本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.1は下記よりどうぞ。
<目次>
- キャリア自律の重要性
- 社会人2年目の約半数が仕事に飽きている?
- キャリア自律をしている人とそうでない人の違い
- 若手育成 3つのポイント
- ポイント①社内におけるイクボスの育成
- ポイント②強みにフォーカスした育成
- ポイント③キャリア面談の実施
- Z世代の特性と育成のポイント
キャリア自律の重要性
ジェイックでは、研修会社として「次世代リーダー育成のオープンコース」を提供しています。
参加者は最も多いのが30-40代ですが、リーダー候補の20代から現管理職の50代まで幅広い年齢が参加する『リーダーカレッジ』という継続教育のプログラムです。
派遣されるのは次世代リーダーであり、決して安いプログラムではありません。従って、派遣される人たちは会社として「あなたの変化や成長に期待している」という層ですが、その期待が自覚していない方が多くいます。また期待がわかっていても、自分自身のキャリア形成に迷走している方も多いです。
先ほど、いまの若手は「キャリア形成への関心が高い」と紹介しましたが、だからこそ若いうちからキャリア自律を促していくアプローチが大切です。
そうしないと、“社内でちょっと上手くいっていない”時にふらっと転職エージェントの“キャリア面談”等に相談して、そこで「もっとも良い会社がいくらでもありますよ」「年収も高くなりますよ」と言われて、徐々に転職活動が本格化していくという流れが生まれます。
今、転職エージェントの登録者数というのは過去最大になっています。リモートワークを経てオンライン面談が当たり前になった中で、登録のハードルも非常に低くなっています。
だからこそ、会社側として、しっかりとキャリア自律を促していく必要があるのです。
50代の経営層の方などからは「でもキャリア自律したら辞めちゃうんじゃないの?」という声もよく聞きます。
しかし、キャリア自律したら離職するということはありません。むしろ、その意味ではキャリア自律が低い人ほど辞めやすいです。なぜならば、目の前の仕事に意味づけしたり、中長期的な視野を持ってキャリア形成に取り組んだりできないからです。そういう人ほど、目先の不満を解消したり、目先の待遇UPなどに惹かれたりして転職してしまいます。
社会人2年目の約半数が仕事に飽きている?
キャリア自律を促していくことは非常に重要ですが、同時にキャリア自律というテーマを考えるうえで見ておきたいものが上記のデータになります。
いまの若手は能力向上、キャリア形成に積極的なはずなのに、社会人2年目の半数が「仕事に飽きた」と回答しているのです。さらに深掘りをしていくと「つまらない」と言っています。
じつは2年目は「仕事の飽き」のピークです。
そこで転職をせず残った人は、今度は「将来の不安(このままこの会社でいいのか?)」が出てきます。
そのまま、4年目になると「我慢するしかない」となり、モチベーションが低い状態に陥ったりします。
「仕事が飽きた」「つまらない」と言うのは、仕事を覚えきってつまらないのではありません。当然2年目です。仕事を覚えきっているはずがありません。そうではなく、仕事の意義がわからないのです。
大切なことは仕事の意味づけです。現場の上司も、ただ「これをやって」と指示するのではなくて、「これをやることによって、どんな風に顧客に価値提供できているのか」「あなたのキャリアにどうつながるのか」という話を、仕事を教えながら語らないといけないということです。
先輩も上司も疲れながら「これは上が言ったから」「これが前例だから」というマネジメントをしていたら、やはり「仕事がつまらない」と思われてしまうでしょう。
キャリア自律をしている人とそうでない人の違い
キャリア自律をしている人とキャリア自律していない人でどんな違いが出るかというと、まず個人のパフォーマンスで1.20倍の差が出ます。ワークエンゲージメントでいうと、1.27倍です。
また、キャリアを作ろうという主体性がある人は、学習意欲も高くなります。「また研修ですか…やりたくありません」という意見の人はキャリア自律度が低い人のコメントです。
活躍している人は「今回の研修は何ですか?」「教育の機会をいただきありがとうございます」「私はこういう勉強をしてみたいです」と言ってくる人が多いです。
そして、仕事も人生の満足度も高くなります。
こういう違いを踏まえると、キャリア自律を従業員個人に委ねるのではなく、会社としてキャリア自律の支援をしていくことが重要になってきます。実際、大手企業を中心にキャリア自律の支援に力を入れる会社は非常に多くなっています。
若手育成 3つのポイント
具体的に若手育成をどうやっていけばいいのかですが、大きく3つのポイントを紹介します。潮流的にも各企業がテコ入れをしているところであり、3つを一気に進める企業もあれば、ステップを踏んで進めている企業もあります。
ポイント①社内におけるイクボスの育成
