ジェイックで、「マイキャリア」を導入しようと決まった当時は、弊社でも若手の離職が増えていました。
あまり離職が多い会社ではありませんでしたが、組織が数百名規模になった、また時代も変わってきた中で一定の離職が生じるようになりました。
すべての離職が悪いものではなく、組織に一定の新陳代謝が生じることも健全と考えていますが、防げるものは防ぎたい、また、社員それぞれが自身のキャリアを真剣に考えてほしいと思い、マイキャリアを導入しました。
ただ、マイキャリア制度の発案はじつは人事部ではなく、ひとりの現場社員でした。
制度の原案を会社に提案してきてくれた社員は、事務職の契約社員として入社したところから、自分で希望して 営業職 ⇒ 正社員 ⇒ 講師職とキャリアを構築し、また、家庭の事情に伴う転勤などもしながら自身のキャリアを考えてきた方です。
そんな自身の経験も踏まえて、“キャリアを考えるきっかけ” “社員から会社に希望を伝えるための仕組み” としてプロジェクトを提案してくれました。
当時、人事部でも同じようなことを考えていたこともあり、ぜひ本格的に検討しようと動き始めました。
ジェイック流社内公募制度「マイキャリア」の基本の流れ
社内公募制度「マイキャリア」の基本の流れは以下の通りです。

【アンケート内容】
アンケート内容は以下のようなものです。
※アンケート内容はほとんどの原型を留めつつ、表現や社内用語の修正などを多少加えています。ご了承ください。
①所属部署・職務・経過年数(選択式)
- 1.所属部署(選択式)
- 2.現在の職務(選択式)
- 3.現職務での経過年数(選択式)
②希望キャリアパス(選択式)
- ⇒マネジメントコース、プロフェッショナルコース、その他
- ※社内のキャリアパスとして上記の2コースが存在します
③興味のあること、今後やってみたいこと、将来築きたいキャリア等(自由記述)
④異動希望
- 1.異動希望(選択式)
- ⇒今すぐ異動したい、できれば異動したい、どちらでも構わない、できれば異動したくない、いまの職務がよい
- 2.異動希望_理由(自由記述)
⑤異動希望がある場合の希望先
- 1.異動先の第1希望(部署)(選択式)
- 2.異動先の第1希望(職務)(選択式)
- 3.異動先の第2希望(部署)(選択式)
- 4.異動先の第2希望(職務)(選択式)
- 5.異動先の第3希望(部署)(選択式)
- 6.異動先の第3希望(職務)(選択式)
⑥転勤希望
- 1.転勤できない理由があれば教えてください(自由記述)
- 2.転勤したい方のみお答えください。希望する時期はいつですか(選択式)
- ※全国転勤を前提として採用活動・雇用を実施していますが、ある程度社員の意向も確認しながら転勤決定をしています。
⑦キャリア面談
- 1.キャリア面談を希望しますか(選択式)
- 2.キャリア面談を希望する相手を選んでください(選択式)
- ⇒外部、人事、事業部長、その他
- ※グループ会社Kakedasで提供するキャリアコンサルティングサービスを活用して、「第三者に相談したい」というニーズも拾い上げています。
- 3.キャリア面談を希望する相手の要望があれば、お書きください(自由記述)
⑧その他会社に知っておいて欲しいことはありますか?(自由記述)
「マイキャリア」導入時に工夫してきたこと
マイキャリアの導入を検討する際には、やはりいくつかの懸念がありました。
たとえば、「本音を答えてもらう」と「回答結果を活用する」というバランスの中でアンケート結果をどこまで共有するかといったこともひとつです。
質問項目も「本音を聞き出す」「社員にネガティブな感情を持たせないようにする」ために何度もブラッシュアップしています。
また、導入時は「出してもらった希望が通るとは限らない」としっかり伝えることもかなり強く意識しました。
そのうえで、希望者とは必ず面談する、また、面談時には「希望していることはわかった。検討も必ずする」ということを伝えたうえで、結果をフィードバックすることは大切にしています。
異動希望の本音を聞き出すために「異動したい気持ちはあるけど、異動先で成果を出せなかったらどうしよう…」という不安も生じやすいことを踏まえて、異動希望とは別に「興味のあること、今後やってみたいこと、将来築きたいキャリア等」という自由記述の質問を入れています。
これも「異動希望を出す踏ん切りはついてないが、チャレンジしたいことがある」といった本音を聞き出す工夫です。
導入を通じて従業員に伝えたかったこと
