「人を動かす三原則」とは?使い方、注意点も解説

デール・カーネギー「人を動かす3原則」とは?|人間関係を築き、人を動かすポイントを解説

デール・カーネギーの著書『人を動かす』には、「人を動かす三原則」という最も基本となる原則が書かれています。

 

人を動かす三原則は、『人を動かす』に書かれている全30の原則の中でも、原則の基礎となるもので、書籍の初めの章で解説されています。人を動かす三原則をしっかりと理解すれば、『人を動かす』の根本が分かるでしょう。

 

本記事では、デール・カーネギーの研修を提供する研修会社としての見識をもとに、カーネギーの著書『人を動かす』に書かれている「人を動かす三原則」を詳しく解説します。より良い人間関係を築いたり、他者への影響力を発揮したりする参考になれば幸いです。

 

<目次>

カーネギー『人を動かす』の概要

最初に書籍『人を動かす』と著者デール・カーネギーについて簡単に紹介します。

 

デール・カーネギーとは?

『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーは、1888年、アメリカ中西部の貧しい農家で生まれました。

 

大学を卒業後は、教師や販売員の仕事を転々としますが、YMCAが主催する社会人向けの話し方教室の講師を経験することで才能を開花させます。

 

カーネギーの講義は好評を博し、講義と並行しながら自身の指導法を体系化し、知見やノウハウを蓄積します。それをまとめた書籍が『人を動かす』です。

 

デール・カーネギーについては以下の記事で解説しているので参考にしてください。

 

 

著書『人を動かす』

書籍『人を動かす』は、1936年に出版されて以降、全世界で1500万部を超える売り上げを記録し、時代や文化を超えたコミュニケーション術の原則を紹介する書籍としてベストセラーとなっています。

 

同書の核となるのは「自分自身の態度や振る舞い方を変えることで、他人の行動を変えることができる」という考え方です。

 

本書には、人間関係を改善し、周囲の人を味方につけ、リーダーシップを発揮して他者に影響を与える、全部で30の原理原則が紹介されています。

 

『人を動かす』の内容について知りたい人は、以下の記事で要約しているので参考にしてください。

人を動かす三原則とは?

人を動かす三原則とは、人間関係やコミュニケーション研修のパイオニアであるデール・カーネギーの名著『人を動かす』で解説されている、人を動かす上で基本となる重要なルール、ポイントのことです。

 

3つの原則とは以下です。

  1. 盗人にも五分の理を認める
  2. 重要感を持たせる
  3. 人の立場に身を置く

 

3つの原則をまとめると以下となります。

  • どんな相手であれ批判せず、まずは相手の心理を受け入れる
  • 聴く、ほめる、意見を訊くなどを通じて、相手の自己重要感を満たす
  • 相手の立場に身を置いて、相手が望むものが何かを考える

 

3つの原則を実践できれば、『人を動かす』の本質を掴んだと言えるでしょう。ここからは、各原則の意味、ポイントを解説します。

人を動かす三原則①「盗人にも五分の理を認める」

1つ目の「盗人にも五分の理を認める」の意味、ポイントについて説明します。

 

「盗人にも五分の理を認める」の意味

「どんな相手に対しても、批判から入るのではなく、まずは理解を示す」という原則です。

 

たとえ相手が犯罪者だとしても、相手は「自分が罪を犯したのはやむを得ない事情があった」「本来の自分は “良い人” である」と思っているものです。普通の人であれば、なおのこと自分が悪いとは思っていません。

 

だからこそ、どんな相手に対しても批判や非難から入るのではなく、まずは相手の心情に関心を持ち、理解を示すことが大切なのです。

 

私たちは、相手の意見に賛同できない時や不誠実な振る舞いを目にした時、無意識に相手に批判の目を向けがちです。しかし、相手を批判や非難すれば、たとえ、どんなに的を得た指摘であっても、相手は心を閉ざし、あなたの意見には耳を貸さなくなってしまうでしょう。

 

「盗人にも五分の理を認める」のポイント

「盗人にも五分の理を認める」で大事なのは、相手に理解、同情、寛容を持って接するということです。

 

人は、自分の言動や考え方が正しいと考えている生き物です。だからこそ、ミスを厳しく指摘したり、過ちに厳しく詰め寄ったりすることは、人を動かす上では意味がありません。まずは、相手の言い分を聞くことからはじめることが大切なのです。

