
ダイバーシティーとインクルージョンの考え方を社内に取り入れる際には、以下のポイントを押さえたうえで計画等を進めると良いでしょう。
ダイバーシティーとインクルージョンを組織に導入する5つポイント
ダイバーシティーやインクルージョン等による取り組みの効果は、以下5つの要素を満たすことでより高まりやすくなります。
・多様な人材を取り巻く仕組みの公正な運用
ダイバーシティーとインクルージョンを導入するうえでは、採用、教育、評価、報酬、等級制度という関連する人事制度がいくつかあります。これらの制度を、一貫性を持って整備することが必要です。
多様性を持ったさまざまな人材に組織づくりへの参加を促し、多様性を最大限に発揮してもらうには、各種の人事制度において「公平性」や「透明性」を持たせることが不可欠となります。基本的な考え方は、「成果への貢献が重要であり、成果への貢献を評価する」という、本質的な意味での成果主義の価値観が重要となるでしょう。
・異なる属性や価値観を尊重、受容する
組織内に多様な人材を採用し、「ただ存在させているだけ」では、インクルージョンにはなりません。多様性や「違い」の存在を、組織の成果へと結びつけるには、「違いを受け入れられる組織風土」「強みを活かしたマネジメント」「相乗効果の考え方」等を浸透させる必要があるでしょう。
・幅広い属性の人材を意思決定プロセスに組み込む
従来のように意思決定の中心が多数派(マジョリティ)のままでは、外国人や非正規労働者といった少数派(マイノリティ)等が働きやすい組織にはなりません。ダイバーシティーとインクルージョンによる組織づくりの効果を高めるには、意思決定プロセスの中に、幅広い属性や価値観を持った人材の意見を取り入れる必要があります。
・相乗効果の発揮ができる風土をつくる
異なる属性や価値観の人材が集まると、意見の対立も起こりやすくなります。そこで多数派の意見を通そうとしたり、相手の考えに服従したりしてしまっては、インクルージョンによる好循環は生まれません。
意見の対立に向き合ううえでは、「協調」「妥協」「強制」「服従」「回避」という5つのパターンがあります。この中で協調を目指すのが、ダイバーシティーとインクルージョンのあり方です。
「協調」と「妥協」は、混同されがちですが、まったく異なる概念です。下記の図を参考にしてください。「協調」の概念とスキルが浸透した組織では、多様な人材によって新たな価値が生まれやすくなるでしょう。

なお、多様性と「無秩序」とは異なります。次に述べるミッションやビジョンによる方向性の統一もそうですし、組織としての規律を守るうえでの「強制」は必要です。
・共感やつながりがある組織を目指す
それぞれの能力が高くても、個々の力を発揮する方向性がバラバラでは、良い成果は生まれません。組織の目指す姿を明確にすることで解消しやすくなります。
従って、組織に求められるミッションやバリュー等が全体に浸透し、ミッションやバリューを軸として、採用や評価、意思決定がおこなわれることが、ダイバーシティーとインクルージョンの考え方に基づく組織の理想的な姿となるでしょう。
メンバーも、ミッションやバリューという同じ目的と価値観を共有することで、他のメンバーとのつながりや一体感を感じながら自身の力を発揮することができます。
組織に導入する際の注意点
ダイバーシティーやインクルージョンの考え方を組織に取り入れるときには、以下のポイントに注意しましょう。
・価値観教育の実施
先述のとおり、多様な人材が持つ「違い」は、偏見や誤解を生み出す原因になることもあります。そのため、企業がダイバーシティーやインクルージョンの考え方を取り入れるときには、情報提供や研修・教育等によって「違い」への理解や共感を促すことがおすすめです。
・待遇面への不平不満が出る可能性
障がいや家庭の事情等を加味して、従来までと異なる働き方を許容する場合、「従来までの働き方で働く社員」から不満の声があがりがちです。会社全体としての考え方を発信するとともに、対象範囲や評価制度等でどう加味するのか、また、一部の社員に不利益や負担がかからないように考慮しましょう。
・短期間で成果は出ない
ダイバーシティーとインクルージョンは中長期的な取り組みによって企業価値を上げていく取り組みです。従って、取り入れてすぐに目に見える成果が上がることは少ないでしょう。導入した当初は、成果よりも課題や不満等のほうが多く出てくる可能性すらあります。
・ダイバーシティーやインクルージョンは目的ではない
ダイバーシティーやインクルージョンは、視点や価値観の多様性を取り入れることで、組織の生産性や対応力、パフォーマンスを上げることが目的です。従って、本質的なポイントは、「成果」に視点を向ける組織をつくる、「成果」で評価することになります。
ダイバーシティーやインクルージョンの導入自体が目的化して、内向きの視点で相互理解を試みたり、新制度を設けたりしても、なかなか組織づくりはうまくいきません。組織に、「成果」や「顧客にとっての価値」という外向きの視点を持たせることが、結果的にダイバーシティーやインクルージョンを取り入れることにも効果的です。
経営陣の役割と人事部門の役割
ダイバーシティーとインクルージョンによる組織づくりが成功するかは、経営陣と人事部門がカギを握ります。両者が、以下のような認識を持って行動する必要があるでしょう。
・経営陣の役割
社長をはじめとする経営陣に大切なのは、ダイバーシティーやインクルージョン関連の仕事を管理職や人事担当者に丸投げせず、自らが多様性に対する意識変革のロールモデルになることです。
とくに「何のためのダイバーシティーやインクルージョンなのか」「どんな価値観の基に働いて欲しいのか」「違いをどう捉えて欲しいのか」等のメッセージは、経営陣が発信し、経営陣がロールモデルとなる必要があります。経営者自身が理想とする組織の姿を明確にして、メッセージとして、常に打ち出していきましょう。
・人事担当者の役割
人事担当者に必要なのは、経営陣の示す明確なビジョンを達成するために、仕組みや仕掛けを構築し、運用することです。経営陣は得てして組織の細かい実情や規定を知っているわけではありません。ダイバーシティーやインクルージョンを導入するうえでは、必ず人事制度の整備が必須となります。
経営陣の意図を汲んで、教育研修や制度に落とし込みながら、他の社員への不利益や不公平感が出ないように調整していくことが人事部の役割です。また、制度の運用という部分に関しては、組織が目指すもの、制度の背景、制度として許容しないもの等を、経営陣の代わりとしてメッセージを発することも人事部の役割です。