多くの職場で管理職が悩むのは、“仕事ができない人”への対応です。
チームに、いわゆる“仕事ができない人”がいると、チームワークが乱れたり、失敗やトラブルが多発するといった問題も起こりやすくなったりします。また、“仕事ができない人”が複数いた場合、彼らのフォローに追われて、チームの目標達成や成長ができないこともあるでしょう。
本記事では、仕事ができない人に共通する9つの特徴と見分けるコツを紹介します。また、仕事ができない部下への対処方法も紹介しますので、何か参考になれば幸いです。
<目次>
仕事ができない人に共通する主な特徴
いわゆる“仕事ができない人”には、いくつかの共通点があることが多いです。本章では9つの特徴を紹介します。逆に言えば、こうした特徴に対策を打っていけば、仕事ができない状況に改善にもつながっていくでしょう。
タスク管理をしていない
タスク管理とは、仕事を効率よく進めるために、自分のタスク(やること)を洗い出したうえで細分化し、優先順位をつけ、進捗管理していくことです。
たとえば、営業部のメンバーが上司から「展示会の準備は大丈夫?」と質問されたと仮定します。タスク管理をしていれば、「あとは、資料の印刷だけ終われば準備完了です!」と明確な返答ができるでしょう。
一方で、タスク管理をしていない場合、「展示会の準備を完了する」というゴールに向けてどのような仕事があり、それぞれをどういう順番で、いつまでにやればいいかを管理できていない状態です。
タスク管理できていない人からは「だいたい大丈夫です!」といった曖昧な答えしか返ってこないことが多くなります。また、タスクをきちんと想定・管理できていないため、抜け漏れが生じて、直前で「やっていません……」といったトラブルも起こりやすくなります。
「報連相(報告、連絡、相談)」を怠る
報連相は、仕事の基礎であり、チームや個人が成果を上げるうえで不可欠なものです。報連相を怠っているとは、以下のような状態を指します。
- 失敗やミスを迅速に報告しない
- わからないことを相談せず放置している
- ヒヤリハットを共有しない など
メンバーが報連相を怠ると、問題の早期解決ができなかったり、大きなトラブル・クレームに発展したりすることもあります。
また、報連相を怠っているのが新人の場合、上司や先輩社員のフォローができない状態に陥ります。そのため、管理職からすれば、報連相を怠るメンバーには仕事を任せにくいものです。
仕事の優先順位をつけられない
仕事の優先順位をつけられないとは、以下のような状態を指します。
- 自分が得意(好き)な仕事から着手してしまう
- 自分が苦手(嫌い)な仕事をあと回しにしてしまう
- 目がついた仕事から進めてしまう
- 催促された仕事を優先的に進めてしまう など
たとえば、新人の場合、上司やメンバーから「○○のタスク終わった?早くやっておいてね!」などといわれることがよくあります。
指示の「早く」に釣られて仕事の順番を変えた場合、たとえば、明日納品の仕事があと回しになり、結果的に納期遅れを起こす可能性もあるでしょう。
仕事の優先順位をつけられない人がいると、チーム全体や本人の中長期的な生産性が低下します。
時間管理が不得手
時間管理とは、自分が抱えるタスクを洗い出し、優先順位と実行時期を決めたうえで、自分の時間に落とし込んでいくことです。先述のタスク管理と優先順位は、時間管理の土台になるものです。
タスク管理と優先順位の問題と重なる部分がありますが、時間管理が不得意な人には、以下のような特徴があります。
- 決められた時間内に仕事が終わらない
- 想定外の残業が多い
- 納期遅れが多い
- 上司やメンバー、お客様などとの約束を守れない
