2025年入社 新入社員|特徴と育成ポイントを徹底解説! Vol.2

2025年の新入社員の特徴と育成ポイントv2

本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.1は下記よりどうぞ。

 

<目次>

3.配属後の落とし穴と育成設計の再定義

ここまで、2025年新入社員の時代背景と価値観、そして入社時点での意識傾向について確認してきました。

 

ここから重要になるのが、「実際に入社後、どのような体験をするか」「その体験が育成・定着・活躍にどう影響するか」という視点です。

 

現場配属後のマネジメントや育成環境によって、新入社員の成長スピードにも、離職率にも、驚くほどの差が生まれます。この章では、新人配属後の「落とし穴」となりやすいポイントと、それに対応する「育成設計の再定義」の考え方を紹介します。

 

3-1.「受け入れ」は作業ではなく「体験」である

新入社員の配属が決まった直後、配属先では「○○さんよろしくね」と軽く紹介して、その後はOJTに任せる…。このような受け入れは、珍しくありません。

 

しかし、新入社員にとって、配属初期は、その後のモチベーションや会社への信頼感を左右する「重要なポイント」です。

受け入れの不備によって起きる落とし穴

・現場に放置されたと感じる(疎外感)
・誰に相談してよいか分からない(不安)
・期待が明示されないまま仕事が始まる(迷走)
・指導スタイルが人によりバラバラ(混乱)
・「この会社、話が違う」と感じてしまう(不信感)

これは、入社前に感じていた「希望」や「期待」が、配属先での実体験と乖離したときに起こる「リアリティショック」とも言えます。そしてこの初期のギャップが、その後の定着やエンゲージメント、果ては早期離職にまでつながっていくリスクを孕んでいます。

 

3-2.現場任せの育成が引き起こす「ばらつき」問題

私たちが実施した新人育成ノウハウウェビナー参加企業へのアンケートでも、「配属後の育成・支援が現場任せになっている」と答えた割合は全体の約60%に上りました。

ありがちな現場任せの実態

・OJT任せ→担当者によって接し方や支援の濃淡が異なる
・指導内容が属人化→経験則
・感覚での指導が中心
・上司や先輩が育成意識を持っていない
・キャリア面談や1on1は実施されていない/形骸化している

このような状態では、新入社員側にとっての「会社としての一貫した育成体験」が得られず、安心感や納得感を持つことができません。

 

特に危険なのは、成長意欲の高い新入社員が「この会社では成長できない」と感じた場合、「静かに離れる」という選択を取りやすいことです。

 

近年では、注意・指導が行われず、挑戦的な仕事がアサインされない職場で、「こんなぬるい環境では力がつかない」として、わずか数カ月で転職意欲を持ち始めるケースも報告されています。

 

3-3.「つながりを生む体験設計」という視点

では、どうすれば配属後の新入社員が職場に安心して入り込み、主体的に成長していけるのでしょうか?

 

鍵になるのが、「迎える→つなげる→育てる」という3ステップに基づいた体験設計です。

 

これは単なるプロセスの分割ではなく、「新入社員がこの会社で頑張れそう」と思えるまでの体験価値を設計する視点です。

 

▶STEP1:迎え入れる―安心感の形成

配属初期における「関係性づくり」が最初の要です。この時期に新入社員が感じる「ここに居ていいんだ」という所属感・心理的安全性の有無が、その後の関係性のベースになります。

人事・現場ができること

・OJT担当・上司への「受け入れガイド」配布
・配属初日のフォロー面談
・「1週間後ヒアリング」などの定着確認
・先輩からの雑談・声かけを意図的に設計
・同期との横のつながり支援(昼会・Slack・雑談チャット)

 

▶STEP2:つなげる―役割と意味づけ

ある程度仕事が始まった段階で、求められるのは「自分の仕事の意味」を理解することです。

 

若手のモチベーションは、「この仕事は誰の役に立つのか」「なぜこれを自分がやるのか」といった「意味と背景」への納得感に大きく左右されます。

人事・現場ができるこ

・業務マップ、部署の役割説明資料の共有
・上司による期待値の言語化(1on1での説明)
・仕事の社会的意義や会社のミッションとの接続を意識
・「なぜこの行動が必要か」まで含めた指示・フィードバック

 

STEP3:育てる―成長実感とキャリア支援成

受け入れとつながりが成立した後は、「自分はちゃんと成長している」という実感を得られるかが定着のカギを握ります。

 

