新人や若手社員の離職を防ぐうえで、離職防止研修のタイミングと社員の年次に合わせた研修内容は非常に重要です。
本記事では、1~3年目の若手社員に対して「どのような研修を、いつ行えば離職防止に効果があるか」を解説します。また、研修以外で実施できるリテンションや離職防止の施策、おすすめの離職防止研修も紹介します。
<目次>
- 離職防止研修の実施タイミングと背景
- 離職防止研修を効果的にするポイント
- 離職防止につながるお勧め研修サービス&研修会社
- 研修以外に新人・若手の離職防止につながる施策
- 離職防止につながるリテンション施策
- 離職防止研修のまとめ
離職防止研修の実施タイミングと背景
新入社員や若手社員の離職を防ぐうえで研修のタイミングも重要です。1~3年目の社員を対象に、主な離職理由と研修タイミングを紹介します。配属時期や壁にぶつかる時期は各社によって異なる部分もあると思いますので、自社の状況に当てはめながらご覧ください。
1年目社員
1年目は、社会人生活や仕事に対する期待と現実のギャップが主な離職要因となります。いままで学生をしていたわけですので、入社前に描いていた社会人生活は想像上のものであり、多くの場合バラ色だったり、甘かったりする側面が生じます。
そのため、実際に入社して仕事内容や職場の雰囲気が想像していたものと違うといったリアリティギャップが多かれ少なかれ生じます。そして、加えて、職場の人間関係にうまく馴染めない、ライフスタイルの変化によるストレスや疲労と仕事によるストレスが重なるといったことが早期離職の原因になります。
現場配属のタイミングで、リアリティショックも人間関係や仕事のストレスも増えますので、配属して数ヶ月後ぐらいがおすすめの研修実施タイミングです。
なお、離職防止という意味では、配属前の初期研修の中でリアリティギャップに対する心構えをきちんとしてもらうプログラムを組み込むことは必須です。
2年目社員
2年目は、大きく2つの要因が重なることで離職につながります。
1つ目の要因は、扱われ方の変化です。入社1年が経過して、次の新入社員が入社してきたタイミング、また、現場に配属されたタイミングで、組織や上司の関心は次の新入社員に移ります。それまで「1年目」として、ケアされていたものが、急に「もう2年目だから」と自走を促されることもよくあります。こうした状況は一種の孤独感やストレスにつながります。
また、本人側も1年目は初めてのことも多く、まずは慣れよう・吸収しようというスタンスでいたところから、2年目に入ると徐々に仕事に慣れて、働き方や社風とのミスマッチ、仕事内容のことなどを考える余裕が出てきます。この余裕が、悪く働くと“悩み”や“不満”につながるのです。
従って、2年目の社員の離職防止は、後輩が配属されて上司や先輩の関心変化を感じ始める、仕事に慣れて様々なことを考え始めるタイミングがおすすめです。
3年目社員
3年目は、2年目以上に実務能力も向上し、1人前に近づいてくる時期です。会社によって、後輩への指導を任せられたり、成長企業であればチームリーダーを任せられたりする人も出てきます。
そうした中で、会社のことも客観的に見ることができるようになり、キャリアのことを考え始めるタイミングです。いまの仕事で得られている成長実感、待遇や働き方、あと3年・5年働いた先といったことと、ネットや友人を通じて入ってくる他社の情報などを比較して、転職という選択肢を考え始める人も出てきます。
また、同期との差も見えてきた中で、本当にこの仕事が向いているか?と考え始める人もいます。
上記のような点を踏まえて、3年目にはキャリアパスの理解やキャリアデザインなどの研修を実施するとよいでしょう。
離職防止研修を効果的にするポイント
離職防止研修は、「離職防止研修」というタイトルで実施されるわけではなく、上述したような時期や課題を踏まえて、リテンションやエンゲージメント向上に向けたプログラムを実施することになります。本章では、年次毎の離職防止研修を効果的にするポイントを確認していきましょう。
1年目社員
新入社員の多くが、入社前の期待と現実のギャップに直面し、リアリティショックを感じます。前述の通り、1年目社員の離職原因は、入社後ギャップに起因するものが多くなります。
