殆どの企業では、新卒の入社時に新人研修(新入社員研修)が実施されます。しかし、新人研修はただ実施すれば良いというわけではありません。目的やゴールを明確化し、学習効果の高いプログラム設計、OJTとの連携といった部分も考慮しないと、研修効果は高まりません。
記事では、新人研修の研修効果を高めるための方法を詳しく解説します。おススメの研修会社も15社ご紹介しますので、新人研修を外注するようであれば研修会社選びの参考にしてください。
<目次>
新人研修の目的や内容
毎年、新卒の入社時期には新人研修 (新入社員研修) を実施している企業が殆どでしょう。新人研修は、教えるべき内容もある程度決まっており、どちらかというと、研修目的やゴールよりも実施内容やスケジュールに意識が行きがちになってしまいます。
しかし、研修の目的・目標を改めて明確にすることが、効果性を上げるために大切です。改めて、新人研修の目的や内容を再確認していきましょう。以下で述べる内容を参考に、ぜひ自社での目的と目標(ゴール)を明確にしてください。
新人研修の目的は?
新人研修の目的は、「新人を自社で成果を上げられる一人前のビジネスパーソンに育てる」ことです。
新人研修の目標としてゴールを設定するのであれば、中期的には1年後、短期的には部門配属時に、「どんな成果を上げていて欲しいか?」「新入社員がどのような状態になっているか?」「そのためにどういったスキルや意識を身に付けていて欲しいか?」を基に目標設定すると良いでしょう。
経済産業省で発表されている「人生100年時代の社会人基礎力」も、自社で成果を上げるためにどのような力が大事かなどを考える参考になります。新人研修のゴールや重要事項を考える時に参考にするのもおススメです。
参考:「人生100年時代の社会人基礎力」
新人研修で実施すべき内容とは?
続いて、新人研修で実施すべき内容を見ていきます。
新人研修のプログラムは大別すると以下の4つです。①と②は意外と抜け落ちてしまうケースもありますが、その場合、能力を発揮できなかったり、早期離職の原因になったりすることもあります。しっかりと盛り込むことが重要です。
- プロのビジネスパーソンとしての意識付け
いわゆる「社会人としての自覚」を持たせるためのカリキュラムです。新卒入社の場合、昨日までは「学生」だった新人たちが対象です。プロのビジネスパーソンとしての意識をしっかりとマインドセットする必要があります。
- 組織に馴染み能力を発揮できるようにする組織社会化
しっかりと能力やスキルを持っている人でも、組織内の共通言語が分からなかったり、組織に馴染んでいなかったりすると、十分にパフォーマンスを発揮することはできません。
組織や事業の背景となっている沿革、ミッション・ビジョン・バリューなどの価値観、組織体制や組織内のメンバー、業界や社内の共通言語、組織内の働き方・ルールといった要素に馴染むことが組織社会化です。
これまで全社員が1か所で出社勤務していると、研修ではない時間の中で組織社会化が進んでいた部分もありますが、リモートワークが増えると、意図的に新人研修の中に組織社会化のプロセスを組み込むことが大切です。
- ビジネスパーソンとして必要な基礎スキルの習得
ビジネスマナーや報連相、コンプライアンスといったビジネスパーソンとして必要な基礎スキルの習得は、どのような会社でも必ず新人研修のカリキュラムに組み込まれている部分でしょう。
- 仕事で成果を上げるための能力やスキルの習得
営業であれば商談の基本やアポイントの取り方、エンジニアであればプログラミングスキルなどが該当します。会社や配属状況に応じて、共通の新人研修内で実施する部分と部門配属後に学ぶ部分に分かれます。
新人研修のカリキュラム作成と研修手法
本章では、新人研修のカリキュラムを作成する際のポイントと、研修時の具体的な手法を解説します。なお、新人研修プログラムの作り方やカリキュラムの具体例をより深く知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
新人研修の目的・ゴールを決める
まずは新人研修を実施する目的とゴールを定めましょう。特にゴールを定めるところが大切です。
中期的には「入社1年後、新入社員がどのような状態になっているか」。そして、短期的には「現場配属後にどれぐらいの水準で実践できているか」や、「研修終了の時点でどのような状態になっていれば良いか」という3つの視点でゴールを考えると良いでしょう。
