従業員満足度(ES)とは?注目される背景や顧客満足度(CS)との関係を解説

更新:2022/07/14

作成:2022/06/29

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

従業員満足度(ES)とは?注目される背景や顧客満足度(CS)との関係を解説

 最近では、顧客満足度(CS)だけでなく従業員満足度(ES)が、企業のマネジメント指標として注目されるようになっています。従業員満足度を高めることは、企業にさまざまなメリットをもたらします。

 従業員のモチベーションが低い、採用した人材がすぐに辞めてしまうなどの課題を抱えている企業では、特に従業員満足度を意識した取り組みが必要でしょう。本記事では、従業員満足度を構成する要素や注目される背景、顧客満足度との関係を解説します。

<目次>

従業員満足度(ES)とは?

PCを前に考え込むビジネスマン
 
 従業員満足度とは、やりがいや働きやすさなど、従業員の職場に対する満足度の指標のことです。Employee Satisfactionの頭文字を取ってESと呼ばれたり表記されたりすることも多くあります。そして、従業員満足度が高い職場は、生産性や顧客満足度、収益性が高い傾向にあります。

 また、最近では、ESをもう一歩発展させた概念として、従業員エンゲージメントやEX(Employee Experience:従業員体験)などのキーワードも登場しています。

ESを考えるうえで基礎となる衛生要因と動機づけ要因

衛生要因従業員の不満足度に関わる要素
動機づけ要因従業員の満足度に関わる要素

 従業員満足度を考えたり、向上に取り組んだりするうえでは、基礎として衛生要因と動機づけ要因の考え方を知っておくことがお勧めです。

 衛生要因と動機づけ要因の考え方はハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論に基づくものです。ハーズバーグは仕事で“不満をもたらす要因”と“満足をもたらす要因”は異なると提唱して、前者を衛生要因、後者を動機づけと名づけました。

 まず衛生要因は従業員の不満足度に関わる要素です。例えば、給与水準、休日、福利厚生などは、相対的に見て一定以上の水準にないと大きな不満要因になり得ます。しかし、衛生要因を多少充実させても、あくまで不満の発生を抑える効果しかなく、従業員の満足度の向上には大きな影響をおよぼしません。

 そして、動機づけ要因は従業員の満足度に関わる要素です。具体的には仕事のやりがいや成長実感などが動機づけ要因にあたります。動機づけ要因は高まれば高まるほど、従業員の満足度はそれに比例して高くなります。

 つまり、従業員の満足の向上を考えるうえでは、

  • – 衛生要因へのアプローチ ⇒ 不満足をなくす
  • – 動機づけ要因へのアプローチ ⇒ 満足を高める

 という2つの軸で考える必要があります。

 なお、上記は給与水準や休日、福利厚生など、“衛生要因”とされるものは重要ではない、という意味では全くありませんので、注意してください。

従業員満足度(ES)が注目される背景

 従業員満足度は以前からある概念ですが、最近になってあらためて注目されるようになりました。背景には、少子化と雇用の流動化が進んだことで、優秀人材の採用と定着がますます難しくなっていることがあります。

 また、仕事に知識労働のウエイトが増えたなかで、従業員の満足度や仕事へのエンゲージメントといった精神状態が、仕事のパフォーマンスに大きな影響をおよぼすようになったという事情もあります。

 こういった要因から、採用した人材に定着してもらう、従業員のパフォーマンスを高めるために、従業員満足度の向上に取り組む企業が増えました。

 従業員満足度が向上すると、従業員の企業への貢献意欲とモチベーションが上がるため、生産性の向上が期待できます。従業員一人ひとりの生産性が上がれば、組織全体の業績向上も期待できます。

 さらに、産業のサービス化が進むなかで、従業員満足度を向上させることは、サービスの品質向上にもつながり、顧客満足度も向上するでしょう。実際に、魅力ある職場づくりに注力してESが高い企業は業績が向上し、人材確保もできる好循環が生まれている傾向にあります。

従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)の関係性

 顧客満足度の向上は、企業の業績を伸ばすうえで必要不可欠な要素です。そして、顧客満足度を高めるためには、従業員満足度を高めることが欠かせません。

 例えば、サービスやプロダクト開発を実施する従業員の従業員満足度が高ければ、それだけ優れたサービスやプロダクトが生まれ、より良い顧客体験につながるでしょう。

 また、産業のサービス化が進むなかで、一部の従業員だけが商品開発をしたり、サービス品質を決めたりするのではなく、多くの従業員がサービス提供に携わり、サービス品質に携わることも増えています。