 

非難したり苦情を言ったりする代わりに、相手を理解するよう努めることが大事であり、相手が「なぜそうしたのか」を考えることで、同情や寛容、好意が生まれてきます

 

カーネギーは次のように説いています。

「人を批評したり、非難したり、小言をいったりすることは、どんなばか者でもできる。 そして、ばか者にかぎって、それをしたがるものだ。 理解と、寛容は、すぐれた品性と克己心をそなえた人にしてはじめて持ちうる徳である」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

 

ビジネスシーンでの部下育成やマネジメントでも同じことが言えます。

 

部下のいる管理職の中には「部下は理屈で動く」「部下を成長させるためには本人の欠点を指摘すべきだ」と考えている人も少なくありません。もちろん、成長を期待してフィードバックすることは重要です。

 

しかし、カーネギーが言うように、人は自分を批判・非難する人よりも、理解、同情、寛容、好意をもって接してくれる相手に好感を抱きます。

 

フィードバックを受け入れてもらう、間違いを修正してもらいたいのであれば、まずは相手を理解する、相手の言い分を聞くことからはじめることが大切です。

 

人を動かす三原則②「重要感を持たせる」

2つ目の「重要感を持たせる」の意味、ポイントについて説明します。

 

「重要感を持たせる」の意味

重要感を持たせるとは、相手に「自分の存在が重要である」という実感を持ってもらうことの大切さを教える原則です。

 

カーネギーは次のように説明しています。

「人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせることーこれが、秘訣だ。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

 

人は誰しも、自分がつまらない人間、価値のない人間ではなく、誰かにとって、世界にとって「重要であり、価値がある人間だ」と認めてもらいたがっています。

 

だからこそ、自分の自己重要感を満たしてくれる相手に対して、人は好意を抱きますし、自己重要感を満たしてくれた相手に何かしら貢献したいという気持ち(返報性の法則)を抱きます。

 

「重要感を持たせる」のポイント

「重要感を持たせる」を実行するポイントの1つ目は「率直で、誠実な評価を与える」ということです。心から相手を信頼し、相手の人格にまっすぐ向き合い、心からの感謝を示すことが大切です。

 

相手に良く思われたい、気に入られたいと思うあまり、表面的な「お世辞」や「おべんちゃら」を口にする人も少なくはありません。しかし、往々にしてお世辞で言っていることは、相手にも伝わってしまうものです。

 

こちらの思惑が見透かされてしまえば、むしろ言うだけ逆効果になってしまうでしょう。相手に重要感を持たせるには、正直に誠実な評価をすることが大切です。

 

ポイントの2つ目は、「日頃から相手の長所を観察する」習慣を持つことです。

 

日頃から相手の長所を見つけるようにすれば、相手に重要感を持たせるための良い評価をしやすくなります。

 

カーネギーも『人を動かす』の中で、日頃から他人の長所を見つける習慣をつけることが大切だと話しています。

人を動かす三原則③「人の立場に身を置く」

3つ目の「人の立場に身を置く」の意味、ポイントについて説明します。

「人の立場に身を置く」の意味

人の立場に身を置くとは、「相手が欲しいもの、相手を動かす強い欲求が何かを知るためには、まず相手の立場に立つことから始める」という原則です。

 

カーネギーは次のように説明しています。

「人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

 

相手の求めるものが何かを理解するためには、相手の立場になって「相手の望みは何なのか?」「相手は何を大切にしているのか?」に焦点を当てて考えることが必要です。

 

相手が欲しいものが分かれば、「私のいうことを実行してくれれば、あなたが欲しいものが手に入ります」とうまく表現してあげることです。これで相手は自分から進んで動くでしょう。

 

「人の立場に身を置く」のポイント

「人の立場に身を置く」を実行するポイントは、自分の価値観と相手の価値観が同じとは限らないという大前提を理解することです。生まれ育った環境、体験してきたことが違う以上、自分と全く同じ価値観を持った人はこの世に一人もいません。

 