まず新人を育成、若手を定着させる上で、言うまでもなく現場の上司は大切です。
大抵の場合、研修期間中の新人は元気です。しかし、部門配属してから「辞めたい」とか「モチベーションが下がる」と言い始めます。
また、現場の管理職も「育成が難しい」「今年の子は弱い」「人事は何を教えていたの?」と人事に文句を言ってくる人がいるでしょう。
ただ、管理職の方も大変です。前述したように、自分が叩き上げで育ってきた方ほど、自分がされてきた教育とは違う育成手法をしないといけないわけです。
その中で、これからの新しい管理職像として厚労省が出している「イクボス」というモデルがあります。
イクボスというのは、「部下のワークライフバランスを考え、個人のキャリアや人生を支援し、かつ組織の業績や結果を出す」管理職です。
前半だけを見ると、ただの優しい上司のように思えるかもしれませんが、違います。個を尊重し生かすことで組織の業績や結果を出すのがイクボスです。ただ「キャリアを応援するよ」「プライベートを大事にしてね」というのは単なるぬるま湯です。
そうではなくて、「応援するから、一緒に結果を出していこう」というところまでしっかりアプローチできるのがイクボスです。
イクボスになるためには、ある程度の学習も必要です。時代の変化、コミュニケーション技法、異なる価値観への対応といった能力が必要です。
今後の管理職は、仕事をマネジメントするだけでは足りません。部下のキャリア、人生も含めて応援してあげる必要があります。個人の状況、人によっては介護を抱えていたり、病気の人がいたり、勤務形態もさまざまな方が増える中で、個々の人生を無視して「いいから仕事を頑張ってください」というマネジメントは通用しなくなっています。
大切なのは、個々の状況を考え見たうえで、1人1人の強みを引き出して支援することで、チームとして組織として強くなり、組織の業績や結果につなげていくことです。
従来のように正解がどこかにある、上司の知識が正解である、上司が決めてトップダウンで落として実行させれば上手くいくというのは過去の時代です。
今のように変化が激しく、技術進化も早いと、過去の経験を踏まえて上司が正解を知っているわけではありません。いま求められているのは、上司だけが正解という価値観ではなく、チームとして考えて新しい創意工夫をもたらしていくマネジメントです。
先ほどいまの新人・若手は「競争」には興味を示さないが「共創」には積極的と紹介しました。組織のマネジメントにおいても「共創」が重要な時代であり、上司と部下で共に答えを作っていく、決めて、それを正解にしていくことが求められます。
上司の言うことが絶対ではなくて、新入社員であろうが女性であろうが、管理職であろうが、役職も性別も年代も関係なく、全員が本音で話せて意見を言い合えてより良い答えを探していける組織が求められています。
こうした新しいマネジメントを実践できるのがイクボスです。イクボスを育成する上では、アンコンシャスバイアスを払拭していくことも重要です。アンコンシャスバイアスとは、思い込みや決めつけです。
たとえば、「女性って辞めちゃうよね」「今の若い子ってこうだよね」といったものもアンコンシャスバイアスです。なお、ここまで新人の特徴を紹介してきましたが、あくまで傾向です。この傾向を“個人を見ずに決めつけてしまう”とアンコンシャスバイアスになってしまいます。
そして、こういった思い込みや決めつけがあると、みんなが活躍できるカルチャーは生まれません。そして、組織のカルチャーは管理職の言動に紐づいています。
だからこそ、管理職の言動をより良くしていく必要があります。しかし、いま出来ていない管理職の方も「知らない」だけです。自分が育てられたやり方、価値観が通用しない中で、悩まれている方が多数います。だからこそ、丁寧にイクボス研修をして、アンコンシャスバイアスを解除していくと、関わりも変わり、新人や若手の定着率も変わります。
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ポイント②強みにフォーカスした育成
2つ目のポイントは強みにフォーカスした育成です。
日本の人材育成では「弱みを改善していこう」という方針が強い傾向にあります。しかし、今求められている育成は違います。本人の持っている持ち味・強みにフォーカスしてキャリア教育をしていく、活躍させることです。
世界的にも教育のトレンドが変わってきています。
日本は新卒一括採用で真面目に頑張って成功してきたという過去の成功体験があります。全員が同じことをやる中で、「できていないこと」を矯正することで、一定レベルで同じことをできる“金太郎飴”のような組織を作ってきました。これは、決まった成功パターンを実行していくうえでは強みがありました。
しかし、今はそれだと成り立ちません。今は1人1人が「平均値」ではなく、自分の強みを生かして活躍していく必要があります。そうしなければ、イノベーションや改革は生まれません。
ストレングス・ファインダー®という世界で一番使われている才能診断をご存知でしょうか?
