組織レジリエンスとは?企業が注目する「逆境に強い組織」の作り方

更新:2023/10/31

作成:2022/06/14

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

組織レジリエンスとは?企業が注目する「逆境に強い組織」の作り方

レジリエンスとは、ストレスをしなやかに受け止めて跳ね返し、目標達成に向けて進んでいく力のことです。

 

レジリエンスには、メンバー一人ひとりのパフォーマンスや生産性を向上させるほかに、組織を強くする効果もあります。

 

個人や組織のレジリエンスを高めるためには、レジリエンス研修を実施するなどが有効です。

 

記事では、まず、レジリエンスを確認したうえで、企業が注目する組織レジリエンスの特徴や高めるメリットを解説します。

 

そのうえで、記事の後半では、実践編として組織レジリエンスを高める方法とビジネス分野における組織レジリエンスの強化事例を紹介します。

<目次>

レジリエンスとは?

レジリエンスとは、ストレスを受け止めて、跳ね返すといった意味で使われている言葉です。「ストレスに折れない心」「ストレスへのしなやかな耐性」といった意味になります。

 

レジリエンスは、ストレスに耐える、我慢するといった意味合いでとらえられがちな「ストレス耐性」とは少し方向性が異なる概念です。

 

レジリエンスは、ストレスに「耐える」のではなく、ストレスに対する認知を変えることでストレスによって生じるダメージを減らし、素早くストレスから回復していく、受け流すという考え方になります。

企業が注目する「組織レジリエンス」とは?

チームメンバー

 

組織レジリエンスとは、個人のレジリエンス概念を組織に適用した考え方となります。

 

最近では、外部環境が大きく変わったり、SNS等によって風評被害が一気に拡散したりするなかで、以下のようなことへの対応力が重要になっています。

  • 市場や顧客のニーズの縮小や変化
  • 社会情勢の変化
  • 想定外のトラブル など

こういったことが起きた場合にいかに素早く立ち直り、以前よりも強固な組織として復活できるかを意味するのが組織レジリエンスです。

 

組織がビジネスを行なううえで、外部環境の変化、予期せぬ失敗、計画の遅れなどはいくらでも生じる可能性があるものです。

 

特に近年では、VUCAの時代になったことで、外部環境や顧客ニーズの変化スピードも速まっています。

 

こうした時代に、さまざまなトラブルや問題を乗り越え、組織の継続や持続的な成長を図っていくうえで、組織レジリエンスを高めることの重要性が注目されるようになりました。

 

組織レジリエンスを構成する要素には、以下のようなものがあります。

目標の達成力

組織レジリエンスの高いチームは、まず目標の達成力が高い特徴があります。

 

具体的には、組織風土などの文化もありますし、組織が目標達成するための仕組み(目標管理制度)も欠かせません。

 

目標管理制度も、ただ運用されているだけでなく、目標達成するための意味付けや動機付けが十分にされており、社員の達成意欲が高い状態であることが大切になります。

変化への追従力

近年では、市場や顧客のニーズ、社会の変化に対応して、新規事業を創出したり、既存事業を改定・撤廃したりするといった決断を迅速に下せる変化対応力・決断力も大切になっています。

 

外部環境の変化に応じた企業の変化は、組織内のメンバーにとっては必ずストレスがともないます。

 

組織レジリエンスの高い組織であるためには、環境変化に対するストレス耐性が高い社員が多い、社員のレジリエンスが高いことも重要です。

ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブな心理状態を指す言葉であり、活力・没頭・熱意という3つの要素から構成されます。

 

ワークエンゲージメントの高い社員が多ければ、目標達成に向けた主体性や変化対応への当事者意識も高くなり、組織レジリエンスが高まりやすくなるでしょう。

経験から学ぶ仕組みや文化

組織レジリエンスの高い組織になるためには、成功体験・失敗体験を振り返り、分析し、次の機会に活かせるようにノウハウとして蓄積する仕組みも必要です。

 

たとえば、人材育成においてもデイビッド・コルブの経験学習モデルやリフレクション・サイクルなどを理解し、実践のなかで振り返りの技術を習得させ、日常的に振り返りの技術を使う文化も重要となります。

 

また、組織全体として、業務やノウハウ、事例を形式知として蓄積して、業務の俗人化を防ぐ取り組みも大切です。

一貫したミッション・ビジョン・バリューと浸透

メンバーが、ミッション・ビジョン・バリューなどを理解・共有していれば、現場への権限移譲もしやすく、組織間や社員の連携も進むでしょう。

 