従って、1年目の早期離職を防ぐためには、入社後の初期研修で、入社後ギャップを防ぐためのマインドセットを形成することが重要です。大切なのは「ギャップがあることは当たり前である」という感覚を身に付けてもらうことです。同時に、「ギャップを超えて、成長した先に何を実現したいか?」という動機付けです。
まだ働いていませんので、具体的なものというよりは、多少抽象的でよいので、中長期の時間軸でのキャリアビジョン、成長の理想像などを描いてもらうとよいでしょう。
また、配属後数か月が経過したころは、実際のリアリティショックにぶつかる、また、業務を覚える、人間関係をつくるといったストレスにもぶつかっています。このタイミングでは、業務の不安や職場の人間関係の悩みを吐き出し、乗り越える方法を学ぶような研修内容がよいでしょう。
2年目社員
2年目社員は、業務にある程度慣れてきた一方で、まだまだ1人立ちまではいかず、自分の成長や能力に不安を感じていることも多い時期です。加えて、組織や上司からのケアが1年目よりは大きく減少することで生じる孤独感や焦りなども不安に拍車をかけることになります。
2年目社員向けには、入社当時からを振り返ることで成長実感や仕事のやりがいを確認する、その上で、より大きなやりがいや成長実感を得る、業務で成果をあげることにつながる考え方やノウハウ習得に向けた研修<>/spanがおススメです。
状況・必要に応じて時間管理やタスク管理などの基礎スキル、また、プロとしての姿勢や主体性、強み活用などの汎用性が高いリーダーシップ研修等がおすすめです。
3年目社員
3年目社員は、業務遂行の基本スキルや経験が身に付いてきた中で、業務の慣れから生じる飽きや今後のキャリアに対する迷いを感じる時期です。
従って、3年目社員の離職防止にはキャリアデザイン研修の実施がおすすめです。自身のキャリアに当事者意識を持つ、作りたいキャリアを考える、また、「今のままではいけない」という意識改革を促すといった研修がおすすめです。
内観を通じて気づきを得るプログラムも効果的です。自分自身の価値観や考え方、これまでの仕事の経験を深掘りし、内観した内容や成し遂げたいビジョンを描き、キャリア構築や成長に向けた行動変化を生み出すようなプログラムです。
3年目などで最も大きいのは「このまま、今の会社にいて、仕事を続けていていいのか?」という迷いです。今の時代は、“隣の青い芝生”の情報がいくらでも入ってきます。また、3年目ぐらいだと、キャリア形成に対する時間感覚が「数か月」「来年」程度の短いものになっており、焦りが増幅する傾向にあります。
そこで、ある程度中長期でのキャリアビジョンをしっかりと描き、今の職場で働き続ける意味を見出してもらうことが大切です。
離職防止につながるお勧め研修サービス&研修会社
リスキル
- 特徴: 早期離職の現状を理解した上で、企業の損失を減らし良い人材が活躍しやすい職場環境を整えるためにできることを確認しながら、コミュニケーションの取り方からやりがいを感じさせるサポート方法まで網羅的に学べる内容。
- 料金: 詳細はサイトにてご確認ください。
- サービスURL: リスキル
インソース
- 特徴:『人生100年時代、「ありたい姿」を見失わないために』というテーマでキャリアデザインの概要を学ぶことができます。
- 料金: 24,400円/人(20代向け公開講座の場合)
- サービスURL: インソース
バヅクリ
- 特徴: 自らのキャリア・アンカーと自社理念の接点を見出して、自律的にキャリアデザインができる人材を創り出すことができます。
- 料金: 50,000円/人
- サービスURL: バヅクリ
ジェイック
- 特徴: 新人・若手向けの研修が豊富に存在。42,893社をサポートしてきた内容に基づいた「若手エースの退職防止」プログラム。
- 料金: 月40,000円/1人(6ヶ月継続型の研修)
- サービスURL: ジェイック
研修以外に新人・若手の離職防止につながる施策
離職を防ぐためのアプローチは研修だけではありません。本章では、研修以外で実施したい離職防止の施策を紹介します。
