「新人教育は難しい…」と思わない上司やOJT担当者がやっている3つのポイント

更新:2023/07/28

作成:2022/01/05

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

「新人教育は難しい…」と思わない上司やOJT担当者がやっている3つのポイント

採用した新人が定着して、貴重な戦力として成長するには、しっかりした教育が必要です。新人を採用した企業の多くが、入社時研修をはじめとした手厚いフォロー体制を整えて新人を受け入れています。一方で、意外と手薄になりがちなのが現場への配属後です。
実際に新人を受け入れた現場においては、「新人の教育は難しい」「何から始めればよいか分からない」といった戸惑いの声も少なくありません。毎年のように新人受け入れの段取りを組んでいる人事部門と違って、新人を受け入れる現場は育成経験がないこともありますし、OJT担当者が毎年変わることも当たり前です。また、通常業務に新人教育の負荷が加わりますので、現実的に業務工数や精神面の負担もあります。
本記事では、新人の教育を難しく感じる理由を明らかにしたうえで、上司やOJT担当者が押さえておきたい「新人教育がやりやすくなるポイント」をご紹介します。

<目次>

なぜ新人の教育は難しいのか?

毎年、新人が現場に配属されて数か月、夏から秋ごろに多くの上司やOJT担当者が、「新人教育は難しい」と悩んでいます。なぜ新人を受け入れた上司やOJT担当者は「新人教育が難しい」と感じるのでしょうか。新人教育のポイントを解説する前に難しさの理由を確認しておきます。

 

「今の新人は理解できない」という先入観

新人や若手社員をひとまとめにした呼び名として、古くは「新人類」、最近では「ゆとり世代」「さとり世代」といった言い方があります。後述する通り、確かに世代ごとに生まれ育った環境による特徴や傾向があります。

一方で、こうした新人や若手をひとまとめにネーミングする裏側には、「新人や若手社員は自分たちとは違う存在だ」という、少し年齢が離れた世代の無意識の先入観(思い込み)があります。

 

ある意味では「苦手意識」だったり、「自分たちと違う存在であり理解できない」という諦めにも近いものかもしれません。

「苦手」「理解できない」という無意識の先入観があり、新人と心理的な距離を置こうとしている状態では、新入教育は難しく感じやすいでしょう。自分の中に、そういった苦手意識や避ける意識がないか、確認することも大切です。

新人の特徴や傾向が変わっていく

HRドクターを運営する研修会社ジェイックは、毎年多くの企業で新人研修を開催しています。毎年のように一千人規模の新人と接していると、特徴や傾向が変化していることを感じます。

もちろん、個人差が大きな部分ではありますが、同時に、価値観が作られる時期、多感な時期、「仕事」を真剣に捉える時期に、どんな遊び方やIT環境、コミュニケーションツールを使ってきて、社会で何があったかは、価値観やコミュニケーションの傾向として現れます。

ジェイックでは、研修の進行の仕方や参加する新人への接し方も毎年少しずつチューニングしながら研修を実施しています。受け入れ企業や上司に求められることも同様です。新人教育について、過去のやり方をそのまま踏襲してしまうと、教え方やコミュニケーションがずれてしまう可能性があります。

受け入れる新人が生まれ育った時代環境と世代の特徴を踏まえて、全体的なやり方を修正する。そのうえで、受け入れた新人一人ひとりの特徴や価値観を理解したうえで対応することが大切ですが、これも新人教育を難しく感じさせる一因と言えるでしょう。

 

教えることはそもそも難しい

最後に身も蓋もない表現になってしまいますが、相手が新人であれ誰であれ、教えることは難しいものです。相手の知識や経験、理解力等に合わせて準備をする必要がありますし、価値観にも合わせてチューニングする必要もあります。

