
人間のモチベーション、動機をめぐる研究の歴史は長く、ビジネスやマネジメントに応用できる知見が数多く存在します。代表的なものをいくつかご紹介します。
内的動機と外的動機
「動機付け」を行うためには、動機には「本人を外側から刺激されるもの(外的動機)」「本人の内側から発生するもの(内的動機)」があることを知っておく必要があります。
外的動機は「報酬」「表彰」「昇格」などが分かりやすい例です。上司からの「頑張ったな!』という承認も外的動機に分類できます。すなわち「“行為の結果や対価として得られる何か”が本人のやる気や意欲を引き出している」という状態です。
外的動機はシンプルであり、組織をマネジメントするうえで有効です。例えば、実力主義の評価制度、目標管理によるマネジメント、業績比例する賞与制度、表彰制度やインセンティブ、コンテストなどは、外的動機を刺激するマネジメントです。
また、人間関係、信頼関係を作ったうえで「褒めることで動かす」という行為も、ある種の外的動機によるマネジメントです。
動機のもう1種類である内的動機は、本人の自発的な興味や関心であり、「行為それ自体が目的になっている」ものをいいます。
少し分かりづらいかも知れませんが「仕事にやりがいや面白さを見出す」「評価されようがされまいが、それをやることが楽しい」という状態が内的動機です。
内的動機は、本人の主体性を引き出しますし、制限もありますので、非常に有効ですが、その名の通り“外から刺激することが難しい”側面があります。
このように人間の行動を起こす「動機」にも、内的なものと外的なものがあることを知っておくと、モチベーション管理するうえでも複数の手、また、短期的な施策と中長期での施策などを組み合わせて行っていくことが出来るでしょう。
他にも「動機」の分類方法について後ほど紹介していきますので、ぜひ複数のモチベーション管理を組み合わせて、生産性高い組織作りに取り組んでいってください。
モチベーション管理における外的動機付けのメリットとデメリット
外的動機の良い点は、シンプルであり、コントロールが簡単だという点です。外的動機付けの方法には、先ほど紹介したような人事制度や評価制度、インセンティブやキャンペーン、表彰などがあります。
外的動機で提供する対価も、金銭だけでなく、名誉、承認欲求、権限など、様々なものがあります。何を提供することが良いかも、後述するいくつかの動機の理論を知っておくと組み合わせることが出来るでしょう。
一方、外的動機のデメリットは対価以上のパフォーマンスが期待できないことです。下記に具体的な例を挙げてみます。
・対価が得られることが決まった
Ex)「月間10件獲得したら5万円」のキャンペーン
⇒10件達成したら、11件目をやる動機付けはされない
⇒むしろ、11件目は翌月に回したい
・対価が得られない(得られないであろう)ことが決まった
Ex)「月間10件獲得したら5万円」のキャンペーン
⇒15日時点で3件である
⇒これ以上頑張ろうとは思わない
また、外的動機は「対価」という刺激で人を動かすので、依存性が生じやすくなります。
・対価が得られないなら頑張ろうとは思わない
Ex)「月間10件獲得したら5万円」のキャンペーン
⇒キャンペーン期間が終わったら、やる気が落ちる
・同じ対価だと刺激が減っていく
Ex)「月間10件獲得したら5万円」のキャンペーン
⇒徐々に“5万円”だと動かなくなり、7万円、10万円…とインフレが起こる
デメリットがあるから外的動機付けは避けた方がいい、ということではありません。例えば、ある上場企業では「利益目標を達成した場合、目標から上積みされた分の経常利益は50%を賞与として社員に還元する」制度を取り入れています。
制度を取り入れた結果、社員一人ひとりが経費削減や生産性UP、部門間協力などの行動を起こし、組織の生産性も社員の平均年収もグングン上げることが出来たという事実があります。
外的動機付けは強力である反面、注意すべき点がありますので、ぜひうまく活用してください。
マネジメントにおける内的動機付けのメリット・デメリット
内的動機は、外から与えられたものではなく、社員一人ひとりの中で生じるものですので、持続しやすい、制限がない、費用もかからないといった素晴らしい特徴があります。
一方で、外から与えることが出来ないからこそ、直接的にはコントロールできない、マネジメントが難しい側面があります。
内的動機には、仕事のやりがい、成長実感、目標達成といったものがあげられます。内的動機の中でも、「目標達成することに喜びを感じる」達成動機などは、後天的に変えることは難しいですので、採用段階でしっかりと把握して選考することが重要です。
一方で、「仕事のやりがい」や「成長実感」などは、社員教育やマネジメントを通じて「考える機会を作る」「見出すサポート」「気づく機会を作る」ことが出来ます。
社員一人ひとりに内的動機付けがされている組織は、社員が自走しますので非常に強くなります。外的刺激と合わせて、ぜひ取り組んでください。
マズローの欲求5段階説
人間の欲求を5つに分類したマズローの欲求5段階説はご存知の方が多いでしょう。マズローの欲求5段階説はモチベーション管理を考えるうえでは、知っておくと有効です。
マズローの欲求5段階説は、人間の欲求を5つに分類します。
- 「自己実現」 …自分の能力や可能性を発揮したい
- 「承認」 …他者から感謝や尊重されて、自信を得たい
- 「所属」 …どこかに所属し、良好な人間関係を持ちたい(社会的欲求)
- 「安全」 …身体的・経済的に安定・安全でいたい
- 「生理的欲求」…食事、睡眠、呼吸など、生物としての生存本能を満たしたい
マズローの欲求5段階説をモチベーション管理に活用する際のポイントは「下位の欲求が満たされないと、上位の欲求を満たすことには動機付けされない」とされている点です。
つまり、「モチベーション管理したい相手が、いまどこのステージにいるか?」が重要になります。
欲求はどんどん上位に上がっていくだけでなく、現実世界では下位に下がることもあります。
例えば、「同僚と口論をした(所属の欲求不足)」「顧客からクレーム受けた(承認の欲求不足)」といったこともありますし、「妻とうまくいっていない(所属の欲求)」「家族がリストラにあった(安全の欲求不足)」といったプライベートの原因もありえます。
「職場の人間関係がうまくいっていない(所属の欲求が満たされていない)」状態で、「褒める(承認の欲求を満たす)」マネジメントや「仕事のやりがいを見出す(自己実現の刺激)」研修をしても効果は半減してしまいます。
従って、相手がいまどのステージにいるか?(どの欲求が満たされていないか?)を考えながらマネジメントしてくことがモチベーション管理上のポイントです。