なお、仕事で関わる人とのコミュニケーションが不得意な場合も、たとえば、「この資料はいつ完成する?」などの確認ができないことが多くなり、自分の主観で勝手にスケジュールを立てる⇒納期遅れ…などの問題が起こりやすくなります。
レスポンスのスピードが遅い
レスポンスのスピードが遅いとは、上司やメンバー、お客様からの質問「あの資料はいつ完成する?」や「あの作業はいまどこまで進んでいる?」といったことへの返答が遅い状態です。
リモートワークの導入が進んだ近年では、チームメンバーが物理的に離れて作業することが多くなりました。そのため、チーム全体の仕事を効率よく進めるうえで、レスポンススピードの重要性はより高まっています。
たとえば、新人が先輩社員からの質問「資料はいつ完成する?」を放置したと仮定します。
放置した場合、先輩社員は、資料を催促してきたお客様や上司に返答ができない状態に陥ります。返答できない結果、先輩社員がお客様から不信感を抱かれたり、チーム全体の仕事に停滞が生じたりすることもあるでしょう。
レスポンスのスピードとは、「早く終わらせる」などではなく、「確認しました。いつまでに終わります」「確認しました。いつまでに返信します」など、“反応を返すスピード”です。
仕事はもちろん早く終わったほうが良いですが、早い以上に“反応を返す”ことが大切です。反応を返すことで、相手は「メッセージを確認してくれた」ことがわかります。また、「いつまでに…」などの回答があれば、自分のスケジュールやタスク調整もできるようになります。
同じミスを繰り返す
特定のメンバーが何度も同じミスを繰り返すと、以下のような問題が起こりやすくなります。
- スケジュールどおりに仕事を進められなくなる
- 本人やチームの信用が低下する
- 本人の自信がなくなる
- お客様や取引先などに迷惑がかかる など
ビジネスを続けるうえでは、成果を出す手間で、信用・信頼されることが大切です。信用を得る意味でも、同じミスを繰り返す人材への対処は、早めに行なう必要があります。
責任感、ミスへの反省が薄い
責任感が薄いとは、仕事そのものや、自分が起こした問題を「自分事」にできていない状態です。自らが所属するチームや仕事へのオーナーシップがない、主体性がないともいえるでしょう。責任感やミスへの反省が薄い人には、以下のような傾向があります。
- 同じようなミスを何度も繰り返す
- ミス・失敗などの報連相が遅い
- 「誰かが解決してくれるだろう、やってくれるだろう」という他責の考え方がある
- 課題などを自ら解決しようとしない
- 約束を守らない など
知識労働が当たり前になっているなかで、組織が成果を出し、成長し続けるには、各メンバーが責任感を持ち、自分事として仕事に取り組む姿勢が必要となります。
想像力がない
想像力がないとは、自分の言動によって、チームや業務に「どういうことが起こるか?」を想像できていない、していない状態です。
たとえば、同じミスを何度も繰り返す・ミスへの反省が薄いなども、「自分がミスをすることでどういう問題や迷惑がかかるか?」を想像できないことが要因の一つであることも多いです。
想像力の低さは、メンバーや相手の気持ちを想像できず、協調性や思いやりの欠如にもつながることもあります。
仕事へのモチベーションが低い
若手社員のモチベーション低下に悩む企業は、とても多いです。HR分野では、新人の離職意思が3年目に向けて上昇カーブを描くことを「3年カーブ」といったりします。
チームの目標達成や課題解決に向けて協働・共創をするうえでは、各自のモチベーションを高めることが大切です。特に知識労働においては、モチベーションやエンゲージメントといった精神的な要素、仕事への姿勢が成果に与える影響度が大きくなっています。
仕事ができない部下への対処方法とは?