ミッション、ビジョン、バリューの浸透とは、より平易な言葉でいえば以下の要素が共有されている状態です。

  • 「何のために」
  • 「何を目指すのか」
  • 「何を軸に行動すればいいのか」

企業が組織レジリエンスを高めるメリット

企業が組織レジリエンスを高めれば、以下の効果やメリットが生まれます。

外部環境の変化に強くなる

組織レジリエンスが高まると、外部環境の変化、予期せぬ失敗、計画の遅れなどが起こっても、社員それぞれが主体的に問題解決に取り組んだり、変化に追従したりできるようになります。

 

また、外部環境の変化を恐れることなく、変化に対応した組織再編や事業の組み換え、業務プロセスの改善、デジタル化の促進なども迅速に進んでいくでしょう。

目標達成力の強い組織になる

目標達成までの道のりでは、大きな困難や不測の事態が起こりがちです。また、計画したことが上手くいかない、計画通りの効果が出ないといったことは日常茶飯事になります。

 

レジリエンスが高く、ミッション・ビジョンが浸透している組織では、目標達成への高い動機付けが生まれます。

 

レジリエンスが高い組織では、本気で目標達成しようとする社員が多く、自律的・主体的に目標達成に向けて課題解決しようとするでしょう。

 

さらに、経験から学ぶ仕組みが整っていることで、「どうすればうまくいくのか(いかないのか)」という知見も社内に多く蓄積しているため、目標達成に向けた質の高い行動も生まれやすくなります。

社員がストレスに強くなる

レジリエンスの高い組織のメンバーは、ワークエンゲージメントも高いです。

 

ワークエンゲージメントには、メンバーのストレス耐性を高める効果があります。

 

企業の組織レジリエンスを高める取り組みを通じて、情報過多、また感情労働が求められる、変化が激しいといったことで生じる社員にメンタル不調による問題も減らすことができるでしょう。

生産性が向上する

組織の生産性を向上させるには、各メンバーが安定的に高いパフォーマンスを発揮することも大切です。

 

組織レジリエンスが向上すると、外的環境の変化やストレス要因に大きく翻弄されることなく、各メンバーが高いパフォーマンスを安定的に発揮し続けられるようになります。

 

各メンバーのパフォーマンスが高まれば、計画どおりの目標達成やそれ以上の成果を出すことが可能になります。

ダイバーシティマネジメントを実現しやすくなる

ダイバーシティマネジメントとは、メンバーの個性を受け入れ、個々が能力を発揮できる環境を作ることです。

 

ダイバーシティを強化する過程は、自分と異なる価値観や優先順位を持つメンバーと協働するやり方を学ぶプロセスであるため、メンバーには少なからずストレスが生じます。

 

組織レジリエンスを高めることで、各メンバーはストレスに過敏に反応するのではなく、理性的にダイバーシティを受け入れていけるようになるでしょう。

 

レジリエンス強化によって、異なる価値観を持つメンバーとの協働による成功体験を早期に手に入れることができると、ダイバーシティの定着もしやすくなります。

組織レジリエンスを高める方法

腕組みをする経営者

 

企業の組織レジリエンスを高めるには、以下の方法を実践するとよいでしょう。

 

ミッション、ビジョン、バリューの明確化と浸透

組織が難しい課題や逆境を乗り越えるには、明確化されたミッション・ビジョン・バリューが有効です。明確化とは、文章にすることを意味します。

 

もちろん文章化して終わりではなく、繰り返し提示して、浸透させる取り組みを続けることが大切です。

 

最近では、パーパス経営といったキーワードが使われることも多くなりました。

 

組織のミッションやビジョン、パーパス(存在意義)、バリューを浸透させるには、まず触れる機会、考える機会を増やすことが大切です。

 

具体的には、自分の仕事が、組織のミッションやビジョンにどう紐づいているかを意識してもらう機会になります。

 

また、組織のミッションやビジョン、パーパスを一方的に伝えるのではなく、社員一人ひとりに、自分のミッションや価値観を明らかにしてもらい、そのうえで、組織のミッションやビジョン、パーパスとどこが重なるかを明らかにしていくことも大切になります。

エンゲージメント経営の実践

エンゲージメントを高めることによる社員の主体性向上は、市場や顧客のニーズ、社会情勢の変化、想定外のトラブルなどへの対応力を強化します。

 

先述のミッション・ビジョン・バリューの浸透なども、エンゲージメントを高める施策の代表です。

 