しかし、私たちは人を動かそうとするとき、「相手は自分とは違う」という基本的な事実を忘れてしまいがちです。だからこそ、人を動かしたいときには、「相手にとって物事はどう見えているか?」「相手は何を望んでいるか?」「どうしたらこの人はそれをやりたいと思うようになるか?」に焦点を当てて考えることが大切です。

 

人を動かす三原則の使い方、例

三原則の使い方、事例を紹介をします。

「盗人にも五分の理を認める」の使い方、例

「盗人にも五分の理を認める」は、相手の事情や気持ちを考えずに批判や非難をせず、相手に理解、同情、寛容を持って接するということでした。使い方の事例を以下で紹介します。

 

経理部に所属するBさんの職場では、毎月決まった日までに経費申請を提出するルールになっていますが、営業主任のSさんはいつも経費の提出が遅れており、BさんはSさんにイライラを募らせています。

 

ここでもし、業を煮やしたBさんが、「期日までに申請書を出してくれないと仕事が滞るじゃないか。期日までに出してくれないと困るんだよ!」とSさんに問いただしたとしましょう。

 

Bさんが言っていることは間違っていません。しかし、一方的にSさんを責め立てたとすれば、Sさんは「こっちは売上を達成するために必死なんだ。得意先回りで社外にいる日が多いんだから、期日に間に合わないことだってあるさ!俺たち営業が苦労して売上を作っているんだ。それを経理が偉そうになんだ」と自分を正当化し、反発してしまう事態にもなってしまうかもしれません。

 

カーネギーの原則に従うなら、こんな言い方がよいかもしれません。「外回りで忙しいところ申し訳ない。営業としては、少しでも得意先への訪問や提案を優先して売り上げに繋げたいのは当然だと思います。なので社内事務になかなか時間を割けないのもよく分かります。

 

ただ、経理として月次決算がきちんと実行できないと銀行との関係などで困ってしまうようなことなどにもなりかねないんです…。たとえば、最終週にそこまでの分だけでも一度処理してもらうとか、どうしても間に合わないときはメールか電話で連絡してもらえると助かるのですが、何かできないでしょうか…」のような伝え方をすれば、相手も自分の立場を理解してもらえたと感じて、受ける印象はだいぶ変わるでしょう。

 

「盗人にも五分の理を認める」とは、相手の行為が間違っていても許すということではありません。一方的に指摘するのではなく、まずは相手の立場、言い分を理解するということが大切なのです。

 

「重要感を持たせる」の使い方、例

「重要観を持たせる」を実行することは、習慣にしてしまうと意外と簡単です。まずは「自分が普段してもらっていることに感謝を伝える」ことから始めるとよいでしょう。

 

たとえば、不在時の電話を丁寧にメモしてくれたスタッフや、忙しそうにしている時に手助けを申し出た同僚に対して、率直に感謝を伝えればいいのです。

 

また、日頃から他人の長所を見つける習慣をつけるのもよいでしょう。例えば、職場にいるメンバーを思い出して、各メンバーの長所を1人3つずつ書き出してみましょう。

書き出した長所は、仕事の中でどういった具体的な行動として表れているでしょうか?あるいは、その行動によって、あなたや職場全体にどんな良い影響がもたらされているでしょうか?

 

すぐに思い浮かばない場合は、「何がその人の強みなのだろうか?」「仕事の中で、どう活かされていたかな?」「それによってどんな貢献が生まれただろう?」といった目線を持って普段からメンバーを観察してみるのもおすすめです。

 

このように、普段から相手に関心を示し、些細なことやちょっとした言動をしっかり観察しておくことが肝心です。

「人の立場に身を置く」の使い方、例

「人の立場に身を置く」は、営業やマーケティングの仕事をしている人であれば、日常的に実践しているかも知れません。

 

たとえば、企画や商談の準備をしながら「うちのサービスについて、この顧客が解決したいと思っている課題はこのあたりかな?そうすると、この機能や事例を見ると成功イメージが枠かな。逆に、このあたりはハードルに感じるかもしれないな」といった形で、相手の立場に立って、相手の利益(メリット)/不利益(デメリット)を整理しているのではないでしょうか。

 

しかし、普段から「人の立場に身を置く」を実践している人でも、意外と社内や気の置けない知人が相手になると、あまりできていなかったりするものです。

 

