1on1ミーティングの目的とは?効果や事例、成功のポイントを解説

更新:2023/05/23

作成:2022/06/24

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

1on1ミーティングの目的とは?効果や事例、成功のポイントを解説

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行なう面談のことです。時代の最先端をいくIT企業が集中する米国・シリコンバレーで
考案
され、国内ではヤフージャパンが取り組んで広く紹介されたことで、人事領域の定番ワードとして定着しました。実際に、業種を問わず多くの企業が1on1を実施しています。

 

信頼関係の構築と人材育成においては、部下との対話は欠かせません。1on1に興味を持ち、「通常の打ち合わせと何が違うのか」「何を目的に、どのように実施するのか」といった疑問を抱いている企業経営者や管理職もいることでしょう。

 

記事では、1on1ミーティングを実施する目的や効果、成功ポイントなどを、企業事例も交えて紹介します。

<目次>

1on1ミーティングを実施する目的

談笑する2人の女性

 

1on1ミーティングは、上司と部下の信頼を深め、チーム力のアップにつながるものです。具体的には、1on1ミーティングの目的としては次の3つが挙げられます。

 

信頼関係の構築

まずは、上司と部下の相互理解による信頼関係の構築です。メンバーの潜在能力を引き出し、さまざまな個性が入り交じった多様性をチームとして活かすには、上司と部下間で信頼関係を構築する必要があります。

 

1on1ミーティングで話す内容は自由ですが、ポイントは部下を主役として本音で話してもらうことです。

 

通常の業務進捗ではなく、業務上の課題やキャリア開発、自身の価値観や人間性、精神的な悩みなど、プライベートな側面も自己開示してもらいましょう。上司がメンバーのプライベートな側面を理解することで、信頼関係が構築されます。

 

ただし、そもそもの関係性が希薄であれば、2人きりであっても部下からは心のうちを明かしづらいものです。信頼関係の構築は、効果的な1on1を実現させるための大前提であるため、1on1を導入した当初はまずは信頼関係の構築に注力することを心がけましょう。

 

まずは上司から自分のことを自己開示して、本音で話せる場であることを示すことが大切です。

部下の成長促進

1on1ミーティングには、部下一人ひとりの能力や意欲、主体性を高め、成長を促す役割もあります。1on1ミーティングでは、双方向の対話に主眼を置いています。上司が一方的に話したり、答えを与えたりするものではなく、部下から話を引き出すコーチングに近い部分がある手法だといえるでしょう。

 

企業と上司のニーズはいったん脇に置き、部下自身が「本当はどうしたいか、どうなりたいか」を明確にしていきましょう。部下に自ら考えさせることで、価値観や選択肢、行動の幅が広がります。また、意見や考えを口にすることで、自分の考えが整理されたり、深まったりする効果も期待できます。

 

たとえば、1on1のテーマが部下のキャリアに関するものであれば、部下のキャリアプランがより明確になりますし、キャリアに必要な具体的なアドバイスを提示できるはずです。加えて、企業や上司から押し付けられたものではなく、自分が実現したい目標であるため、部下が主体的に取り組むことも期待できます。

エンゲージメントの向上

効果的な1on1の実現は、従業員エンゲージメントの向上にもつながります。従業員エンゲージメントとは、所属する組織や仕事に対する愛着や信頼、絆の深さを示すものです。

 

従業員エンゲージメントが高い社員は、組織で働くことを誇りに思っており、貢献意欲も高い状態にあります。社員のエンゲージメント向上は、企業の継続的な発展に欠かせません。

 

社員一人ひとりの価値観や能力を把握して成長機会を与え、上司から適切なフィードバックを行なっていくことは、従業員エンゲージメントを高める重要なポイントの一つです。

 

すなわち、1on1ミーティングを定期的に行なうことは、従業員エンゲージメントの醸成に大きく影響するのです。本音で話す場を定期的に設けることで上司と部下の関係を深められ、双方向の対話を通じて仕事の意義も明確化できるため、仕事や組織に対するエンゲージメントを向上できます。

テレワーク下で重要性を増す1on1の取り組み

真剣な眼差しでノートパソコンを見つめる男性

 

働き方改革の一環また新型コロナウイルスにともなって、一気に普及したテレワークですが、導入企業の多くがコミュニケーション量の減少を課題に挙げています。

 

コミュニケーション不足に問題意識を持っているのは、社員も同じです。コロナ禍の2020年に実施された労働者調査では、テレワークに感じたデメリットとして、全体の半数近くの45.3%が「社内コミュニケーションが減った」と回答しました。

 

「上司・部下・同僚とのコミュニケーションがとりにくい」との回答も37.7%あり、社内での気軽な相談や報告が難しくなったと感じている人が多いといえます。

業務連絡や進捗共有はチャットツールで問題なく行なえるかもしれません。しかし、一般的にチャットでは簡潔なやり取りが好まれます。感情的なコミュニケーションや雑談には不向きな部分もあり、雑談や偶発的なコミュニケーションが発生しづらくなっています。

