女性活躍推進への挑戦と現場からの声
「ダイバーシティ推進室」設立の経緯
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東宮御社では、2009年に多様な人財の活躍を促進するため「ダイバーシティ推進室」を設立されたと伺いました。設立の経緯や背景を教えてください。
西岡当社は、これまで主に国内での建設事業を手がけてきましたが、2010〜2020年の長期ビジョンを策定する中で、新規事業を含めた事業拡大やグローバル展開も視野に入れることになりました。
グローバルも含めた事業拡大を進める場合、より一層多様な人財が活躍できる環境づくりが重要になります。こうした流れから、人事部内に「ダイバーシティ推進室」が設立され、まずは「女性」「外国籍社員」「障がい者」の活躍推進から始めることになりました。
私は当時、土木系総合職として事業部門で働いていたのですが、社内で開催された「女性活躍推進フォーラム」での登壇をきっかけに、2014年に経営企画部へ異動、その翌年に人事部ダイバーシティ推進室長に着任しました。
当時、私にはダイバーシティ推進室長は務まらないと思っていました。また、正直なところ「女性活躍」という言葉にも違和感を覚えていて、「女性活躍を推進されなくても、すでに自分なりに現場でがんばってきたのに…」とも感じていました。
しかし「女性技術者として実績を残してきたからこそ、女性活躍の場を作れるはずだ」という言葉で覚悟を決め、思い切って引き受けることにしました。
女性活躍推進のハードルを超え、さまざまな施策を実施
東宮建設業界という事情やカルチャーの中で、女性活躍の推進にはさまざまなハードルもあったと思います。西岡様が現場で働いていた頃は、どのような課題に直面しましたか?
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西岡建設工事現場では圧倒的に男性が多く働いているため、お手洗いやロッカーは男性用のみなど、男性しかいないことが前提の文化やルールがありました。その環境に女性の私が入ったことで、周囲も戸惑いを感じていたと思います。
特に印象的だったのは、私が生理で体調が悪化し、現場で倒れてしまったときのことです。そのときに初めて上司は生理休暇があることを知ったそうで、女性のための制度がほとんど浸透していないことを痛感しました。
一方で、男性社員は女性社員に対してとても優しく接してくれました。特に力仕事などは男性社員から「女性にそんなことをさせられない!」と止められるケースもありました。その気遣いはありがたいのですが、女性社員も「現場で活躍したいから入社している」という側面もあります。
たとえ能力とやる気があっても、然るべきチャンスを与えられなければ成長や昇進がしにくいという現実もありました。
このように、どうしても女性が浮いてしまう環境もありましたが、違和感をなくしていけるように工夫しながら働いてきたつもりです。
それから何年も経って、ダイバーシティ推進室に異動し、現場の女性社員から相談を受ける機会があったのですが、内容が当時とほとんど変わっていないことを知り、残念に思いました。この状況を変えていきたいという思いが、今も私のモチベーションになっています。
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東宮現場での経験や思いが今の活動に生かされているのですね。2015年の着任以来、どのような施策に取り組んできたのでしょうか。
西岡まずは、社内への広報活動に着手しました。それまで社内では「ダイバーシティ」という言葉があまり浸透しておらず、私自身も、ダイバーシティ推進室の存在を知らなかったほどです。
社内のイントラネットや新しく作ったコーポレートサイトにダイバーシティに関する情報を多く掲載し、ダイバーシティという言葉や取り組みに触れてもらう機会を増やしました。
また、女性技術者がダイバーシティ推進室長に就任したということが珍しかったこともあり、外部からも多くの取材依頼をいただいたので、それらをできるだけ引き受けて認知を広げていきました。
管理職向けには、男性が多い職場環境で働いてきた経験を生かし、いくつかの施策を実施しました。
具体的には、部下の育児支援や育成などに積極的に取り組み、働きやすい職場づくりを推進していることを評価する「イクボスアワード」や、その学びを深める「イクボスセミナー」を行いました。セミナーは現在も「インクルーシブリーダー研修」に名称を変更して継続しています。
また、外国籍社員向けには宿泊型研修を実施し、日本籍社員との深いコミュニケーションの促進を図るようにしました。
ダイバーシティ推進を通じて伝えてきたこと
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東宮ダイバーシティ推進施策を通じて、一貫して大切にされてきたことはありますか?