ゴール設定する際は、人事部門だけで決めるのではなく、配属後のOJTを担う現場からも意見を吸い上げることがおススメです。部門を越えてゴールをすり合わせ、優先順位を明確にすることで、配属後、現場からの不満を減らすことができます。
カリキュラムごとにゴール・内容を設定する
新人研修全体のゴールが決まったら、ゴール到達に向けてカリキュラムを設計していきます。カリキュラムを設計する際には、カリキュラムごとにゴールを明確にしていくことが良いでしょう。カリキュラムごとのゴールは「現場配属後の実践状況」「研修の終了時点」という2つのゴールを考えると思考しやすいでしょう。
研修のゴールを達成するうえでは、研修内容以外の朝礼や夕礼、研修期間中の報連相、自習学習の進め方なども教育の場になります。特に「身に付ける」ためには研修時間だけでは足りませんので、うまく活用していきましょう。
学習効果が高い研修手法を取り入れる
研修手法は、学習効果が高いものを取り入れていきましょう。新人研修は教える内容が多いため、知識の詰め込みになっている企業も少なくありません。しかし、知識をインプットするだけの座学研修は研修の効果が低い手法ともいわれています。
新人の集中力を保ち学習効果を高めるためには、グループワークやゲーム型の研修、ロールプレイング、「学ぶために教える」など、アクティブラーニングの要素を積極的に取り入れることがおススメです。
レポート、テスト、プレゼン、復習、教えるといった「アウトプット」の機会を盛り込むことも研修効果を高めるためのポイントです。
新人研修を成功させる5つのポイント
新人研修を成功させるにはどのようなことに気を付ければ良いでしょうか。本項では研修を成功に導く5つのポイントをご紹介します。
ゴールから逆算して「身に付ける」ための研修を実施する
決めたカリキュラムを消化していくだけでは研修の効果は高まりません。とはいえ、新人研修で教えるべき内容は膨大で幅広く、研修期間中にすべてを「身に付ける」「実践している」状態までもっていくことは困難です。
だからこそ、新人研修におけるゴールを明確にすることが大切です。「身に付ける」「実践している」レベルまで鍛えるべき考え方やスキル、習慣が何か?を絞り込み、「知っている」レベルで終わってしまわないように実施することが重要です。
マインドセットと組織社会化をきちんと実施する
入社前のイメージと入社後の現実にギャップが生まれてしまうことを「リアリティショック」といいます。どれだけ採用を工夫しても、実際に仕事をしていない新入社員では入社前のイメージと実際の仕事にギャップが生じます。
ポジティブなギャップが生じることもありますが、実際には「仕事の厳しさ」「泥臭さ」「理不尽に感じること」などネガティブなギャップが生じて、モチベーションダウンに繋がります。場合によっては早期離職の引き金になることもあるでしょう。
リアリティショックを和らげるためには、新入社員へのマインドセットが重要です。従って、プロとしてのマインドセット、また“リアリティショックが生じることへの心構え”などを初期研修でしっかりと実施することが大切です。
現場配属後にリアリティショックが起きたり、ネガティブになってしまったりして、企業への不信感が生じてから心構えや考え方の研修を実施してもなかなか吸収されないでしょう。そのため初期研修でのマインドセットの実施が重要になるのです。
また、前述の通り、組織に馴染むための組織社会化のプログラムをきちんと設計・実施することも新人研修を効果的にするためのポイントです。
OJTをしっかり設計する
現場配属後のOJTをしっかりと設計することも新人研修では重要です。OJTを配属後の現場に任せきりにしている企業は少なくありません。そうすると、結果的に上司の力量や熱意に応じて、成長の停滞やバラつきが生じたり、早期離職の原因となってしまったりするケースもあります。
人事部門側で育成計画のフォーマットを準備して作成依頼する、過去の育成計画を蓄積して共有することで、OJTの品質を底上げ・担保することは非常に大切なポイントです。
OJTについてより詳しく知りたい方のために、以下URLから資料のダウンロードを可能にしてあります。
OJTを効果的にするためのポイントは以下の資料で詳しく解説しています。
現場配属後も、人事部門からフォローを行なう
「新入社員を現場へ配属したら人事の仕事は終わり」という状態になっている企業もあります。しかし、部門配属後こそ、リアリティショックによる感情の浮き沈みが生じやすくなりますし、現場で上下関係のあるOJT指導者には打ち明けられない本音も出てきます。
