
新卒が定着しない企業には、どのような原因があるのでしょうか。本章では、新卒の定着を妨げる最大の要因と自社で実践できる対策を紹介します。
根本的な原因は入社前後の「ギャップ」
新卒の退職理由に書かれる内容は、以下のようにさまざまです。
- 給料が不満
- 労働環境が悪い
- 上司が嫌い
- 仕事がつまらない など
しかし、最も大きな要因は、入社前と入社後のギャップです。入社前と入社後のギャップが引き起こす動揺やモチベーション低下は「リアリティショック」と呼ばれます。リアリティショックは、期待を抱いて入社したものの、期待値と企業の実態に乖離がありすぎて、「こんなはずでは……」という感情が生じている状態です。
上記のような給与、労働環境、マネジメント、仕事内容への不満なども、すべてリアリティショックであるともいえます。
多くの企業は、新卒採用において学生に辞退されたくないと考えます。ゆえに、選考過程で自社の良い点しか伝えない、また、そもそもの情報提供量が不足することによって、入社後の大きなリアリティショックが生まれやすくなっています。
リアリティショックを防ぐ方法①「採用時の情報提供」
リアリティショックを減らすためには、採用時にうまい話やきれいごとだけでなく、現実的な情報提供をすることが大切です。
現実的な情報提供は、リアリスティックジョブプレビュー(RJP)と呼ばれます。日本語に訳せば、「現実的な仕事情報の事前開示」ということです。
リアリスティックジョブプレビューでは、ネガティブな情報もきちんと伝えることにはなりますが、たいていの場合、企業側が懸念しているような悪い影響はありません。むしろ、企業の誠実さやオープンさをアピールできる手法となります。
引用:【徹底解説】採用の新常識「RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)」とは何か?【事例9選】
リアリスティックジョブプレビューでは、選考プロセスにおける情報提供の徹底と、入社後の人間関係などを想起させることが重要です。
具体的には、入社後の姿が想像できるリアルな情報提供が重要であり、プロっぽさや凝った演出などは必要ありません。面接での開示や簡素なテキストコンテンツ(ブログ記事など)、シンプルな動画などでよいでしょう。
なお、リアリスティックジョブプレビューを行なうときにも、待遇面(給与や福利厚生、休日など)のギャップがないことが大前提になります。
求人票に記載された待遇と実際に提示する待遇(労働契約書に記載される条件)が異なっても、それ自体は厳密には違法ではありません。
しかし、待遇面のギャップが大きければ、学生からの印象は確実に悪くなりますし、もちろん、入社後の待遇が労働契約と異なることは法的にも完全にNGです。
ギャップを防ぐ方法②「受け入れ態勢の整備」
新卒の場合、職業経験がありませんので、企業側がいくらリアリスティックジョブプレビューを行なっても、甘い考えをしていたり、想像できなかったりすることが多くあるのは防げません。
したがって、リアリティショックを吸収して、定着率を高めるには入社後の受け入れ態勢も大切です。入社後の受け入れは、オンボーディングと呼ばれる手法を活用しましょう。
オンボーディングでは、単にビジネスマナーや業務スキルの教育だけでなく、組織社会化と呼ばれる組織に馴染むプロセスをしっかりと設計することが大切になります。
人材育成やキャリア面談などの重要性
現在までの数十年で転職は非常に一般的なものとなり、フリーランスなどの働き方も増えるようになりました。
時代変化のなかで、新卒の多くは、「入社時点から転職を選択肢に入れている」といっても過言ではありません。「今の企業で一生働く」と思っている新卒はほぼいないと考えてよいでしょう。
また、インターネットが発達したことによって、「隣の芝は青く見える」現象が強化されています。たとえ、転職をさほど意識していなくても、SNSやインターネットを通じて、“隣の青い芝”が目に飛び込んでくるようになっています。
新卒自身の価値観も、「企業が自分を守ってくれる」とはまったく思っておらず、自己成長やキャリア形成などに非常に敏感となっており、「良い機会があれば転職しよう」と普通に考えているのも近年の傾向です。
こうした新卒の傾向を見ると、企業は入社前後のギャップ改善に加えて、求職者に対して入社後に関する以下の感覚を与えることが重要となります。
- 仕事を通じて成長している実感
- 企業が自分の成長を支援してくれている
- 今の企業で先々のキャリアを形成できる、待遇が向上していく
成長などの感覚を新卒に与えるためには、研修機会や振り返りなどによる人材育成、また上司や人事、経営層によるキャリア面談などを実施することが大切でしょう。
もちろん、大前提として、「良い会社づくり」や「待遇を向上できる生産性」を目指すことも必要です。