
成果主義の「成果やパフォーマンスに応じて評価をする」という考え方は、業績や成果を追いかけるビジネス組織において、ごく自然なものです。
一方で、成果主義が行き過ぎたり、運用を誤ったりすると、デメリットが生じて組織風土が崩れるリスクもあります。成果主義の導入・運用を進める上では、以下のようなメリットデメリット・リスクを把握しておくことが大切です。
成果主義の目的とメリット
成果主義には、以下のような目的と利点があります。
・優秀人材のモチベーションアップと定着
成果主義は「成果を上げた分だけ報われる/評価される」という制度です。したがって、成果主義の運用がうまくいくと、意欲的で優秀な人材のモチベーションUPにつながります。
また、優秀な人材は一般的に、自分のキャリアを真剣に考える傾向もあります。したがって、成果主義を通じて、スピード昇進や抜擢の機会があることがわかると、定着促進にもつながります。
・優秀人材の採用
「成果を上げた分だけ報われる/評価される」という成果主義は、自分の能力に自信があったり、成果を出すことに真剣だったりする優秀人材にとって魅力的な評価制度です。
また、成果主義に基づく賃金制度は、一般的に賃金の柔軟性が高く、中途採用に際して優秀人材に見合った給与提示などもしやすくなる効果もあります。
特に近年では、ITエンジニアやAI人材、IPO経験者やマーケティングのスペシャリストなどは、若くして好待遇であることが多く、年功序列的な賃金テーブルでは採用できないケースが増えています。
・人件費の抑制と適正配分
年功序列の要素の強い人事制度では、メンバーの年齢や役職、勤続年数に応じて、賃金が上がっていきます。年功序列が強い組織では、優秀な若手人材よりも、パフォーマンスが低い先輩の賃金のほうが高くなりやすいでしょう。結果として、人件費の高騰や人件費あたりの労働生産性の低下を招きます。
一方で、成果主義の環境では、パフォーマンスが低い人材の人件費を相対的に抑制することができます。結果として、成果に応じた人件費の配分が実現し、賃金における不公平感も生じにくくなります。
成果主義のデメリット・リスク
成果主義を導入するときには、以下の点で注意が必要です。
・公正な成果の評価が難しい
成果で評価される成果主義は、誰にでも平等に評価されるチャンスがあるように思えるかもしれません。ですが、現実としては「公正な成果の評価」は非常に難しいものです。ほとんどの組織や仕事において、個人の成果には、以下のような外部要因が絡んでいます。
- 配属されている部門や職種
- 市場環境の追い風や向かい風
- 上司や先輩から引き継いだ顧客の顔ぶれ
- 他部署からの協力
など
さらに、営業・販売と生産、マーケティングと総務、エンジニアなどの部門や職種をまたぐと、目標の難易度などを適正に評価することも困難になります。したがって、成果主義は、「公正に成果を評価することは難しい」という前提の下に運用することが大切になります。
・思考が短期的な成果に行きがちになる
一般的に成果主義は、「評価期間に上げた成果」を評価するものです。したがって、成果主義が強くなりすぎると、短期的な成果や評価に目が向きすぎて、評価に関係しない仕事や中長期的な取り組みが必要とされる仕事が疎かになるリスクもあります
特に定期的な人事異動と組み合わさると、「自分がいる間に成果が上がればいい」という“焼き畑農業”的な考え方になるリスクもあります。
・組織の協調や和が乱れる
成果主義が強くなると、自分や自部門の成果に関心が強くなります。自分・自部門の成果に関心が高まることは良いことです。しかし、自分・自部門の成果に関心が行き過ぎると、「自分(自部門)さえ良ければいい」という考え方が強まり、全体最適(組織最適)を妨げる個人主義や部門最適が横行してしまいます。
・内発的動機付けを妨げる
成果主義は、外部からの金銭的・精神的な報酬によって動機付けを行なう外発的動機付けの典型的なものです。外発的動機付けには、報酬や刺激に耐性ができてしまったり、仕事そのものへの興味や、やりがいから生まれる内発的動機付けを損なってしまったりするリスクがあります。
したがって、成果主義を運用する際には、内発的動機付けを強める取り組みを併せて実施していくことも大切です。
・中長期な人的投資が行なわれにくくなる
短期的な成果(業績)を追い求めると、中長期的な視点での人的投資が行なわれにくくなる傾向もあります。受講者側も、短期的な成果につながらない教育研修で時間を取られることを嫌い、教育効果が落ちてしまうリスクが生じやすくなります。
したがって、成果主義の導入をするときには、中長期的なスパンで人材マネジメントを進めることも大切です。