前述の通り、モチベーションアップに関してはさまざまな理論が提唱されています。ここではおもな理論を6つ紹介します。
- マズローの5段階説
- ハーズバーグの二要因理論
- マクレガーのX理論・Y理論
- マクレランドの欲求理論
- 期待理論
- 外発的動機づけと内発的動機づけ
マズローの5段階説
マズローの欲求5段階説はアメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論で、自己実現理論とも呼ばれています。人間の欲求を以下の5段階でピラミッド型として分類したものです。

ピラミッド下層の欲求が満たされると、次段階の欲求を求め、最終的に、第5段階の自己実現欲求に到達します。
逆にいうと、下層の欲求が満たされていないと上層の欲求にはいきません。例えば、承認欲求が満たされていない状態では、自己実現の欲求は発揮されないということです。
全体的には、人間は成熟するにつれてより上位の欲求に移っていくと考えられます。
ただ、マネジメントでの活用を考えるうえでは、メンバーはそのときどきの状況で「どこが満たされていないか?(どこを求めているか?)」が変わり、欲求の階層が下がることもあると考えたほうが適切です。
メンバーそれぞれの下層欲求が満たされているかを注意・ケアすることで、下層の欲求が満たされて自己実現の欲求で動ける状態を目指すことがモチベーションアップのポイントです。
ハーズバーグの二要因理論
二要因理論は、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが1959年に発表した理論で、モチベーションを左右する要因を以下の2つに大別できるという考え方です。
<ハーズバーグの二要因理論> モチベーションを左右する要因は以下の2つに大別できる1.仕事の環境などを中心として、不満足を生み出す衛生要因
ex)勤怠や給与、肉体的な安全など
2.仕事の内容などを中心として、満足を生み出す動機付け要因
ex)仕事のやりがいや自己成長など
二要因理論に基づいて考えると、衛生要因をきちんと満たさないと、大きな不満足が発生します。一方で、衛生要因を標準以上の水準に少し上げても大きな動機付けにはなりません。
すべての要素を明確に切り分けられるものではありませんが、メンバーのモチベーションアップを考えるためには、衛生要因を満たしたうえで動機付け要因にもフォーカスする必要があります。
マクレガーのX理論・Y理論
マクレガーのX理論Y理論は、動機付けに関する2つの対立的な人間観を指すもので、前述したマズローの欲求5段階説をもとに、アメリカの心理・経営学者ダグラス・マクレガーが提唱しました。
X理論は性悪説、Y理論は性善説に基づく理論であり、極端な表現をすると「人は何もしなければ頑張らない」というのがX理論、逆に「阻害要因を適切に解除すれば頑張る」というのがY理論です。
生理的欲求や安全欲求、社会的欲求が満たされている現在では、Y理論の方が適用しやすいとされています。
ただ、実務的には人の動機をきれいに2つに分類しようということに少し無理があり、欲求5段階説や次に紹介する欲求理論の方がマネジメントの実務上は生かしやすいと感じます。
マクレランドの欲求理論
マクレランドの欲求理論は、アメリカの心理学者デイビッド・C・マクレランドが1976年に発表したもので、人の動機を4つに分類する考え方です。
<マクレランドの欲求理論による動機の4類型>
1.達成動機…自分の力で何かを成し遂げたい
2.権力動機…人に影響を与えたい
3.親和動機…良好な人間関係を大切にしたい
4.回避動機…リスクを避けたい
人は4つの動機すべてを持っていますが、「どの動機が強いか?」という相対的な強さは個人ごとに異なります。
そして、どの動機が強いかによって、「どんな要因でその人がモチベーションアップするか、逆にモチベーションが上がらないか」が決まってきます。
欲求理論はメンバーのモチベーションマネジメントをする上では、5段階欲求説と並んで非常に有効な理論です。
メンバーそれぞれの動機がどの順番で強いかを把握して、それに応じたアプローチをすることで、モチベーションアップにつなげられます。欲求理論を用いたモチベーションアップの詳細は下記の記事で解説しています。
期待理論
モチベーションアップを考える上では、期待理論も参考になります。期待理論といわれるものはいくつかの種類があります。まず、ブルームの期待理論は、好ましい成果を実現するには次の3つの要素が必要とする考え方です。
<ブルームの期待理論>
好ましい成果を実現するのに必要となる3つの要素
①実力や能力に応じた目標設定
②魅力的な報酬の設定
③職務遂行を円滑に進めるための戦略策定
また、期待理論と呼ばれるもうひとつの理論が1968年に発表された”ポーターとローラーの期待理論”です。ポータートローラーの期待理論は、「努力した結果として得た報酬の満足度によって、その後のモチベーションが決まる」というものです。
報酬で得た満足感がモチベーションに直結するという考え方であり、以下のような”好循環のループ現象”が起こすことが大切になります。
努力する
- 成果が上がる
- 報酬を得られる
- 満足感が高まる
- 次もがんばろうとモチベーションがアップする
- 最初に戻る(努力する)
報酬はモチベーションアップを考えるうえで重要な要因の一つであり、いかに“好循環のループ現象”を起こして継続させられるかが大切となります。
これを踏まえてブルームの期待理論を読み解くと、成果を上げるためには適切な目標、個人にとって価値ある報酬(意味や価値)、報酬を得られる現実的な方法が必要であるということになります。
マネジメントでは、目標設定と達成支援を通じて、上記の3つを満たすことが重要です。ビジネスでは、意外と2つ目の要素が抜けがちになるので注意が必要です。
外発的動機づけと内発的動機づけ
外発的動機付けとは、その字の通り、外から与える報酬によってモチベーションアップを実現するやり方です。
上述した報酬こそが外発的動機付けの最たるものです。報酬は金銭的なものだけでなく、地位、名誉、感謝、表彰、承認…なども報酬のひとつです。
内発的動機付けは、外発的動機付けの反対で、外部からの報酬ではなく内部から湧き上がってくる動機です。
外発的動機付けの場合、行動自体は目的ではなく行動したことで得られる報酬がモチベーションの源泉です。一方で、内発的動機付けは取り組むこと自体への好奇心、やりがいなどから生まれるものとなります。
マネジメントする上で、外発的動機づけは短期的に外から影響をおよぼせることが大きな魅力です。一方で、外発的動機付けは、報酬に依存的になったり耐性ができたり、また、内発的動機を損ねるリスクもあったりします。
逆に、内発的動機づけは外からコントロールすることはできませんが、尽きることない強い原動力となり得ます。モチベーションアップを考える上では、両者の特徴を理解したうえで、うまく組み合わせていくアプローチが大切です。