西岡傾聴の大切さを伝えることです。そもそも男性同士、女性同士だったとしても、同じような考え方や価値観を持っているとは限りません。一人ひとりの価値観は異なること、だからこそお互いについて聞き、知ることがいかに重要かを、さまざまなセミナーや研修などで取り上げてきました。
「みんな同じではない」と理解することは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)の基本だと思っています。
東宮さまざまな施策を積極的に推進する中で、社内からはどのようなサポートがありましたか?
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西岡現・代表取締役会長の宮本(洋一氏)は、社長時代から全面的にサポートしてくれています。トップが後押ししてくれているおかげで、前例がないような施策でも挑戦することができました。
また、現・代表取締役社長の井上(和幸氏)も、男性の育児休職取得推進に力を入れており、対象者に直筆で署名入りの手紙を送るなどして、取り組みを支えてくれています。
さらに、ダイバーシティ関連のイベントや新年の挨拶、入社式などには、会長・社長をはじめとする役員が必ず参加し、ダイバーシティ推進の重要性を発信してきました。宮本も井上も、ダイバーシティを経営課題として真剣に捉え、自ら動いてくれるので、とても心強いと思っています。
東宮経営層の協力はとても重要ですね。現場の社員は日々の仕事に集中しているからこそ、中長期な計画や会社の掲げるビジョンとの間にギャップが生じることがあります。こうしたズレを経営層が認識し、会社のビジョンやメッセージを発信し続けることは、現場にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。
女性活躍推進における周囲の声
東宮女性活躍の施策を進める中で、会社にどのような変化が生まれましたか?またその過程で、周囲からはどんな反応があったのでしょうか。
西岡周囲からは、様々な反応がありました。例えば、女性管理職数の目標値を決めた際には、「女性に下駄を履かせるのか」と賛否が分かれました。しかし、男性が「これまで下駄を履いてこなかった」と言い切れるでしょうか。
従来のキャリアパスや常識にとらわれずに、社員それぞれの実力や希望を尊重できる仕組みを目指しました。その結果、個々の個性や価値観を生かして働くことの大切さが、社内でより一層認識されるようになったと思います。
また現在は、新入社員の約3割が女性です。入社時点から女性の役員や部長、課長がいるため「自分も将来はあのポジションを目指せるかもしれない」と思えるようになったことは、大きな変化だと考えています。
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西岡1泊2日の社内研修を実施したときのことも印象に残っています。当社では定期的に自社の研修センターで泊まりがけの研修を実施しているのですが、小さい子どもがいる女性は参加しにくいという課題がありました。
土木関連の見積もり研修の開催が決まったとき、子どものいる女性社員から「なぜ1泊2日の研修を実施するのですか。私は、本当は研修に参加したいのに、子どもがいるから出席できません。何とかできないでしょうか」と意見をもらいました。
そこで思いついたのが、子どもも一緒に現地に連れて行ける体制を整えることです。研修センターには食堂や小部屋、入浴施設などが揃っています。そこにベビーシッターを呼べば、子連れでの研修参加が実現できるのではないかと考えました。最初は「前例がないから難しい」という意見も多かったのですが、ひとつずつ問題を解決して実現しました。
その結果、受講を希望する社員が全員参加できたことはもちろん、研修施設に子どもがいることで、仕事中には見られない社員の一面が垣間見え、コミュニケーション面で副次的な効果も見られました。非常に大変でしたが、実施してよかったと思える施策です。