モチベーションダウンや人間関係の悪化をそのままにしておくと、早期離職にも繋がりかねません。現場配属後こそ人事部門のフォローが大切です。部門配属から数ヵ月経過時点での面談や1年後研修などを通じて、現状把握やリモチベートを行ないましょう。
現場との連携を取る
研修の効果を左右する、成功させるために欠かせない「4:2:4の法則」というものがあります。「4:2:4の法則」は、研修の成果に影響を与える要素が「研修前:4割、研修中:2割、研修後:4割」であることを表しています。つまり、研修中よりも研修前後の関わりこそ、実は重要であるということです。
新人研修であれば、例えば、研修後に“上司や先輩が研修内容とは相反する行動を取っている”のを新人が目の当たりにすれば、新人研修の効果はガタ落ちしてしまいます。
上司や先輩に対しても研修内容を共有すると共に、新人研修を機に、改めて社内における「基本の徹底」などを推進することも大切です。
外部の新人研修を選ぶコツ
新人研修は、社内で行なうだけでなく外部に依頼することもできます。外部に依頼する場合、どのようにして選ぶと良いかのコツを紹介します。
価格帯
新人研修を外部依頼する場合の料金相場は、公開講座であれば1人1日あたり3~5万円程度。講師を招く場合は1日あたり10~60万円程度が相場です。あまりに安すぎる研修は品質に不安が残るケースも多く避けたほうが良いでしょう。
品質が安定していると判断できるラインとしては、「2日間の公開講座で5万円以上、講師を招く場合は1日30万円以上」程度を目安とすると良いでしょう。
開催実績
研修や開催実績も依頼先を選ぶ際の確認ポイントです。開催実績が多ければ良いというものではありませんが、年間数百人以上程度の実績があったほうが、改善のPDCAが回っており、品質が安定してくる傾向にあります。
プログラム内容
もちろん、プログラムの内容もチェックが必要です。プログラム内容のチェックポイントは、大きくは3点です。
- 想定されている新人像と自社の新人レベル、プログラムのコンセプトや重視するポイントと自社が育成したい点が一致しているか?
- マインドセットや心構えのプログラムがしっかり入っているか?
- 学習効果を高めるためにアクティブラーニングやフォローアップ研修等があるか?
おススメの新人研修15選
この章では、おススメの新人研修15選をご紹介します。
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学生気分から脱却し社会人としての心構えを持たせる「意識変革」に重点を置いた新人研修プログラムです。入社3ヵ月後のフォロー研修もセットになっており、意識の定着をサポートします。
- 「7つの習慣®」を基にした新入社員研修PRO
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「7つの習慣®」に基づいたオンラインの新人研修プログラムです。成長意欲高い人材を「自ら考え自ら行動できる主体性の高いプロ人材」に育てます。プロとして成果を上げるための考え方と行動を身に付けられるプログラムです。
<インソース>
- (新入社員・新社会人向け)ビジネス基礎研修~学生から社会人への意識と行動改革編
https://www.insource.co.jp/online/shinjin1.html
社会人としての心構えやルールなどを学べるオンライン研修プログラムです。社会人として不可欠なビジネスマナーや仕事の進め方の基本を学ぶことができるベーシックな内容です。
- (新入社員・新社会人向け)コミュニケーション研修~デキる「ホウ・レン・ソウ」
https://www.insource.co.jp/online/newcomer_communication.html
上司や先輩とのコミュニケーション、チームでのプロジェクト遂行に欠かせない「ホウ・レン・ソウ」を詳しく学べる研修プログラムです。目的や適したタイミングをはじめ、上司に信頼されるホウ・レン・ソウを身に付けられます。
<リクルートマネジメントスクール>
- ビジネスマナー実践研修(BMS)
https://www.recruit-ms.co.jp/open-course/dtl/K1211/
基本的なビジネスマナーが1日で学べるオンラインの研修プログラムです。単にマナーの知識を知るだけでなく、「なぜこのように行動する必要があるか」といった理由も学ぶことができます。
- 新入社員8つの基本行動研修
https://www.recruit-ms.co.jp/open-course/dtl/K1045/
