手社員の受け入れ態勢を整えるポイント④ 若手の指導に関して守るべきルールを設定する

OJT計画をつくり、受け入れをする際には、簡単でいいので、「若手社員と接するうえでのルール」を作っておくことをおススメします。例えば、「仕事の質問をされたら、不機嫌そうな態度や面倒くさそうな態度をとらない」「○○に関してできていないときはしっかりと指摘する」などがルールの一例です。こういった接するルールを決めておくことで、若手社員の指導に一貫性が出ます。

まとめ

若手社員の採用に苦労する中小企業も多いですが、そのなかで「受け入れ態勢の整備」を怠ってしまったために「苦労して若手人材を採用しても定着せず、採用にかけた手間がすべて無駄になってしまう」ことが起こっています。
 

若手社員の受け入れ態勢を整備するうえでは、若手社員の退職理由を知ることが大事です。「給料の低さ」「仕事のやりがい」「人間関係」「残業や休日出勤」「会社の将来性」等の主な転職理由は若手社員も変わりませんが、若手社員固有の意識や価値観に踏み込んで退職理由を解釈しておくことが大事です。
 

また、受け入れ態勢のポイントは、仕事のなかで「貢献」「成長」「仕事のやりがい(意義)」等をしっかりと実感させることです。社会貢献や自己成長の実感を得ることが仕事のやりがい(意義)につながり、今の会社で働くことの納得感や充実感が生まれます。
 

記事で紹介した

  • 先輩社員の仕事ぶり
  • 大変さとやりがいを併せて伝える
  • 受け入れ計画と役割分担の共通認識をつくる
  • 若手の指導に関して守るべきルールを設定する

等のポイントも参考に、ぜひ採用した若手社員の受け入れ態勢を整えてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
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