「ひとつの作業に関してやり方を教える」だけであれば難易度は低いですが、新人教育は教える範囲も広く、さらに「仕事への姿勢」「考え方」といった抽象的な要素も教える必要があります。したがって、もともと新人教育というのは、「教える」という行為の中でも、相当に難易度が高いものです。

教育経験が長い方は、「教える難しさ」や「個人差」も踏まえて、思うように育たなかったり、伝わらなかったりしても余裕を持って受け止められます。

 

しかし、新人教育の難しさに感覚がない人ほど、「一生懸命教えているのになぜ伝わらないのだろう」「思うように育たない…」といったことに、苛立ちや焦りと共に「難しさ」を感じやすいのです。

教育で上司がやってしまいがちな3つの間違い

「新人教育は難しい」と感じている現場の上司やOJT指導者は、以下のような間違いを犯すことで新人の教育を余計に難しくしている場合もあります。

 

厳しく叱る、否定から入る

指示したとおりに仕事ができない新人に「なぜ言ったとおりにできないんだ!」と叱責したところで仕事はできるようになりません。昔は「怒られるうちが花」「仕事は失敗をして覚える」「厳しさは愛情の裏返し」といった考え方が通用したかもしれませんが、今の新人世代には適用しません。

少子化等もあるなかで、手厚い支援を受けて育ってきていますし、地域コミュニティもなくなり学校教育も変わってきたなかで、厳しい叱責を受けたことがある若者は減っています。また過去と比べれば、失敗を恐れる傾向も強く、正解を欲しがる傾向もあります。

したがって、「叱責されたり、否定されたりしたから、奮起して必死に考えて失敗しないようにする」ではなく、「叱責された自分はダメな存在だ」と考えたり、「厳しく怒鳴るなんてハラスメントだ」「アンガーマネジメントもできないダメ上司だ」ぐらいの感覚を持ったりするのです。

 

自分基準で勝手に思い込む

マネジメントのなかで、管理職などがよく犯す間違いのひとつが、「言わなくても部下たちは分かっているはず」「同じチームだから伝わっているはず」といった思い込みです。実際には、部下は上司が思うほど理解していなかったり、上司と同じ視点で物事を捉えてはいなかったりすることが良くあります。

新人教育でも同じです。教える側の「これぐらいは分かっているだろう」「この程度は教えなくても大丈夫だろう」「前に伝えた話だから覚えているだろう」といった感覚は“思い込み”であることが良くあります。

加えて、「自分が新人だった頃はこれくらい当たり前だった」といった自分の基準、美化された過去の記憶をもとに新人教育をしたり、新人を評価したりすると、適切な新人教育の大きな妨げになってしまいます。

 

「自分の背中」で教育しようとする

新人が仕事を覚えるうえで、「上司や先輩のやり方を見て真似しながら覚える」というのは一定の効果があるやり方です。また、「背中で語る上司」、つまり仕事に対する上司の真摯な姿勢を見ることでの学びや気づきもあるでしょう。

しかし、いまの新人は「見て覚える」だけのやり方には慣れていません。当たり前ですが、分かりやすいマニュアルが完備されている、さらに言えば、「マニュアルがなくても使えるツール」に囲まれて育ってきた世代です。そんな新人に対して「背中を見せて教育する」というやり方は適さない教育です。

もちろん、「自分の姿を見せる」ことは大事です。ただ、新人教育の大半は背中で教えるものではなく、言葉でしっかり伝えながら教えるべきだと心得る必要があります。

上司やOJT担当者にとって「新人教育がやりやすくなる」3つのポイント

前述のとおり、新人教育はそもそも難易度が高いものです。ある意味では「難しくて当たり前」「こちらの思うように育たなくて当たり前」です。ただ、そのなかでも、上司やOJT担当者にとって新人教育がやりやすくなる、新人教育の効果性を高めるためのポイントを3つ紹介します。

 