 

コミュニケーションの量・質の低下は、上司・部下の信頼関係や企業に対するエンゲージメントに悪影響をおよぼします。コミュニケーション機会が減少し、人間関係が希薄化しやすいときだからこそ、1on1を実施してチャットではカバーできない質の高い対話を継続的に実施する意義が増しています。

 

出典:テレワークを巡る現状について

1on1ミーティングの導入事例

1on1ミーティングの導入事例を知ることで、目的や効果への理解を深められます。国内で早くから1on1を導入してきたヤフーをはじめ、国内3社の事例を紹介します。

 

ヤフー

ヤフーでは、2012年から部下の成長支援を目的に、経験学習の考えを取り入れた1on1を実践しています。同社のルールは、「週に1度、30分間の1on1を実施する」というシンプルなものです。

 

導入に際して、同社では、ほかの多くの導入企業と同様に、おもに管理職サイドから工数圧迫への懸念や効果を疑問視する声が上がりました。管理職の理解を促すうえで、人事部が注意した点は以下の3つです。

  • 1on1の実行目的、メリットを明確にする
  • 経営層にもコミットしてもらう
  • 1on1での部下の話に対し、客観的なフィードバックを心がける

加えて、外部のプロを入れて自社に合うカリキュラムを開発したり、管理職の1on1のスキル向上を図ったりして、1on1を自社の文化として浸透させることに成功しました。結果として、2018年10月の時点では約6000人の社員が1on1を実施しています。

パナソニック

パナソニックでは、市場環境やビジネスモデルの変化、働く人材の価値観の多様化により、1on1導入の必要性を感じていたことから、2019年より1on1を導入しています。同社で注意したのは、社員の主体性を尊重した「やらされ感」のない運用とすることです。

 

具体的には、実施頻度や一回あたりの時間は目安を示すものの、強制ではなく必要と感じるタイミングで実施するよう呼びかけてきました。同社での実施率は、2020年7月の時点で7割弱となっています。

 

1on1の実施目的の理解度や事業部ごとの1on1の進捗状況にバラつきが出るなど、大きな組織ならではの課題は、以下の取り組みで全社的な底上げを図っています。

  • 好事例の共有
  • 相談窓口の設置

昨今では、テレワーク下での対策として、全社ポータルに「オンライン1on1のコツ」を掲載し、オンラインでの取り組みも促進しています。

電通デジタル

電通デジタルは、電通の子会社として2016年7月に設立された若い企業です。同社では、ヤフージャパンの事例を参考に早い段階から1on1を導入して、部下のコンディション確認の目的で上司と部下とのミーティングを定期的に行なっています。

 

同社の特徴は、1on1実施のためのサポートが充実していることです。具体的には、管理職はもちろん部下も含む、全社員を対象とした「1on1スキルアップ研修」を導入して、研修や学習動画による1on1実施目的や実施方法の理解促進を図っています。

 

併せて、コーチング有資格者による個別の1on1実施スキルの習得支援など、1on1に取り組みやすい環境を整備しています。

1on1の導入を成功させるポイント

1on1の実施には1on1のための時間を捻出する必要があり、導入には社員の理解と協力が不可欠です。1on1の導入を成功させる3つのポイントを紹介します。

 

1on1の必要性浸透

まずは、「なぜ1on1を実施するのか?」「どのような効果があるのか?」を全社的に浸透させましょう。特に、工数を割くことになる管理職に対して、1on1の実施が組織全体のマネジメント強化に寄与すること、組織の発展・活性化につながる点を丁寧に説明することが肝心です。

 

説明の際、経営層が1on1の浸透にコミットし、自らメッセージを発信していくと効果的でしょう。

上司への支援

1on1を実施する上司への支援も欠かせません。コーチング技術など、実施に求められるスキル習得や向上のための研修や教材の用意も行ないましょう。フォーマットの提供は、実施クオリティを標準化するうえでも重要です。

 

一人30分でも、複数の部下を持つ上司になると負荷は大きくなります。上司に負担がかかり過ぎないよう、通常業務の負荷を減らして1on1を実施できるリソースを残す配慮も継続の重要なポイントです。

 

長期的な継続

1on1の成果を実感するまでには時間がかかることも、全社的な共通認識として周知しておきましょう。特に、上司と部下で今までのコミュニケーションが不足していた場合には、まずは1on1を通じた信頼関係の構築から始めることになるはずです。

 

実施する頻度を明確にしたうえで、中・長期的に継続することが、1on1成功のカギです。全社員に対して1on1の目的や意義を定期的に発信することも忘れないようにしましょう。

まとめ

1on1の実施は上司と部下の信頼関係の構築、部下の成長やエンゲージメントの向上につながります。とくにテレワークを導入した企業では、コミュニケーションの量・質の低下により、1on1を実施する必要性は高まっています。

 

仕事に対する価値観の多様化に対応するマネジメント方法としても、1on1は非常に有効です。紹介した企業事例や成功のポイントを参考に、ぜひ1on1の導入を検討してみてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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