ミッション・ビジョン・バリューなどが浸透すれば、社員への権限移譲を進めて自己決定権を与えることで、さらにエンゲージメントを高めやすくなります。

 

なお、エンゲージメントを高めるには、福利厚生の充実や職場環境の整備なども衛生的な要因として必要です。

 

エンゲージメントは、サーベイを通じて、数値として測定・追跡することが可能です。各種サーベイツールや調査を導入して、施策のPDCAを回していくことが大事です。

心理的安全性の確保

エンゲージメント経営ともリンクする部分ですが、心理的安全性も組織レジリエンスに不可欠な要素です。

 

予期せぬ失敗や顧客の声、計画の失敗や施策の停滞などが共有されるためには、メンバーの心理的安全性が欠かせません。

 

心理的安全性を高めるには、経営陣や管理職自身が自らの失敗を認める、挑戦からくる失敗を許す、異論を歓迎するといった言動をとることが大切です。

レジリエンス研修の実施

変化に強い組織をつくるには、社員一人ひとりのレジリエンスを高めることが大切です。

 

ただ、ストレスに耐えるだけでなくうまく付き合うこと、また、困難に適応するには、能力開発が必要となります。

 

レジリエンス研修では、おもに以下の教育を行なうとよいでしょう。

  • ・ストレスの仕組み
  • ⇒仕組みを知ることで理性的に対応しやすくなる
  •  

  • ・自分自身のストレス傾向
  • ⇒自身の傾向を知ることで予防や対応策を取りやすくなる
  •  

  • ・感情やストレスのマネジメント手法
  • ⇒ストレスとうまく付き合えるようになる

レジリエンス研修のポイントは、研修のなかで自分と向き合い、レジリエンスを強化していくことです。

 

研修によって自分の心の持ち方、捉え方を変えられると、ストレスとうまく付き合い、しなやかに困難を乗り越えられるようになります。

ビジネス分野における組織レジリエンスの強化事例

HRドクターの運営会社である研修会社ジェイックでは、経営の苦境時に、世界的なベストセラー『7つの習慣®』の考え方を組織に導入することで、組織レジリエンスを高めることができました。

 

ジェイックが、書籍『7つの習慣®』の考え方を導入した背景には、2008年に発生したアメリカのサブプライムローン破綻によるリーマンショックにともなう著しい環境変化がありました。

 

こうした環境変化によって、当時のジェイックでは、リーマンショックの影響で、以下のような問題が噴出していました。

  • 業績の急激な低下
  • 離職者の増加
  • 部門間の敵対心 など

ジェイックでは、こうしたなかで業績改善に向けた打ち手の根幹として、組織風土を改善する、組織レジリエンスを高める必要があると考えて、『7つの習慣®』の読書会をスタートしました。

 

『7つの習慣®』の内容には、自らのものの見方や価値観に関する「パラダイム」や「パラダイムシフト」の考え方、まず、自分から変わるという「インサイドアウト」の考え方、自分が影響できることに集中して働きかけるという「影響の輪」の考え方など、組織レジリエンスを高めるうえで有効な考え方が多数あります。

 

ジェイックでは、このような方法で『7つの習慣®』の考え方を浸透させることで、社員の主体性を引き出し、組織レジリエンスを向上させ、業績の急回復を実現することに成功しました。

まとめ

組織レジリエンスは、個人のレジリエンス(折れない心、ストレス対応力)概念を組織に適用したものです。変化や逆境に強い組織を作るために、有効なものとなります。

 

現在は、VUCAの時代ともいわれるとおり、ビジネスにおいて予期せぬ出来事や逆境が生じやすくなっています。

 

こうしたなかで、近年では、組織レジリエンスの重要性が特に注目されるようになりました。

 

組織レジリエンスを高めると、組織に以下のような変化が生まれます。

  • 外部環境の変化に強くなる
  • 目標達成力や変化への追従力が高まる
  • 社員のストレス耐性が強化される
  • 組織全体の生産性が向上する
  • 個々の能力を発揮できる環境が実現する など

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、組織レジリエンスを高めるうえで役立つ「7つの習慣®」研修を提供しています。

 

変化に強い組織をつくるには、社員一人ひとりがレジリエンスを高め、ストレスとうまく付き合いながら困難に適応できる能力を開発していくことが不可欠です。

 

困難に対して主体的に適応できるメンバーの能力開発に興味がある人は、以下のページから「7つの習慣®」研修の資料をダウンロードしてみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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