また、「この先どんなキャリアがあるのか」「2年後どうなっているのか」といった中長期視点でのサポートも不可欠です。

人事・現場ができること

・定期フィードバックの場(1on1・レビュー)の設計
・成長を可視化する評価シート/振り返りテンプレート
・社内キャリア事例や先輩インタビューの共有
・社外キャリア面談の活用(※匿名性を確保)

 

3-4.受け入れ現場に必要な「育成力のアップデート」

もう一つ見逃せないのが、現場での育成を担うOJT担当者や上司のマネジメント意識・スキルのギャップです。

 

いまだに「自分が育てられたように育てる」スタイルを踏襲していたり、「指導するとハラスメントにならないか不安」と関わりを避けたりするケースは珍しくありません。

 

このような現場には、以下のようなアップデートが必要です。

現場に求められるアップデート

・フィードバックの「型」を学ぶ(1分半で伝える/事実→理由→提案)
・意味づけコミュニケーションの習得
・多様な個性を認める姿勢(個性尊重型マネジメント)
・イクボス的スタンス(人生×仕事両面支援)

OJT担当が若手であっても、教育を受けていなければ「愚痴への同調」など逆効果の対応が起きる可能性もあります。現場全体で「育成チーム」としての機能を果たすためにも、育成者層へのトレーニングやガイド提供が鍵となります。

 

3-5.まとめ:「つながり」をデザインする企業が、育成に成功する

配属後の育成で失敗する企業には共通点があります。それは、「形式は整えているが、体験価値として設計されていない」ということです。

 

手続きとしての配属やOJT、制度としての1on1やキャリア面談――。「やっているつもり」のまま運用されていると、今の新入社員には響かず、やる気をなくしたり、離職を考えたりし始めるのです。

 

大切なのは、「この会社に入ってよかった」「ここで成長できそうだ」と新入社員自身が感じられる体験を、意図的に設計することです。

 

4.若手育成を成功させる3つの支援アプローチ

前章では、新入社員が現場に配属された後に起こりがちな「落とし穴」と、それを回避するための体験設計の考え方について解説しました。

 

そこからさらに一歩進めて、「新入社員が活躍する組織をどう作るか?」をテーマに、企業側が取り組むべき3つの支援アプローチを提示します。

 

本章で紹介する内容は、育成体制の強化、マネジメントスキルの更新、キャリア支援の仕組みづくりにまで踏み込んだ、組織設計・風土づくりの視点を含んでいます。

 

4-1.プロ意識の醸成―「社会人の基準」をアップデートする

新入社員にとって、学生から社会人への意識転換は非常に大きな変化です。しかし、単に「社会人になったのだからしっかりして」と言うだけでは、なかなか実感が持てません。

 

特に2025年新入社員は、「意味や納得感」を重視する傾向があるため、「なぜ社会人としてのマナーや基準が必要なのか」まで、論理的に説明されることを求めています。

 

「プロとして対価を得る」という感覚を持たせないと、「欲しいものだけ」を主張する人になってしまう恐れがあります。

企業が取り組むべきこと

●プロ意識育成を目的とした新入社員研修の設計
 ○「マナー」や「ルール」の「理由」をセットで伝える
 ○失敗事例やリアルな現場ケースをもとに「自分ごと化」する
●上司・OJTによる行動指導の明確化
 ○声の大きさ、報連相、スピード感など、「可視化された行動基準」でフィードバック
 ○曖昧な基準や「常識だろう」的な指導をなくす

 

4-2.キャリア自律の支援 ― 「自分で選ぶ力」を育てる

2025年の新入社員は、「会社に依存せずキャリアをつくる」意識が強まっています。これは裏を返せば、「このままでいいのか」「成長できていない気がする」というキャリア不安とも言えます。

 

絶対に忘れていただきたくないのは、「早期に成長を実感できないと、「もったいない転職」が起こる」という点です。

起こりがちな実例

●「1年目は修行期間」とされ、キャリアについての対話が行われない
●上司が「キャリアを聞かれてもアドバイスできない」
●新人側が「この会社でどんな未来があるか分からない」と感じている

企業が取り組むべきこと

①内省とフィードバックの機会を増やす
 ●1年目からの定期的なキャリア振り返り(半期・年度ごと)
 ●自己評価と上司評価のギャップをすり合わせる1on1設計
②キャリア支援の「場」を設計する
 ●キャリア相談窓口の設置(社内メンター+社外キャリアカウンセラー)
 ●キャリアドック制度の導入(1年に1回、キャリアの「健康診断」)
③上司のキャリア対話力を育てる
 ●「キャリア研修」を上司層にも実施し、対話の引き出しを持たせる
 ●「上司のキャリアが描けていないと、部下には語れない」ことの自覚を促す