メンター制度の導入
メンター制度は、新人や若手社員それぞれに対して、少し年上の社員を「メンター」として設定し、業務以外の疑問や悩みも相談できる仕組みです。
仕事におけるレポートラインや上司とは違う、利害関係が少ない関係性の社員をメンターとしてアテンドすることで、上司には相談できない悩みの解消や精神面のケア<>/spanをすることができます。
メンター制度の効果を高めるには、適任者をメンターにすることが重要です。メンターの適任条件としては、下記の要素が代表的です。
- 新人や若手の悩みに真摯に寄り添える
- セルフマネジメントやセルフリーダーシップが出来ている
- 人材育成に関心がある
- メンター自身に成長志向、学習意欲がある
- 人格的に先輩としてふさわしい
定期的な1on1
近年、上司と部下との1on1を導入する企業が増えています。1on1は、業務面のアドバイス以外に、メンバーのキャリアやプライベートに関する相談を通じて、離職防止を図る効果もあります。
しかし、1on1は“諸刃の刃”という側面もあります。たとえば、若手社員がキャリアの悩みを相談した際、上司が即答で「それはうちの会社だと無理だね」と回答した結果、若手社員が退職してしまったなどのケースもあります。
上述した状況は、上司の姿勢やマインドセットに加えて、上司自身がキャリア自律していなかったり、社内のキャリア制度などをきちんと把握していなかったりすることが要因である場合もあります。
上司には、「あなたが歩みたいキャリアがウチの会社にあるかはわからない」と正直に答え、「でも一緒に人事に聞いてみようか」と共に答えを探る姿勢を持ってもらうことが重要です。
その上で、1on1を通じて、上司が「キャリアを作っていくにはどうする?」「あなたはこの会社でどうしたい?」と若手に問いかけていくことでで、キャリア自律を促進し、長期的な離職防止に繋げることができます。
離職防止につながるリテンション施策
従業員のモチベーションUPやエンゲージメント向上を狙った取り組みは、リテンション施策とも呼ばれます。本章では、離職防止につながるリテンション施策の概略を紹介します。
リテンションとは?
リテンション(retention)は、直訳すると「保持」や「維持」という意味で、ビジネス領域ではマーケティングや人事分野でよく使われる言葉です。
人事領域におけるリテンションは、組織メンバーを定着させ、モチベーションを高めるための施策を指します。
リテンションの目的は、組織メンバーの定着率とモチベーション、エンゲージメント向上を実現し、人事コストの削減・組織の生産性向上を図ることです。
リテンション施策の具体例
リテンション施策は、大きく分けると金銭的報酬と非金銭的報酬の2つのカテゴリに区分できます。それぞれ具体的な施策を紹介しましょう。
<金銭的報酬>
- 給与や賞与
- 成果に応じたインセンティブ
- ストックオプション
- 家賃補助などの待遇面につながる福利厚生
- 学習支援や資格手当など自己成長を促す報酬制度
<非金銭的報酬>
- ミッション、ビジョン、バリューの浸透
- 会社に属する誇りや愛着を醸成するインナーブランディング
- 定期的な研修、資格取得の支援など自己成長を促す取り組み
- 働きやすさや働きがいを生み出す人事制度
- キャリア自律の支援
離職防止研修のまとめ
記事では1年目~3年目社員を中心に、離職防止研修を実施する時期や効果的なプログラムについて解説しました。
新人・若手の離職防止施策は、研修だけではありません。記事内で紹介したメンター制度や1on1、また、さまざまリテンション施策などを組み合わせて実施していくことが大切です。
また、事業特性などから生じる組織構造や新人・若手の業務内容などを踏まえて、壁になるところ、離職につながる要因を洗い出し、適したタイミングと内容で研修や施策を展開していくことが大切です。
少子化が進み、優秀な若手層を確保する難易度は今後も加速度的に上昇していきます。若手社員の離職は数百万円の損害につながりますので、きちんとした施策を実施して、定着・活躍を実現させていきましょう。