
ここまで紹介した失敗ケースも踏まえて、新人教育を成功させるポイントを確認しましょう。
目的(ゴール)の明確化と逆算したカリキュラム設計
目的(ゴール)とは、以下のように「この教育を通じてどういう状態になってほしいか?」ということです。
目的(ゴール)の設定では、いつまでに、具体的にどのような成果を挙げられる状態かを以下のように明確にします。
- ・半年後には、一人で営業活動できるようになってもらう
- その後、来年4月には1人で月商500万を達成できる状態になってもらう
- ・6月末までに、一人でオンラインの画面設計ができるようになってほしい など
たとえば、「一人で営業活動をできるようにする」というゴールが決まったら、そのために必要な要素・スキルを以下のように洗い出し、その要素やスキルを身に付けるための教育カリキュラムを設計していきます。
- 商談のフレームワークを知って実践できる状態
- 商談創出のやり方
- 企業説明
- 顧客心理や購買プロセスの基本
- 相手の課題に合わせた商品・サービス提案
- 見積もりの取り方
- クロージング
洗い出した要素・スキルを、どのような順番で、どう教え、身に付けさせていくかが、OJTの基本カリキュラムになります。
OJT指導者は、無意識にこのフローに則ってやっているものですが、きちんと言語化して整理することでOJTの品質が高まりますし、新人との共有も可能になります。
考え方教育の実施
失敗事例のところで紹介したとおり、仕事に対する価値観、リアリティギャップに対する心構えなどの考え方教育は非常に大切です。
まず、Z世代の仕事に対する価値観と、多くの企業で経営陣や管理職を占める昭和世代の価値観とのギャップが大きくなっています。
例えば、どこかしら「終身雇用」的な価値観に基づいて、
- 会社や仕事を自分のプライベートよりも優先する
- 職場の価値観は、自分の価値観と多少違っても受け入れる
といった感覚は、昔と比べるとかなり薄れています。
仕事をしたことがない新卒の場合、必ず入社後ギャップ(リアリティギャップ)は生じるものです。
ただ、世代間ギャップが拡がるなかで、入社後ギャップ自体も大きくなっている傾向にあります。
だからこそ、仕事に対する価値観、リアリティギャップに対する心構えなどを入社初期に教えることが大切になります。
実際にギャップに出合ってからだと、その時点で、会社や上司に対する信頼度は低下しています。
そこから、考え方教育を実施しようとしても難しいですので、入社初期に実施することが大切です。
“今どきの新人”の価値観理解
上述のとおり、Z世代などの今どき新人には、仕事やキャリアに関して、リーダーや上司の世代とは大きく異なる価値観を持っている傾向があります。
そんな新人を成長させるには、新人の価値観を頭ごなしに否定して、一方的に企業の価値観を押し付けるのではなく、理解して受け入れる姿勢を持つことが大切です。
また、新人を育成するうえでは、「新人の価値観を矯正することが目的ではなく、仕事を早く覚えて活躍できるようにすることが目的」という意識をしっかり持つことが大切になります。
上司やOJT指導者が、新人の価値観を受け入れ、話に耳を傾ける姿勢を見せると、新人は相手に心を開きやすくなります。
もちろん、仕事をするうえでどうしても自社の価値観に合わせてもらわなければならない場合もあります。
ただ、その際も、相手の価値観は理解したうえで、「この価値観を何のために身に付けるのか?」「身に付けることでどうなるのか?」「実践しないとどうなるのか?」ということをきちんと伝えることが大切になります。
新人への積極的な声かけ
新人教育は、仕事のやり方を教えるだけでは足りません。新人が力を発揮するには、組織に馴染むことが大切になります。
これを組織社会化といいます。一方で新人は、自分の入ったチームや上司に対して以下のような印象を抱きやすいものです。
- 皆さん忙しそうなので、いつ話しかけていいかわからない……
- 話したいが、先輩の皆さんに提供できる話題がない……
新人を孤立させないためには、上司やOJT指導者側から積極的に声をかける姿勢が大切です。
また、人事による定期面談やブラザーシスター制度を導入するなど、職場での上司部下だけではない人間関係、新人の声を拾う仕組みも有効です。
日報などによる経験学習
新人の成長を促進させるには、日報などを通じた振り返りを習慣化させ、自分自身で成長する力を身に付けさせることも大切です。
成長のための振り返りの流れは、コルブの経験学習モデルが非常にわかりやすいでしょう。
<コルブの経験学習モデル>
- 1.具体的な経験をする
- 2.振り返る
- 3.学びとして解釈する
- 4.学んだことを試す
日報などはうまく設問を工夫することで、上記の「2~3」の実施につながります。
なお、新人教育に日報を取り入れるときには、以下の観点を項目に取り入れると経験学習につながりやすいでしょう。
- 1.うまくいったことを振り返る
- ⇒再現する、さらにうまくやるためにはどうすれば良いか?
- 2.うまくいかなかったことを完了する
- ⇒もしもう一度やるなら、どうするか?
OJT品質の底上げ
OJT研修の品質を上げる方法には、以下2つの視点があります。
まず、現場レベルの視点では、以下のポイントを意識することで、品質向上が期待できます。
- 目的(ゴール)を明確化する
- 考え方や価値観も教える
- 仕事の全体像や意味を教える
また、全社的な視点で考えると、新人の受け入れ部署にOJTをすべて任せてしまうと、受け入れ部署の負担が大きくなりますし、品質がばらつくリスクも大きくなります。
そこで、たとえば、人事部門で以下のような取り組みを行なうことで、現場の負担を軽減したうえで、OJT教育の質を底上げするとよいでしょう。
- OJTプログラム設計のひな型を作成する
- OJTプログラムの過去事例を蓄積する
- OJT指導者向けのレクチャーを実施する
- 新人と定期面談する
- ブラザーシスター制度を導入する など
実務以外の教育コンテンツ
OJT研修では、基本的に実務ノウハウを中心に教えることになります。
したがって、人事部門で以下のような実務以外の教育コンテンツを準備して、実施することも大切です。
- 企業のミッション・ビジョン・バリュー
- 企業の沿革
- 企業の組織構成
- 各事業部の仕事
- 共通言語 など
実務以外のことを人事主導で教えておくことで、現場の負担も軽減しますし、新人の成長も早くなります。