ビジネスマナーに加えて、仕事の進め方など、社会人としての8つの基本行動を体得できる講座です。上司や先輩、顧客、他部署の人たちからどのような行動を期待されているかをワークを通じて考え、取るべき行動への理解を深めていきます。
<マイナビ研修サービス>
- 新入社員研修 ベーシックコース
https://hrd.mynavi.jp/service/service-21483/
社会人として求められるビジネスマナーを網羅的に学ぶ研修です。座学に加え、ロールプレイングやペアトレーニングを取り入れ、実践できるようにすることを目指します。
- 新入社員研修 アドバンスコース
https://hrd.mynavi.jp/service/service-21482/
仕事をするうえで重要なコミュニケーションスキルを習得するためのプログラムです。ホウ・レン・ソウやPDCAを総合演習で身に付けていきます。
<SMBCコンサルティング>
- 新入社員研修(3日コース)
社会人としての心構えや組織で働くためのマインドを醸成し、ビジネスマナーやコンプライアンスといった基本的なビジネススキルを身に付ける研修プログラムです。講義やワークを通じて主体的な新入社員を目指します。
<パーソル総合研究所>
- 新入社員 ビジネスマナー研修
https://rc.persol-group.co.jp/learning/stratified/manners.html
社会人に求められる基本的なビジネスマナーを身に付け、学生から社会人としての意識の転換を図る研修です。「理解したつもり」ではなく、「できるまで」実践・指導してビジネスマナーを体得します。
- 新入社員「学び力」向上研修
https://rc.persol-group.co.jp/learning/stratified/manabi.html
主体的・自律的に考えること、行動することを学び、社内メンバーや顧客との人間関係を構築して成果を出すための「スタンス」を身に付ける研修プログラムです。「自ら学んで成長していける人材」を目指します。
<三菱UFJリサーチ&コンサルティング>
- MUFGビジネスセミナー(SQUETセミナー)
https://mypage.squet.ne.jp/user/categories/newcomer.html
社会人としての心構え・意識をはじめ、最低限のビジネスマナーや仕事の進め方、コミュニケーションの取り方などを体系的に学ぶ講座です。文書作成など、基本的なスキルも学ぶことができます。
<りそな総合研究所>
- 「オンライン研修」「来場型研修」「フォローアップ研修」
https://www.rri.co.jp/seminar/shinnyu.html
仕事の進め方やビジネスマナー、ルールといった社会人としての基礎力を付ける研修です。フォローアップ研修は、入社後の仕事を振り返って、仕事を進める際の考え方やスキルを学びます。
<京セラコミュニケーションシステム株式会社>
- KCCSの新入社員教育プログラム
https://www.kccs.co.jp/consulting/seminar-education/education_list/education-3/202000/
仕事をするうえでの考え方と、企業人としてのあり方を学ぶプログラムです。160社以上の新人研修の実績があり、「入社1年次集合研修」というフォローアップ研修も提供されています。
<Schoo>
- 新社会人のためのマインドセット研修パッケージ
https://schoo.jp/biz/theme/curriculum/5
社会人としてのマインドセットが身に付けられる動画研修プログラムです。企業で用意した動画をパッケージすることも可能で、受講者に合わせて研修動画を変えることもできます。
まとめ
効果性の高い新人研修を行なうためには、研修全体の「ゴール」をしっかり定める必要があります。
「入社1年後の成長像」、「現場配属時の実践状況」、「研修終了時点の状況」という3つのゴールを想定すると、効果的なプログラムを設計しやすくなるでしょう。
一方で、新人研修は、教えるべき内容は多く、種類も幅広くなります。そのため「実践レベルを高めないといけないものが何か?」ということを絞り込み、講座以外の時間も含めてどのようにスキルや知識を身に付けていくかを設計することが大切です。
記事で紹介した新人研修のカリキュラム設計ポイント、研修会社を選ぶ視点、おススメできる研修会社も参考に効果性の高い新人研修を実施されてください。