ポイント1:価値観を押し付けず、理解に徹する

新人に組織の一員として、「会社の常識や当たり前」「いま組織を動かしている上司や先輩の価値観」を理解して欲しいという気持ちは生じやすいものです。また、新人が活躍するためには「プロのビジネスパーソンとしての常識や価値観」は吸収する必要があります。

後者を教えることはもちろん必要ですが、前者の「うちの会社の価値観」や「私の当たり前」を押し付けることには注意が必要です。前述の通り、新入社員は生まれ育った時代のなかで、異なる価値観や感性を持っています。また、時代変化のなかで多様な価値観が並立する社会を当たり前だと感じています。

そんな新入社員に対して、合理的な理由や背景がない「うちの会社の価値観」や「私の当たり前」を押し付けると、相当の確率で信頼関係が崩れます。また、「私はこの会社に合わない」という感覚も持ちかねません。

 

上司やOJT指導者は、まず新人が何を考え、仕事を通じて何をしたいと思っているのか、といった点に興味・関心を持ち、新人を理解することに徹することがおススメです。

ポイント2:新人の理解度を確認しながら教える

「丁寧に教えているはずなのに新人が仕事を覚えてくれない」あるいは「思うように成果を上げてくれない」ということがあった場合、以下のようなことが起きている可能性も考えられます。

  • 「教え方や教える内容が、新人の知識や経験のレベルに合っていなかった」
  • 「仕事の目的や背景、全体像について説明不足で、単なる作業指示になってしまっていた」
  • 「無意識に使っている業界用語や専門用語を理解しきれずに、後半ついてこれていなかった」

 

上記のような状態では新人はなかなか成長しません。上司やOJT担当者からすれば「伝えた」つもりですが、新人側には「よく伝わっていない」ということが良くあります。少し手間に感じるかもしれませんが、何か教えたときは、復唱させる・要約させるなどして新人の理解度を確認しながら進めましょう。

また、教える側は「“一を聞いて十を知る”ことは期待しないけど、“十聞いたら十覚えてね”」と思ってしまいがちです。新人は時には教える側が驚くような成長を見せるものですが、教育の大半は「“十伝えて三伝わって、翌日には二忘れる”」ぐらいなものです。ある意味で“期待せず”、根気強く繰り返し教える意識も大切です。

 

ポイント3:新人の「小さな成功」を積み上げる

新人教育には、スモールステップを意識した教育が有効です。「まずこれを出来るようにして、その次にこれに取り組む」というように段階を踏ませるイメージです。

教える側は全体像を伝えるうえでも、成長を期待するうえでも、多くのことをバッと教えたうえで「分からないことがあったら何でも質問してね」と新人に告げがちです。しかし、新人にとって上司やOJT担当者に質問するのは意外と心理的ハードルが高いものです。

 

したがって、理解があいまいなのに質問できず、時間が過ぎるうちにどんどん記憶もあいまいになる、ということが起こりがちです。

だからこそ、新人教育は徹底したスモールステップにすることが大事です。そして、各ステップを一つずつクリアしていったら、しっかりと承認しましょう。それが新人にとって、小さな成功体験となり、自信となります。

 

はじめは細かすぎるぐらいのスモールステップにして、クリアしていく自信を積み重ねましょう。そして、成長実感が得られ、自信もつき始めたら、徐々に教えるボリュームを増やしていくことがおススメです。

まとめ

新人を受け入れる多くの上司やOJT担当者にとって、新人教育は難しいと感じられるものです。そこには、新人に対する無意識の苦手意識等があったり、時代変化による価値観等の変化を理解できていなかったり、そもそも教育の難しさを認識していなかったりといった要因があります。

 

また、厳しく叱る、背中で教えるといった“昭和の教え方”や教える側の勝手な思い込みが新人教育をより難しくしている場合もあります。

 

記事で紹介した

  • 価値観を押し付けずに理解に徹する
  • 理解度を確認しながら教える
  • 小さな成功体験を積み上げる

というポイントを押さえて、ぜひ新人教育を成功させてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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