マイキャリアは導入して、これまで少しずつ修正しながら運用を継続しています。
社内公募や異動希望制度などを考える際にする際に必ずある懸念のひとつが「異動希望が大量に出て、収拾がつかなくなったらどうしよう…」ということではないかと思います。
ジェイックで実際に導入している実績でいうと、「できれば異動したくない」と「いまの職務がよい」が約65%。「どちらでもいい」が約30%弱。「異動したい」が5~6%ぐらいといった形になっています。
上記の比率は会社によってかなり変わるものと思いますが、結果をみていくと「いまの環境にもやもやした思いはあるが、異動を希望するわけでもない」という方も一定数いるのだなと感じます。
異動希望ではないけど、「今後やってみたいこと、将来築きたいキャリア」の自由記述にいろいろ書いてくれたり、キャリア面談を希望したりする社員はたくさんいます。
「今すぐには自信がないけど、ゆくゆくはチャレンジしたい」という思いがある社員は意外と多いし、そうしたものを拾えるようになったのはよかったことです。
そして、「マイキャリア」を導入したのは、異動の希望を聞きたいという目的がすべてではありません。むしろ「マイキャリア」を通して社員に一番伝えたかったことは別にあります。
「マイキャリア」を導入して、1年に1回、しかも、希望者だけの提出ではなく、全社員が提出する形にしている大きな目的は「1年に1回、自分のキャリアをきちんと考えてほしい」というところです。
その場でパッと答えるのではなく、自身のキャリアを振り返り、この先築いていきたいキャリアをじっくりと考えてほしい。
そのために、回答期限もアナウンスから約1ヶ月と長めに設けるようにしています。希望者は「回答する前にキャリア面談を先に受ける」こともできます。
社内公募制度を取り入れて、気づいたこと、実現したこと
マイキャリア導入後、マイキャリアでの回答を踏まえて異動が実現する人は毎年何人もいます。
自分の希望で異動した人は異動時点で意欲も高いですし、成長目標の設定やマネジメントもしやすくなります。そういった意味でも、正しく実施すれば社内公募制度はよい影響が大きいと感じています。
もちろん全員の希望をすぐに叶えられるわけでも、叶えているでもありません。
ただ、マイキャリアの回答を踏まえて、他事業部の事業部長が「ポジションをオファーしたい」ということもありますし、人事委員会で検討して異動を決定することもあります。また、いま直ぐでなくても、人事委員会で翌年の下半期や翌々期の異動を仮決定することもあります。
なお、前述の通り、異動希望に関しては叶った場合も叶わなかった場合も必ず「検討して結果としてどうなった。それは何故か、どうすれば叶う可能性があるか」といったことはフィードバックするように気を付けています。
ジェイックでは、マイキャリア以前からいくつかの階層:入社3~5年目、30歳前後などを対象にキャリア面談を実施していました。
ただ、人事によるキャリア面談の実施は工数の制限もありますし、マイキャリアを通じてキャリア面談だけでは吸い上げきれなかった本音があることもわかりました。
また、マイキャリアで希望者のキャリア面談に対応するようになって、20代前半~中盤のキャリアを捉える時間軸が想定以上に短いことも気づきました。
入社2~3年目の場合、キャリア面談を実施して「また次回希望があれば面談するよ(半年後ぐらいかな…?)」と声をかけたら、「ありがとうございます。2か月後でお願いします!」といったことも少なくありません。
キャリアに関する時間軸がこれだけ短い若手層もいるなかでは、最低でも1年に1回、自身のキャリアを見つめ直してもらう機会は必須だと改めて思います。きちんと考えてもらい、考えを拾い上げるだけでも離職率の低下に貢献するでしょう。
異動希望は思ったほど多くなく、実施する価値がある
社内公募制度や異動希望制度は「いい制度だ」と考えている人事の方が多く、データでも優秀層の離職防止やキャリア自律への貢献が確認されています。
一方で情報も少なく、導入ハードルが高いと感じる気持ちもよくわかります。しかし、お伝えしたように、正しく実施すればデメリットなどよりもメリットがはるかに多いなと感じます。
制度を工夫することで“異動希望者を知る”ということ以外にもいろいろな課題の発見や気づきがあることも間違いありません。今回のレポートが、社内公募制度に考えるきっかけになれば幸いです。
実施に際して注意すべきことは、異動希望者の声をそのまま放置するのではなく、必ず検討して本人にフィードバックをするということに尽きると思います。