キャリアオーナーシップを推進するために、企業に取り入れることをお勧めしたい施策は以下の9つです。
1. キャリア研修
キャリアオーナーシップを支援する上では、まずキャリア研修を行うことがベースです。キャリア研修は、自分自身の将来に向けた夢やビジョンを描き、それを実現するためのプロセスを考える、また仕事と紐づけていく研修です。
キャリア研修を実施することで従業員のキャリア意識を高め、また、キャリア形成を考えるきっかけを与えられます。キャリア研修は、キャリアオーナーシップを支援する上で、まず基礎となるものだといえます。
ただ、いきなりキャリアオーナーシップと言われても、ミドルやシニアの従業員はぴんと来ないことが多いでしょう。一方で、Z世代などの若手層はキャリアオーナーシップやキャリア自律の考え方はすでに身につけていても「自分が何をしたいのか?」「何が強みなのか?」「どうすればキャリアを構築できるのか?」といったことは分からない人が多いものです。
キャリア研修を行うことで、キャリアオーナーシップの概念を理解するとともに、自身のキャリアや強みや関心、能力・経験を振り返り、具体的にどのようにキャリアを構築するかを考えることができます。
なお、キャリアオーナーシップはキャリア研修だけで完成するものではなく、キャリア研修はキャリアオーナーシップの意識を持つ、考え始めるきっかけだと捉えることが適切です。
2. キャリア面談
キャリア面談は、キャリアコンサルタントや人事、上司などが実施する、キャリア形成に関する面談です。
自身のキャリアを従業員が真剣に考え、考えを整理する機会がキャリア面談です。キャリア面談を行うことで、キャリアオーナーシップを自分事として捉えてもらい、実現へのプランを考えてもらうことができます。
上司や人事によるキャリア面談は、社内だからこそ、話の理解やアドバイスをしやすいという利点があります。一方で、従業員からすると本音を語りにくい側面もあります。
従業員が安心して話せる外部とのキャリア面談をベースとして、そのうえで、社内事情や制度を踏まえたアドバイスが欲しい際には人事と面談できるといった二階建ての形などで、外部と内部を組み合わせることがおススメです。
3. 社内制度の整備
キャリアオーナーシップを推進するうえで、キャリア形成を支援するための社内制度の整備も基盤となる部分です。たとえば、自己啓発制度やスキルアップ支援制度、また社内公募や異動希望などの制度です。
教材や受講費用の補助や資格取得による評価、報酬の見直しなど、自己啓発を推進する制度を設けることで、従業員が自己学習に取り組む機会を広げられるようになるでしょう。また、社内研修や外部研修の補助、海外研修への参加支援など、スキルアップ支援制度を設けることで具体的な職務への適応能力や専門性を高める機会を与えられます。
さらに、キャリア形成という意味では、社内公募制度や異動希望制度なども大切です。社内公募制度を取り入れることで、自分が進みたいキャリアを見出したときに、社内で実現できる可能性を高められます。
これらの社内制度を整備することで、従業員のキャリアに対する意識を高め、キャリアオーナーシップを支援できます。
4. 成果主義へのシフト
キャリアオーナーシップを推進するためには、従業員が自身の能力向上や成果を意識する成果主義へシフトすることも重要です。
成果主義の風土になれば従業員それぞれが、自分の業績が自身の評価や報酬に直結するという認識を持てるようになり、より自発的な行動や主体的な仕事への取り組みを促せるでしょう。成果主義を導入することで、従業員は自分自身の能力レベルや仕事の成果が待遇やキャリアにつながるイメージを持てるようになるでしょう。
ただし、従業員から評価制度に対して不公平・不平等・不明瞭などの印象を持たれてしまうと不満につながってしまい、却ってエンゲージメントが低下してしまいます。成果主義を導入する際には評価基準の明確化や評価結果に対するフィードバックの徹底など丁寧な運用が不可欠です。
成果を上げた従業員が報われると感じられる制度にすることで、各々の従業員が自己成長と成果を追求しながらキャリアを築き上げていくための環境が整うでしょう。