 そのため、顧客満足度を高め、安定してビジネスを成長させるためには、従業員満足度の向上にも取り組んでいく必要があります。

従業員満足度(ES)に影響する要素と指標

企業ビジョンへの共感
マネジメントへの納得感
仕事のやりがい
職場の人間関係
待遇・福利厚生への満足度

 従業員満足度の向上に取り組む際には、上記のような要素や指標を確認して改善に取り組む必要があります。

企業ビジョンへの共感

 企業のビジョンに共感し、就業している従業員は満足度が高い傾向にあります。そのため、企業のビジョンを従業員に浸透させ、実現のために従業員が自発的に行動できるような環境づくりが重要です。

 しかし、本質的に共感を得られるような施策を打たずに、表面的な共感を強要するような施策は逆効果になる可能性もありますので注意が必要です。例えば、企業理念を大声で唱和させるような施策は、従業員満足度に悪影響となる可能性も高いでしょう。あくまで、従業員の自発的なビジョンへのコミットメントを促すことが重要です。

マネジメントへの納得感

 上司のマネジメントがうまくいっており、マネジメントに納得していたり、上司への信頼を持っていたりする従業員は従業員満足度が高い傾向があります。

 上司が従業員の思いをくんだコミュニケーションが取れていたり、仕事ぶりを適切に評価できていたりする組織では、従業員満足度が高くなるでしょう。上司の人間性、そして、スキルへの投資が従業員満足度の向上にもつながります。

仕事のやりがい

 仕事へのやりがいは従業員満足度に直結する要素です。やりがいは業務内容に対する意味づけだけでなく、自分が組織の業績などに貢献しているという実感をえるためにも重要といえます。

 従業員にやりがいを持ってもらうためには、仕事の意味や価値を考える機会、顧客からの感謝や賞賛をえる機会、企業への貢献を実感してもらう機会、達成感を感じるような機会などを準備することが有効です。

職場の人間関係

 人間関係は従業員満足度(ES)に大きく影響しており、それは離職の原因として職場の人間関係がよく挙げられることからも明らかです。従業員が十分な報酬を得ていたり、仕事にやりがいを感じていたりしても、人間関係のストレスを抱えていると、従業員満足度は下がります。

 従業員満足度を上げるためには、コミュニケーションを柔軟に取れる、従業員間でお互い関心を持っているなどといった状態を作ることが重要です。いわゆる心理的安全性もベースとなるのは人間関係です。

 職場の人間関係が良好でない状態は、衛生要因の視点で大きなマイナスが生まれることになりますので、即座に改善に取り組む必要があるでしょう。

待遇・福利厚生への満足度

 従業員満足度に関わる要素として、待遇・福利厚生、また勤怠などの定量的・制度的な職場環境も重要です。待遇や福利厚生、勤怠の運用などは目に見えてわかりやすいものですので、水準に満たないと従業員の満足に大きなマイナスを与える衛生要因となります。

 離職率が高いといったケースでは、待遇や福利厚生、勤怠運用の見直しなどをまず実施しないと、動機づけ要因への取り組みをしても効果が上がらないことがあります。これは、前述したマネジメント(上司)への納得度、人間関係も同様です。これらに不満がある場合は、まずそこを改善しないとどのような手を打っても、なかなか従業員満足度は改善しません。

 ただし、繰り返しになりますが、衛生要因の水準を多少高めても従業員満足度は向上しません。そして、待遇や福利厚生などは金銭的な負担もあり、収益構造のなかで実施できる限界もあります。どこまで改善すればよいかを考慮しながら対応しましょう。

従業員満足度(ES)の向上は顧客満足度(CS)にも影響する重要指標です

 従業員満足度の向上は顧客満足度にも影響する重要指標です。最近では、EXや従業員エンゲージメントなど、さらに発展した概念もありますが、基本的な考え方は同じです。顧客満足、企業の業績向上を支える要素になりますので、積極的に取り組みましょう。

 従業員満足度を高めるためには、まず待遇や福利厚生、人間関係といった衛生要因を満たして、従業員が抱える不満を取り除く必要があります。そのうえで、従業員のやりがいや成長実感といった動機づけ要因を満たすことが効果的です。

 従業員満足度の向上に取り組む際には、紹介した5つの要素を参考に、自社で改善が必要なポイントがないか、手を打てるところがないか、見直してみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop