「将来を支える若手社員が仕事にやりがい(価値)を感じ、イキイキと働いている」、このようなロイヤリティとエンゲージメントが高まっている状態を作るためのキーワード3つを解説していきます。
具体的には、以下の3つです。
- 当事者意識
- つながり
- リーダーシップ
ロイヤリティを高めるキーワード1「当事者意識」
「当事者意識」は、若手社員の主体的な行動に表れます。HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、毎年4月に各社から1,000人を超える新入社員をお預かりして、新入社員研修を実施しています。研修に参加する参加者の様子を見ると、研修当初から積極的に挙手する人、グループワークでリーダーシップを発揮する人、研修講師のサポートを申し出る人はほんの一握りです。
しかし、時間の経過とともに、積極的に行動する人は、1人増え2人増え、最終的には参加者のほぼ全員が自ら挙手をして発言し、研修講師のサポートにも自ら行動を起こすようになります。研修に対して遠慮したり、様子見をしたりしている状態から、「自分が学ぶ場である」「自分が当事者である」と腹落ちした瞬間から、持っているエネルギーが発揮されていくようになります。
「仕事に対して、やる気がなく、無気力に見える」、つまり当事者意識が低く感じる若手社員がいるとします。彼らにエネルギーがないわけではありません。研修で様子見している参加者のように、エネルギーを発揮する方法が分からず「出し惜しみ」しているだけで、内側にはエネルギーが充満しています。従って、組織側としては、彼らのエネルギーを発揮できるように導く必要があります。
ジェイックの新入社員研修では、研修で伝える内容一つひとつで「やり方」と共に「意味」を教えることを重視しています。なぜ挙手を求めるのか、グループをまとめる行為や研修の進行をサポートすることにどんな価値があるのか、新入社員が「意味」を理解して納得すると、彼らの行動は変わります。ここに若手の当事者意識を高め、持っているエネルギーを存分に発揮させるためのポイントがあります。
いまの若手社員は、インターネットを通じてすぐに「正解」を手に入れることに慣れた世代です。従って、正解が分からないと動き出しが遅い傾向にあります。「あの若手社員はやる気が見えなくて困った」と嘆くのではなく、一つひとつの仕事の意味や価値を理解して、腹落ちしているかを確認することがおすすめです。
持っているエネルギーを存分に発揮する“当事者意識が高い”状態になると、若手も自ら考え行動するようになります。人は自ら考えて行動したことに対しては、自然と責任感も増します。そして、仕事上の責任を果たすという延長線上で「この仕事の中で自分ができる貢献は何だろうか」と考えるようになれば、望ましい成長への階段を上り始めています。
ロイヤリティを高めるキーワード2「つながり」
若手世代の顕著な特徴として、「人とのつながりを重視する」ということがあります。子どものころからSNSを使ってきた“SNSネイティブ”の世代です。“友達とつながっていたい”、“自分が経験していることを他者と共有していたい”と考える傾向が強いです。また、「いいね」や「スタンプ」を通じて、“承認を得る”ことにも慣れています。裏返すと、“つながりを感じられない”、“孤独である”、“承認されない”といったことに不安や不満を感じやすいとも言えます。これは上司や同僚との関係において顕著に表れる傾向です。
また、組織では、社員同士のつながりを阻害する要因も存在します。例えば、部署が違う・リーダーが違うと、方針も違うこともあるでしょう。すると、同じ企業内なのに意見が合わず、すれ違いが生じることもあります。また、多くの組織では、職務別で部署ができていますので、部署内のコミュニケーションは比較的活発でも、他部署との情報共有はあまりされず、他の部署がいま何をやっているのかを知らないこともあります。物理的に離れていれば、余計に情報共有はされづらくなります。今般のテレワークによるコミュニケーション量の減少は、心理的なつながりが薄れることに拍車をかける部分もあるでしょう。
部門内、組織内で「つながれていない」感覚があると、いまの若手社員は不安や不満を感じがちです。また、「組織の一員であるという安心感や自覚が失われることで、周囲に対しての関心が薄まっていく」という悪循環にも陥りがちです。従って、若手のエンゲージメントを高める上で、心理的な「つながり」を意識する施策をおこなうことは非常に重要です。
若手社員との心の距離を縮め、つながりを作るためには、「話をしっかり聴く」ことがポイントです。「話を聴く=会話の時間を取ればいい」と勘違いされている場合もあるので注意が必要です。もちろん、会話の時間を取ることは大切です。しかし、信頼関係がない中で、「何でも聴いてあげるから何でも話してごらん」と言われて素直に心を開く若手社員がどれだけいるでしょうか。また、「そう言われたから話したのに、結局、上司の自慢話と説教を聞かされて終わった」という状態になれば、心理的なつながりができるどころか、エンゲージメントを下げるだけです。
上司や組織は、若手社員が思っていること、考えていることを躊躇わずに発信できる「心理的安全性」を整えることが大切です。そのためには以下がポイントになるでしょう。
・否定しない
人は自分の意見と異なる意見に接したとき、無意識に否定したくなります。育ってきた時代と環境が違う中で、いまの若手社員は自分と違う価値観や意見を持っていることは当たり前です。相手の価値観や意見を頭ごなしに否定せずに、まずは相手の意見を受け止める姿勢を持ちましょう。
・身体で聴く
腕組みをしたり、仕事の手を止めなかったり、相手の言葉を遮ったりしている状態では、若手社員は真剣に話を聴いてくれているとは思いません。自分のしぐさや立ち居振る舞いが相手へのメッセージになっていることを自覚しましょう。
聴き方の工夫でコミュニケーションの質が良くなるだけでも、若手社員は周囲の人たちとつながりを感じるようになります。「若手社員がつながりを感じられるための工夫として何ができるか」、社内でアイデアを出し合ってみることもおすすめです。
ロイヤリティを高めるキーワード3「リーダーシップ」
当事者意識もつながりも、最終的には各組織におけるリーダーの“リーダーシップ”に行き着きます。「人がついていきたくなる」リーダーがいれば、社員のエンゲージメントは高まりやすいでしょう。
若手社員の当事者意識を高め、エネルギーを存分に発揮してもらおうと思ったら、若手社員に「この仕事にどういう価値があり、その中で、あなたに何を求めているか、何をしてほしいか」を明確に伝えることが必要です。また、組織内のつながりを強固にしたいと思ったら、リーダーが率先してメンバーに理解を示し、適切な権限移譲でメンバーの強みを活かし、組織内の協力体制を構築する必要もあるでしょう。
ただ、「行動」だけに焦点を当てても、効果はあがりません。若手社員は、リーダーの言動を通じて、誠実さや真摯さといった人としての「あり方」を見ています。組織開発の分野で「何を言うかよりも、誰が言うか」という言葉があります。人は、決して正しさだけで動くわけではありません。「この人についていこう」と思う人から言われるからこそ動くのです。
リーダーとしての「あり方」は、立ち居振る舞い、言動を通じてにじみ出ます。リーダーは、「仕事にどんな姿勢で向き合っているか」「メンバーのことをどう考えているか」「組織内の他部署とどういう関係を作ろうとしているか」が、常に自分自身と向き合う必要があるでしょう。