“仕事ができない部下”は、何か一つの教育や方法を実践するだけで、すぐに“仕事ができる部下”になるわけではありません。改善するためには問題や本人の状態に合った多角的なアプローチが必要となります。本章では、各アプローチのポイントを解説します。
基本行動の徹底
タスク管理、報連相(ホウレンソウ)、時間管理などは、能力として「できる・できない」よりも「やる・やらない」のウェイトが大きな問題でもあります。そのため、まずは、ビジネスパーソンの基本行動を徹底させることが、仕事のミスや抜け漏れを防ぐことにつながります。
基本行動が徹底できるようになるまでは、ほかのメンバーより具体的かつ細分化した指示を出したり、コミュニケーション量を増やしたりするのも一つです。なお、基本行動が少しずつできるようになる過程で正しい褒め方を実践すると、良い行動の強化⇒習慣化につながりやすくなります。
正しい褒め方のポイントは、以下のページからダウンロードできる資料をチェックしてください。
スキル教育
タスクの整理や優先順位づけなども、さほど難易度が高いスキルではありません。しかし、正しい手法ややり方がわからなければ、実践できないものでもあります。また、方法が適切ではない場合、効果を最大化できないこともあるでしょう。
そのため、たとえば、時間管理の基本行動を徹底させる際には、指導の前に、時間管理のマトリックスなどのフレームワークを教育する必要があります。
また、適切な目標や計画を立て、高いモチベーションを持って主体的に仕事に取り組むために、以下のようなフレームワークを教えたり活用したりしてもよいでしょう。
- SMARTの法則
- 目的目標の4観点
- マンダラート
- PDCA など
フレームワークを教えることで、共通言語を用いた指導も可能になります。
考え方教育
稲盛和夫氏の「成功の方程式」では、人生・仕事の結果は以下の式で表されるとしています。
- 人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
- 能力と熱意は0~100まであるが、考え方は-100~100まである
「成功の方程式」が示すとおり、考え方が間違っていると、すべての成果はマイナスになってしまいます。
たとえば、営業力やプログラミング力などの能力が高い人でも、「このぐらいのミスは大したことがない」などの判断から、対処が遅れる・報連相を怠れるなどの状態であれば、高い成果は出せませんし、むしろ、組織にネガティブな影響を与えることもあるでしょう。
“仕事ができない部下”を“仕事ができる部下”にするには、仕事に対する考え方や姿勢を教え、腹落ちさせることも大切になります。
モチベーション管理
基本行動を継続するには、モチベーションを維持・向上させることも大切です。
たとえば、職場に「やって当たり前」の空気感がある場合、仕事の成果や頑張りを認めてもらえないことで、メンバーのモチベーションは下がってしまうでしょう。
モチベーション管理するうえでは、上司や先輩社員が「できるようになったね・成長したね」などの承認の働きかけを強めることも大切です。
ただし、上司からの承認や褒め言葉などの刺激や報酬には、耐性ができる難点があります。
そのため、高いモチベーションを維持させるには、「この作業が好き」「この仕事にチャレンジしたい」などの本人の内側から生じる動機(内発的動機付け)が十分かをチェックすることも大切です。
メンタル面のケア
たとえば、新人が先輩に声をかけたときに「何度も同じ質問をするな!」「そんなの自分で考えろ!」などの返答がくる場合、萎縮した新人は報連相をできなくなってしまいます。
メンバーを成長させるには、自然体の自分をオープンにできたり穏やかな気持ちでいられたりする、心理的安全性の高い環境をつくる必要があります。
また、定期的な1on1面談やストレスチェックなどを通じて、メンタル不調や疾患の兆候がないかと確認し、フォローしていくことも大切です。
業務転換、処遇への反映
さまざまなことをやってみてダメなときには、業務を変えたり、処遇に反映したりすることも一つの手段です。
人には成長の可能性があります。ただし、いまの業務・職場が向いているとは限りません。メンバーを無理やり変えようとすれば、マネジメント側も本人もストレスが大きくなります。
試行錯誤、誠実に指導したうえで、ダメなときには、環境を変えるというのも一つの選択肢になるととらえておくとよいでしょう。
まとめ
いわゆる仕事ができない人に共通する特徴には、以下のようなものがあります。
- タスク管理をしていない
- 「報連相(報告、連絡、相談)」を怠る
- 仕事の優先順位をつけられない
- 時間管理が不得手
- レスポンスのスピードが遅い
- 同じミスを繰り返す
- 責任感、ミスへの反省が薄い
- 想像力がない
- 仕事へのモチベーションが低い
仕事ができない部下がいた場合、以下のポイントを指導していくことがおすすめです。
- 基本行動の徹底
- スキル教育
- 考え方教育
- モチベーション管理
- メンタル面のケア
たたし、仕事には向き不向きといった要素もあります。試行錯誤し、誠実に指導したうえでどうしても改善しない場合には、業務転換、処遇への反映を考えることもひとつの手段です。