ギャラップという世界的な調査会社が、組織の中でエンゲージメントが高くて生産性が高いハイパフォーマーを調べた結果、ハイパフォーマーはIQが高いのではなく、自分自身をよく知っており、自分の強みを使いこなしているという結果が出たそうです。
ストレングス・ファインダー®はこの調査結果を踏まえ、個人が自分の強みを見出し、それを成果につなげるための方法を学べる診断です。このストレングス・ファインダーを使って、診断結果(自分の強み)を見ながら今後のキャリアを考えたり、仕事でパフォーマンスしたりする方法を学ぶキャリア研修がいまとても人気があります。
ストレングス・ファインダー®を使うことで、ある程度抽象化したキャリアイメージを作ることが出来る、また、自己肯定感を高めたり自信をもつことができたりします。
自分の強みにフォーカスすることはセルフマネジメントやジョブクラフトにもつながります。強みに注目することで、目の前の仕事に意味づけしたり、新しい仕事を生み出したりできるようになると、社内で望むキャリアを実現できるようになりますので、転職する必要がなくなってきます。
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ポイント③キャリア面談の実施
キャリア自律を促すうえで、「個」をケアすることが大切です。従業員1人ひとり、価値観も仕事や家庭の状況も、悩みも抱えているものも違います。
例えば、女性活躍のプロジェクトを支援させていただくと、よく「うちのママ社員からは“管理職になりたくない”という声が多い。それが問題だ」という声を伺うことが良くあります。
確かに、女性従業員が持つ管理職への昇進意欲は、会社のカルチャーが関係していますし、ロールモデルがいないからイメージがつかないといった事情も良くあります。しかし個別対応をしながら、実現したいことや意欲を引き出していくと昇格意欲は高まっていきます。
キャリア自律を促すためには、1対多になるキャリア研修だけでなく、個別のケアであるキャリア面談が重要です。
キャリア自律を促すために、キャリア研修とセット、また定期的な健康診断と同じ感覚でキャリア面談を導入する企業が増えています。
キャリアに関する本音、とくにネガティブな「このままこの会社で仕事していていいのか?」「この仕事で力がつくのか?」といった不安な社内では言いにくいものです。一方で、部署異動や人事制度などを通じたキャリア支援は社内だからできるものです。
キャリア面談を取り入れるうえでは、上記のようなメリット・デメリットを把握して、社内と社外をうまく組み合わせることがポイントです。まずは社外のキャリア面談で本音を吐き出し、意欲を引き出す。そのうえで、社内のキャリア面談や上司との1on1、社内公募制度などを使って、描いたキャリア形成の実現を支援するといった形が理想です。
ジェイックは、グループ会社Kakedasを通じて社外キャリア面談サービスを提供しています。Kakedasは2,000人を超える国家資格を持つキャリアコンサルタントが登録しています。
そして、従業員の性格診断や経験を踏まえて、個々の従業員に最適なマッチングのキャリアコンサルタント10名が選出され、その中から1名を選んでキャリア相談できるという仕組みです。
企業側はキャリア面談でどんな本音があったのかを、個人が特定されないデータレポートサマリーで見ることができます。「じつは離職を考えている社員が何%いるのか」「悩んでいる社員がどのくらいいるのか」「何に悩んでいるのか」を知ることで、組織開発に活かすことができます。
キャリア自律の支援を検討されている場合、社員の本音を知りたい場合は、お気軽にご相談いただければと思います。
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Z世代の特性と育成のポイント
少子化が進み、DXやイノベーションなどへの対応が求められる中で人材を「コスト」ではなく、「投資先」とみなす人的資本経営の考え方が広がっています。
人材投資の中でも重要度が高い「組織の次世代リーダー」を担う新人や若手はZ世代と呼ばれる世代です。Z世代は、1997年-2012年に生まれた世代を指します。
Z世代の特徴としては、
- ①一緒に働く社員や社内の雰囲気が大事
- ②ワークライフバランスを保ちながら働きたい
- ③パラレルキャリアで働きたい
- ④キャリア形成への関心は高い
- ⑤社会貢献ややりがいを求めている
といった傾向があげられます。
Z世代を育成する上では、上記のような特徴を踏まえて、
- ①「競争」より「共創」
- ②管理職も「プライベートの自己開示」が大切
- ③キャリアの視座・視点を広げるアプローチ
- ④キャリア自律やキャリア安全性によるモチベート
- ⑤キャリアアップ以外の多様な価値観を受け入れる
といったことが大切です。
とくに今の若手は、日本経済が“右肩下がり”のステージを当たり前のものと捉えており、だからこそキャリア安全性に対して強い関心を持っています。それを良いエネルギーにするためのアプローチが大切です。
育成のポイントは、
- ①イクボスの育成
- ②強みにフォーカスした育成
- ③キャリア面談による個別フォロー
です。
ポイントを押さえて、Z世代の育成をぜひ成功させてください。
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