5.ジョブ型へのシフト
キャリアオーナーシップを促進するうえでは、ジョブ型を取り入れることも有効です。
成果主義をさらに推し進め、専門性とパフォーマンス向上が待遇等に直結するジョブ型を導入することによって、従業員は自身のキャリア構築を思考しやすくなります。企業側も従業員の市場価値・能力と報酬バランスを意識しやすくなります。
社内公募などとあわせて社内が疑似的な「転職市場」となることで、離職防止やエンゲージメント向上が実現していくでしょう。
6. 社内公募制度
キャリアオーナーシップを推進するにあたって有効な手段のひとつが、社内公募制度です。社内公募制度は企業内の採用ポジションやプロジェクトで従業員から志願者を募るものです。
選考を経て採用されれば、従業員は新たな部署や役割に異動したりアサインされたりすることができます。つまり、従業員自身が自らの意思で、能力を活かせる場を選べる、また、プロフェッショナルとして新たな経験を積むことが可能になります。
社内公募制度は従業員に自ら進んで挑戦する機会を提供するだけでなく、企業にとっても新たな視点やアイデアを生み出す基盤となり、オープンイノベーションの推進にも効果的です。異なる部署間の交流や理解を深める一助となるでしょう。
ただし、社内公募の成功にはきちんとした運用が不可欠です。選考基準や流れを明確にする、また、結果のフィードバックも必要です。とくに「応募したけど異動やアサインが叶わなかった人」にきちんとフィードバックすることが重要となります。
7. 1on1ミーティング
従業員の主体的なキャリア形成をサポートするためには、直接的なコミュニケーションも重要です。その手段のひとつが、1on1ミーティングです。
1on1ミーティングは従業員と上司や人事担当者が定期的に対話する時間を設ける仕組みです。通常の業務レビューではなく、従業員が相談したいテーマ、自己成長やキャリア形成について議論する場となります。
1on1ミーティングで、上司が部下の課題や不安、将来に向けた希望や目指す方向性などを知ることで、マネジメントや支援もスムーズになるでしょう。部下も自分自身の成長やキャリアビジョンを自らの言葉で表現することで、自分自身のキャリアがクリアになっていきます。
1on1ミーティングは定期的に実施することで、より高い効果が期待できます。隔週に1回~月1回実施できるとよいでしょう。継続的な対話により信頼関係を築くことができ、キャリアのサポートへと繋がるでしょう。
8. リスキリング支援
企業として従業員が時代の変化に対応できるように、リスキリングの機会を提供することが必要です。
従業員が新たなスキルを学び、自身のキャリアを拓くことは個々の成長だけでなく、組織全体の知識や技術の向上につながります。従業員が自らのキャリアを広げられるだけでなく、企業にとっても競争力を維持できるようになります。
リスキリングを推進する主な方法には、社内研修制度やオンライン学習支援、外部の専門家を招くセミナーや資格取得支援制度などが挙げられます。また、リスキリング支援を行う際には従業員の意欲を引き出すことが大切です。制度やプログラム提供だけでなく、学習の機会を活用するための風土づくりやモチベーション支援施策が求められます。
9. 副業の許容
副業の解禁・推進をすることも、キャリアオーナーシップを育むうえで有効な方法です。従業員が自分自身で副業を選択し、社外での経験を積むことで新たなスキルや視点を身につけられます。
上手く設計された副業であれば、従業員は自分の興味や能力を活用でき、自身の働き方やキャリアの選択肢を広げられます。異なる業界や職種から得た知識や経験は本業に対する新たな視点を提供し、組織全体の多様性を高めることにも寄与するでしょう。
一方で、副業を推進するためには企業が明確なガイドラインを設けることが求められます。たとえば、自社の利益を損なわないために、本業と同業種の業務には携わらないなどが挙げられます。また、働き過ぎの防止なども必要ですし、本業がベーシックインカムのようになってしまわないようにも注意が必要です。
このように許容範囲やリスク等もありますが、うまく推進することで誤解やトラブルも未然に防ぐことができるでしょう。