 

4-3.現場の育成力強化 ― 「イクボス型マネジメント」の推進

最後に注目すべきは、新人の育成を直接担う「現場マネージャー層のスキルと意識」のアップデートです。

 

特に、「イクボス※」という考え方は、これからの育成マネジメントの主軸になる重要なキーワードです。

 

※イクボス…部下の仕事・キャリア・プライベートをバランスよく支援しながら、組織成果も出せる上司像(厚生労働省推奨)

今の上司に起きていること

●昔の自分を基準にして指導してしまう
●ハラスメントを恐れて関われなくなる
●プライベートを「話題にしてはいけないもの」として避ける
●「どう育てたらいいか分からない」まま指導を任される

現場で進めたい具体アクション

①「育成スキル」の習得機会を設ける
 ●フィードバックスキル研修(1分半で伝える技術など)
 ●意味づけコミュニケーション研修(「なぜ」を語れるマネジメント)
②「人生×キャリア支援型」のスタンス共有
 ●イクボス宣言&研修(育児・副業・ライフ設計を含む視点)
 ●管理職の「育てるマインド」を定期的に確認
③指導の標準化とデータ活用
 ●配属後のフォロー記録、面談ログ、フィードバックメモの蓄積
 ●面談内容のAI解析(例:Kakedasなど)による傾向分析

 

4-4.まとめ:育成成功には「構造」「環境」「対話」のすべてが必要

新入社員の育成成功は、もはや「熱意」や「根性」に頼る時代ではありません。

 

成長意欲の高いZ世代に対しては、むしろ構造的・データドリブンな育成設計と、心理的安全性に配慮した関係構築が必要です。成長の場が整い、意味が伝わり、話を聞いてくれる上司がいる―そんな「育成環境」を持つ企業こそが、これからの人材戦略で勝ち残っていくでしょう。

おわりに

2025年入社の新入社員は、不安定な時代を生き抜き、オンライン中心の教育・就活環境を経験してきた世代です。情報処理能力に長ける一方で、リアルな人間関係には不安を抱き、納得感や共感を重視しながらも、早期の成長を強く求める―そんな「共感型・合理主義のリアリスト」とも言える特性を持っています。

 

彼らをただ「新人」として一括りに捉えるのではなく、育ってきた背景と価値観を理解し、その上で最適な環境・関係性・支援策を設計していくことが、これからの育成において不可欠です。

 

本レポートでは、

●時代背景から読み解く価値観の傾向
●900名超の本音データに基づく実態分析
●配属後に起こりがちな「落とし穴」
●育成成功に向けた3つの支援アプローチ

という4つの視点から、2025年新入社員の育成と定着に向けたヒントをお届けしてきました。

 

今後は、「採用して終わり」「配属して任せきり」という発想から脱却し、「体験」としての育成設計を組織全体で捉えていく必要があります。

 

新入社員にとって、「この会社で働き続けたい」と思えるかどうかは、初期の配属体験、上司や先輩との関係性、そして将来に向けたキャリアの見通しによって大きく左右されます。これは、短期的な戦力化に留まらず、中長期的な企業の人材戦略そのものにも直結します。

 

経営層・人事の皆さまには、ぜひ本レポートを組織の「育成方針の確認と再設計」のきっかけとしていただき、貴社の次世代を担う若手人材の活躍と定着に向けた一歩を踏み出していただければ幸いです。

 

私たちジェイックでは、こうした変化に対応する人材育成・キャリア支援のソリューションを多数ご提供しております。ご関心がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員
株式会社Kakedas 代表取締役社長

東宮 美樹

1997年筑波大学を卒業。食品会社や人材派遣会社などを経て、ジェイックに入社。新人~次世代リーダー・管理職までコミュニケーション改善や主体性発揮、エンゲージメント強化の研修、また、自身の経験も踏まえた女性活躍やキャリア研修、イクボス育成などを得意とする。2019年にジェイック取締役、キャリア面談プラットフォームを提供する株式会社Kakedas取締役に2023年に就任、2025年よりKakedas代表取締役社長。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
・ゆとり世代の特徴と育成ポイント
・新人の特徴と育成のポイント 主体性を持った新人を育てる新時代の学ばせ方
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