人を採用している企業であれば、ある程度感覚的に“指導者をつけて実務を教える”という形でのOJTを実践されていることが殆どです。
下記では「採用人数が増えてきて本格的にOJTを整備したい」「OJTの品質を高めたい」という企業向けに導入ステップを解説します。想定人材が決まっているか、新卒か中途かなどでステップは前後しても大丈夫です。
ステップ①全社的な人材育成の軸やコンセプトを明確化する
事業戦略や組織戦略、またミッション・ビジョン・バリュー等を踏まえて、全社的にどんな人材を育てるのか、どんな価値観を大切にするのかを明確にしましょう。軸となる部分がブレてしまうと、育成計画が短期的、また業務スキル的なところに偏りがちです。
ステップ②育成目標を明確にする
全社的な人材育成の軸やコンセプトが確認できたら、実際にOJTを通じてゴールとするところを定めましょう。OJTのゴールは一般的に「一人前」です。
ただし、業界や職種によっては、「一人前=一人で成果をあげる」までには数年の時間がかかり、OJTではそこまでのゴールは目指さない場合もあるでしょう。その場合、3か月~1年程度のOJT期間でどのレベルまで到達すれば良いかを具体的に定めましょう。なお、ゴール設定では「身に付けるスキル」等を定めるよりも、「どんな成果をあげる」「どんな貢献をしている」という状態を定めることをお勧めします。
ステップ③OJT担当者(トレーナー)を選ぶ
ゴール地点が明確になったら、OJT担当者(トレーナー)を選びます。OJT担当者の基本的な選定基準やポイントは以下の通りです。能力と姿勢、両方の側面で信頼できる人材を選びましょう。
なお、OJT担当者は必ずしもトッププレイヤーである必要はありません。トッププレイヤーよりも人材育成にきちんと取り組む姿勢や「言葉で教えられる」能力が大切です。
<OJT担当者の選び方>
・担当業務を理解して、一人で遂行できている
・基本的なコミュニケーション力がある
・前向きな姿勢で会社の愚痴を言わない
ステップ④育成対象者の現状レベルを共有する
OJT担当者が決まったら、OJT担当者にOJTで達成して欲しいゴール状態、そして、育成対象者の現状レベルを共有しましょう。OJTとは、ゴールと現状のギャップを埋めていくプロセスです。計画を作るうえで、きちんとゴールとスタート(現状)をすり合わせることが大切です。
ステップ⑤OJTの計画を作成する
いよいよOJTの計画を作成していきます。計画は以下の手順で作成していきましょう。組織側で計画のフォーマットを作成して、また、過去の計画を蓄積していくと、OJT担当者の負荷を減らしながら、高品質の計画を作成できます。
・手順1)ゴール状態を達成するために必要なスキルを洗い出す
・手順2)スキル等を身に付けるために必要な経験や指導を洗い出す
・手順3)身に付けていくうえでのミニゴールを3~5個程度設定する
・手順4)ミニゴール達成の時間軸を設定して、各ステップでの指導内容を決める
・手順5)各ステップでぶつかる壁を想定する
・手順6)具体的な指導スケジュール等に落とし込む
・手順7)周囲から計画へのフィードバックをもらう
ステップ⑥OJTのマニュアルを作成する
OJTの育成計画が完成したら、OJTの実施マニュアルやチェックリストを作成することもおススメです。OJTの実施マニュアルとは「業務手順書」です。作成することで以下の効果が期待できます。
- 育成のスピードUP
- OJT担当者の負荷軽減
- 仕事の標準化
マニュアルは新人だけではなく、異動者や外部パートナー等にも活用できますし、仕事が定型化・標準化されてマニュアルになることで、社員のマルチタスク対応が進み、繁忙期の業務吸収等もスムーズにおこなうことができます。
マニュアル作成のポイントを押さえたうえで、マニュアル化を進めていきましょう。マニュアルの具体的な作成方法は、後ほど詳しく解説します。
ステップ⑦OJTのチェックリストを作成する
マニュアルと併せてチェックリストの作成もおすすめです。チェックリストは大きく分けると、「OJT全体でのチェックシート」と「各業務のチェックリスト」になります。
各業務のチェックリストは、業務手順書とセットになるもので、次の工程にパスしたり、タスクをリリースしたりする前の確認項目をチェックリスト化することで、抜け漏れ等を防ぐことが出来ます。また、場合によっては、チェックリスト自体を一種の業務手順書として機能させることも可能です。
また、OJT全体のチェックシートは、OJTで身に付けるべきスキルと達成すべきゴールを一覧化したものです。チェックリストを作成して、OJTの対象者と共有することで、目指すべきゴールが共有化されます。
また、対象者にとっては「どこがゴールでいま自分がどこにいるか」「何を身に付ければ次のステップに行けるか」等が把握できることでモチベーション向上や主体性UPの効果があります。
対象者のセルフチェックと自助努力が促進されますし、またOJT担当者は遠隔でのフォローもしやすくなります。また、何をどれぐらいのレベルで教えているか等も部署内や人事と共有するうえでもチェックリストは効果的です。
ステップ⑧育成対象者の特徴を把握する
実際にOJTに入る前に、OJT担当者がOJT対象者の特徴等を把握できるようにすることがお勧めです。特徴とは、コミュニケーションスタイル、価値観、動機等を指します。これらを把握することで、OJT担当者は相手に合わせた指導をしやすくなります。
なお、OJTの対象者もOJT担当者のコミュニケーションスタイルや強みを知っていると、コミュニケーションスタイルや強みのズレによるストレスが生じにくくなります。
新入社員のOJTなど一斉にOJTがスタートするような場合は、ストレングスファインダーやソーシャルスタイルなどの適性検査や性格診断ツールなどを活用して、組織側でOJT担当者&対象者を集めてワークショップを開催することも効果的です。