たとえば、人と交渉したり依頼ごとをしたりするとき、事前に紙に「メリット、相手が得られるもの」「デメリット、相手に負担や手間となるもの」を書き出すようにすると、相手の立場に立って考えることが容易になるでしょう。

 

「相手(顧客や消費者など)の立場に立って考える」というのは、どんな企業でも共通して言われることです。「相手が何を求めているのか?」を考えて、それに応えるのがビジネスを成功させるための鉄則だからです。

 

相手が望む事、求めていることに焦点を当てて考える習慣を身に付けると、人を動かす力がぐっと高まるでしょう。

「人を動かす三原則」の注意点

三原則を利用する際には、以下のようなポイントに注意することが大切です。

他人を無理に変えようとしない

他人を無理に変えようとしても上手くはいきません。

 

人を動かすことの根底には人間関係や信頼関係があります。小手先のテクニックだけで人を操ろうとしても上手くいきませんし、自分さえ良ければいいという利己的な考えや目的で使おうとしても上手くいきません。

 

自分自身の態度や振る舞い方を変えることでのみ、他人の行動を根本から変えることができます。相手の感情や欲求に焦点を当てて考える習慣を身に付け、自らの行動を変えましょう。

 

繰り返し実践が大事

デール・カーネギーの原則は、「行動して結果を得る」ことを念頭に書かれています。

 

繰り返し実践をすることが大事です。本書を読んだだけで人間関係の悩みが一気に解消するわけではありませんし、すべてのテクニックを一度に実践したり、完璧に実践したりすることは困難です。

 

何度も繰り返し学びながら自分に定着させ、日常生活での実践でレベルを高めることが何より大切です。

 

だからこそ、まずは自分のこれまでの行動パターンを変えてみることが大事です。

目的やビジョンを持つ

人を動かす上では、「何を得たいのか?」「何を実現したいのか?」といった自分の目的や得たいゴールを明確にすることは重要です。

 

自分の行動を変えることは決して簡単なことではありませんし、役職の上下、指揮命令権があるような環境や関係では、「相手を承認する」「相手をほめる」「重要感を持たせる」といったことを、「何で社長(上司)の自分がここまでしないといけないんだ…」と思うこともあるかもしれません。

 

こういった時、目的やビジョンがあることで、行動を変えたりする原動力とすることができるのです。

 

「人を動かす三原則」によって得られるもの

「人を動かす三原則」を使うことで、様々なメリットがあります。原則を利用することで得られるものを紹介します。

 

良好な人間関係

豊かな人生を送る上で欠かせない好ましい人間関係を築くことができるようになります。

 

周囲の人とのコミュニケーションがスムーズになり、信頼関係の構築が容易になるでしょう。さらに、建設的な結果が生まれ、相手との人間関係を損なうことも無くなります。

 

チーム内、組織間の対立や衝突の解決にも活用できますし、人間関係のストレスを減らすことができるでしょう。

 

リーダーシップ

リーダーシップを発揮して他者に影響を与えることができます。

 

相手はあなたを信頼し、あなたのいうことに耳を傾けるようになるでしょう。

 

組織変革

批判や非難を恐れなくて済むので、意見を気持ちよく言い合える風通しの良い環境を構築できます。メンバー間でこの原則を共有すれば共通の価値観が養われ、一体感が生まれます。

 

さらには、メンバーが相互に尊重し合い、共通の目標に向かって進むという強固なチームを構築できるので、組織として成果を生み出すことができるでしょう。

まとめ

記事では、デール・カーネギーの著書『人を動かす』の最初の章に書かれている「人を動かす三原則」について紹介しました。

 

「人を動かす三原則」は、ビジネスシーンや友人、家族など「人と人との関係はどうあるべきか」を突き詰めた非常に重要な原則が書かれています。

 

私たちは、これらの原則を学び、身に付け、実践することで、豊かな人生を送る上で欠かせない好ましい人間関係を築くことができるようになります。

 

本書を読んだだけで人間関係の悩みが一気に解消するわけではなく、また、すべてのテクニックを一度に実践することは困難です。

 

だからこそ、何度も繰り返し学びながら自分に定着させ、日常生活での実践を忘れないことが大切です。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、米国デール・カーネギー社と正式に契約して、日本全国でデール・カーネギー研修を提供しています。興味がある方はぜひご覧ください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
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