現代は、デジタル化や働き方改革の結果、より短時間で膨大な情報量を処理して、高速に意思決定を下して成果をあげることが求められています。生じるストレスも大きくなっている中で、ストレスをうまく受け止めて跳ね返し、目標達成していく力として注目されているのが「レジリエンス」です。
レジリエンスは、先天的にある程度決まってしまう「ストレス耐性」とは異なり、後天的にトレーニングによって鍛えることが出来るスキルです。ただし、表面的な「ストレス解消法」などとは異なり、ストレスに向き合う姿勢や自己効力感などより深い情報を扱います。
従って、組織メンバーのレジリエンスを高めたいと考えるのであれば、トレーニングにはプロの研修を導入することも効果的かつ効率的です。記事では、レジリエンスの効果やレジリエンスを高めるポイント、さらにレジリエンス研修を実施できる5つの研修会社をご紹介します。
<目次>
レジリエンス(折れない心)とは?
レジリエンス(resilience)は元々物理学の用語であり、跳ね返りや弾力、復元力といった意味があります。現在では、そこから転じて、能力開発や組織開発の分野で、「ストレスをうまく受け止めて跳ね返す力」「ストレスから立ち直る力」といった意味で使われるようになりました。
ストレスを「耐える、我慢する」ではなく、「うまく受け止めて、受け流す・跳ね返す」ということが特徴であり、「折れない心」「心のしなやかさ」「逆境力」などとも表現されます。
レジリエンス研修で得られる効果
レジリエンス研修は、字の通り、ストレスをうまく受け止めて跳ね返すレジリエンスの力を鍛える研修です。
現在のビジネス環境において、「ストレスを無くす」ということは現実的ではありません。外部環境の変化や目標達成の過程ではさまざまなストレスが生じます。また、処理する情報量が増したり、求められる対応スピードが上がったりする中で、「ストレスに耐える」だけではメンタル不調が高まる可能性があります。
困難や変化にうまく適応するレジリエンスの力を高めることで、社員や組織にとっては以下のメリットが得られるでしょう。
目標達成力の強化
社員のレジリエンスが高まると、さまざまな困難や脅威を乗り越えることが可能です。目標達成の過程においては、計画の遅れや予期せぬトラブル、顧客からのクレーム等が生じるでしょう。
社員一人ひとりが、トラブルにうまく対応して、気持ちを前向きに切り替えることが出来れば、持っている能力をコンスタントに発揮することができ、個人や組織の目標達成に繋がるでしょう。
困難や脅威を乗り越えながら目標達成した経験は、社員の自己効力感を高め、レジリエンスをより高める好循環に繋がります。
変化対応力の向上
組織が生き残るためには、デジタル化や顧客ニーズの変化への対応などが求められています。有名なダーウィンの「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できるものである」という言葉は、生物だけでなく、組織にとっても同様です。
一方で、「変化」というのは、変化そのものがストレス要因です。
社員のレジリエンスを高めることで、変化のストレスをうまく受け止めて、変化に柔軟に対応できる組織を作ることが出来ます。具体的には、外部環境に対応する業務プロセスや仕事の仕方の変化、また、組織変更や新規事業へのチャレンジ等です。
メンタル不調の予防
レジリエンスを高めると、自分のメンタル状態を適切にコントロールして、気持ちを切り替えることが可能になります。
ストレスが生じたときに、ネガティブな感情が生じることで生物として自然な反応です。しかし、レジリエンスを高めることで、ネガティブな気持ちを切り替えたり、素早く立ち直ったりすることが出来ます。その結果、精神的なストレスを抱え続けることがなくなり、メンタル不調の予防に繋がります。
社員のメンタル不調は定着率とも深く関係しています。メンタル不調は本人の離職の可能性を高めますし、組織へのエンゲージメントを落とす要因ともなります。レジリエンスを高めることで、メンバーのメンタル不調をうまく予防できれば、定着率やエンゲージメントの向上にも繋がるでしょう。
レジリエンスを高める5つのポイント
レジリエンスはトレーニングによって高めることが可能です。レジリエンス研修では、ストレスとの向き合い方、自分の感情との付き合い方を身に付けていくことで、ストレスを上手に受け止められるようにします。
ここでは、レジリエンス研修で身に付く5つのポイントを紹介します。
セルフコントロール技術の習得
レジリエンスを高めるためには、ネガティブ感情の悪循環を断ち切ることが大切です。外部からの強い刺激を受けたときに、生理反応的にネガティブな感情が生じることは自然なことです。従って、ネガティブに感じないようにする、ネガティブな感情を抑え込もうとすることは無理があります。
大切なことは、自分の状態を客観的に捉え、物事のとらえ方や意味付けを意識的に変えることで、ネガティブな感情を切り替えたり、悪循環を断ち切ったりすることです。
心理学的にメタ認知や認知的アプローチと呼ばれる手法が効果的です。例えば、レジリエンス研修の中でよく用いられるものが「感情のラベリング」と「気晴らし」の2つです。
・感情のラベリング
ストレス体験をしたあとに、自分が感じている感情を紙に書き出したり、感情が書かれた「感情カード」を使ったりして、自分の感情を可視化する方法です。
自分の感情を可視化することは、自分を客観的に見ることで気持ちを落ち着ける効果やストレス要因を明確にする効果、また、自分の感情パターンを自覚する効果があります。
・気晴らし
ネガティブな感情から離れ、他のことに注意を向けるという方法です。意図的に意識を別の対象にシフトさせることで、ネガティブ感情の繰り返しをストップさせることが出来ます。気晴らしの方法は人によってさまざまですが、ネガティブ感情からなかなか離れられない場合は、身体的な刺激を伴う運動系の気晴らしが効果的です。
<科学的根拠がある気晴らしの方法>
- 運動系・・・エクササイズ、ダンス、ジョギングなど
- 音楽系・・・音楽鑑賞、演奏など
- 呼吸系・・・ヨガ、瞑想、散歩など
- 執筆系・・・日記、手紙など
自己効力感の向上
自己効力感は自分の能力やスキルに対する自信であり、「自分ならなんとか出来る」という感情を生み出します。自己効力感は、ストレス要因に対処できるという自信をもたらし、ネガティブ感情の悪循環に入ってしまうことを防止します。
自己効力感を向上させるには以下のような方法があります。
<自己効力感をアップさせる方法>
- 小さな成功体験を積む
- 振り返りを行う
- 良い行動を習慣化する
- ロールモデルを持つ
自己肯定感(自尊感情)の向上
自己肯定感は、自分の存在価値を信じる気持ちです。自己効力感が「物事を成し遂げる力に対する信頼」であるのに対して、自己肯定感は「自分の存在そのものに対する承認」です。
自己肯定感が低い状態は、ベースとして「どうせ自分には価値がない」と思っている状態ですので、セルフコントロール力や自己効力感を高めても、なかなか効果が薄くなりがちです。
自己肯定感は自分の価値観を見つめなおしたり、制約から離れて将来のビジョンを描いたり、メタ認知の力を高めることで改善できます。
ただし、自己肯定感が極度に低い場合は、過去のトラウマや環境が原因になっているケースもあります。その場合には、集合研修だけで、自己肯定感の低さを払しょくすることは難しい場合もあります。
楽観性の強化
楽観性とは、「未来は良いものになる」「自分は未来を良くすることが出来る」と確信を持つことをいい、現実的楽観性ともいわれます。
楽観性は「どうにかなる」という単なるポジティブシンキングや楽観主義とは異なり、ストレスを受け止めたうえで「自分は対処できる」と確信することです。その意味では、自己効力感と近い概念ともいえるかもしれません。
<楽観性の例>
- ストレスの原因を理解し、自分がコントロールできる部分とそうでない部分を区別する
- 自分がコントロールできる部分に対して、手を尽くそうと決めている
- 「自分には対処できる能力がある」と自信を持っている
関係構築力の向上
困難な状況に陥ったりネガティブ感情が湧いている際は、友人や知人に相談することで安心感が得られたり、相談することで解決策が見つかったり可能性があります。ストレスに対処するうえで、周囲とのコミュニケーションは大きな力になるのです。
そのため、レジリエンスを高めるうえでは周囲と良い人間関係を構築することが重要です。なお、レジリエンスを高めるための関係構築力は、表面的なコミュニケーションスキルではなく、周囲との人間関係に対する根本的な姿勢から来るものです。
従って、レジリエンスに繋がる関係構築力は以下の観点から高めていく必要があります。
<関係構築力>
- あり方(人間力)を磨く
- 自己と他者への承認
- 異なる価値観の受容
レジリエンス研修の提供企業
社員のレジリエンスはトレーニングで高めることが出来ます。レジリエンス研修は、表面的なテクニックではなく、心理学的な見地を踏まえての研修になるため、プロによる体系的な研修の利用がおすすめです。
近年は多くの企業でレジリエンスが注目されており、レジリエンス研修を提供している企業も増えてきています。いくつか社員研修業界の代表的な企業を紹介します。
・株式会社インソース
半日~2日間の社内研修、また公開研修を提供
https://www.insource.co.jp/kenshu/resilience-top.html
・株式会社ザ・アカデミージャパン
講演会スタイルから社内研修の形式まで幅広く提供
http://www.academy-japan.com/training/special/resilience/
・SMBCコンサルティング株式会社
研修型の1日プログラムを提供
・株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
1名から派遣できる3時間の管理職向け公開研修を提供
・株式会社ジェイック
レジリエンス向上に役立つ7つの習慣®研修を提供
まとめ
ストレスをうまく受け止めて跳ね返す「レジリエンス」の力は、いまメンタルヘルス、また、ストレス対応の視点で注目されています。レジリエンスは、後天的に鍛えることの出来るスキルであり、誰でも身に付けることが可能です。
レジリエンスを身に付けることで、変化対応力が向上し、問題や困難を乗り越えて目標達成する力を高めることが出来ます。
個人単位ではなく、組織メンバー全体のレジリエンスを高めるためには、外部研修を利用したプロによるトレーニングがおすすめです。効果的かつ効率的にレジリエンスを強化することが出来るでしょう。